風祭文庫・ヒーロー変身の館






「Yes!ぷりきゅあふぁい部轟轟」
(第5話:ヱターナルの主)



作・風祭玲


Vol.964





迫る夕闇を背景にどーんと聳え立ち、

威厳を見せ付ける県内屈指の廻船問屋・越後屋。

多額の税金を投入して完工させた県庁ビルでさえ

2・3歩下がりひれ伏すであろうその越後屋の奥に

『ですから、館長。

 今度こそ”ぷりきゅあ”を倒してご覧にいれます』

ボロボロになりながらも戻ってきたアナコンデ以下3名は

そう言い訳をしながら正面の椅子に座る銀色の甲冑姿の人物に向かって頭を下げてみせる。

『ほぉ…

 今度こそねぇ』

甲冑を怪しく光らせつつ、

アナコンデ達に館長と呼ばれた人物は幾度も頷いてみせると、

『そうですっ、

 既に”ぷりきゅあ”達の弱点も絞りつつあります』

一筋の光明にすがる様にして訴えてみせるが、

『おだまりぃぃぃ!!』

その声を制するようにして怒鳴り声が響くと、

館長は徐に一冊の本を取り出し、

『言い訳は…いいわけよ。

 それよりもお前達、

 これがなんだか…判るな』

と問いたずねる。
 
『それは…』

館長が掲げる本を見てアナコンデは絶句すると、

『我々がヱターナルが没収し所蔵しなければならないお宝のカタログですね』

アナコンデの代わりにスコルブがそう答えてみせる。

すると、

『うむ、そうだ。

 このカタログにはモノの価値がわからぬ者共より

 没収しなければならない貴重な品々記されている』

と館長は静かな口調で本の意味を語るが、

ギンッ!

いきなり甲冑の中で眼光が鋭く輝くと、

『そう、まさしくそうなのだ。

 このカタログに掲載されているお宝はぁ!

 米粒一つ!

 ポッキー一本に至るまで

 すべて我々ヱターナルが没収せねばならない対象であるっ!』

と叫びつつ

ビシッ!

アナコンデ達を指差し、

『それをお前達は成し遂げることが出来なかった!

 このことは万死に値する!!!』

甲冑全体よりオーラを吹き上げて糾弾した途端、

『ひえぇぇぇ!!』

勢いに押されたアナコンデ達は震え上がる。

そして、

ギラッ!

甲冑の隙間から館長は目を輝きをさらに増して見せると、

『お・し・お・き…』

と言うや否や、

バコッ!

アナコンデたちが座る床が抜け落ち、

『うわぁぁぁ!!』

『館長のイケズぅぅぅ!!』

の声を残してアナコンデ達は開いた穴の中へと落ちていったのであった。

『”ぷりきゅあ”か、

 さて、どうしたものか』

アナコンデたちが消えた後、

館長はそう呟きながら被っていた甲冑を脱ぐと、

怪しく光るメガネを押し上げながら

闇の中へと姿を消していったのであった。

 

『やれやれ思わぬ所で不時着の上に、

 いらぬ騒動に巻き込まれるだなんて、

 これは貧乏神に取り付かれてしまったのでしょうか』

チチチチ…

チュンチュンチュン!!!

夜が開け、

鳥のさえずりが響き渡る朝の駐車場。

その駐車場の中で轟天号のボンネットを開けながら鍵屋はぼやいてみせると、

『はぁ…

 大体なんであんなところでスピンしたのでしょうか』

竜宮へ向けてのワープ中、

ヱターナルの没収メカ”ほしぃなぁ”とのバトルの最中に発生したスピン事故を思い出すと、

『あのぅ…』

人工知能が話しかけてきた。

『なんです?』

まだ余熱が残っている超光速波動エンジンの点検蓋を開けながら鍵屋は返事をすると、

『一晩かけてログの解析を行いまして、

 ようやく結果が出ました。

 如何しましょうか?』

と人工知能は遠慮がちにたずねる。

『ふむ、

 いいでしょう』

話を聞いた鍵屋は小さく頷き、

そして、運転席に座って見せると、

『それでは見せてもらいましょうか、

 ワープインからスピンするまでの走行データを』

と人工知能に命じた。

『あいっ』

鍵屋の指示に人工知能は返事をして見せると、

ブンッ!!

オート三輪のフロントガラスに画像データと共に測定データが流される。

『うーん、

 見たところ、

 原因となる要素は見つかりませんね』

一通り見終わった後、

鍵屋は小首を傾げて見せると、

『あのぅ…』

そう人工知能は尋ねながら、

『ここのデータ値はこれで良いのでしょうか?』

とワープインの際に一致させる空間位相を指摘してみせる。

『ん?

 これは…』

ワープイン時に一致させていたはずの空間の位相が

次第にずれていく様子に鍵屋は表情を曇らせると

『R、

 時間を戻して、データがずれ始めたところを見せてください』

と指示をする。

そして、

『これは…』

鍵屋の目がディメンジョン・スタビライザで検知した異常データを見つけた途端。

『あちゃぁ!

 強引なワープインを掛けた時に発生した衝撃波が犯人でしたかぁ』

と嘆いて見せた。

『あぁ、

 やっぱり』

それを聞いた人工知能がそう返すと、

『Rっ、

 判っていたのなら何で知らせないんですかっ』

と鍵屋は文句を言いながらハリセンを取り出すが、

『そっそんなこと言われましても、

 ごっご飯を食べてないので、

 そちらまで注意が行かなかったのです』

そう人工知能は事情を話す。

『………まぁ仕方がないです。

 空間位相はワープ中、

 常に注意をしていなければならないもの、

 言わば私の不注意です…

 轟天号を責めるわけにはいきませんね』

と鍵屋は呟いて、

不時着の際のトラブルによって大きく傷ついてしまった轟天号の車体を眺めると、

『はぁ…』

ため息をひとつつき、

『仕方がありませんね。

 で、自己修復が完了するまでどれくらい掛かりますか?』

手にしたハリセンで肩を叩きつつ鍵屋は尋ねると、

『ブレーキ周りを中心に駆動系を結構痛めてしまいましたので、

 あと144時間ほど見積もってください』

と人工知能は返答をする。



説明しよう。

機械と生物の両方の性質を兼ねる轟天号は物理的なアクシデントを受けても、

自分で障害箇所を修復をする自己修復能力があるのである。



『144時間ですか、

 仕方がないですね。

 轟天号が自己修復するまでの間、

 ここで大人しく商いをすることにしましょう。

 ますはその前に腹ごしらえをしなくては』

それを聞いた鍵屋はそう言いながら、

轟天号から降りると、

鍵状の杓杖を大きく振りかざしながら

天空に向かってそれを突き刺しグルリと廻して見せる。

すると、

ガチャリ!

と言う音共に、

何も無い空間に四角い筋目が走り

突き刺した杓杖を抜くのと同時に、

ギィ…

開いたドア越しに部屋が姿を見せたのであった。

すると、

鍵屋はその部屋の中へと入り、

程なくして

『よっこらしょ』

ドスンッ!

の声と共に商売をするためのテントと、

大型の炊飯器を下ろしたのであった。



「ねぇねぇ、

 見た見た?」

「見たわよ、

 2年B組に転校してきた円堂さんのことでしょう?」

「とっても美形よねぇ」

円堂グループの御曹司・円堂忠太郎が転校してきた昨日以来、

沼ノ端高校の女子達は蜂の巣を突っついたような騒ぎとなり、

忠太郎が転入することになった2年B組は

女子生徒の大半が忠太郎の登校を今か今かと待ち構えていたのであった。

「なぁに?

 この騒ぎ?

 馬鹿じゃないの?」

そんあクラスの様子を見て三池忍は呆れて見せるが、

ガラッ!

教室のドアが開いた途端、

皆の視線が一斉にドアに向けられる。

そして、

「おはよう、

 諸君っ」

の声と共にトレードマークとなっているメガネを光らせて、

一人の男子生徒が入ってくると、

「はぁ〜っ」

「なぁんだ」

と一斉にため息が漏れたのであった。

「なんだなんだ、

 この期待はずれのため息みたいなものは」

その空気に男子生徒は不機嫌そうに呟くと、

「みんな円堂かと思ったんだろう?」

と漫画を読みながら唐渡はそう指摘する。

「あん?

 円堂だとぉ?

 けっ、

 まったくぅ

 円堂円堂って、

 ちょっと浮かれすぎじゃないのか?」

メガネをクイッと挙げながら男子生徒は文句を言うと、

「まぁ、あんまり文句を言っても始まらないだろう」

と同じ渡は涼しい顔をしてみせる。

その途端、

「渡ぅぅぅ!!

 お前はそれでいいのかっ!

 あんな振って沸いたようなブルジョアジーに

 クラスの中を好き勝手されても文句は無いのかよ!!」

渡の胸倉を掴み挙げながら男子生徒は迫るが、

「そんなことよりもさっ、

 今日、駅前で開店した新しい牛丼屋。

 明日まで豚丼に限って30%引きなんだって、

 後で行って見ようぜ」

渡は逆に提案をすると、

「かぁぁ…

 お前には緊張感か無いのかっ、

 この格差を何とかしようとは思わないのかっ、

 それでも日本男子かっ!」

と男子生徒は食って掛かるが、

「あぁもうっ」

掴み挙げていた手を離すと、

「とにかく円堂のような奴を野放しにしておくと

 この先何をしでかすか判らないな。

 こうなったら気に入らないが

 生徒会長の水無月可憐にてこ入れをしてみるか。

 円堂と水無月は犬猿の仲…と聞くし、

 それに…生徒会長の指揮下にあるという秘密戦隊も気になるし」

と男子生徒は頼りにならない渡に見切りをつけ、

下がりかけたメガネを挙げつつ生徒会への介入を思いついたのであった。
 


「なんですってぇ!!」

夕刻、

生徒会室に水無月可憐の怒鳴り声が響くと、

「はっはぁ…

 いっ以上が、2年B組副委員の円堂忠太郎さんからの嘆願書です」

と生徒会の書記は恐々と言い伝える。

「生徒会への改革提案はありがたく受けます。

 でも、この内容はとても承服できません。

 大体なぜ今になって生徒会役員の改選をしなければならないんです」

頭を抱えながらそう可憐は呟き、

「とにかく、

 円堂さんには生徒会の改選は規則で決まっているので、

 今すぐに行うことは応えられません。と話してください」

と指示をしてみせる。

だが、

「そうくるとは思いました」

可憐からの拒否回答を受け取った忠太郎は返って余裕の笑みをこぼすと、

「僕の調べたところ、

 この春の生徒会役員の改選選挙は無投票で決まった言うことになっています。

 これっておかしいとは思いませんか?」

と春に行われた生徒会の選挙について言及する。

「はっはぁ…」

忠太郎の指摘に可憐の代理人は困惑した表情を見せると、

ギュっ

と忠太郎は代理人の手を握り締め、

「何も僕は生徒会長の責任を問うているわけではありません。

 もし、他に立候補者が居なかったのであるなら、

 改めて再選挙をすべきではないか?

 と言っているのです。

 そのこと判ってくれますよね」

白い歯を輝かせそう囁いてみせると、

「えぇ、まぁ…」

代理人は頬を赤く染めて、

恥らう仕草をしてみせたのであった。



「えぇ?

 生徒会役員の再選挙?」

ぷりきゅあ・ふぁい部の部室であるHnatuHouse内に夏木凛の驚いた声が響き渡ると、

「そうなのよ、

 まったく…」

とぼやきつつ可憐は頭を抱えてみせる。

「まぁ、前回の選挙では他に立候補者が居なくて、

 全員無投票で再選されてしまったのよね」

そんな可憐の隣で秋元小町はそう指摘すると、

「で、円堂さんがそれを蒸し返してきたんですね」

と春日野麗は呟く、

「まったく、忌々しい円堂…

 要するにあたしが生徒会長職についているのが気に入らない。

 ってことなのよ、

 そして、あわよくば乗っ取る気で居るんだわ」

可憐はそう言い切ると、

「でもさっ、

 そんなこと本当に円堂さんは言ったのかな?」

円堂非難で染まりつつある雰囲気に夢原希は疑問点を呟く。

「決まっているでしょう」

その疑問を可憐はきっぱりと否定するが、

しかし、

「そうかなぁ…」

なおも希が小首をかしげて見せると、

『ふっふっふっ、

 甘い!

 円堂を見くびってはならん!』

の声がNattuHouseに響き渡った。

「誰?」

その声に皆が一斉に緊張すると、

ヌッ!

一人の男子生徒がHattuHouseに姿を見せる。

「ここは部外者立ち入り禁止のはずですが」

彼を見た可憐は立ち上がってそう注意をしようとすると、

「まぁまぁ」

男子生徒は可憐を宥めるような仕草をしてみせ、

「通りがかったら、

 なにやら、円堂、円堂と言う声が聞こえたので、

 立ち寄ってみただけです。

 それにしても生徒会は随分と洒落た場所をお使いのようですね」

と男子生徒はNattuHouseの中を見回してみせる。

「何度も言いますが、

 ここは部外者立ち入り禁止です。

 一般生徒はスグに出て行ってください」

そんな男子生徒に向かって可憐は命令長で言うと、

「いいんですかぁ?

 増子さんにこのことが知られたら、

 立場が苦しくなるのは会長ではないですか?

 ただでさえ、円堂から嘆願書を突きつけられて、

 四苦八苦しているんでしょう?」

と男子生徒は余裕の表情で聞き返す。

「うっ」

彼の言葉に可憐は言葉に詰まると、

「さて円堂対策の会議中に割り込んできたことは謝罪します。

 しかし、奴と同じクラスになった私から言わせて頂くと、

 生半可な手立てを打っては

 却って円堂に有利になるのではないですかな、

 そうですね、小牛田先生」

と男子生徒は話を小牛田に振ってみせる。

「まっまぁ、

 それは確かにそうだな…」

男子生徒の指摘に小牛田はそう呟くと、

「じゃぁ、どんな手を打てばいいの?」

その小牛田に向かって希が尋ねる。

「コホンっ

 そうだな…

 確かに円堂君の言うことも一理あるし、

 とは言っても可憐が言うとおり規則を捻じ曲げてまで選挙をする必要は無い。

 ならば、みんなに聞いてみるのがいいんじゃないかな、

 円堂君の主張が正しいのか、

 可憐の主張が正しいのか」

と小牛田は提案する。

「住民投票みたいなものですね…」

それを聞いた麗がそう結論付けると、

「まっまぁそういうことだな」

肩を窄めて小牛田は返事をしてみせる。

「そうねぇ…」

その提案に可憐は考えるしぐさをしてみると、

「じゃぁ、住民投票にけってーぃ!!」

と希は声を張り上げるが、

「ちょっと、希っ、

 住民投票って言葉はおかしいって」

そう凛は指摘する。

「えぇ、

 じゃぁなんて言えばいいの?」

凛の指摘の希は聞き返すと、

「この場合、

 全校投票…もっとも、集計は生徒の挙手で良いかと思いますが」

とメガネを押し上げつつ男子生徒は提案し、

こうして生徒会役員の再選挙をめぐり全校投票が実施されることになったのあった。



ドンドンドン

ドンドンドン

紅白の縞々柄の衣装を身に着け、

頭に三角帽を載せた人の身の丈ほどの”ネコ”が

背中に”生徒会・全校投票実施”を書かれたのぼりを背負い、

太鼓を叩きながら校内を練り歩いていくと、

壁新聞・沼ノ端通信は一面を使い、

生徒会役員選挙にともなう全校投票についての記事を掲載し、

世論の誘導を図り始める。

「ふっ、なるほど、

 全校投票に打って出たわけですか、生徒会長」

それを見た忠太郎はニヤリと笑って見せると、

徐に携帯電話を取り出し、

「わたしだ…」

の声と共にあるところに連絡を入れる。

そして、

「えぇぃ、

 ダメだ、

 ダメだ、

 ダメだ、

 もっと強くアピールをダメ!!」

トレードマークとなっているメガネを光らせながら男子生徒はメガホンを持ち、

PRビデオ撮影を行う可憐たちに向かって声を張り上げる。

「なんで…

 こんなことを…」

いつの間にか可憐陣営の主導権を握り邁進してみせる男子生徒の姿に皆は困惑するものの、

「でも、面白くて楽しいじゃない」

そう小町が言うと、

「だよねぇ…

 こんな経験そんなに無いものね」

と希もまた同調してみせるが

「でもさ、

 なんか目的がどんどん外れていくような気がするんだけど」

凛は一人眉をひそめてみせる。

そんな可憐陣営のPRぶりに触発されてか、

円堂陣営も潤沢な資金をPRに注ぎ込むと、

全校投票は次第に熱を帯び、

ポスター破りは当たり前のこと、

双方の暴力沙汰や買収など次第にエスカレートし、

さらに人気取りの遊具が競って置かれていくと、

校内は煌びやかなお城や遊具が所狭しと立ち並び、

その間を重武装した両陣営のキャラクター達が一撃必殺の軍事訓練を受ける

カオスな空間へと変貌して行ったのであった。

『なっなんですか?

 これは…』

遊園地と戦場が渾然一体化した校内を眺めながら鍵屋は呆気にとられると、

「余り気にするな鍵屋。

 ちょっと酷くなったがいつものことだ…」

と巫女は涼しい顔をして言う。

『そうは言いましても…

 柵良さん。

 いいんですか?

 こんなことを許しても?』

万が一のことを思いつつ鍵屋は問いたずねると、

「なぁに、

 そのうち飽きるであろう」

と巫女は返し、

そして、迎えた全校集会。

水無月・円堂両軍が相対する中、

可憐、忠太郎が共に壇上で自分への支持を訴える場面へと進んでいったのであった。



「…以上でわたしは図書館の増書の件、

 ならびに、歴史の価値ある旧校舎の整備と、

 要望がもっともありました花壇の設置を行う所存です」

と可憐は今度の行動目標を訴えた後、

下がっていく、

そして、可憐と変わって忠太郎が登っていくと、

「きゃぁぁ!

 円堂さぁぁん!」

と黄色い歓声が沸き起こるが、

忠太郎はそれを無言で制すると、

「僕としてはまず、

 沼ノ端ルネッサンスと銘打った改革を実行していきたいと思います」

と切り出し、

校内秩序の維持のために警察権をもった自警組織の立ち上げ、

徹底した遅刻者の取り締まり、

さらにはメタボ対策のためカフェメニューの思い切ったカロリーの引き下げなどを対案していせる。

「なにぃ!!

 なんじゃぁこりゃぁ!」

それを聞いた生徒達は皆唖然とするが、

「あっただし、

 女子生徒は対象外とし、

 さらに専用のエステサロンなども立ち上げる予定です。

 無論、これらは僕のポケットマネーで運営いたしますので、

 学校には一斉迷惑はかかりません」

と言い切ってみせる。

その途端、

「きゃぁぁ!!、

 素敵、円堂さぁん!」

と言う歓迎の声と、

「こらぁぁぁ!!

 円堂っ、

 何だその露骨な男差別は!!!」

怒号の声が交差し、

追って行われた採決では、

「ふぅ」

「良かったわね、可憐」

と安心してみせる可憐に対し、

「そんな…

 水無月に負けただなんて…」

愕然として見せる忠太郎と明暗を分けたのであった。



こうして全校投票の結果、

生徒会役員は再任され、

「んなっ

 馬鹿なっ」

予想外の結果に愕然とする忠太郎のそばで

「ふっ、

 これでよしっ」

とほくそ笑んでみせる男子生徒の姿があった。

こうして学校内は祭りの後の寂しさを漂わせながらも落ち着きを取り戻し、

翌日には”あの騒ぎなど白日の夢”と言わんばかりの

ごく普通の光景が繰り返されていたのであった。

「はぁぁ…

 今思えば円堂さんのエステに通いたかった気もしますね…」

登校途中の麗がふとそう呟くと、

「なによ、麗は可憐さんが生徒会長から落選しててもいいのと言うの?」

と凛は指摘する。

「いえ、そういう訳は無いのですが」

凛の指摘に麗は膨れて見せると、

「まぁまぁ、

 すべては丸く収まったのだから、

 それでいいんじゃない」

二人の間に小町が割ってはいるが、

「本当に丸く収まったのかな…」

怪訝そうに凛は校門を見つめると、

「えぇいっ、

 この生徒会・A防衛隊の腕章が見えないかっ

 今日と言う今日はお前を取り締まってみせるっ」

「なんだとぉ、

 校門は天下の大通りだ、

 何人たりとも邪魔をすることは出来ないんだぞ」

「異議なし!」

と校門前でいがみ合う忠太郎と2年B組の唐渡以下有志達の姿があり、

「可憐、

 なんだかんだ言っても

 結局円堂さんを生徒会に入れたのね」

日本刀を振りかざして対峙する忠太郎を見ながら小町はそう指摘すると、

「はぁ…

 毒を食らわば皿までも、

 彼を野放しにしておくと何されるかわからないからね、

 それにしてもとんだトラブルの種を背負い込んだものだわ」

と可憐はため息をついて見せるが、

そのNattuHouseから一人の人影が去っていくと、

「生徒会長直下の秘密戦隊…

 うーん、

 色々突っついてみたのだが…

 いまひとつ、証拠がつかめなかったか」

とメガネの位置を直しつつ人影は呟いたのであった。



つづく