風祭文庫・ヒーロー変身の館






「侵略者」


作・風祭玲

Vol.282





時は西暦20XX年、怪獣や宇宙人の襲撃が多発し地球では

それに対応する為に国連の外部組織【地球防衛軍】が組織され、

その任に当たっているのだが…



草木も眠る丑三つ時…

ギュォォォォォォォン!!

突如夜空に轟音がとどろくと、

真っ赤な流れ星が長い尾を引いて夜空を駆け抜けていく、

ゴォォォォ!!

周囲に衝撃波をまき散らしながら

流星が地表近くに達したとき、

パッ!!

弾き飛ばされるかのように流星から

小さな流星が別の方向に向かって飛び出していった。

そして、

ズドォォォォォォォン!!!

大音響と共に発生した衝撃波が夜の街を駆け抜けていった。



「ふわぁぁぁ…昨夜は大騒ぎだったな」

「おう、隕石が森林公園に落ちたんだってな」

「はぁぁぁ」

街を行き交う警察や消防の車両を横目で見ながら

俺は駅のホームで友人のタダシと落ち合うと入線してきた電車に乗った。

バラバラバラ!!

マスコミのヘリがやかましく飛び回り、

緊急出動した地球防衛軍の車両もチラホラと見える。

「それにしても隕石とはねぇ

 また怪獣が現れるのかな?
 
 まっ怪獣が出れば

 ウルトラナインが何とかしてくれると思うけど、

 そう言えば最近ウルトラナインあまり見かけないな…」

冷房の利いた車内で俺は森林公園の方を眺めながらそう言うと、

「なぁ、お前の所には欠片が落ちてなかったか?」

タダシが興味津々に聞いてきた。

「そういえば…」

けさ家を出たときに、

玄関脇に落ちていた小さなカプセルを拾ってきたことを思い出した。

コリッ

ズボンのポケットの中にあるそのカプセルを手で触りながら、

「さぁ?」

と返事をするといつの間にか俺の視界には一人の女の子の姿が映っていた。

「また逢いましたね、旦那…」

「うるせぇ」

白薔薇女学院の清楚なセーラー服を身につけた少女の名は”カノウミホ”と言うらしい。

と言うのもその情報も彼女から直接聞いた訳ではなくて、

人づたいに手に入れた情報だった。

「白薔薇女学院…

 いぃねぇ…

 あんな娘とお友達になれたら、

 明日からバラ色の人生だね、

 でも、少々値段は張りまっせ、旦那…

 どうです?

 毎日、ガラス越しに眺めて居るんじゃなくてアタックをしてみては?」

俺の肩に腕を乗せながら正は悪魔の囁きような台詞を吐くと、

「そんなこと判ってるよ」

俺は彼の腕を払いながら怒鳴った。

とその時、

彼女と俺の視線がピタリとあった。

「えへへ…」

俺は思わず愛想笑いをするが、

しかし、彼女はツンとそっぽを向いてしまった。

「一本!!」

正の声が俺の耳に響く、

「豪快な背負い投げでしたね、

 これで何連敗ですか?」

「うるせぇ!!」

俺はそう叫びながら正を羽交い締めにしていた。



「はぁ…朝も早くから元気な人ね…」

車中のミホは二人の男子高校生のふざけ合いをノンビリ眺めていた。

「あーぁ、なんか学校には行きたく無いなぁ…」

そう思いながら吊革に掴まっていると、

「おはよっ、ミホ」

と次の駅から乗ってきた親友のサユリが声を掛けてきた。

「おはよー」

ミホはかったるそうな返事をすると、

「なぁにその返事は」

ミホの言葉にサユリは呆れながら言うと、

「だぁて、学校には行きたくないんだもん」

とミホは口を尖らせながら文句を言う、

「まったく、その姿とこの言葉遣い、

 あなたほどギャップのある娘はいないよね」

クスリと笑いながらサユリは言うと、

「だぁって…」

ミホはそっぽを向いてしまった。

確かにガラス窓に映る自分の姿はどこから見ても

気品のあるお嬢様そのものだったが

しかし、ミホにとってはそれが重荷になっていた。

「はぁ…なんか…面白いことないかなぁ…」

流れる景色を眺めながらミホはポツリと呟いた。



キーンコーン…

「あっ、予鈴よ、急ごう!!」

予鈴の音にサユリはミホの手を握るとダッシュで、

通学路を駆け抜けていく、

そして、締まり掛けた校門を滑る込むと、

「せーふっ」

と声を上げた。

「おーぃ、もっと余裕を持ってこいっ」

二人の様子を見ながら生活指導の教師がミホとサユリに声を掛けると、

「はーぃ」

元気よくサユリが返事した。

とその時、

「あれ?」

何かに気がついたミホが校舎の脇でしゃがみ込んだ。

「どうしたの?」

「うん…コレなんだろうて…」

そう言いながらミホが指さしたのは、

朝日を受け七色の光を放つ線虫の様な姿をした物体だった。

「もぅ、そんな気味悪いのほっときなよ」

サユリがそう言って先に玄関に入っていくと

「あっまって…」

サユリを追って慌てながらミホが腰を上げようとしたとき、

ヒュン!!

突如、その線虫が飛び上がると、

開いていたミホの口の中に飛び込んでしまった。

ウグゥゥゥゥゥゥ!!

ミホは目を白黒させながら線虫を吐き出そうとしたが、

しかし、

ズルズル

線虫はミホの体内へと潜り込んでいく、

そして、

スポン!!

線虫がミホの体内に入ってしまうと、

「いっ行かなきゃ…」

ミホはポツリと呟きヨロヨロと立ち上がった。



「ミホ…どうしたの?」

1時間目、

真っ青な顔色をしているミホに隣の美由紀が気がつくと声を掛けた。

「うぅ」

しかし、ミホは唸るような返事をするだけだった。

「?」

ミホの様子に美由紀は不思議に思っていると、

「では、カノウさん…

 ココを訳してください」

壇上に立つ英語の教師がミホを指名した。

「ほら、ミホ…呼ばれたわよ」

後ろに座るサユリがミホの背中を突っつくと、

ガタン…

ミホは立ち上がったが、

しかし、立ったまま動かなかった。

「カノウさん、どうしました?」

教師は鋭い視線でそう言うが、

「………」

しかし、ミホは俯いたまま動かない、

「カノウさん、いい加減にしてください、

 これは私への抗議ですか?」

ミホの態度に苛立ちを覚えた教師がそう言ったとき、

モリッ!!

ビュッ!!

ミホの胸を突き破るようにして灰色の触手が伸びると

前に座っていたケイコの背中を突き刺した。

「………」

教室中の音が消えた。

「あっ…」

パサッ、

触手に突き刺されたケイコの手から教科書が滑り落ちる。

すると、

メキメキメキ!!

ケイコの両腕が見る見る膨らみ、

シャッシャッシャッ

そこから数本の触手がケイコの腕を突き破って伸びると、

次々と周辺に座っている女子生徒の身体を突き刺した。

「ごふっ」

喉を突かれたサユリが触手を手で押さえながらせき込む、

「なっなっなんですか!!!」

その様子を見た教師が怯えながら声を上げると、

ビュッ!!

真っ直ぐケイコから伸びてきた触手が彼女の顔を突き刺した。

「ひぃ!!」

ガタン!!

その光景に数人の少女が席を立つと逃げようとしたが、

しかし、

ボン!!

今度は爆発するようにミホの背中から無数の触手が伸びると、

瞬く間に彼女の後ろに座る少女達を突き刺していった。

そして、ものの5分程で教室内のすべての者達は

ミホから伸びた触手によって一つに繋がっていた。

『あぁ…もっとだ…

 …もっと材料を…』

大きく開かれたミホの口から嗄れた男の声が漏れると、

ドクン!!

少女達を繋ぐ触手が鼓動をするかように動くと、

ボッ!

ボッ!!

ボッ!!!

少女達の身体がまるで弾けるように破裂し、

そこから沸き出した無数の触手がお互いに絡まり合い成長し始める。

『もっと材料を…』

再び声が響くと、

ザワザワザワ…

触手は獲物を求めて両隣の教室へと伸びて行った。

それから程なくして、

「いやぁぁぁ!!」

「きゃぁぁぁ!!」

教室の中から少女達の悲鳴が次々と上がるが、

それらは瞬く間に収まって行く。

そして

ザワザワザワ

2つの教室からはい出し始めた無数の触手は更に別の教室を襲い、

少女達を飲み込んで行った。

ドクン!!

一方、ミホの教室では学校中の少女や教師を飲み込みんだ触手は

絡み合い成長してゆくと不気味な肉塊へと変化してゆく、

そして、

グニュッ

その中ではいくつもの臓物が別れ成長しはじめると、

ドクン!!

ドクン!!

肉塊は成長をし続け、

メキメキメキ!!

成長していく肉塊の重みに校舎の梁が悲鳴を上げた。

やがて、

バキバキバキバキ!!

ドスン!

耐えきれなくなった梁は無惨に崩壊し肉塊は1階へと落下し、

その十分に開いた空間で肉塊はさらに成長していく。



「はぁ…」

その頃俺は校舎の窓から遠くに見える

白薔薇女学院の校舎を眺めながらため息をついていた。

「未練がましいヤツだなぁ

 捨てられても捨てられても追いすがる男みたいだぞ」

隣の席に座るタダシは頬杖をつきながらそう言うと、

「うるせー」

ムッとしながら俺は返事をした。

「まぁ無理もないか、

 男しか居ないこんな汗くさい学校に3年間も通うのは

 まさに拷問だもんなぁ…」

とタダシはシミジミと語ると、

ボーン!!

と言う音共に白百合女学院の校舎から白い煙が立ち上った。

「おいっ、なんだあれは」

その煙を見て一人が声を上げると、

「なんだ?」

「爆発か?」

とたちまち窓際に男共が鈴なりになってしまった。

「こらっ授業中だぞ!!」

教鞭を執る教師は声を張り上げるが、

しかし、クラスはそんなことはお構いなしになっていた。

やがて、

「おいっ、

 女だ!!」

と一人が声を上げた。

「はぁ?」

その声に俺は目を凝らしてみると、

立ち上る校舎の煙から一人の女性が姿を現した。

「なっなんだあれ?」

「随分と大きいじゃないか?」

「でっけぇ女の子だな…」

「そーだなぁ、ウルトラナイン位はあるんじゃないか?」

「………」

その言葉に全員が見合わせ一斉に頬を抓りだした。

「痛い…」

「夢じゃないな…」

全員がそう呟いていると、

パァァァァァ!!

突如、俺のズボンが光り輝くと、

『はじめまして、太陽系第3惑星の知的生命体のみなさん』

と言う声と共に

シュパァァァン!!

光の柱がズボンのポケットから立ち上がった。

そして、

『わたくしは銀河宇宙の安全と平和を守るギャラクシーポリスの

 宇宙マフィア特別捜査官・ミリヤ・レーン惑星刑事と申します』

と言う声と共に、

高さ10cm程の透き通った羽をはためかせている女性が姿を現した。

「妖精?か?」

彼女を見ながら俺が尋ねると、

『妖精とはあなた方の間で語り継がれている、

 想像上の生命体ですね。

 しかし、私は違います。

 れっきとした人間です。』

とミリヤは言い切ると、

『実はいまあそこに現れたあの巨人は、

 我々が追っている宇宙マフィアがこの星の生命体を材料に作り上げたモノです』

と説明をした。

「宇宙マフィア?

 作り上げた?」

教室内の男子全員がそう聞き返すと、

『はいっ、

 そうです、

 あれを引き起こしたのは宇宙マフィアの技術顧問団を率いる
 
 マッドサイエンティスト・ゲケルベッチと言い、

 コレまでに278箇所の惑星やコロニーを破壊した極悪人です。

 無論我々もゲケルベッチを逮捕すべく総力を挙げているのですが、
 
 しかし、ゲケルベッチは我々の追跡を巧みに振り切り、
 
 さらには押し入った惑星の現住生物を人質に使って我々に戦いを挑むのです』

と説明した。

「はぁ…それは大変ですねぇ…」

俺はあまりにものの天界に呆然としながらそう返事をすると、

『そして、ゲケルベッチは279番目の目標として、

 銀河系・小笠原宙域に浮かぶこの星にねらいを定めたのです。

 お願いです、どうか私に力を貸してください。

 私もゲケルベッチ逮捕にあと一歩にまで迫ったのですが、

 逆にゲケルベッチのだまし討ちにあい、

 そのために、私は仲間を失い、

 そして、力を失ってしまいました。

 けど、あなた方の力をあたしに貸してくれれば、

 ゲケルベッチを逮捕することは可能なんです』

と涙ながらに訴えると、

「おいっ、授業中なのだが」

そう言いながら教師が俺達の後ろに立っていた。

「なぁ俺達の力で宇宙の平和が保たれるのなら

 協力してもいいんじゃないか」

と言う声がわき起こってきたが、

しかし、俺はどこか冷めていて、

「その前に、一つ聞いて良いか?」

と俺はミリヤに質問をした。

『はいなんでしょう?』

「さっきそのゲケルベッチとか言う奴が現住生物を人質にするって言ったよなぁ」

『はいっ』

「その方法ってどんなのだ?」

『それはゲケルベッチ自身を核にして

 現住生物を寄せ集めて、

 一つの生命体に仕立て上げることです。

 つまり、あの巨人の核にゲケルベッチがいて、

 その周囲、つまりあの巨人の他の部分は、

 あの建物の中にいた現住生物を寄せ集めたものなんです』

とミリヤは俺に説明をした。

「あの建物って…白薔薇女学院のか…

 …つまり、あの巨人は白薔薇の女の子を合体して作ったのか!!」

その時、俺はあの巨人の中にミホさんが取り込まれてしまったことに気づいた。

「ゆっゆっ許せないぞ!!

 ゲケルベッチ!!」

たちまち俺は燃え上がると、

それに呼応して、

「くおらっ、

 授業中だといっとろーが!!」

教師の堪忍袋の緒が切れた。

「やかましいっ!!

 宇宙の存亡が掛かっているこのときにノンビリ授業なんて受けてられるかっ

 ようしっ、みんなっ

 ミリヤさんに協力して

 ゲケルベッチの魔の手から白薔薇女学院の女の子を救うのだ!!」

と高らかに宣言した。

『あっありがとうございます

 ありがとうございます』

ミリヤは幾度も頭を下げると、

『ではあたしの手を握ってください』

と言うと手を差し出した。

「えっとコレで良いですか?」

俺はそう尋ねながらミリアの小さな手に指を差し出すと、

ヒタ

ミリヤは俺の指に手を置いた、

その途端、

ドクン!!

俺の身体に何かが流れ込んできた。

「なっ」

予想外のことに俺が驚くと、

その途端、

シュルシュルシュル!!

俺の身体から無数の触手が伸びると、

まるで串刺しをするかのようにクラス全員の身体を貫き、

ジュルジュルジュル!!

俺の身体へと融合を始めだした。

「うぁぁぁぁ!!」

「なんだこれ!!」

たちまち教室内に男の悲鳴が上がるが、

『これでは足りません、

 もっと力を!!!』

ミリヤがそう叫ぶと、

シュルルルルル

教室から飛び出した触手は次々と教室を襲っていく、

そして、授業中の男子生徒や教師を片っ端から飲み込むと、

すべて俺の元に集めていった。

『うわぁぁぁぁ、

 汗臭せぇ!!

 ヤメロ、

 俺はモーホーじゃねぇぇぇ!!

 くっつくなっ!!』

俺の叫び声がむなしく響いていった。

やがて、

学校内のすべての生徒や教師を飲み込み一つに合体した俺達は

バリバリバリ!!

ジュワッ!!

校舎を突き破って太陽の元に躍り出た。

『おぉ』

『すげーっ』

『街がまるで模型みたいだ!!』

眼下に見下ろす街を見ながら興奮するような声が響き合う。

『あなた方はいま遺伝子と心のだけの存在になっています。

 さぁ、行きましょう。

 わたしとあなた達の手でゲゲルベッチの魔の手からこの星を救うのです』

ミリヤさんのその声に、

『おーっ』

気を取り直した俺は大きく声を張り上げた。

そして、

白薔薇女学院から姿を現した女性に照準を合わせると、

ジュワッ!!

っとかけ声高くジャンプした。

あのウルトラナインのようにまっしぐらに飛ぶつもりだった。

しかし…

ヒュン!!

ズドォォォォォン!!

俺達の身体は一瞬の間、空中を自由落下していくと、

そのまま地面に叩きつけられてしまった。

さっきまで無傷だった体育館や武道場、

そして道向こうのバイク販売店が俺達の身体の下敷きになり無惨に崩壊していた。

『いてて…』

痛覚は全員に均等配分される。

俺は顔を押さえながら、

『なんだよぉ、

 空飛べないのかよ』

俺はミリアに迫ると、

『空ですか?

 ってあなた方は空を飛べるのですか?』

ミリアは呆気にとられたような声で聞き返してきた。

『え?、飛べるようになるわけではないの?』

呆気にとられながら俺が尋ねると、

『材料にした生命体の基本的な能力を超えることはないですよ』

とミリアは説明する。

『なんだ、そう言うことか』

『期待して損したな』

『ってことは何かあそこまで歩いていくのか?』

『だりーな』

たちまちブーイングの嵐が巻き起こると、

『うるせーっ、

 行くと言ったら行くんだ!!』

俺はそう叫ぶと、

『よしっ、かけ声に合わせて歩くぞ

 1・2
 
 1・2』

俺のかけ声に合わせて、

ズシン!

ズシン!!

と俺達が合体して作った巨人が歩き出した。

『へぇやっぱり早いなぁ…』

『まぁ大きくなっているからな』

早く動く景色にみんなから驚きの声が挙がると、

俺は少しづつかけ声を早くしていった。

ファンファンファン!!

足下で赤灯を回すパトカーがまるでゴキブリの如く走り回る。

『なぁ、コイツ、踏みつぶしてみるか?

 俺一度やってみたかったんだ』

そう言う声が挙がると、

『ヤメロ、いまはそんなことをやっている暇はないんだ』

俺が声を上げる。

バババババババ

マスコミのヘリが俺達の周りを鬱陶しく飛び回り始めた。

そのとき、

駅前に鏡のような姿で立つ高層マンションに俺達の姿が映った。

『なっ』

それを見て俺は思いっきり声を上げた。

『どうしました?』

ミリヤが尋ねる。

『なぁぁぁ…何で俺の裸がぁ!!』

俺は言葉にならない声を上げると、

『それはあなたをキーにしてこの身体を作ったのですから、

 当然、あなたの姿になりますよ』

とミリヤはケロリと説明をする。

『そんなぁ…

 じゃぁなにか

 これまで俺のすっぽんぽんの姿で歩いてきたのか?』

俺はミリヤに食ってかかると、

『まぁそう言うことになりますね…』

『そんなぁ…!!』

俺は思わず頭を抱えてしまった。

『俺の一糸まとわぬ姿をミホさんに見られているだなんて』

そう言いながら嘆くと、

『あっでも、そのミホさんはゲケルベッチに取り込まれて居るんでしょう?』

とミリヤは言った。

『あっ…そうだった…』

ミリヤのその言葉に俺はハッとすると、

『そうか、わははは!!

 ミホさんが俺を見て居るわけはないんだ!!』

俺はスグに立ち直ると、

ルンルン気分で白薔薇女学院へと向かっていた。

遠くに見えていた立ちすくむ巨人の姿が見る見る近づいてくる。

そして、近くまで来たとき俺は思わず立ち止まってしまった。

『げっなんで…』

『どうしました?』

『なんで、ミホさんの姿をして居るんだよぉ!!』

俺は崩壊した校舎の前で立つ巨人のミホを指さしながら嘆くと、

『あぁ、恐らく、

 ゲケルベッチがそのミホさんと言う人をキーにして作り上げたんですね』

とミリヤが説明した。

すると、

スゥ!!

巨人のミホが腕を構えると、

『わははははは、

 ご苦労だなぁギャラクシーポリスのミリヤ惑星刑事…

 どうだ、今度の俺はそう簡単には倒せないぞ!!』

ミホさんの顔とは似合わない男のだみ声が響き渡った。

『そうはいきませんよ、

 宇宙マフィア、ゲケルベッチ!!

 ギャラクシーポリス・総監の名でお前を逮捕します!!』

ミリヤも負けじと声を張り上げた。

バババババ!!

マスコミのヘリの数がさっきよりも増し、

さらに地球防衛軍の武装ヘリも旋回し始めだした。

『へぇぃっ、

 鬱陶しいヤツめ!!
 
 ゲケルベッチさまの恐ろしさを思い知らしめてやる!!』

ゲケルベッチはヘリを睨み付けながらそう叫ぶと、

ブン!!

と追い払うように腕を振った。

すると、腕はむなしく空を切ると、

ガンッ!!

崩れ掛けた校舎に激突した。

その途端、

『いてぇ!!』

ゲケルベッチは大声を上げると腕を押さえながら飛び上がる。

『あぁ血がでたぁ!!

 くっそう、なんて弱い体なんだ!!』

悔しそうにゲケルベッチが叫んでいると、

『まずいです

 身体の性能の低さにゲケルベッチが愛想尽かす前に

 白兵戦を仕掛けましょう!!』

とミリヤは俺に提案した。

『白兵戦?

 おいっ、ちょっと待て…

 白兵戦ったって

 どうやって、向こうの体内に潜り込んだ?』

そう俺が尋ねると、

『そうですね…

 カタパルトを使いましょう』

しばし考えてミリヤはそう断言した。

『カタパルト?』

『はい、

 あなた方の身体には相手の体の中に乗り込むカタパルトがありますよね、

 それを使うんです。』

『はぁ?』

ミリヤの言っている意味が分からず俺は返答に困ると、

『いいからこっちに来てください』

ミリヤの言葉と共に俺の視点は見る見る下の方へと移動していく、

そして、股間まで降りたとき、

『ココにある小型突撃機で向こうの体内に侵入し、

 奥深くに潜んでいるゲケルベッチを捕まえるのです。』

と俺に告げた。

『小型突撃機って…まさか…精…子?

 んで、カタパルトって…

 相手に乗り込むって

 はは…』

俺は涙を流しながら笑った。

『いいですかぁ!!

 相手の身体にこのカタパルトを接続してくださぁぃ

 そしたらあたし達が突撃隊として突入しまーす』

ミリヤが声を張り上げると、

『うぃーす』

男共の返事が返ってきた。

と同時に、

『なぁ…コレを押し込むといったら』

『あぁ、やっぱあそこだろう?』

『いや、口というのはどうだ?』

『う〜ん、俺はどちらかと言ったらお尻の方が…』

『まずは十分に湿らさないとな…』

『手コキして欲しい』

などとしょうもない会話が響き渡る。

そして、

『まぁとにかく、

 押し倒すことから始めよう!!』

『をーっ!!』

と言う声が響くと、

ズシン!!

俺達の身体はゲケルベッチが作った巨人に一歩一歩近づくと、

ガシッ

その両腕を握りしめた。

『おーぃ、腕の連中!!

 踏ん張れよぉ!!』

『なんか、向こう側が嫌がっているみたいだぞ』

『おーぃ早くしろ

 早くチンコじゃなかったカタパルトが接続出来ないぞ』

『判ってるって!!』

ズズーン!

たちまち俺達はゲケルベッチの巨人に抱きつくと押し倒し

そしてその上に馬乗りになった。

『なぁ、このシチュエーションってやばくないか?』

『地球の平和のためだ、

 ほらウルトラナインだって

 バトルの最中には容赦なく建物を壊しているだろう?

 それと同じだよ』

『そうかなぁ…

 でも、向こうさん嫌がっているよ』

『2・3発はり倒せば大人しくなるって』

『経験者みたいな言い方だな?』

『あはははは…』

そんな会話のあと、

パンッ

パンッ

相手の頬を2・3回叩き、

大人しくなった頃を見計らって

その両足を思いっきり開かせると、

固く伸ばしたカタパルトを陰部に押し込んだ。

『うぉぉぉぉぉぉ!!

 締まるぅ!!』

全員が快感に悶える。

『カタパルト、接続しましたぁ。(はぁはぁ)』

妙に息の荒い声が響くと、

ガクガクガク!!

腰が激しく振り始める。

『エネルギー充填…開始!!

 10%
 
 20%
 
 30%
 
 ……
 
 90%
 
 発射!!』

その叫び声と同時に俺を押し込めた突撃機は向こうの膣内に飛び出していった。

ぎゅぉぉん!!

ピンク色に染まる膣を突き抜けていくと、

子宮口より子宮内に飛び込む。

『うげぇぇぇ…

 こんなところで精子の気分を味わうなんて…』

俺は吐き気に口を押さえると、

『対空放火!!』

ミリヤの声が響いた。

すると、

子宮壁の至る所から俺に向かって砲撃が始まった。

たちまち同時に飛び出した友軍機が打ち落とされる。

『うぉぉぉぉ!!』

俺は弾幕をくぐり抜けながら子宮の上層部にたどり着くと、

『なぁ、右か

 それとも左か?』

とミリアに尋ねた。

『えぇっと…』

ミリアはしばし考え込むと、

『えぇぃ』

俺は右に進行方向を変えた。

『まだ、指示をしていません!!』

慌てながらミリアが声を上げると、

『これは俺の勘だ!!』

俺はそう怒鳴ると卵管を遡っていく、

卵管の中ではさすがに対空放火は下止みになっていた。

やがて、行く手に巨大な物体が姿を現してきた。

『これって…やっぱり卵…だよなぁ』

俺はその巨大さに圧倒されていると、

『凄い、

 勘が当たりましたね。

 早くその中に飛び込むのです』

喜びながらミリヤは俺にそう指示を出した。

『あっあぁ』

俺は真っ直ぐ物体(卵子)の壁に突撃機(精子)を体当たりさせると、

ズニュゥ!!

その壁は呆気なく俺を通した。

ブチン!!

突撃機の推力を与えてくれていた鞭毛が切り離される。

カパッ

突撃機のカプセルが開くと、

ゆっくりと俺は卵子の中に降り立った。

すると、

『これ以上近寄るなっ

 近寄ったらこの女の命はないぞ!!』

ふしゅるぅ…

まるでタコとイカを掛け合わせたような醜悪な生物が

素っ裸のミホに包丁を突きつけていた。

『助けてぇ!!』

ミホはそう声を上げながら俺に手を伸ばす姿に、

俺の隣に降り立ったミリヤが素早く銃を抜くと、

『ゲケルベッチ!!

 無駄な抵抗は止め人質を解放しなさいっ』

と声を上げた。

『五月蠅いっ

 くそぅ…

 俺としたことがこんなに弱い生物を盾にするなんて

 えぇぇぇぇぃ!!』

半ばヤケになりながらゲケルベッチが悔しがると、

『おいっ』

一瞬の隙をついて俺はゲケルベッチの懐に突っ込み、

『うりゃぁぁぁぁ』

っと一本背追いを喰らわせた。

『うぎゃぁぁぁ!!』

悲鳴を上げながらゲケルベッチが宙を舞うと、

俺はミホを抱き上げて距離を置いた。

『さぁもぅ大丈夫ですよ、姫(キラリ)』

さわやかな笑顔を見せながらミホを見つめると、

『あっあのぅ…

 身体が…』

困惑しながらミホは俺と融合していく身体を指さした。

『なっなんだこれぇ』

その様子に俺は思わず叫び声を上げた。

すると、

『しまったぁ!!』

俺の声にゲケルベッチをお縄にしたミリアが急いで駆けつけたが、

しかし、

合体していく俺とミホの姿に、

『あちゃぁ!!』

ミリアはそう言うと思わず右手で目を覆った。

こうして、宇宙マフィア・ゲケルベッチはミリアの手によって無事逮捕され、

その一方で、合体させられていた者達は全員

それぞれの魂と遺伝子情報を元に無事分離していった…はずだった。

『ですから…

 あなたとミホさんの身体と言いますか遺伝子情報は一つに融合してしまって、

 まぁその…

 なんていいますか、受精したのと同じ状態になってしまったんです。

 ですので、

 一応、その身体はあなた方お二人の子供と言うことに…』

すまなそうに説明するミリアに

「じゃぁ俺はどうなるんだ!!」

そう怒鳴りながら俺は動かすことが出来る右手でドンと地面を叩くと、

「あたしも困るわよ!!」

ミホも同じように左手で地面を叩いた。

『はぁ…』

俺たちから攻められるミリアは困った顔をすると、

『う〜ん…

 お二方の遺伝子情報は既になくなっているし…

 それに、いまの状態では性別も決まりませんから、

 あっ、いっそ交代交代で体を使っては…』

しばし考え込んだ後、ミリアはそう提案をしてきた。

「そーゆー次元じゃないだろうが!!」

巨人が崩れ、山と積まれたままの男女の裸体の脇で、

俺とミホの怒鳴り声が夜空に響いていった。



おわり