風祭文庫・ヒーロー変身の館






「ウルトラモンスターGo!」


作・風祭玲

Vol.1120





『やぁ、全宇宙の良い子のみんな。

 元気にしているかな。

 この宇宙にはウルトラモンスターと言う不思議な生き物がたくさん生息している。

 私はこの宇宙の中心・ナンバシティで

 ウルトラモンスターを研究し、全モンスターを収めた図鑑を作っているアワザ博士だ。

 さぁ、太陽系第3惑星の良い子たち。

 わたしと共にウルトラモンスターの図鑑を作ろうではないか』



「はーぃ、今から15分休憩にしまーす」

祝日の午前、

とある学園の体育館に休憩を告げる声が響き渡ると、

「ふぅ」

息を抜く声がゆっくりと広がり、

柔軟運動に汗を流していたレオタード姿のの少女たちが

手にしたタオルで汗を拭きつつ次々と体育館から出て行っていく。

だが、その中に

「はぁ…」

汗が滴り落ちる床に突っ伏して見せる一人の少女があった。

戸苅真理

この学園の高等部1年生であり

身につけているレオタードもまだ真新しい新体操部の新米部員であった。

「よっ、

 お疲れのようだな」

床に突っ伏したまま動かない真理に向かって外から声が響くと、

レスリングシングレットに身を包んだ快活そうな少女・荒野美玖が

開け放たれているドアの間で仁王立ちになって立ち笑みを見せていた。

「なによぉ」

美玖を一瞥しながら真理は鬱陶しそうに返事をすると、

「おやおや、

 新体操部員ともあろうお方が

 柔軟程度でそのザマですかぁ」

と美玖はワザとらしく呆れた顔をして見せる。

「柔軟がキっツイんだから、

 仕方がないでしょ」

「それを知っていて、

 新体操部に入ったんだろう。

 やっぱりお前には無理だって」

「うるさいわねぇ」

「大けがしないうちに

 あたしにはやっぱり無理です。

 って部長に頭を下げて部をやめたら?」

「大きなお世話。

 もぅ、あっち行って!」

上半身を起こした真理は

じゃれ付く子犬を追い払うかのように手を払う仕草をし

「あたしに構うより、

 そっちのレスリング部の練習はどうしたの?」

と聞き返した。

「あぁ、

 どいつもこいつも

 あたしのレベルには達していなくてね。

 暇になったから抜けだしてきた」

「だったら、なおさらあたしを構うんじゃなくて、

 男子に練習開相手お願いすればいいじゃない?」

「男子はとっくに攻略済み」

「はぁ?」

「柔道部・空手部・相撲部・茶道部、

 どいつもこいつも弱すぎる。

 霊長類最強の女子高校生であるわたしの血をたぎらせる

 強い奴はいないのかっ」

美玖は相手がいない不満をぶつけるように声を張り上げると、

「付き合っていられないわ」

真理は呆れ半分にそう呟くと腰を上げた。

と、その時。

グォォォォォン!

空を切り裂く大音響が響き渡ると、

カッ!

外から体育館の中いっぱいに光が差し込んだ。

そして、その直後、

ズンッ!

学園と敷地が接している森に何かが落下し、

それによって発生した衝撃波が体育館の壁を大きく揺らしたのである。

「きゃっ!」

「なんだろう?」

突然のことに他の部活を含めた生徒たちはみな驚き、

キノコ雲が沸き立つ森へと向かい始めるが、

「こらぁ、

 生徒は校舎の中に入っていろ」

そんな生徒たちを飛び出してきた教師達が制しつつ、

様子を見に数人の教師が森へと向かって行く。



「あたしたちも行ってみようぜ」

興味津津に美玖が行こうとすると、

「だめよっ、

 いま先生が生徒は校舎の中で待機って言っていたでしょう」

と美玖の腕を引いて真理は注意するが、

「こんな面白いこと、

 先生たちに独占させられるかっ」

真理の手を振り払って美玖はシングレット姿のまま森へと向かっていった。

「あぁ、

 もう」

そんな美玖を放ってはおけない真理もまた彼女の後を追いかけていくと、

爆心地では高さ10m近い青く輝く丸餅のような巨大物体が

森の木々を押しつぶして鎮座していたのである。

「すげーっ、

 なんだあれは?」

嬉しそうに美玖が声を上げると、

「こらぁ!

 生徒はここに来るなと言っただろうが」

彼女を追い払うように教師が怒鳴りながら近づいてくる。

「ちょっとぐらい(あらよっ)

 いいじゃないか(フォールッ)」

「ぎっぎぶあっぷ!」

瞬く間に美玖がレスリング技で教師を往なしてしまうと、

「先生に何やっているのっ

 美玖ぅっ

 ここは危ないのっ!

 もぅ戻るわよ」

追いついた真理は怒りながら手を引っ張ろうとする。

すると、

「ん?

 んなぁ、

 こいつ今動かなかったか?」

と美玖は輝く丸餅を指差した。

「はぁ?」

その声に真理が振り返ると、

ビクン!

丸餅が鼓動するように動いてみせる。

「ひぃ!」

「ほら、やっぱり動いているよ」

「きっ気持ち悪い」

真理は気味悪がるが美玖はそんな真理の手を引き、

ピクピクと脈動を始めだした丸餅へと近づくと、

躊躇いなくその表面に手を触れて見せる。

「やめなさいって」

それを見た真理が美玖の手を引くために思いっきり引っ張るが、

「やだ」

駄々をこねるように美玖がその場で足を踏ん張ってしまうと、

「きゃっ」

ベチッ!

バランスを崩した真理が丸餅に張り付くように激突するのと同時に、

ヌルンッ!

あっけなく丸餅の中へと取りこまれてしまったのである。

「真理ぃ」

それを見た美玖が真理を捕まえようと丸餅にアタックするや、

ヌルンッ!

美玖もまた易々丸餅の中へと取りこまれてしまったのであった。



『どうなっているんだ、ここ?』

『さぁ?』

丸餅の中は不思議な液体で満たされていて、

それらが呼吸を助けるのか、

二人は息苦しさを感じることなく餅の内部を探検していく。

すると、

『ようこそ、

 ウルトラモンスターの世界へ』

の声と共に一人の男性が二人の前に立った。

『誰だ、あんた』

突然の出現に驚いた美玖が真理を庇うように尋ねると、

『私か?

 私はこの宇宙の中心・ナンバシティで…』

と自己紹介を始めたところで、

『真理、行くよ』

彼の話に聞く耳を持たないのか、

美玖は真理を促して表に出て行こうとする。

『あぁ、ちょっとっ待って、

 まだ、説明が終わってない』

慌てた男性が二人を呼びとめるが、

『悪いけどここじゃ落ち着いて聞けないよ。

 話があるなら表で聞くから、

 じゃっ』

と美玖は言い残して、

ヌルンッ

丸餅から出ていってしまったのである。



「話を聞かなくてもいいの?」

「あぁ言うのがサギの手口だ。

 ヤツの土俵の中で話をするな。

 十中八九、金を取られる話だからな」

不安げな真理に対して美玖はそう言うと、

「あれ?」

振り返った真理は丸餅の上より

紫色の煙のようなモノが吹き上がっていることに気づいた。

「なんだ?」

「ついさっきまでは無かったよね?」

「気がつかなかったけど」

そんな会話をつつ二人は学校へと戻っていくが、

「みっみんな!」

「どうしたんだこれは?」

戻ってきた二人を待ち構えたいたのは

意識を失い倒れている人々の姿だった。

「一体、

 なにが起きているの?」

この状況を見た真理は怯えると、

「ん?

 なぁ真理

 それは何?」

と美玖は真理の胸元に張り付く直径5cmほどの半球状の物体を指す。

「やだ、

 なにこれぇ!

 このレオタードまだ新品なのよっ、

 変なモノをくっつけたらママに叱られる」

それに気か付いた真理が泣きべそをかくように物体を引き剥がそうとするが、

いくら引っ張っても取れるものではなかった。

すると、

フヨフヨウヨ

丸餅が吹き上げる煙の中より円盤型の物体が姿を見せると、

ゆっくりと舞い降りて来た。

と同時に

『えーっ只今、

 お香の発動を確認しました』

と言う声が円盤から響いた。

「うわっ

 今度は円盤?」

イヤそうに真理は言うと、

「円盤ってことは宇宙人かぁ」

目を輝かせて美玖は言う。

「何をのんきに」

「でも、ちょっと小さくね?」

「まっまぁね」

直径10m以上はあると思われる煙を噴き上げる物体とは反して、

直径30cm程度の円盤の大きさのギャップに二人は戸惑うと、

『えぇっと、

 この星のプレーヤーはあんさんたちでえぇんかぁ?』

と円盤から問い尋ねる声が響いてきた。

「しゃべった!」

思いがない問いに真理は驚くと、

「プレーヤーってなんだよ」

と美玖は聞き返す。

『もぅ、あんさんら、

 説明している途中でそそくさと退席してしまうから、

 順番がめちゃくちゃや。

 人の話は最後までちゃんと聞く。

 えぇかぁ?

 もぅ”お香”を発動させてしまったから、

 先進めさせてもらうで、

 ほな。

 ウルモンGo!

 始めるで』

と二人に向かって円盤は言うや、、

ブルツ

真理の胸に張り付く物体が大きく振える。

キャッ!

突然の事に真理は驚くが、

さらに驚く事態が彼女を待っていた。

ギュォォン!

ズシーン!

再び何かが舞い降りる音が響くと、

ギャォォォン!

雄たけびを上げる巨大怪獣・コイキングならぬ

レッドキングが聳え立ったのであった。



「何、あれ?」

怪獣が投げ落とす巨大な影の下より呆然と見上げながら二人は呟くと、

『何、ぼさっとしてますねん。

 プレーは始まっているんですよぉ、

 さっさと戦いなはれ』

と円盤はけしかけてくる。

「戦いって?」

「おいっ、

 あの怪獣はなんだよ」

相変わらず状況が飲み込めていない真理に対して、

美玖が円盤に食ってかかると、

『ノンノン!

 あれはポケモンなんて言うチンケな怪獣やおまへん。

 泣く子も黙るウルトラ怪獣”ウルトラモンスター”や!』

と円盤は胸を張って見せる。

そして、

『で、あんさんらは、

 あのウルトラモンスターをご自身の手で生け捕り、

 モンスターボールに封じ込めた上で、

 宇宙の中心、M78星雲にあるナンバシティで

 ウルトラモンスターの研究をしているアワザ博士の下に送る。

 それがプレーヤーのノルマや』

と説明を続ける。

「いきなりそんなこと言われても」

その説明に真理は困惑してみせるが、

「そうだ、

 この手の怪獣はTSFに電話して退治してもらいましょう」

と提案してきた。

しかし、

『プレーヤー以外がウルトラモンスターを封じることは出来まへん。

 ウルトラモンスターを封じることができるのは

 プレーヤーであるあんさんたちのみ!』

と円盤は警告する。

「えーっ、

 あんなでっかい怪獣をどうやって倒すのよ」

円盤に迫って真理が聞き返すと、

『そっちの嬢ちゃんの胸に付いているもの、

 それを使うんや』

「これ?」

円盤に指摘されて真理があの水晶を掲げて見せると、

『それに手を当てて、

 しゅわっちっ

 と叫びなはれ』

と円盤は言う。

「こう?」

言われたまま真理はレオタードの上に張り付く物体に手を当て、

「しゅわっち」

と叫ぶと、

ぎゅぉぉん!

「きゃっ!」

周囲の視界が一気に縮小しながら真理の視線の下へと動き、

『え?』

『え?』

『えぇ?』

周囲の景色がすべてミニサイズになってしまった世界の中に真理は立っていたのであった。

「おぉ!

 すげぇ!

 真理がまるでウルトラマンみたいだ」

巨大化した真理の足元で見上げながら美玖は興奮した口調で言うと、

『え?

 あたしが大きくなったの?』

周囲の変化から真理は自分が巨大化したことを実感するが、

『ぎゃぉぉぉん』

目の前のウルトラモンスターが雄たけびを上げ、

真理に向かって突撃してきた。

ズドンッ!

地響きが響き渡り、

ウルトラモンスターの直撃を受けた真理は吹き飛ばされるが、

日頃の練習のお陰か、

クルリと回転しながら着地をして見せる。

『レッドキング・カイシンの一撃!』

その様子を円盤は得意げに解説してみせるものの、

「残念。

 真理にはあまり効いてはいないみたいだな」

腕を組む美玖が指摘する。

そして、

「あぁ、もぅ見てられねぇ、

 おいっ、宇宙人っ!

 あたしにアレをやらせろ!」

と自分を指差して美玖が迫った。

『えぇ!

 あんさんが…ですか?

 うん、まぁ確かにぃ

 あの嬢ちゃんよりもあんさんの方が多少ケンカには慣れているようですな。

 よっしゃ。

 じゃぁ選手交代』

シングレットに浮かび上がる腹筋の影をスキャンしながら円盤は呟くと、

ポンッ!

美玖のシングレットの胸元に

真理の胸元に付いていたものと同じ物体が張り付いた。

「これは?」

『ウルトラモンスターGo!の参加章。兼、

 ウルトラモンスターが接近した時の検出器。兼、

 ウルトラモンスターとのバトルをするときのタイマー。

 念のために言っておきますが、

 ウルトラモンスターとのバトルは3分以内で終わりにしなはれ、

 開始から2分経ったらそのタイマーが赤く光って警告音鳴りますから、

 さっさと、モンスターボールで閉じ込めな。

 無理やったらおとなしく出直し』

と物体について説明をする。

「ふーん、

 こっちの試合時間は3分か、

 OK、上等じゃないか」

話を聞いた美玖は握った右手の拳で開いた左手の掌を叩くと、

「さっさと交代させてくれ」

と急かした。

すると、

シュポンッ!

フラフラになりながら立ち上がった真理の体が光に包まれるや、

縮みながら美玖の前に戻ると、

「お疲れぇ、

 ここからはあたしにまかせな」

戻った真理の肩を叩いて美玖が言い、

「しゅわっちっ!」

その声を共に巨大化していった。

『おら、そこのウルモン!

 今度はこのあたしが相手になるぜ』

腰を落として美玖が構えると、

『ぎゃぉぉぉん!』

『どりゃぁぁぁ!』

ウルトラモンスターと美玖とのバトルが始まったのである。



戦いは序盤、モンスターからの攻撃が立て続けにヒットし、

不慣れな美玖は防戦一方だったが、

だが、肉弾戦はお手の物である美玖にとっては

この程度の劣勢はピンチでは無く、

次第に要領を得てくるとモンスターの動きを封じたのである。

すると水を得た魚のごとく美玖はモンスターを叩きのめし始めた。

「うわぁぁぁ」

その様子を真理は見ていたが、

「え?」

あることに気付くと、

「ちょっとぉ」

円盤を呼んだ。

『なんや、

 何か用か?』

面倒臭そうに円盤が返事をすると、

「大きくなるって、

 何かに変身するんじゃないの?」

素のまま巨大化した美玖を指差した。

『変身?

 なんや?

 それは?』

「だからぁ!

 こう髪の毛が伸びて、

 フリル満載の衣装で素性をごまかすとか、

 仮面で素顔を見せないようにするとか、

 光学的な迷彩をして見せるとか、

 こう、個人情報が判らないようにはなってないの?」

『そんなことしても意味ないやろ』

「意味がないって」

『ウルモンのプレーは正々堂々。

 ツラ晒してこその快感や』

「えーっ、

 なにそれぇ!

 じゃぁ、なに?

 あたしはこの格好のまま大きくなっていたの?」

『ごちゃごちゃ五月蠅い。

 あぁっと、そろそろ交代ですな。

 ウルトラモンスターは散々可愛がられてフラフラや、

 お強いでんなぁ。

 さぁ締めは嬢ちゃんに任せたで、

 華麗に決めなはれ。

 モンスターボールを使えるのは

 プライマリ・プレーヤーのあんさんだけやさかいなっ』

と円盤は言うや、

ビクンッ!

真理の胸の物体が震えるや、

「しゅわっちっ!(いやぁぁぁぁ)」

半ば無理やり美玖と真理が交代させられた。

「はぁはぁ

 さすがはウルトラモンスター、

 ホネのある奴だったぜぇ。

 おーぃ、真理ぃ、

 最後は任せたぞ」

肩で息をしながら戻った美玖は声援を送ると、

『えっ

 えっ

 えぇ!』

近くの高層マンションの窓ガラスに映る自分の姿を見た真理は

恥ずかしさで棒立ちになってしまう。

「もぅ何をやっているんだよ。

 ウルトラモンスタをモンスターボールに閉じ込めるんだ」

もどかしさを感じつつ美玖は声を上げるが、

『ぎゃぉぉん』

真理が動かないことを察してかウルトラモンスターが逃げ始めだした。

「おいっ

 モンスターが逃げるぞぉ!

 逃がしたら承知しないぞぉ」

それを見た美玖が声を出すのと同時に、

『判ったわよっ

 もぅ、

 どうにでもなぁれぇ!』

そう怒鳴りながら真理は大きく振るかぶる素振りを見せると、

ブンッ!

彼女の手の中にモンスターボールが姿が見せる。

そして、それを思いっきり握りしめると、

渾身の力で投げつけた。

シュッ!

ガツンッ!

真理の手を離れたボールはウルトラモンスターの頭にヒットすると、

たちまち口を開き、

シュポンッ!

瞬く間にモンスターをボール内へと飲み込んでしまうと、

ズシンッ!

地上へと落下する。

そして、

ギシギシ

ギシギシ

ギシギシ

3回きしみ音を上げたのち、

シュワァァァァ!

噴水のような光を放ちながら消えてしまったのであった。

『お疲れさん。

 アワザ博士の処に無事転送されたようやな。

 どんなウルトラモンスターだったのかは

 あとでお知らせしますわ。

 ほなな。

 これからも頑張ってーや』

その言葉を残して円盤が上昇していくが、

『ちょっと待った』

巨大化したままの真理が指先で円盤を掴むと、

『あたし達、

 これからもこういうことを続けるの?』

と聞き返す。

『そりゃぁまあ、

 ウルトラモンスターは全宇宙で人気のコンテンツですしぃ、

 それに、あんさんらあそこでお香を焚いているでしょ』

『お香?』

『あそこで煙を噴き上げているの。

 あれはウルトラモンスターを呼び寄せるお香ですねん。

 お香を焚いたらそりゃぁもぅ効果てきめんや。

 ウルトラモンスターがぎょうさんこの星に押しかけますよって、

 だから頑張って封印して、アワザ博士に送ってや。

 そうそう、モンスターボールが足りなくなったら、

 お隣の星にウル・ストップを設定したさかい、

 ボールはそこで差し上げます。

 適時取りに行ってや。

 ほな、サイナラ』

シュパッ!

円盤はその言葉を残してワープをしたのか、

真理の手の中から消えてしまった。

『なにそれぇ』

力が抜けたのかへたりと真理はその場に座り込むが、

「よっしゃぁ、

 しばらくは退屈しないぞ」

美玖は反対に闘志を燃やしはじめていた。



『ふぉふぉふぉ!』

森の中から雄たけびと共にウルトラモンスターが姿を見せると、

「真理ぃ!

 出撃だぁ」

カラータイマーが付いたシングレット姿の美玖が教室に駆け込んでくる。

「戸苅ぃ、

 すぐに片付けてくるんだぞ」

教鞭を取っていた教師が真理を指してそう言うと、

「はい」

カラータイマーが付いたレオタード姿の真理が立ちあがり、

ヒソヒソ

と小声の話声が響く教室から逃げ出すように飛び出していった。

そして、

『あんたのせいで、こんな目にぃ〜。

 あたしの日常を返せぇ』

この日の戦いは真理の怒りがさく裂したのか、

美玖の出番がほとんどないままウルトラモンスターは

モンスターボールに封印されたのであった。



『やれやれ、

 あの星ではウルトラモンスターによく似たゲームが流行っている。

 そう聞いたので寄ってみたけど、

 あの現住民は理解出来てなかったな。

 そんなに流行っては無かったのか?』



おわり