風祭文庫・人魚変身の館






「マーメイド様が見てる?」


作・風祭玲

Vol.922





真上から照りつける初夏の日差しの下。

ピッ!

プールサイドにホィッスルの音が響き渡ると、

タッ!

競泳パンツ姿の男子水泳部員達が一斉にスタート台から撥ね、

静かに揺らめく水面へと向かっていく。

その日、男子水泳部は間近に迫った県の大会に出場する選手を決める選考会を開いていた。

「いけーっ」

「根性見せろぉ!」

水面から上がる水しぶきに向かって

プールサイドを取り囲んでいる競泳パンツ姿の男子部員から声援が上がり、

否応無く辺りは緊張に包まれて行く。

そんな中、

「うーん、

 やっぱり田幡に久島、松田、戸塚、二ノ宮…になるか…

 はぁ…柏葉が使えないのが痛いな…」

白熱するプールを横目にキャプテンを務める三輪省吾は、

記録係から集められてきたタイムシートとにらめっこしながら頭を掻いていると、

「へぇぇ、盛り上がっていますね」

競泳水着の上に女子水泳部のロゴが入るTシャツを着た水元美那が

彼女のトレードマークとなっているポニーテールを揺らしながら話しかけてきた。

「ん?

 あぁ水元かぁ

 女子が泳ぐまで時間はあるだろう」

彼女の声を聞いた省吾は顔を上げて交代の時間がまだであることを指摘すると、

「ううん、

 ちょっと覗きに来ただけですよ。

 そっかぁ今度の大会メンバーを決めているんですね。

 ウチもそろそろしないといけませんね。

 コーチから早くメンバー決めるように言われていますし」

と言いながら美那は省吾の手元にあるタイムシートを覗き込んでくる。

「おぃおぃ、

 勝手に見るなよっ」

覗き込もうとする美那から守るようにして省吾はタイムシートを裏返すと、

「うふっ、

 そんなに秘密にしなくても…

 同じ学校同士でじゃないですか」

省吾の姿を見ながら美那は笑い、

「なんか悩んでいたみたいですけど、

 人選進んでいないんですか?」

と話を向けた。

それを聞いた途端、省吾の表情は変わり、

「まぁねっ」

否定をせずに呟くと、

「そうですか…

 男子は女子に比べてば恵まれていると思っていましたが、

 結構苦しいんですね」

意外そうな顔をしながら美那は驚いてみせる。

「それって、わざと言っているのか?」

そんな美那の所作を見ながら省吾は不満そうに言うと、

「え?

 あはは…

 そんなことないですよ。

 あれ?

 柏葉君の名前が見当たらないのですが、

 彼、まだダメなんですか?」

誤魔化すように笑いながら美那は省吾の手元にあったはずのタイムシートを取り上げてしまうと、

ある人物の名前がないことを指摘する。

「いっ、

 何時の間にっ」

美那の手の動きの素早さに省吾は驚きながらもシートを取り返し、

「お前って本当に手が早いなぁ…

 あぁ、柏葉はダメだよ。

 アイツが復帰するには時間がまだ掛かかりそうだ」

と返事をしてみせる。

「そう、

 やっぱりあのトラブルが相当堪えちゃったみたいですね」

省吾の言葉に美那は頷くと、

「あの大舞台であんなことがあってはねぇ」

腕を組み省吾は昨年の秋に起きたトラブルを思い出していた。



…昨シーズンの締めくくりに行われた競技大会。

 その大会に1年の柏葉勝俊は大抜擢を受けてリレーに出場したのだが、

 しかし、リレーに出ていた省吾のタッチを受けて勢い良く飛び込んだのもつかの間、

 勝俊は緊張感からか深めに飛び込んでしまい、

 プールの底に身体を擦ってしまったのであった。

 無論、これ程度のことは小さなアクシデントであり、

 些細なこととして競技に専念をするべきだったのだが、

 しかし、緊張も手伝ってか勝俊は動揺してしまい、

 その動揺が彼のリズムを崩してしまった。

 そしてすべてのことが悪い方向へと雪崩打ち、

 ついに足の筋肉が攣り溺れてしまったのであった。

 水泳競技はこの高校から始めた勝俊であったが、

 しかし、海辺に育ち元々泳ぎには自信があった彼にとって

 このアクシデントは体以上に心を叩きのめし

 以降、水に触れようとしなくなってしまったのであった。



「ふーん

 あれから半年が経っていますけど、

 柏葉君が受けた心の傷は大きいんですね」

事情を知る美那は腕を組んで頷くと、

「正直言って俺もどうしようかと悩んでいるんだよ、

 もし、ここで退部を進めれば、

 アイツ、一生泳げなくなってしまうような気がするし、

 だからと言って、このままではいいわけないし」

頭を抱えながら省吾は胸のうちを告げた。

すると、

「あの、

 彼、ちょっとわたしに預けてくれませんか?」

突然、美那はそう持ちかけてくると、

「え?」

意外そうな表情で省吾は美那を見た。

「いっいえ、

 これまで黙っていたんだけど

 実はわたしも昔似たような事があったので、

 だから、柏葉君の力になれるかも…と」

自分を見つめる省吾に向かって美那は事情を話すと、

「へぇ…それは意外だなぁ…

 水元も同じ経験があったなんて、

 いや、それならお願いできるか、

 経験者の君が柏葉の力になってくれたら心強いよ」

と事情を聞いた省吾は返事をする。

「柏葉君と全く同じ…と言う訳じゃないのですが、

 ありがとうございます。

 じゃぁ柏葉君しばらくの間わたしの方で面倒見ますね。

 彼にはわたしから声をかけておきますので」

省吾に向かって美那はそう言うと、

ポニーテールの髪を揺らしながら去って行くが、

「…随分と待ったわ…」

そう囁きながら笑みを浮かべていたのであった。



「はぁ…」

選考会に盛り上がるプールサイドから一歩引いた壁際で

男子水泳部のロゴが入るTシャツに競泳パンツを穿いた柏葉勝俊が座り込んでいると、

俯いたままため息をつき続けていた。

もし、本調子なら勝俊はこのようなところに座り込んでなく、

あのプールの中を逞しく泳いでいるはずだったのだが、

しかし、あのアクシデント以降、

勝俊はプールの匂いを嗅ぐだけで恐怖で身体は振るえ、

水に浸かることすら出来ない状態になっているのであった。

「はぁ…

 どうしようかなぁ」

毎日、こうして競泳パンツに着替えはするものの、

しかし、水に触れない日々を送るうちに、

水泳部に籍を置いていることに後ろめたさを感じるようになっていた。

そして、

「やっぱ、辞めたほうが…」

と勝俊の頭の中を”退部”の2文字が駆け巡ったとき、

「柏葉君?」

と勝俊を呼ぶ声が響いた。

「え?」

自分の名前を呼ばれたことに勝俊は驚きながら振り返ると、

彼の脇にポニーテールにTシャツ姿の水元美那が立ち、

「なにを落ち込んでいるのですか?」

と話しかけてくる。

「べっ別に…」

いきなり女子水泳部のキャプテンに話しかけられたことに、

勝俊は不審に思いつつそっぽを向いて返事をすると、

「水着、着てくるんですね」

と美那は勝俊の股間を覆う競泳パンツのことを指摘する。

「いいだろう、

 水泳部員なんだから」

その指摘に勝俊はぶっきらぼうに返事をすると、

「だけど泳がない…」

美那は勝俊の痛いところを突く、

「うっ、

 なんだよっ、

 泳げない俺を見てからかうつもりか?

 あぁ、判ったよっ、

 辞めればいいんだろう、

 辞めれば!」

カッとなりながら勝俊は美那に突っかかると、

「じゃぁ辞めれば良いですわ、

 べつにあなたが辞めたところでわたしには関係ないことですので。

 でも、

 何時までも水から逃げていたのでは

 何の解決にもならないと思いますが…」

と勝俊の目を見ながら美那は言う。



…美那の眼には不思議な力があると噂されている。

 深海を思わせる限りなく黒に近い紺碧色の瞳に魅入られた途端。

 彼女から逃れることが出来なくなり、

 意のままに操られるというものだった。

 現に美那が入部するまで部員が次々と辞め

 男子水泳部と統合する話があった女子水泳部が、

 彼女が勧誘を始めた途端、

 急激に部員数を増やしたのはまさにその噂を裏付けるものであった。

 しかし、それだけではなかった。

 水泳は素人のはずなの新入部員達がどういうわけか抜群の水泳センスを身につけ、

 出場した大会を総舐めにした上に記録を次々と更新してしまったのであった。

 この快挙に学校中が度肝を抜かしたのだが、

 なぜか女子部員達は驚異的な成績を上げた練習法には硬く口を閉ざし、

 また部の練習も男子水泳部と共用ではなく、

 男子が終わった夕方より開始をするという変則的な時間割を自ら課していたのであった。

 この様な閉鎖的とも思える部活動と部員達が美那を絶対的な存在として崇めるため、

 秘密のベールに閉ざされた気味の悪い部として影口を言われるようになっていたのである。



「だっだからなんですか?」

美那の噂を聞いている勝俊は彼女から身を逸らしながら聞き返すと、

「そんなに嫌わないでください。

 わたし、

 柏葉君の事を心から心配しているのですから」

と美那は言い、

「あの…

 今日、これからの予定はないのでしょうか?

 もし無いのなら練習が終わってから女子水泳部の部室に来て欲しいのですが…

 あっ着替えなくてもいいです。

 って言いますか、その格好で来て欲しいのです」

ジッと勝俊の目を見詰めながら美那は誘いの言葉をかける。

「うっ、

 なっなんで…

 こっ断れない…」

美那の眼力に飲み込まれるようにして勝俊は頷いてしまうと、

「あっありがとう。

 では、わたし待ってますので、

 必ず来て下さい」

美那はそう言い残すと立ち去って行く、

「ハァハァ…

 なっなんだよ、

 あの眼は…

 まるで抵抗できなかった…」

美那が去った後、

勝俊は全身を汗で濡らしながらガックリとうな垂れプールの壁へと寄りかかる。

そして、

「お疲れさーん」

「おうっ」

男子水泳部の記録会は無事終了し、

部活を切り上げ制服に着替えた部員達は三々五々帰宅して行き、

ほぼ部員が帰宅した頃、

競泳パンツにTシャツ姿のまま勝俊は

男子水泳部の部室とはプールを挟んで反対側に建つ女子水泳部の部室の前に立っていた。

「結局来てしまったか…

 あの眼にはホント、逆らえないよなぁ

 えっとぉ、

 勝手に入ってはいけないんだろうなぁ…

 と言ってもべっ別に盗みに来た訳じゃないんだし」

いくばくの後ろめたさを感じつつ

勝俊は部室の前に立つが、

しかし、夕闇が迫る部室の明かりは落とされ、

周囲に気配は感じられなかった。

「…まさか、

 図られた?」

人の気配が感じられないとに勝俊は咄嗟に判断すると、

周囲に誰かの目がないかどうか気配を察しながら、

その場から離れようとするが、

「…あんっ」

突然部室の中から響いた艶かしい声にその足が止まった。

「え?

 いま…確かに…」

聞き耳を立てながら勝俊はその場に立っていると、

「きっ

 キャプテン…

 そろそろ…してください」

と何かを請う少女の声が聞こえてくる。

「してください?」

その声に勝俊は惹かれるようにして部室の壁に張り付くと、

「…うふっ、

 とっても可愛いわ、柴崎さん」

と美那の声が響く。

「うっ、

 これってまさか…」

胸を高鳴らせ、

競泳パンツが覆う股間を大きく盛り上げながら勝俊は中の様子を伺おうとした時、

スーッ

たまたま手をかけた部室のドアが音も無く開いた。

ゴクリ…

覗いてはいけないと思いつつも

クモが待ち構える巣に向かって舞い降りていく蝶の如く勝俊は部室に忍び込み、

そして、積み上げられた箱の影に隠れるようにして奥で蠢くものに目を凝らす。

すると、

「うふっ

 ここ、感じるの?」

「あんっ

 あぁんっ

 あぁ」

「とっても敏感なのね…、

 ほら、あたしのここ、

 もぅこんなになちゃっているのよ」

美那と新入部員だろうか、

真新しい競泳水着を着た少女部員の体と

プルンと乳房が震える裸体の体が絡みつくように抱き合っていた。

「うっわぁぁぁ、

 なっナマだよぉ、

 レズだよぉ

 すげぇぇぇぇ」

衝撃の光景に勝俊は鼻息荒くしながら、

箱に圧し掛かるようにして見ていると、

少女部員は自分が着ている競泳水着を引き降ろし、

「キャプテン…

 はっ早く卵を…

 あたしに卵を生みつけてください」

と懇願し始めた。

「!っ

 卵?

 なんだそれは?」

彼女の口から出た言葉に勝俊は眉を寄せると、

「いいわ、

 産み付けてあげる…」

美那の声が静かに響き、

そして、ポニーテールの髪を揺らしながら少女部員の体に覆いかぶさっていく。

「あの髪…

 キャプテン…

 なんだよ、水元ってレズ女だったのか、

 そんな風には見えなかったんだけど」

美那の知られざる一面の姿を見た勝俊は驚いていると、

「でも、卵ってなんなんだろう?」

と女子部員の口から出た言葉に小首を傾げる。

そして、状況を良く見ようと積み上げられた箱に体重をかけながら

改めて見たとき、

「え?

 なにそれ…」

ポニーテールを揺らす美那の腰から下には人の肌の色は無く、

代わりに怪しく輝くウロコ状の物体が覆い、

さらに二本足として二つに割れることなくそのまま続いた先には足先は消え、

代わりに巨大な鰭が扇を広げるように開いていたのであった。

「なっなんだ?

 まるで人魚…」

全裸になり股間を開いて懇願する少女部員に向かって

覆いかぶさる美那の姿が御伽噺で聞く人魚と同じであることに勝俊は驚愕するが、

だが、それだけではなかった。

美那は自分の下腹部に手を持って行くと、

グッ

と下腹部のある場所を押した。

その途端、

「うっ!」

美那のかみ殺す声と共に、

ニュルッ!

ウロコに覆われている下腹部より白い管のようなものが突き出し、

男性のイチモツの如く伸び始める。

そして、長く伸びた管を扱きながら美那は股間を開く少女部員を抱き寄せると

彼女の上に圧し掛かり

ヌラヌラと濡れている彼女の秘部へと管を押し込み始めた。

そして、管が挿入されると同時に、

「あんっ」

少女部員の声が響き、

「あはっ、

 締まるぅ

 凄く締まるわぁ」

追って美那の喘ぐ声が響いたのであった。

「なんだよぉ

 なんよ、これぇ!

 人魚が女の子を犯すだなんて聞いたことが無いぞ!」

想像を超える光景に勝俊は喉をカラカラにしながら凝視し、

シュッシュッ

シュッシュッ

競泳パンツを思いっきり押し上げている己のイチモツを扱いていた。



ピチッ

ピチピチ!

尾びれを盛んに叩かせながら美那は身体を震わせ少女部員を犯していく、

そして、

「あぁん、

 生まれる

 生まれる

 生まれるぅ」

形の良い乳房を自分で揉みながら声を上げたとき、

ブクッ!

一瞬、挿入をしている管が太くなり、

半透明色をした管の中を何かの影がゆっくりと進んで行ったのであった

すると、

「あぁぁぁっ、

 入ってきた、

 あたしの中に入ってきたぁ」

犯されていた少女部員も声を上げると、

ジワジワジワ…

犯されていた少女部員の足にウロコが生え始め、

さらに開いていた足が癒着していくと、

見る間にその姿を人魚へと変え始める。

やがてウロコが彼女の腰から下を覆い尽くしてしまうと、

彼女の足先が潰れるように変形しやがて鰭が開いていく。

「うそぉ、

 女の子が人魚に…

 そんなことって…」

目の前で繰り広げられた衝撃の光景に勝俊は声を失うが、

そのとき、

ガタン!

彼が体重をかけていた箱が崩れ落ち始め、

「うわぁぁぁ!」

ドタドタドタ!

崩れ落ちる箱と共に勝俊は二人の前に転がり出てしまったのであった。



「キャッ!」

突然のことに人魚にされた少女部員の悲鳴が上がるが、

「うふっ、

 待っていたわ、

 柏葉君」

落ち着いた口調の美那の声が響く。

ハッ

その声に勝俊は慌てて起き上がると、

「ようこそ、

 女子水泳部へ…」

青緑色の髪を輝かせ、

昼間よりもボリュームアップした乳房を晒し、

そして、腰から下を覆い尽くすウロコを持つ美那が、

水掻きが張った手を勝俊に差し出していた。

「みっみっみっ、

 水元さんっ、

 あなたって…人魚ぉ?」

顔を青くしながら勝俊は美那を指差すと、

「人魚ではなく”女魚(めな)”よ」

と美那は訂正をする。

「女魚?」

美那の口から出た言葉を勝俊は復唱すると、

「えぇ、そうよ。

 わたしは女魚。

 人間よりも尊い存在の血を受け継ぐ者。

 そして、わたしが生きていくために卵を産み、

 こうして仲間を増やしているのよ」

と言いながらさっき人魚にした少女部員を抱き寄せる。

「あんっ、

 美那さまっ」

抱き寄せられた少女は頬を染めながら美那の身体に己の身体を預けると、

「あたし…

 やっと女魚になれたのですね」

と囁いた。

「えぇ、そうよ、

 もぅあなたは二本足で歩く人間とは違うのよ」

少女に向かって美那はそう告げると、

「ばっ化け物…

 お前達…

 化け物だ…」

二人を指差し勝俊は声を上げ、

その場から逃げ去ろうとするが、

「待ちなさい!」

人魚にされた少女部員がその姿に似合わず俊敏に動き、

ドタッ!

「うわぁぁっ」

勝俊に抱きつき押し倒してしまう。

「はっ離せ!!」

逃れようと暴れる勝俊に向かって

「うふっ、

 女魚の力を甘く見ないで、

 陸の上でも人間よりも素早いんだから」

と囁きながら、

「美那さまっ

 どうしましょうか?

 あたしたちの秘密を知った以上、

 このまま返すわけには行きませんが」

少女部員は美那に向かって勝俊の処遇を尋ねる。

すると、

「大丈夫ですよ、

 手を離してあげなさい。

 この者はわたしの眼に魅入られた者。

 すでにわたしの下僕です」

と美那は指示をしてみせる。

「下僕って…」

解放され自由になった勝俊が聞き返すと、

「柏葉君、

 ちょっとお話をしましょうか」

勝俊と向かい合った美那が話題を変え、

「え?」

「わたしの話ぐらい、

 聞いてくれても良いじゃないですか?」

驚く勝俊に美那はそう言うと、

魚の尾びれを思わせる姿になった足を後ろに丸め、

「わたしは…

 自分の体のことを知ったのは高校に入った頃なんですよ」

と尾びれを撫でながら話し始めたのであった。

「そっそうですか」

「えぇ…

 それまでわたしは普通の人間だと思っていました。

 ですが、

 この学校に入学した春。

 わたしの体の中で眠っていた血が目覚めたのです」

「にっ人魚になったのですか?」

「女魚です。

 とは言っても

 いきなりポンっとこの身体になったわけではないのですよ。

 少しずつ…でも、ハッキリと変わり始めたのです。

 柏葉君…

 もしも、あなたの手に水掻きが張り始めたらなんて思いますか?

 もしも、あなたの足にウロコが生え始めたらどう思いますか?

 わたしは怖くて仕方がなかった。

 自分が別の生き物に…

 さっき柏葉君が言っていた化け物になっていくんじゃないかって、

 そんな化け物になんてなりたくない。

 人間のままでいさせて欲しい

 って願いながらカッターでウロコを剥いだり、

 水掻きを切り裂いたりもしたものです」

「ごっご両親には相談されたのですか?

 さっき、血が目覚めたって言っていましたよね。

 それって、誰かに教えてもらったんでしょう」

話を聞いていた勝俊がそのことを指摘すると、

美那は静かに首を横に振り、

「わたしには親はいません。

 なにか事情があったのでしょう。

 生まれて間もなく施設に預けられたました。

 ですから、いまは寮住まいですし、

 体の変化のことを相談できる人は居なかった」

と美那は答え天井を見つめる。

「じゃじゃぁ、

 誰に…」

改めて美那に知恵を授けた人のことを勝俊は尋ねると、

「女魚の里です…」

と美那は言う。

「女魚の里?」

「えぇ、

 体の変化が始まってか匂いで判るようになったのです。

 わたしの生まれた所が…

 そして、体が完全にこの姿になったとき、

 わたしは勇気を出して海に飛び込んだのです」

「女魚の里に向かったのですか?」

「えぇ、

 でも、怖かった…

 もし泳げなかったらどうしよう…

 もし溺れてしまったらどうしよう…

 そんな恐怖と共にわたしは水に身体を預けました。

 けど、水はそんなわたしを優しく迎えてくれました。

 そして、匂いを頼りにわたしが向かったところにありました。

 女魚の里が…」

「どこに…あったのです?」

「うふっ、

 どれだけ遠いところにあるのか、

 私自身不安でしたが、

 でも結構近所だったので拍子抜けしてしまいました。

 そこでわたしは自分の体のことを初めて知ったのです。

 女魚と呼ばれる一族の血を引くこと、

 この身体の変化はその血が目覚め、

 女魚として肉体が成熟し、

 わたしに自覚を促していることなどをね」

「そっそうですか」

時折動く美那の尾びれを見ながら勝俊は話を聞いていると、

スッ

勝俊の手に美那は手を重ね。

「柏葉君…

 さっきも言いましたが女魚は一人では生きていけないのです」

と耳元で囁く。

「えっ」

その言葉に勝俊は驚くと、

「わたしが生きていくには常に贄を必要としているのです。

 女魚として成熟したわたしの体の中からは卵が生まれて来ます。

 そして、その卵は信頼できる人間の体内の授けなくてはいけないのです」

美那はお腹を摩りながら話しはじめる。

「さっ授けてどうするんですっ」

顔を引きつらせながら勝俊は聞き返すと、

ニヤッ

そんな勝俊を美那は笑みを浮かべて見たのち、

「女魚であるわたしは2つの食事を摂らないといけないのです、

 一つは人間と同じご飯を食べる食事。

 もぅ一つは女魚として贄が持つ生きる力を食する食事。

 ふふっ

 この二つをバランスよく食べることで女魚は生きていくのですよ、

 そして、生きる力を食べる口はこっちの口…」

と話しながら水掻きが張る手を人間で言う下腹部に当てると、

グッ!

っと力を込めて押し込んだ。

すると、

ニュッ!

また美那の下腹部から半透明の管が突き出し、

管の先で窄まっていた口がゆっくりと開いて見せる。

「そっそれは…」

管を眺めつつ勝俊が叫ぶと、

「卵を授けるための管です。

 この管を通ってわたしは人間に卵を授けます。

 そして、わたしから卵を授けられた人間は女魚となり、

 わたしに生きる力を与えてくれる…」

シュッシュッ

シュッシュッ

自分の体から突き出す管を扱きながら美那はそう告げ、

そして、改めて勝俊を見ると、

「柏葉君っ、

 わたしの卵…受け取って…」

と妖しく眼を輝かせながら囁いた。

「ひぃ!」

絡みつくように迫る美那から勝俊は逃げようとするが、

しかし、彼女の瞳が持つ力が体の自由を奪っていく。

「このぉ!!」

歯を食いしばりながら勝俊は美那を突き飛ばし、

這いずりながらも逃げ出そうとするが、

「つーかまえた、

 無駄だと言っているでしょう」

成り行きを見ていたあの女子部員が足が変化した尾びれを振りながら勝俊に飛びつき、

ズルリ

競泳パンツを引き降ろす。

と同時に、

「やだぁ、

 えっちぃ」

勝俊の股間から飛び出したイチモツに顔を赤らめると、

「美那さまぁ、

 本当にこの者に卵を産み付けるのですか?」

と聞き返した。

「やめろぉ」

女子部員に組み伏され、

尻を丸出しにしている勝俊は声を荒げて暴れようとするが、

しかし、美那の眼力を浴びてしまったために身体は言うことを聞かず、

ただジタバタとしているだけだった。

「いいのですよ、

 男性の贄もわたしには必要なのです。

 さっ、

 それを開きなさい」

女子部員に向かって美那はそう話しかけると、

「美那さま、

 あのぅ、

 男の場合、

 卵はココに産み付けるのですか?」

と女子部員は勝俊の尻を持ち上げて開き、

姿を見せた肛門を指差した。

すると、

「ふっ」

美那は小さく笑い、

「そこしかないでしょう」

と答えると、

ズルッ

ズルズル…

身体を動かして勝俊に迫り、

ヒタッ

っと両太股に手を添えた。

「ひぃ!」

肛門に長く伸びた産卵の管が当てられるのと同時に勝俊は悲鳴を上げるが、

しかし、美那の行為を止めるものは無く、

「大丈夫、

 女魚になってもずっと女魚のままではありません。

 わたしの力で人間の姿にすることも出来ます」

と勝俊に言う。

「くっ、

 じゃぁ、

 女子水泳部の部員達は?」

美那に向かって勝俊は首を捻って尋ねると、

「えぇ…

 皆、わたしが女魚にして差し上げました」

と美那は笑みを浮かべ返事をした。

「ちっ、

 そうか…」

その返事に勝俊はうな垂れるのを合図にして、

「さぁ、挿しますよ

 我慢しなさい」

美那の声が静かに響き渡り、

ズン!

身体を前に倒すのと同時に、

メリッ!

肉門をこじ開け美那の管が勝俊の体内へと入り込んできた。

「ぐわっ!」

まるで焼いた棒を無理やり突っ込まれたような激痛に勝俊は悲鳴を上げるが、

「すっ凄い、

 締まる、

 締まる、
 
 女の子とは桁違い…」

ギュッ!

と管を締め付けてくる勝俊の力に美那は驚き、

「あはっ、

 いいわぁ…

 男の人って締りがキツイって聞いていたけど、

 凄い

 凄いわぁ」

産卵のための管を深々を突き刺して悶え始める。

その一方で

「はっ早く

 早く抜いてくれぇ…」

激痛に耐える勝俊は美那の下で悲鳴を上げると、

「うふっ、

 これからよ」

と美那は意地悪く囁き、

ピチ

ピチピチピチ!

尾びれを細かく動かし身体を震えさせ始めた。

その途端、

「ぐわぁぁぁ!」

勝俊の悲鳴がさらに高くなり、

「いいわぁ…

 とっても締まるの」

豊満な乳房を弄びながら美那は身体を振るわせる。

そして、

「あはっ

 あっあっあっ、

 卵が…

 卵が生まれる…」

と叫んだ途端、

ビクン!

美那は身体を痙攣させ、

ジュルッ!…

勝俊を突き刺す管の中をゆっくりと影が動いて行ったのであった。



翌日。

勝俊の姿はプールのスタート台にあった。

「こんにちわ」

昨日と同じ競泳水着にTシャツを着た美那がプールサイドに立つ省吾に向かって挨拶をすると、

「あぁ、水元ぉ」

見に焼けた顔に笑みを作りながら省吾は返事をする。

「柏葉君の調子、戻ったみたいですね」

スタート台の勝俊をチラリと見た後、

美奈は省吾に話しかけると、

「あぁ、

 こうもあっさりと立ち直ってくれるなんてな、

 一体何を話したんだ?

 俺も参考にしたいんだけど」

と省吾は立ち直りの秘訣を尋ねた。

「いぃぇ、

 大したことは無いんですよ、

 ちょっとあるものを差し上げただけですから」

その質問に美那はサラリと答えると、

「柏葉君はもぅ大丈夫ですよ、

 今度の大会、

 頑張ってくださいね」

と言いながら省吾の肩を叩く。

「あぁ、

 女子部には負けないぞぉ」

美那の言葉に省吾はそう言いながらガッツポーズを見せるが、

美那はスタート台の勝俊を改めて見ると、

ニュルッ!

競泳水着が覆う股間を小さく膨らませた。

そして、それに応える様に、

ムクッ!

勝俊の股間も膨らみ競泳パンツを押し上げるが、

だが、その中には男のイチモツの姿はなく、

生えかけのウロコの間から半透明の管が突き出し、

競泳パンツを押し上げているのであった。



美那に見守られながら

勝俊は女魚へと変身してゆく…



おわり