風祭文庫・人魚の館






「潮騒の島」
【第8話:竜筒】

作・風祭玲

Vol.208





−1−

海人達が海竜・レンに乗って十畳島を離れた頃、

水姫達は海我神達に監視されながら十畳子島の渚を歩いていた。

ザッザッザッ

道路の類がほとんど未整備のこの島で唯一の通路である砂浜を

みなと様を先頭に踏みしめるようにして彼らは歩く。

「はぁ〜ぁ

 こんな事でなく、ふつうの海水浴でここに来たのならどんなに良いことか」

と珊瑚の破片でできた無垢の砂浜を踏みしめつつ友香がため息混じりに呟くと、

「ホント…」

疲れたような声で女性陣全員が返事をした。

「姫様…」

老巫女が先頭を歩くみなと様に声をかけると、

「案じるな…

 私は一度ここに来たかったのだ…」

と小声で返事をする。

「はぁ?」

老巫女がその言葉の意味を確かめると、

「以前、水我神の話を聞いたことがある。

 この島のどこかに竜王様が封じ込められているとな」

「でっでは…」

「そうだ、もしも機会があれば私の手で竜王様をお救いしたい」

みなと様はそう告げると、

キッ

と前を向いた。



やがて、一行は小さな尾根を越すと、

目の前に規模の大きい砂浜が姿を現した。

「うわぁぁぁぁぁぁ」

夕暮れ時と相まってそのあまりにもの見事な景観に一同はしばし見とれていると、

「おらっ、

 突っ立ってないでさっさと歩け」

と業を煮やした男が後ろから小突いた。

「はいはいっ、わかりましたよ」

文句を言いながら敬太が再び歩き始めた途端、

「ありゃぁなんだ?」

と彼は砂浜から少し離れた沖に浮かぶ小さな岩礁と思わしき物体を指した。

「なにかな?」

最初のうちは遠くてよく確認できなかったが、

しかし、近づくにつれてそれは、

沖に向かって突き出した長方形の形をし、

頂上部はスパッと切り取られたように平らで、

また数本の柱のような杭が空に向かって突き出ていた。

そして、砂浜から岩礁に向かって桟橋のような橋が架けられていた。

「なんか…祭壇のように見えるね」

多恵が呟くと、

「ふむっ、確かに言われてみれば…」

敬太が納得したような顔をする。

「なぁ…祭壇といえば

 古代インカでは生け贄から未だ動く心臓を取り出して太陽に捧げた。

 って話を聞いた事があるぞ」

「………」

孝がその話をした瞬間、周囲の空気が一気に凍り付いた。

「……あれ?、どうしたんだ?、みんな」

黙りこくってしまった敬太達に孝はそう言うと、

ゴン!!

強烈な一発が彼の頭上を見舞った。

「痛ってぇ……あにすんだよぉ」

涙をためながら抗議すると、

「お前、こういう状況でよくそういう話ができるなぁ」

「ホントさいてー」

「洒落ではすまされないぞ」

「なんなら、あの祭壇に一番乗りしてみる?」

と敬太や圭子達が代わる代わる怒鳴りつけた。

「そんなこと言っても…」

孝がぼやくと、

「おらっ、ソコ!!

 黙ってろ!!」

見張りの男が怒鳴り声をあげた。



「!!

 姫様…」

何かに気づいた老巫女がみなと様に声をかけた。

「うむっ、水我神め結界を張ったな、

 それにしても、子島を根城にしているだけにあって

 このような場所まで作ってあったとはな…」

みなと様はそう呟くと鋭い視線で後からついてくる水我神をにらみつける。

ヒュォォォォォ…

夕暮れになり冷えてきた空気が一陣の風となって吹き抜けていく。

程なくして一行が岩礁へと続く橋のたもとに到着した。

すると、

「ようこそ、我らの聖地へ」

水我神は水姫やみなと様の前に立つとそう告げた。

「聖地?」

敬太が聞き返すと、

「そうだ、ここは我らの聖地だ…

 お前達はここで我々の首領様に会い、

 そして、首領様の血肉の一部になるのだぁ!!」

と高らかに言う。

「おっ、おいっ

 これってどういう?」

「ぶわぁかっ!!、

 俺達を生け贄にしようって話だろうが」

孝の質問に敬太が答えると、

「うわぁぁぁぁぁ」

たちまち敬太達4人は一目散に走り出したが、

しかし、

ドスッ!!

ゲシッ!!

スグに監視をしていた男達に取り押さえられると、

反抗できないようにその場で叩きのめされてしまった。

「いけませんなぁ…

 行儀が悪いと痛い思いをするばかりですよ」

後ろ手に縛られ青あざだらけの顔を見ながら水我神はそう言うと、

「さて、首領様がお待ちかねです」

水我神はそう言って男達に目で合図した。

すると、

「おらっ」

男達の声とともに敬太達が引きずられていくように祭壇へと連行していく、

「いやだぁ〜っ」

「死にたくねぇ!!」

敬太達は泣きわめきながら必死で抵抗を試みるが、

しかし、それはほんの時間稼ぎにしかならなかった。

「お待ちな…」

「待って!!」

その様子を見ていたみなと様が声を上げると同時に水姫が声を上げた。

「ん?」

水我神は声の大きかった水姫の方を見る。

「その人達を連れて行くなら、先に私を連れて行きなさい」

キッ!!

っと水姫は水我神を見据えるようにして言う。

「……ほぅ…」

水我神は水姫をみて驚いたような口調で返事をすると、

「いやいや、

 まずは輝水を台無しにしてしまった方々にその責任をとって貰いましょう。

 アナタの出番はその後です、

 そのときにしっかりと努めてもらいますから」

彼は人差し指を横に降りながらそう言うと、

「そんな…それは海人達が取りに行くことで終わったはずです」

「ははは…あの者達は帰っては来ませんよ」

水姫の抗議に水我神は自信たっぷりに返事をすると、

パンパン!!

「さぁ、時間です!!」

と手をたたきながら男達にそう言った。

すると彼らは敬太達を手際よく突き出ている杭にくくりつけ、

そして作業が終わると、

サッ

っと祭壇から離れていった。



−2−

夕日の縁が水平線に触れたとき、

ニィ…

水我神の口元がゆるむ、

と同時に

ゴバァァァァァァ!!

祭壇の前の海面が大きく盛り上がると、

ザザザザザザ…

巨大な黒い竜が姿を現した。

「ヒィィィィィィ」

降り注ぐ海水でずぶ濡れになりながら敬太は間近で見る竜に悲鳴を上げると、

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「お助けぇぇぇぇぇぇ」

孝や敦、重信も一斉に声を上げた。

グルルルルルルル…

黒竜は敬太達を一別すると、

『水我神はおるかぁ…』

と声を張り上げた。

「はっ首領様、ここに控えております」

水我神はスグに飛び出すと黒竜の前に跪いた。

『なんだ?、この者共は…』

黒竜は雷鳴のような声で言うと、

「はっ、今回は輝水ではなく贄を用意しましたでございます」

とひれ伏しながら水我神は告げた。

『…んん?、輝水は手に入らなかったのかぁ?』

鋭い視線で黒竜が言うと、

「申し訳ございません、

 そこの者共が首領様に捧げるはずの輝水を台無しにしてしまいまして…」
 
水我神が事の顛末を報告しようとしたとたん。

『馬鹿者!!っ、それは貴様がタルんでるからだ』

黒竜は水我神に向かって怒鳴り声をあげた。

「ひぇぇぇぇ…

 平にお許しを!!」

水我神はまるで押しつぶされたようにひれ伏した。

グルルルルルルル…

その姿を見て黒竜はもぅ一度敬太達を見て、

『で、贄はこれだけでは無いのであろうなぁ』

と言うと、

「ははっ、他にはこの後ろの方に控えている者が…

 それに、乙姫をも同行させておりますです」

そう言いながら水我神は砂浜で抱き合っている多恵や水姫を指さした。

「きゃっ!!」

多恵達が固まるようにしてお互いを抱きしめる。

『んん?

 ほぅ…

 乙姫まで連れてくるとはなかなか気が利くのぅ…

 よしっ、

 ならば、そこの娘から先に喰ろうとするか』

グゥゥゥゥン

黒竜は首を伸ばすと水姫を見据えた。

水姫も負けじと黒竜を見返す。

「あっ、あのぅ…この者共は…」

水我神は敬太達を指さしながら訊ねると、

『そんな者を喰ろうても、腹の足しにはならん

 さっさと用意せんか』
 
と黒竜は声を上げた。

「はっただいま!!」

その言葉に水我神は恐縮すると、

スグに敬太達を降ろすと代わりに水姫を杭に縛り付けた。

「水姫…」

多恵達は固まりながら心配をする。

『ぐふふふふ…

 さて、どうやって喰ろうか…』
 
黒竜は舌なめずりをしながら

まるで、好物のケーキを前にした子供が

どこから手をつけようかと悩んでいるかのようにして水姫を眺めていた。

しかし、水姫は怯えることなく至って冷静に黒竜を見つめていた。

そして

「ん?こいつ…

 本物の竜ではないな…」

と黒竜の正体を見抜き始めていた。



「くっ…」

一方でその様子を見ていたみなと様は

いまにでも飛び出していきたい気持ちを押さえ込んでいた。

「ひっ姫様…」

その様子に心配した老巫女が声をかける。

「案ずるな…でも悔しい…

 私一人ではどうもできないなんて…

 これが竜宮の主たる乙姫の姿とはな…」

と吐き捨てるように言う。

「せめて…

 せめて…

 竜王様がココにおわせばこのようなことには」

別の老巫女が呟くと、

「それは言うなっ」

みなと様は声を荒げた。

「海人君、犬塚君、早く来て…」

多恵は海人達がココに駆けつけてくることのみを祈っていた。



−3−

ヒュォォォォォォォ

そのころ、

海人たちを乗せた海竜・レンは十畳子島のスグ傍まで迫っていた。

「おぉぃ、もうすぐ日が沈むぞ」

水平線に縁が接した日を見て藤一郎が声を上げた。

「ギリギリか…」

海人も沈み始めた太陽を眺めると、

「やっぱ、ちょっと重かったみたいだな」

と言いながら海竜・レンが抱えている下の水タンクに視線を移した。

すると、

スチャッ

藤一郎が抜いた刀を突きつけながら、

「判っているだろうなぁ…

 ”間に合いませんでした。”

 ではすまされないんだぞ」

と凄みをきかせて迫った。

「まぁまぁ…そんな物騒なモノは仕舞って…なっ」

刃先を親指と人差し指で挟みながら海人が言ったとき、


ブワッ!!!!

ゴワッ!!

海竜・レンがまるで見えない壁に衝突したように

突如垂直に立ち上がると強い力で押し戻されてしまった。

「どわぁぁぁぁぁ!!」

「うわぁぁぁぁ!!」

突然のことにバランスを崩した藤一郎と海人は滑り落ちていくが、

「なんのっ」

ヒシッ

必死の思いで二人はなんとかレンの前足にしがみつくことができた。

ヒュォォォォォ…

ゴクリ…

遙か下に望む青さを失いつつある海面を見て藤一郎は生唾を飲み込みんでいると

「なるほど…

 出前を注文したのに、門を堅く閉ざすとは感心しないな」

と海人は前足の指の上で腕組みをしながら言う、

「…大丈夫ですか?」

レンの頭の上から鮎香がのぞき込むようにして声をかけると、

「えぇ…大丈夫ですっ、

 こう見ても悪運は強い方ですから…」

と二人はVサインを作りながら答えた。



「で、どうするんだ?」

「どうしましょう…」

再びレンの頭の上に戻った藤一郎と海人、

そして鮎香が善後策を考えていると、

「残された時間はあまりないようだし、

 それに”来るな”

 と言われればイヤでも行きたくなるのは心情。

 よしっ俺に任せろ」

海人はそう言って立ち上がると一歩を踏み出した。

その途端。

「(ツルン)うわぁぁぁぁぁぁ」

と言う声を残してレンの尻尾の方へと滑り落ちていった。

「アホが…一生やってろ」

ドン

藤一郎は刀の鞘を突き立てながらその場にあぐらを組んだ。

「トトトトトト…」

しかし海人も器用にレンの上を滑りながら後ろ足から下に降りていく、

そして

ガサッ!!

レンの後ろ足がつかんでいる包みの上に降り立った。

「レン…あなた、いつの間にそんなモノを…」

意外な品物の登場に鮎香が驚くと、

「…神社の宝物庫にあったモノをちょっと失敬してきました」

そう叫びながら海人は竜の後ろ足が掴んでいる包みを開け始めた。

バサッ!!

海人が包みを放り投げると、

中から細長く砲身のような金属製の物体が姿を現す。

「それは…竜筒…」

暗緑色をした砲身を見て鮎香が驚く、

「竜筒?」

藤一郎がのぞき込むと、

「えぇ…あれは、

 われら海精族・人魚の間に伝わる古の武器です。

 しかし、それを自由に使うことができるのは竜王・海彦さまのみのはず…」

――(ハッ)まさか…あなた様は…

あることに気づいた鮎香が両手で口を覆うと、

「おぉいっ、藤一郎!!、そのタンクを解放してくれ」

と海人が声を上げた。

「あぁ?いいのか?」

彼が聞き返すと、

「構わんっ…、

 と言うか、その竜水が無いとコイツを撃てないんだ!!」

コンコン!!

と足下の竜筒を叩きながら海人が叫ぶと、

「あぁ判った!!

 じゃ解放するぞぉ」

藤一郎がそう言いながら、

Pi

手元のリモコンのボタンを押したとたん、

ゴバッ!!

海竜・レンが前足でかかえていたタンクの側壁が吹き飛ぶように開くと、

中に入っていた竜水がまるで花が咲いたように広がった。

「あっ」

それを見た鮎香が声を上げる。

しかし、

大きく開いた竜水の花はまるで透明なガラス容器に移し替えるかのごとく閉じると

巨大な丸い水の球となって宙に浮いた。

そしてゆっくりとレンの後方へと移動していく、

ポーン!!

まるで大きな風船を受け止めるように海人が片手で竜水球を軽く受け止めると、

「よーしっ、

 では一丁やりますか」

にやけながら海人はそう言うと、両腕を竜水球につけた。

そして、

クッ!!

と力んだ途端、

ギン!!

竜水球は青白い光を放ち始め、

それはユックリと増光していく。

パァァァァァァァ!!

――輝水を…一瞬で…

光り輝く水玉を見て鮎香は驚きと確信した。

――やっぱり、あの人は竜王様だったんだ。

バリバリバリ!!

光は更に強くなると輝水球より放電が始まり、

そしてあふれ出た気が海竜・レンへと流れ込みはじめた。

「ぐぉぉぉぉぉぉぉ…」

ムクムクムク

すると、やや貧弱だったレンの体がたくましく盛り上がり始めた。

「おっおいなんだこれは…」

その様子に藤一郎が驚くと、

「鮎香さぁん…交渉の秘訣って知ってますぅ?」

と海人は彼女に話しかけた。

「え?」

とっさの問いかけに鮎香は返答に困窮すると、

「それは、席に着く前に相手の札を取り上げておくことなんですよ」

海人がそう言うと、

輝水球を竜筒の後方から突き出している皿の様な装置に触れさせた。

ミアミアミアミア…

輝水球より竜筒へと竜気が流れ込みはじめた。

キ・キ・キ・キ…

程なくして、竜筒の砲身全体が青白く輝きはじめる。

ググググ…

レンは避けるように上半身を大きく上に持ち上げると、

竜筒を持つ後ろ足を持ち替えた。

キラン!!

没しようとする日の光を受け砲身が一瞬輝いた。



−4−

「あっあれは…」

「なんだ?」

結界の内側、水姫と黒竜が対峙している十畳子島の浜でも、

沈もうとする太陽から離れて現れた青白い光を放つ光点に全員が驚きの声を上げた。

「なんだぁ…」

苦々しく光点を見据える水我神に対して、

「あれは…竜気の光…」

みなと様は立ち上がってそれを眺めた。

ザザザザザザ…

静かだった入り江に波が立ち始める。

そして波間から

キンキンキン…

と小さな光点が現れると、

風に吹かれ飛んでいくタンポポの綿毛のように光点が飛び始めた。

『…なんだこれは…』

水姫から顔を上げた黒竜が呟く、

「…これは竜筒の光…

 海人…まさか…」

これから起こることを予測した水姫は縛っている縄をほどき始めた。


そして、結界の外では…

カッ!!

ミミミミミミミミミ…

強烈な光を発する竜筒の上では

カシャッ!!

海人が目の前にせり上がったトリガーを両手で支えながら、

「エネルギー充填100%!!

 目標!!

 前方の結界!!」

と叫ぶと、

カチン!!

トリガーに取り付けられていた安全装置を解除する。

「エネルギー充填110%!!

 誤差修正!!」

ミミミミミミ…

ピシピシピシ…

竜筒に限界まで濃縮された竜気が暴れ始めた。

「エネルギー充填120%!!」

 ……

 用ぉー意っ!!

 …………

 撃テェェェェッ!!!」

海人はそう叫び、

ガシャッ!!

思いっきりトリガーを前に押し出した。

ゴワッ!!

竜筒を全体を覆っていた青白い光は

小さな光球を次々と沸き出させながら一気に砲口へと集まると、

一呼吸おいて、

シュパァァァァァァァァァン!!

白く輝く光の槍を十畳子島にめがけて打ち出した。

一方、子島の浜では

「ふふふふ…

 なにをしようと無駄だ、

 この結界は何人たりとも絶対に破ることはできない」

と光球を眺めながら水我神は自信たっぷりに呟く、

「みんな伏せて!!」

水姫は振り返りながら全員にその場に伏せるように叫んだ。

その途端、光球は姿を変えると槍となって突き刺さってきた。

シャァァァァァァァァァ!!

竜筒より放たれた光の槍が水我神が張った結界にふれた途端、

グニィ…

水我神が堅牢さを自慢していた結界は、

一瞬風船が拉げるように歪むと、

パァァァァァァン!!

まるでシャボン玉が弾けるかのごとく割れ呆気なく消滅した。

「んなぁにぃ!!」

それを目の当たりにした水我神は思わず絶句する。

しかし、彼にはその次の行動を起こす時間はなかった。

タタタタタ…

縄をふりほどいた水姫は素早く祭壇から飛び降りると、

フワッ

翠髪に朱色の鱗を輝かせる人魚へと変身する。

――間に合え…

そう念じつつ、

彼女は海面に降り立つと、

「ハイッ!!」

っと海面に手をつけるなり気合いを放った。

ゴワッ!!

たちまち海面が盛り上がったと同時に、

シャァァァァァァァァン…

光の矢が黒竜を押しつぶすように突き刺さってくると、

ボッ!!

まるで島を紙を破るかのごとく突き抜けると反対側へと去って行く。

刹那っ

カッ!!

真夏の日差しの数十倍いや数百倍の閃光が光ると同時に、

見る見るマッシュルームのような光の塊が十畳子島を飲み込んだ。



ゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォン!!

「なっなんだアレは…」

同時刻。

十畳島の人たちは一様に驚きながら、

十畳子島の方角より沸き上がっていく巨大な光の固まりを畏怖しながら眺めていた。



つづく


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