風祭文庫・人魚変身の館






「防波堤の人魚」


作・風祭玲

Vol.380





ザザーン…

高かった陽が水平線に近づき西の空を茜色に染め上げたころ、

夏色のセーラー服に身を包んだ少女・沙希が

沖合いに突き出した防波堤の上をゆっくりとした足取りで歩いていた。

学校では友達と一緒にいる彼女だったが、

しかし、毎週水曜日の夕暮れになると一人でココに来ていた。

ザッ

ザッ

あの事件から直に防波堤は改修され

凸型をしていた断面は死角をなくすために□の形に修正されていた。

広々とした防波堤の上を沙希は何か決心をしたような表情でその突端に来ると、

「………」

無言のまま防波堤の突端に腰を下ろす。

さぁ…

海から吹く風が彼女の髪の毛を撫でる様に吹き抜けていくと、

程なくして

ザザザザザ…

彼女の目の前を漁を終えた漁船が1隻通過して行くと港の中へと入って行った。

堤防にはあの忌まわしい事件を思い起こせるものはすべて消えていた。

「お姉ちゃん…」

すっかり様変わりした風景の中

沙希はゴロンと仰向けになって茜色に染まった空を眺めていると、

『沙希…』

突然、海の中から透き通るような女性の声が響き渡った。

「!!

 お姉ちゃん?」

その声に反応するかのように沙希は起き上がり、

そして声を上げると、

ジュポッ

という小さな音と共に、沙希の足元の海中より女性の頭が浮かび上がると、

キョロキョロ

と周囲を見渡した。

「お姉ちゃん、

 こっちよこっち」

海中にいる女性に向かって沙希は声を上げると、

『!』

女性は先に気づき、

そして、

バシャッ!!

っと勢いよくジャンプをすると夕日にその体を照らし出した。

大きく広がるピンク色の染まった髪、

鱗に覆われ流線型の形をした下半身、

そして、その先と腰の両側から飛び出したような鰭がついた

そう、彼女は半人半魚の人魚だった。

人魚は巻き上げた海水をキラキラと輝かせながら再び海に戻っていく。

「もぅ、お姉ちゃんたらふざけないの!!」

そんな人魚の行動に沙希は思わず怒鳴ると、

『あら、折角大ジャンプをしてあげたのに、

 連れないの…』

と沙希より”お姉ちゃん”と呼ばれた人魚はそう答えながら沙希に向かって手を差し出した。

「はいはい(よいしょっ)」

人魚の求めに応じて沙希は人魚の腕を掴み

そして、身体を引きあげると自分の膝の上へと乗せた。

『うわぁぁ、沙希ちゃんって力持ちねぇ』

彼女の行動を人魚はそう褒め称えると、

「あのね」

沙希はむくれた表情をする。

しかし、

『うふっ

 怒った沙希ちゃんの顔も可愛い…』

人魚はそんな沙希の鼻の頭をつつきながらそう呟くと、

「………」

急にまじめな顔になり、

そして、ジッと沙希の顔を見つめた。

「お姉ちゃん…」

『元気してた?沙希?』

「うん」

『お父さんとお母さんは?』

「うん………一応、大丈夫よ、

 お姉ちゃんのこと死んだって思っているから」

『そうね…』

沙希と言葉を交わした人魚はそのまま視線を彼女の脇に落とした。

そう、この人魚こそ沙希の姉の美希であり、

3年前の大潮の逢魔ヶ時、

禁忌を破ってこの防波堤で人魚の姿を見た罰により、

人魚マーによって人魚の卵を産み付けられた美希は身体を人魚の姿に変身させられ、

以来、こうして人魚マーたちの目を盗んでは妹の沙希に会いに来ていた。



「お姉ちゃん、

 そんな顔をしないで」

美希のさびしそうな表情を見た沙希は思わずそう言うと、

『え?』

沙希のその言葉に美希は顔を上げる。

すると、沙希が何か意を決したような表情になると、

「お姉ちゃん」

と改めて話しかけてきた。

『なっなに?』

沙希の声に美希が身体を引きながら聞き返すと、

グッ

沙希は美希を見つめ、

そして、

「あたし…人魚になりたいの」

と淡々とそして力強く美希に向かって告げた。

「………」

無言の時間が過ぎていく、

先に声をあげたのは美希のほうだった。

『いっいきなり何を言い出すの?沙希ちゃん…』

沙希の言葉に戸惑いながら美希はそう返事をすると、

「あたし決めたの、

 あたしもお姉ちゃんと同じ人魚になるって、

 だからお願い、お姉ちゃん、

 あたしを人魚にして」

沙希は真顔で美希に懇願した。

『だっだめよっ

 あたしを見てわかるでしょう?

 一度人魚になってしまったら元には戻れないのよ。

 いくら陸に戻りたくても、

 2本の足で歩きたくても、

 人魚になってしまったら戻ることはできないのよ』

美希は驚きながら沙希を思いとどまらせようとすると

沙希は握っていた拳をきつく握り直し、

「実は父さんと母さん…離婚することになったの

 それで、あたしのことどちらかが見るかでケンカばかり…

 あたし…もぅ嫌なのっ

 だから、お姉ちゃん、

 あたしを人魚にして海に連れて行って」

と懇願した。

『そんな…』

沙希の口から出てきた意外な事実に美希は驚くと、

『そうなの…

 沙希も苦労していたのね。

 沙希には人間のままでずっと居てほしかったけど』

美希はそう呟きながら手を伸ばすと

スカートのしたから伸びる沙希の白い足をそっと撫でる。

「ありがとう、お姉ちゃん、あたしのことを思ってくれて…

 でも、あたし決めたの、

 あたしを人魚に…人魚にして…」

と沙希は懇願する。

すると、

美希は沙希の顔を見つめ、

『わかったわ…

 沙希がそれほどまでに言うなら人魚にしてあげる。

 でも、一度人魚になったら、本当に戻れないのよ、

 それでもいいのね』

と念を押すように問いただすと、

コクリ

沙希は静かにうなづいた。

それを見た美希は沙希の決心が固いことを確認すると、

『じゃぁ、

 あたしを防波堤の上におろして、

 そして、あたしの前で仰向けになって股を開いて、

 そう、あたしがマーに犯されたときのように…』

と美希は自分が人魚にされたときの様子を思い浮かべながら沙希に指示をした。

すると、

「う…ん」

美希の指示に従うように沙希は姉を抱きかかえて立ち上がると、

少し後ずさりをして美希の体を防波堤の上に下ろした。

そして、

「お姉ちゃん、これでいいの?」

と尋ねながら沙希は美希の前で向けになり股を開く。

『えぇ…それでいいわ』

そんな沙希の姿を見下ろしながら美希はそう言うと

大きく開いた沙希の二本の脚の間に

自分の鱗に覆われた流線型の下半身を割り込ませるように入れる。

ヒヤリ

冷たく濡れた姉の下半身の感触が沙希の内股に広がっていくと、

「うっ」

その感覚に沙希の体は声と共にピクンと微かに動いた。

『あっ冷たかった?』

それに気づいた美希が沙希に声を掛けると、

フルフル

美希の言葉に沙希は首を横に振り、

「大丈夫よ」

と返事をする。

すると、そんな沙希に覆いかぶさるように美希が迫り、

そして、右手を自分の股間があった辺りにそっと持っていくと、

グィッ

っと力強く押し込んだ。

その途端、

『うっ』

美希は噛み殺したよなうめき声を上げると、

にゅくっ!!

美希の人差し指と中指の間から親指の3倍ほどの大きさの白くて透明な管が顔を出した。

「お姉ちゃんそれ…」

その管を見つめながら沙希が尋ねると、

『沙希がこれを見るのは2度目ね、

 そう、これは卵を産むための管…

 あたしもかつてここで人魚に卵を産みつけられて人魚になったわ…

 沙希…

 今度はあたしがこの管であなたのお腹に人魚の卵を産み付けてあげる。

 そして、それが孵ったとき、

 沙希は人魚になるのよ』

と言うと

その途端、

にゅにゅにゅ!!

っと美希の輸卵管が突き出すようにして伸びていくと、

瞬く間に男性のペニスより長くて逞しい姿をへと変貌していった。

「お姉ちゃん…」

沙希は目を丸くして姉の体から突き出した輸卵管を見つめる。

『どうしたの?沙希

 怖くなった?

 嫌になったのなら止めるけど』

ビクン

ビクン

っと小刻みに震える輸卵管に手を添えながら美希が尋ねると、

「ううん…大丈夫よ…」

美希の言葉に沙希はそう返事をしながら

履いていた下着に手をかけるとそっと下ろした。

『本当にいいのね』

コクリ

最後の確認をする美希の声に沙希が頷くと、

スッ

美希の手が沙希の首に絡まるように伸び、

そして、唇同士が静かに合わさった。

「お姉ちゃん…」

『沙希…』

キスをした二人はそう呟きながらきつく抱きしめ合う。

と同時にいまだ男を知らない沙希の秘所を引き裂くようにして美希の輸卵管が侵入してきた。

「うっ」

破瓜の痛みが沙希の体内を突き抜けていくと、

沙希の表情が一気に強張っていく。

すると、

『沙希…』

そんな沙希を解きほぐすかのように美希は優しく声をかけ、

沙希の口に自分の口を重ね合わせるとその中に自分の舌を入れ沙希の舌に絡ませる。

「お姉ちゃん

 お姉ちゃん

 お姉ちゃん」

沙希は何度もそう呟きながら美希の体にしがみ付く。

『怖がらないでいいのよ…

 あたしにすべてを預けなさい』

震える沙希の頭を撫でながら美希はそう言うと、

プルプル

っと鱗に覆われた下半身を左右に震えさせ始めた。

『あぁ…

 沙希ちゃんが締め付ける』

顎を上げ髪を振り乱しながら美希はそう呟くと、

「…お姉ちゃんが

 …お姉ちゃんが

 あたしの中で動いているぅ」

沙希も負けじとそう言うと美希の乳房に顔を埋めた。

「あっあん…」

『いっいぃ…』

いま二人はひとつになっていた。

そして、程なくして、

『あっ

 卵が…

 卵が生まれるぅ!!』

下半身を震わせながら美希がそう叫ぶと、

「あたしに産み付けて、人魚の卵を…」

沙希もそう叫び、

ギュッ

っと股間に力を入れた。

そのとき、

ドクン!!

美希の輸卵管が大きく膨らむと、

ニュルリ…

輸卵管の中を青紫色をした卵がゆっくりと沙希へと向かって行くとその体内へと入っていった。

「あぁっ

 卵が入ってきたぁ…

 いやぁぁ

 あたしの中に入ってくるぅ

 あぁ…来て…

 あたしを人魚にして!!」

自分の体内奥深くに侵入してくる異物を感じながら沙希はそんな声を上げると、

ニュル…

ニュル…

2つめ3つめと美希の輸卵管の中を産み落とされていく卵が沙希の体内へと送り込まれて行った。

『くふぅ』

ぬぷっ

ようやく産卵を終えた美希が息を吐きながら沙希の秘所よりゆっくりと輸卵管を引き抜くと、

ドロッ

輸卵管が引き抜かれた沙希の秘所から

透明な粘液が溢れるようにして流れ落ち続けていた。

『はぁはぁ』

産卵を終えた美希は肩で息をしながら舐めるように妹を見つめ、

そして、そっと沙希の下腹部に手を置くと、

『うふ、

 いっぱい生んじゃった。

 さぁ、沙希のお腹の中に人魚の卵を生んであげたわ』

と言うと、

「あぁ…お姉ちゃんの卵があたしの中に…あるうぅ」

沙希は自分の体内に産み付けられた卵の感覚を確認するかのように身体を捻りながらそう返事をすると、

コクリ

美希は大きく頷き、

『もぅすぐ孵るわ…』

と付け加えた。

「そう…この卵が孵ったらあたし…人魚になるのね」

美希の言葉に沙希は自分の下腹部をさすりながらそう聞き返すと、

その途端、

ピシッ

沙希の体内に産み付けられた卵が一斉に孵化を始めた。

ドクン!!

そして、それにあわせるようにして沙希の体が大きく跳ねると、

「うぐぅぅぅぅぅ!!」

沙希は目を丸くしながら体を思いっきり海老反らせた。

『ふふふふ…

 始まったのね、

 沙希、

 あなたの身体はいまあたしが生みつけた人魚の卵に食べられているのよ、

 かつてあたしがそうだったように…』

美希はそう呟くと、

「うがぁぁぁぁぁ!!」

叫び声を上げのた打ち回る沙希の姿をじっと眺めていた。

「うぉぉぉぉぉ!!」

「ぐわぁぁぁぁ!!」

沙希は全身を掻き毟りながら叫び声を上げ、そしてのた打ち回る。

しかし、そんな彼女の絶叫も潮騒にかき消され誰も聞くことは無かった。

沙希の苦しみは何時間も続き、

いつしか夜が明け始めていた。

『あたしのときと違って卵の数が少ないから、

 変身に時間が掛かるのね』

苦しむ沙希の姿を海の中から見ながら美希はそう呟く、

そして、薄明が暗かった空に彩りを与え始めたころ、

「うがぁぁぁ」

沙希が一際大きな叫び声を残して仰向けになって倒れると、

彼女の体に変化が現れ始めた。

メリメリメリ!!

硬直したようにピンと伸ばした両足から異音が響き渡ると、

ググググググ…

二本の脚が癒着するかのように融合しはじめる。

「くぅぅぅぅぅぅ」

沙希は歯を食いしばりその変化に耐えていると、

やがて、彼女の二本の足は一本の肉棒へと変化し、

さらに

ジワッ

それを覆い尽くすかのように美希と同じ青緑色の鱗が生え出すと、

褪せ始めた月明かりを受けながら輝きを放ち始めた。

『さぁ、もぅ少しよ、

 沙希…

 あと少しであなたは人魚になれるわ』

堤防の上に上がった美希は生え揃っていく鱗をそっと撫でながらそっと呟くと、

次第にヒトではなくなっていく妹の姿を眺めていた。

すると、それに応えるかのように

メリメリメリ

ミシミシミシ

鱗に覆われたかつての脚の先より鋭くとがった鰭が生え始めると、

さらに沙希の腰があった辺りからも左右に向かって鰭が生え始める。

そして、そのころには沙希の変身は山を通り越したらしく

「フーフー」

沙希は荒れた息を整えるかのように大きく息へと変わっていた。



『沙希?

 沙希?

 聞こえる?』

『うっ

 お姉ちゃん?』

美希の声に沙希がゆっくりを目を開けると、

彼女の目前に姉の顔が大きく迫っていた。

『あれ?

 あっあたしどうしたんだろう?

 確かお姉ちゃんに人魚の卵を産み付けてもらって』

記憶を辿りながら沙希はそう言うと、

『おめでとう、沙希ちゃん』

美希はそう祝福をしながら妹を抱き起こした。

『おめでとうって?』

美希の言葉の意味がわからずに沙希が聞き返すと、

『なにを言っているのよ、

 沙希ちゃん、人魚になったのよ』

美希は語りかけるように沙希に告げた。

『え?

 あたし人魚になったの?』

美希の言葉に信じられないような表情で聞き返すと、

『ほらっ

 よく見るのよ、

 沙希ちゃんの体を』

美希はそう言いながら抱き起こすと沙希に自分の体を見せた。

『うそぉ』

沙希の目に映ったのは鱗に覆われ朝日を受けて輝くかつての自分の脚と

そしてその先で静かに垂れている尾びれの姿だった。

『あっあたし…

 本当に人魚になったの?』

聞き返すように沙希が尋ねると、

『そうよっ

 沙希ちゃんは人魚になったのよ』

美希は沙希の肩に手を置きながらそう告げた。

そして、

『さぁ、沙希ちゃん

 こんな服は脱いで海に行きましょう、

 ここはもぅ沙希ちゃんが住むところじゃないわ』

美希はそう沙希に告げると、

制服の裾に手をかけた。

『ちょちょと、待って

 そんな…

 だって恥ずかしいよぉ』

沙希はそう言いながら脇を締めると、

『なにを言っているのよ、

 沙希ちゃんはもぅ人魚なのよ

 人魚に服は要らないの。

 さぁ、それを脱いで、ね。』

『う…ん…』

美希に諭されるようして沙希は制服を防波堤の上に脱ぎ捨てると、

プルンと震える乳房をさらけ出した。

すると、

『行きましょう、海へ…』

美希は恥ずかしそうにしている沙希に告げるとその手を握り締めた。



サァー

朝日が二人を照らし出したとき、

バッ!

二人の人魚は朝日を受けながら大きくジャンプすると海の中へと消えて行った。

そして、二度とこの防波堤に人魚が戻ってくることは無かった。



おわり