風祭文庫・モノノケ変身の館






「おさげ髪の吸血少女」
(第二夜:吸血の鬼)

作・編髪(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-246





「うふふふふ」

不気味な笑いを浮かべる母親によって結男は長く伸びた自分の髪の毛を編まれていた。

だが、母親に恐ろしい妖怪が乗り移っているとも知らず、

結男は自分の長くなった髪の毛に恍惚を感じてばかりいた。

小さい時から憧れだった女の子のような髪形になれると思うと、

結男の胸は高鳴りより興奮しているのである。

そして、すでに編み終った片側の髪の毛をつまんでは、

何度も鏡を見て自分の姿だけを確かめていると、

『さ、できたわ、

 ほら』

と言う母親の声と共に編まれていたもう一方の髪も終わり、

結男の肩から前に垂れ下げられる。

「あぁ…

 ついにこんな…

 女の子みたいに…」

髪の毛を見つめながら結男は呟くと、

『おほほほほ、

 女の子みたいになれて嬉しいかい』

と母親は結男に問い尋ねる。

「えっ?」

その問いに結男はちょっと返事に困った気がした。

どうして自分がこんな姿になるのを望んでいたことを母親が判ったのか、

これまで誰にも言ったことは無かったのに…

その事が実に不思議に思える。

『それに、

 急にこんなに髪の毛が伸びたのも、

 おかしいと思わないかい?』

再び母親の質問が浴びせられると、

「そ、そういえば…、

 でも、せっかく長くなった髪の毛だし、

 僕は構わないけど…」

と結男ははぐらかす様な返事をする。

すると、

『うふふふふ、

 あなたはあしたからその格好で学校に行けると思う?』

母親の口からその言葉が出たとき。

「え?

 そういえば…

 どうやって…」

結男はようやく自分の状況に気が付くが、

直ぐに

「大丈夫だよ、

 ちょっともったいないけど切ってしまえば」

と返事をしたのであった。

その途端、

『ほほほほ。

 切る必要なんて無いわ。

 そのかわり…』

と母親は言った所で結男の正面にまわり、

両肩から垂れていた三つ編みの髪の毛をそれぞれの手で摘み上げてみせる。

そして、結男の背中に両方の髪の毛をはらった後、

またその髪の毛を今度はそれぞれの手で強く握り始めたのであった。

「ママ、痛いよ。

 そんなに引っ張ったら」

髪の毛を引っ張られる痛みを受けながら結男は嫌がりだすと、

『おほほほ。

 おまえは夢のなかでもこうして女の子のおさげをよく引っ張っていたでしょう』

と母親は言う。

「夢って、やっぱりこれは夢なの?」

『そう考えてもおかしくないわね」』

結男の質問に母親はそう答えるが

だが母親の目が吊り上っていたのであった。

それどころか口も上下に大きく開き、

その中からは鋭い牙が上下から姿を見せたのである。

「うわーっ!」

母親の姿を見た結男は思わず悲鳴を上げてしまうと、

『ふ…ふ…ふ』

牙を生やす母親はまるで獲物を見据えるハンターの様な目で見据えてみせる。

「ママが、吸血鬼に…」

『そうよ。

 おまえも吸血鬼になるのよ』

怯える結男に向かって母親はそういうや否や、

がぶーっ!

母親はそのまま結男の首に噛み付き血を流させはじめた。

そして、流れ出た結男の血を母親は何度も舌で掬って血を啜ると、

結男はがくっと力を失い首を後ろにもたげていたのであった。



結男が目覚めたのは、

一日が過ぎて日付が変わる頃だった。

「ぼくはいったい…」

目ボケ眼で映る部屋の様子を見ながら結男は頭を掻くが

特に見ていた夢もなく、

いつのまにか眠っていたという感じでの目覚めであり、

寝かされていた部屋はいつも寝ている自分の部屋の寝床であり、

着ている寝間着もいつも着ている寝間着であった。

だが、明かりが消されているためにまわりが見えなかったが、

いざ起き上がってみると

自分の肩に三つ編みの髪がかかっているのが判る。

「やっぱり、

 髪の毛が急に長く伸びていたのは夢じゃなかったんだ」

結男は部屋の外に出て、

洗面所で鏡を見ようと歩き始める。

そして、実際に鏡を見た時、

結男の首には歯型の跡がついていたのであった。

そう、母親にかみつかれていたのだ。

「これって、

 まさか…

 じゃぁぼくは…」

歯型を触りながら結男はそう思っていると

すぐに母親が現われ、

『おほほほ、

 気がついたようね』

と話しかける。

「まっママ…」

現れた母親に向かって結男は驚いた声をあげると、

『お風呂、沸いているわよ

 ほら、髪の毛も洗いなさい、

 このシャンプーでね』

と母親は意外な指示をすると、

結男にシャンプーを手渡してみせる。

「うっうん」

困惑しながら結男は母親の言いつけに素直に従おうとすると、

『さぁ、その三つ編みほどいてあげるわ』

そう言いながら母親は結男の三つ編した髪に手を掻け解き始めた。

すると、結男はじっとして髪が解かれるのを待ち始める。

リボンもヘアゴムもはずされ背中にばさっと黒髪が下ろされる。

すると、結男は寝間着や下着も脱いで風呂場に入っていった。

背中にばさっとかかっている自分の髪の感触に恍惚感を抱かずにはいられなかった。

結果、結男は念入りに風呂場で自分の髪を洗っていた。

クラスにいる長い髪の藤原悦子や宮野昌子も

やっぱりこんなふうに洗っているのかなと思っていながらの洗髪、

その途端、結男の股間は一気に勃起し

止め処もなく精液が流れ出てくるのであった。

風呂場から脱衣所に戻り、

結男は裸のままで身体や髪の毛を拭き始めると、

『ほほほほ、洗ったわね、

 そしたら、こんどはこれを着なさい』

と母親は指示をしながら結男にあるものを手渡した。

「えっ、これを」

渡されたものを見ながら結男は声をあげるが、

「……はい」

直ぐに頬を赤らめながら頷くと、

結男に渡された物、

女ものの下着とネグリジェであった。

『素直な子は好きよ。

 そう、夕べおまえのサイズにあわせて買ったのよ』

その母親の声に押されるようにして、

結男は迷うこともなく身につけていた。

ぎこちない手つきでで、

性器をパンティーにつめるのも苦しかったが、

でもなんとか着られた。

着替え終わった結男は、

直ぐに髪の毛を母親にドライヤーで乾かしてもらい、

またヘアブラシで梳かされる。

『いいわね。

 おまえにはこれからやってもらわなければならないことがあるの』

「これからやることって?」

『おほほほほ。

 おまえがその髪の毛を長くしてみたいという希望をかなえた条件を果たすのよ』

「条件?」

『ほら、鏡に向かって口を大きくあけてごらん』

「あっ!」

母親の指示に従い鏡を見ながら結男は自分の口を大きく開くと、

そこには口の上下から牙が生えているのを見つけたのであった。

『そう、

 おまえも、吸血鬼になっているのよ』

「じゃあ、ぼくは…」

『ふふふふ。

 もう、おまえは人間ではなくなったのだからね。

 人間の法律に従わずに、

 吸血鬼として行動すればいいのよ』

困惑する結男に向かって母親は勝ち誇ったかのようにして言う。

「ええっ?

 そんなぁ」

『うふふふふ。

 心配することないわ」

「ママ、

 どうしてこんなことを…」

『おほほほ。

 わたし達の仲間をふやすのがまず目的よ。

 おまえの学校にいる子供たちみんなを吸血鬼にするために

 わたしはここに降臨をした』

「学校じゅうの子供を吸血鬼にするって」

「おほほほ。

 おまえは自分の好きな子、

 それも女の子だけを襲って吸血鬼にすればいいわ。

 そうすれば、

 その子もまた別の子を襲って吸血鬼にするから、

 仲間がふえるのよ。

 どう?

 好きな女の子のこと、思い出しなさい』

母親のその言葉に結男はまずいちばん髪の毛を長くしている藤原悦子のことを思い出し、

あの三つ編みの宮野昌子のことも思い浮かべた。

すると、段々彼女達をを襲ってみたいと思うようになってくるのであった。

『ほら、興奮してきたわね』

そして、彼女達のことを思い出すと、

性器が勃起していることも母親に知られると、

『さあ、

 さっそくいらっしゃい』

と言うと二階の窓は大きく開け放たれ、

女装した姿のままの姿で結男は母親に連れられながら夜空に舞い上がっていく。



空を舞う母親は吸血鬼らしくマントを羽織っていた。

そして結男は宮野昌子がいる家に案内されていく、

だが、昌子の自宅は窓がしっかりと閉じられており、

容易には侵入できなさそうであったが、

しかしガラス窓の鍵をしっかり閉じていても、

母親の魔力によっていとも簡単に開けられていく、

『さ、あのお部屋にお入り』

魔力によって開けられた部屋に結男は入っていく、

するとそこには昌子と

もう一人、昌子の姉で女子高生である宮野暁子も眠っていたのであった。

昌子は前の日に登校していた三つ編みを肩に垂らしたままの姿であり、

一方、暁子も髪の毛を長く伸ばしたポニー・テールにしており、

毛先はお尻に届くほどあった。

『うふふふ。

 こうなったらこの子も…』

既に結男は身も心も悪魔になりきっていた。

そして牙を光らせながら結男は暁子のほうを選ぶと、

彼女が寝ているベッドのに潜り込み、

一気に暁子の髪の毛を鷲掴みにしてしまうと

暁子の首に自分の牙を近づけようとしたのであった。



つづく



この作品は編髪さんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。