風祭文庫・ヒーロー変身の館






「Yes!ぷりきゅあふぁい部」
(第参話:静止した教室の中で)



作・風祭玲


Vol.187





ボゥ…

暗闇に中にククルの姿が浮かび上がる。

『くくくくく…

 ゆかりとか言う人間は実に役に立つ…
 
 こうしておいても仲間を次々と増やしていく…
 
 傷つき、深い眠りについているシルル様の滋養には
 
 カエルとなったあいつ等の身体からわき出る毒が何よりの薬…
 
 さぁもっと仲間を増やしなさい。
 
 我が主・シルル様のためにね』



キーンコーン…

予鈴のベルが鳴り響く教室に生徒達が集まってくる。

「おっす」

教室に入ってきた田所正一郎は友人である向坂武に声を掛ると、

「おはよう」

と武はいつもと変わらない表情で返事をする。

「何を見ていたんだ?」

ニヤッと笑いながら

正一郎は武が広げていた資料について尋ねると、

「あぁ生徒会の資料だよ、

 もうそぐ卒業式だし、

 先輩達には晴れやかに式を迎えて欲しいしね」

「そっか卒業式はもぅ間近か…」

武の言葉に正一郎は天井を眺めながら呟くと、

「卒業式に入学式…生徒会は大忙しだよ」

両肩を寄せながら武が答える。

それを見た正一郎が

「そう言えば、この間の大会優勝したんだってな」

と話を剣道の話題に振ると、

「まぁな」

胸を張らずに武は返事をした。

「もっと胸を張れよ、

 大したものだぞ」

そんな武の肩を正一郎は叩く、

すると、

「お前だって、陸上の大会で記録を出したんだろう?

 そっちの方が大したものだと思うけどな」

と武は短距離の記録を出した正一郎を称えた。

と、そのとき、

「なぁ…」

正一郎が何かに気づいたようにぐるりと教室を眺めながら声を掛けると、

「なに?」

武は彼の顔を見上げる。

「気のせいか知らないが、

 最近…女子の様子ちょっと変じゃないか?」

「え?、

 そうか?」

「あぁ…、

 ほら、この間まではキャーキャーワーワーとやかましく騒いでいたのに

 何故かみんなおとなしくかしこまってイスに座っていやがる、
 
 その上、表情も心はここにあらずって感じで…」

と教室内の女子生徒の姿を見ながらそう呟いた。

しかし、

「まぁ、卒業式も近いから、

 そのせいなんじゃないか?」
 
トントン!!

気にしない様子で生徒会の資料をまとめながら武は答えると、

「はぁ、そう言うものかなぁ…」

彼のその言葉に正一郎が小首を傾げながら、

改めて女子の様子を眺めていると、

プリ…

ムニムニ…

「(ゲコッ)!!」

一人の少女が小さく声を上げ、

あわただしく教室の外へと掛けだして行った。

「なんだぁ?」

腑に落ちない表情で正一郎は掛けだしていった女子の後ろ姿を眺めるが、

しかし、それ以上のことに気が付くことは無かった。



ウック…

ウック…

その頃、ゆかりは自宅の布団の上で苦しみ、

モリモリ…

モリモリ…

彼女の大きく膨らんだ腹部が呼吸に合わせて上下に動いていた。

ハァハァハァ…

「苦しいよぉ…」

脂汗を流しながらゆかりは苦しんでいると、

『何をして居るんだ、

 そんなところで…』

魔本と共にあらわれたククルがゆかりの頭もとに立つと声を掛ける。

「あっ、ククル様…

 くっ苦しい…です」
 
悶絶をしながらゆかりは頭を上げると、

『ははん…そうか、

 お前は産卵の時期を迎えているのか』

としたり顔で言う。

「産卵?」

ゆかりが問いかけると、

『そうだ、前にも言ったがお前は人間のふりをしているカエルだ、

 時期が来れば産卵をするのは当たり前だろう』

そうククルが指摘すると、
 
「そんな…産卵だなんて…」

指摘されたゆかりは頬を赤らめて顔を背けた。

『いやか?、

 じゃぁそのまま増え続ける卵で腹が裂けるのを待つんだな、

 まぁ、お前のお陰で代わりのものはいくらでも居るんだからな』
 
ゆかりに向かって悪戯っぽくククルが言うと、

「わっ判りました…

 生みます、

 卵を産みます」
 
慌ててゆかりは答え、

グッと力んで見せる。

その途端、

『バカっ、

 オスと交尾をしないで産卵が出来るわけ無いだろう』

ククルが呆れた顔で指摘すると、

「え?、

 交尾?」

『そうだ、雄と交尾して産卵をする。

 当たり前のことだろう』
 
「そんな…交尾だなんて」

さらに顔を赤くしてゆかりはククルから顔を背けると、

『なんだ?、

 出来ないのか?

 じゃぁ、腹が裂けるのを待つことだ』

ククルはそう言うとゆかりに背を向けた。

「あっ、待って、

 します交尾をします。

 で、ですから」

それを見たゆかりは上半身を持ち上げてククルに言ったが、

フッ

ククルはそれには何も答えずに姿を消してしまった。

「あっ…」

パタン…

ククルが姿を消した後、

ゆかりは再び布団の上に倒れ、

「交尾ってセックスの事だよね…

 ……向坂クン…わたし、あなた……が欲しい…」

ゆかりはさらに膨らみを増した腹に手を置きながらそっと呟いた。



パン!パン!パン!

メーン!!

バシッ!!

放課後、

剣道防具に身を固め稽古をしていた二人の剣士の片方が鮮やかに面を決めた。

「(プハッ)いやぁ向坂、

 相変わらず鋭いな、

 お前…」

「えぇ、

 先輩達にしごかれましたから」

進路を決め卒業前に久方ぶりに汗を流しに来た3年生と対峙した武は

防具を取りにこやかに答える。

「あははは…

 でも、こうしてお前をしごいてやるのもコレが最後だな」
 
3年生はそう言うと稽古をしている他の面々を眺めた。

すると、

「!……なぁ」

何かに気づいたのか3年は武に声を掛け、

「はい?」

「最近……女子達の様子おかしくないか?」

朝、正一郎が言ったことと同じ事を武に言う、

「そうですか?」

再び言われたその言葉に武は小首を傾げながら

白い道着姿をした女子部員達の様子を見ると、

確かに彼女たちから覇気が感じられなかった。

「う〜ん…

 そうですねぇ…
 
 確かに覇気がないですねぇ」

女子部員を眺めながら武がそう答えると、

「だろう?

 なんだか気が抜けていると言うか…」

と3年が言ったところで、

「コラァッ!!、

 なんだその気の抜けたざまは」

顧問の幸島が気合が入らなさそうな女子部員達に向かって怒鳴り声を上げる。

「ほら、幸島のカミナリが鳴ったぞ」

それを見た3年はクスッ小さく笑ってみせるが、

「ホント…どうしたんだ?、

 彼女たちは」

腑に落ちない表情で武は呟いた。



「ふぅ…」

部活を早めに切り上げた武が

更衣室で稽古の汗がしみ込んだ道着を脱いでいると、

カチャッ…

部室のドアが微かに開いた。

「誰か来たのかな?」

響き渡った音に武はそう思っていると、

「向坂クン…」

っと突然か細い女性の声が更衣室に響く。

「女の子?」

不審に思いながら声のした方を見ると、

ロッカー越しに長い髪を下に垂らした女性の顔が半分だけ覗いているのが目に入り、

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

それを見た武は思わず声を上げると、

ズザザザザザザ…

すかさず間合いを取った。

「だっ誰だ!!」

ふるえる手で竹刀を取り、

スッと構えながら尋ねると、

ジッ…

少女の顔はそこから動かずただ武を見つめていた。

「こっココは剣道部の男子更衣室だ!!

 女の子が入ってくるところではない。
 
 すっスグに出ていってくれ!!」
 
動かない少女に向かって武は声を上げると、

「向坂クン…あたし…あなた事が好きです…」

と少女は呟く。

「え?」

思いがけない言葉に武は呆気に取られると、

「だからあたしとしてください…」

と言いながら少女は武の前に出るが、

だが、

「うっうわっなんだ!!」

少女の姿を見た途端、

武が叫び声を上げた。

そう、少女は衣服を一切身にまとっていない全裸であり、

さらにその腹部が異常に膨らみ切っていたのであった。

「(はぁ…)

 あたしもぅスグ産卵しなくてはいけないんです。

 だからどうしても向坂クンと交尾をしたいんです」
 
そう呟きながらゆかりは武に迫る。

「なっなんだ」

尋常でない少女の姿に武は身に危険を感じつつ一歩ずつ下り、

決して竹刀の切っ先を少女からは離さなかった。

この場でスグにその竹刀を振り下ろせばいいのだが、

しかし、全裸の女性に対して竹刀を振り下ろすことは出来ず、

武は徐々に追い込まれて行った。

「きっきみは、誰だ!!」

怯えながらも武は少女に名前を訊ねると、

「(ハァ)…あっあたし…2年C組の指田ゆかりです」

とゆかりはか細い声で返事をした。

「C組の指田ぁ?」

その声に武は大急ぎで頭の中のデータベースにアクセスを試みたが、

そのような名前の女の子は引っかからなかった。

無理もあるまい、

ゆかりは男子からはほとんどその存在を消されていたのである…

一歩ずつ間合いを詰めていくゆかりと武。

トン!!

武の身体が部室の壁にあたったとき、

もはや彼には逃げ場がなかった。

そしてそれを見透かしたかのようにさらにゆかりは近づいて行く。

「うわぁぁぁ」

ついに恐怖に負けて武が竹刀を振り下ろすと、

フッ

ゆかりは人間とは思えない早さで竹刀をかいくぐり、

ギュッ!!

一気に武に抱きついた。

夢にまで見た武の体臭がゆかりの鼻をくすぐるが、

しかし、ゆかりにはその臭いをかぎ別ける力は無く、

代わりに、

ムゥ

気味悪い生臭い臭いが武を包み込んでいた。

「臭い…」

剣道の稽古後の臭いよりも強烈なゆかりの臭いに武は思わず顔を背けるが、

チャンスとばかりにゆかりは武の身体を押し倒すと、

すぐに彼女の手が素早く彼の袴の中に潜り込み、まさぐりはじめる。

「うわぁぁぁ」

袴の中に入ってきた手に武は驚き脚をバタバタとして抵抗したものの、

袴の下には何も身につけていなかったために、

ギュッ!!

たやすく彼のペニスはゆかりの手中に収まってしまった。

すると、

「あった…」

ゆかりは笑みを浮かべながら袴の中より汗まみれのペニスを取り出し、

即座に頬張ってみせる。

ぺチャッ

ピチャピチャ

卑猥な音が部室にこだまし、

「あぁ、向坂クンのを舐めているんだわ…あたし…」

彼女の心は徐々に腹の中の卵に乗っ取られていく

「……早く

 早く、

 男の…

 雄の精を……」

身体の奥から突き上げてくる欲求を、

ゆかりの理性は止められなかった。

チュクチュク…

ゆかりは巧みに頭と舌を動かして攻め続けていると、

「あっあぁ…」

繰り返し襲ってくる快感からか、

ムクムクと武のペニスは膨らみだし、

一方、ゆかりの性器は分泌物で溢れかえって行く。

ぷはぁ…

口を離しいきり立つ武のペニスをジッと眺めたゆかりは、

スッ

徐に股を開くと彼を自分の体内へと招き入れる。

「うっ」

破瓜の痛みが彼女を襲うが、

しかし、産卵を間近に控えた卵に理性を乗っ取られているゆかりはスグに腰を降り始めた。

グチュ…グチュ…

淫らな音が更衣室に響き渡り、

「やっ止め…あっあぁぁ!!」

武は抵抗を見せるものの次第に快感に酔いしれはじめた。

ンック…ンック…

ゆかりも痛みが快感に代わり徐々にあえぎ声を上げはじめる。

すると、

プリッ!!

ムニムニムニ…

彼女の身体が徐々にカエルへと変身しはじめだした。

「あぁいい…いくぅ〜」

「うおっうおっ」

武は思わず目を見張った。

自分の体の上で腰を動かしている腹が大きく膨れたゆかりが

見る見る粘液に包まれた毒々しい色の肌に覆われ、

さらにその手足が両生類のようなものに変わっていくのを…

「うっわぁぁぁ!!」

武はカエルに変身してしまったゆかりと突き飛ばすと、

這いずるようにして表に逃げ出した。

だが、いつの間にか更衣室の周囲には道着姿の女子剣道部員を筆頭に、

レオタード姿の女子体操部員やブルマ姿の女子バレー部員達が取り囲んでいて、

無言で武を見詰めている。

「なっなんだ君たちは…」

彼女たちの異様な様子に武は恐れおののいていると、

ゲコッ

少女達の口からカエルの泣き声を思わせる声が響くのと同時に、

プリ…プリ…

ムニムニムニ…

見る見る彼女たちの身体が毒々しい色の肌に覆われたカエルへと変身しはじめた。

「うっうわぁぁぁ!!」

それを見た武は声を上げると道着の乱れも気にせずに一目散に逃げ出し、

ハァハァハァ…

「一体どうなって居るんだ!!」

乱れた道着を直す間もなく体育館に飛び込んでみると

そこで信じられない光景が繰り広げられていたのであった。

体育館の至る所で

部活で残っていた男子部員達が押し倒され、

その上ではカエルの姿になった少女達が盛んに腰を振っていたのであった。

そして、

『グエッグエッ!!』

少女達はカエルのうめき声を盛んに上げると、

『グェコ

 グェコ』

体育館の中にはカエルの泣き声がけたたましく反響し始めた。



「なっなんだよう…これは…」

カエルの巣窟と化してしまった体育館から一歩また一歩と武は下がると、

グニィッ

武の背中が何かにぶち当たる。

「え?」

その感触に恐る恐る振り返った途端、

「捕まえた(ゲコ)」

の声と共にカエルと化したゆかりが飛び掛り

その勢いで一気に武を押し倒した。

っして、武の上に圧し掛かると

「はっ離れろ!!!」

抵抗をする武のペニスはゆかりの胎内に飲み込まれてしまい、

「うっうわぁぁぁぁぁ!!」

悲鳴を上げながら彼がゆかりの胎内に己の精を放ったとき、

ムニムニムニ…

武の身体は胸が膨らみペニスが消えて行く、

そして見る見る毒々しい肌に覆われていくと、

「あっ!

 あっ!

 あぁぁぁぁ(グェコ)」

武は自分の身体がメス化していくのと同時に

カエルへと変化していく快感に酔いしれていたのであった。

そう、精を放った男は魔女の術によってカエル女へと変身していくのである。



「グェコ…

 グェコ…」

すっかりカエルと化し、

カエルの鳴き声を上げ始めた武からゆかりは身を離すと

大きなお腹を抱えながら

ゴロゴロゴロ…

ザァァァァァ…

雷鳴と共に俄かに降り出した降り出した雨の中、

学校近くの沼へと歩きはじめる。

「うぅっ…生まれる…」

ムニュッ

池へと向かう彼女の脚にゼラチン質の粘膜に包まれた卵が一個、

また一個こぼれ落ちてゆくが、

しかし、そんなものには構わずにゆかりは池へと向かって行く。

そして、

チャプン!!

沼の中へと飛び込んでしまうと、

ムリュムリュムリュ…

まだ冷たさが残る水の中で産卵をし始め、

自分の身体からゼラチン質に包まれた卵の帯が静かに伸びていくのを感じながら、

「あはぁぁぁぁ

 生まれる

 あぁ生まれるぅ」

ゆかりは身も心もカエルへと変身して行ったのであった。

そして、

『はははは…

 そうそう、
 
 ちゃんと産卵が出来るじゃないか、
 
 ゆかりよ、

 その勢いで仲間を増やすんだぞ』
 
産卵するカエルの姿をククルは満足そうに眺めていたのであった。



つづく