風祭文庫・モノノケ変身の館






「購い」
(前編)


作・田中じろー(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-101





天界…灯火の神殿。

二人の天使がこっそりとここで逢い引きをしていた。

一人はこの神殿のキーパーであり、

自分が当番の時に愛しい相手を呼んでの情事だった。

本当ならこういった行為は堕落へ導かれるため禁止されている。

つまり、愛し合うのは自由だが、しかし仕事中だということ、

禁断の場所へ部外者を招き入れているということが問題なのだ。

この二人にとって幸いなのはまだばれていないということだろう。

何度か目の逢い引きの時、その事件は起こった。

呼び込まれていた天使が灯火の一つが消えていることに気がつき、

隣の灯火を移して消えていた灯火を燃え上がらせてしまったのだ。

それはどういうことか、

つまりこの灯火は生き物の寿命を示すもので

灯火が消えるとその灯火の生き物は死んでしまう。

これは運命であり、代え難いものなのだ。

その天使はさっきしたことをほめてもらおうと、

キーパーの天使にさりげなく話しかけた。

「この灯火って、消えるとどうなるの?」

「これは命の火だからね、

 消えたらその生き物は死んでしまうよ。

 まあ、寿命が来たってことだね」

「えっ、

 もしかしたら消えたら、

 消えたままにしておくの?」

「消えたところには大釜から新しい火をもらってくるんだよ。

 新しい命が大釜から生まれるんだ。

 でもそれをするのは上級天使だから、

 私は消えたことを上級天使に報告に行くだけ」

「へえ〜(どうしよう、よけいなことしたみたい)」

「だから、

 本当は何度も何度も見回って消えている灯火を探すのが私の役目なんだ」

「もし、たとえば隣の火が移ってもう一回燃え出すってことはないの?」

「無理にそうしない限りはないよ。

 だいだい、無理に灯け直す必要はないし」

「あっあのね、

 実は私…隣の火を使って灯け直したんだけど…」

「なに?

 それってどういうこと?」

「あの…消えたら灯け直さなきゃ行けないもんだと思って…」

その天使の言葉にキーパーの天使は頭を抱えると

「なんてことをしてくれたんだ」

と声を上げた。

「だって」

「そんなことをしたら、何が起きるかわからないんだぞ」

「おっ堕とされるかな」

「たぶんな。

 けど、黙っていてもわかってしまうと思うし」

「じゃあ、大天使様の所にいったほうがいいかな…」

天使の言葉にキーパーの天使はしばし考え込み、

そして、

「そうだね、

 でも、私も一緒に行くよ。

 事情を話せば、この情事のことも話さなければならなくなる。

 私も同罪だよ」

と視線を天使に向けながらそう決断をした。



「申し訳ありません」

大天使の前で二人は申し開きをし、

そして、裁きはすぐに下った。

キーパーの天使は最下級の階位にランク下げ。

罪を犯した天使は償いとして人間界に行きことの修正をすることになった。



木村正樹は浪人生だった。

背は低く体重はやや多め。

およそもてるという言葉には無縁の男だった。

けど、そんな彼にも人には知られていない一面があった。

ニィ…

「うっ(かわいい)」

そう、正樹は大のネコ好きで道端などでネコを見つけると

思わず手を出してしまう癖があったのだ。

そんな正樹が予備校からの帰り道、

ガブリ!!!

「痛い…」

いつもの如くネコに手を噛まれ、

その痛みに正樹が耐えていると、

ニィ…

正樹の手を噛んだネコは赤信号が点る交差点へと入っていく、

「あっ!!(危ない)」

それを見た正樹はネコを咄嗟に拾い上げようとしたが、

しかし、運悪く、

キキッ!!

ドォォン!!

交差点を左折してきたクルマにはねられ、そして病院へと運び込まれた。

正樹が病院に運び込まれ、救命処置がされている頃、

同じ病院で一人の少女が亡くなった。

少女の名前は有紗。

14歳という惜しまれる年齢だった。



その夜。

正樹はICUによる集中看護を受け、

その一方、有紗は明日、遺体を引き取られるということで霊安所に安置されていた。

そして夜中過ぎ、正樹は意識を取り戻した。

正樹の容態は危機は脱すると、

彼は主治医の判断で普通病棟に移され、

時を同じくして、

ピクッ!!

霊安所に安置されている遺体の指が微かに動いた。

カシャーン!!

「ふぅ、最後はここか」

遺体の指が動いたとき、

扉が開く音が響き渡ると警備員が巡回に訪れた。

そして、警備員が遺体に懐中電灯を当てて様子を探っていると、

ムクッ!!

遺体の一つが急に動いた。

「ん?」

それを見た警備員はあわてはせずに遺体の側へと寄って行く、

死後硬直で遺体が動くことはまれにあるのだ。

まして、死後そんなに経っていない遺体もある。

警備員が遺体に掛けられている掛け布のずれを直そうとしたとき、

ムクリ…

突然、その遺体は起きあがると、

「うっうわ〜」

百戦錬磨の警備員も流石に驚き、

悲鳴をあげながら尻餅をついてしまった。

しかし、

「………」

パサッ

起きあがった遺体は自分の上にかかっていた掛け布の取り去ると、

「暗いな〜、いま何時?」

と腰を抜かしている警備員に向かって話しかけてきた。

「あっ

 かはっ」

警備員は真っ青な顔をしながら腰を抜かしつつも、入り口の方へと這っていき、

そして、インターフォンにしがみつくなり、

「もっもしもし…」

と当直医を呼んだ。



その様子をきょとんと見ていた遺体、

そう有紗は

「どうしたの?

 ここどこ?」

と警備員に向かって話しかける。

彼女のその姿に警備員は

「も、もうすぐ先生が来るから。

 ちょっと見てもらおうね」

かなりうわずった声で言い聞かせていると、

5分もしない内に当直医が駆けつけるなり、

死亡と誤診をしたのではと有紗の身体を診はじめた。

そして、医師の白衣を見ているうちに警備員もなんとか落ち着き、

遠巻きに様子を見守っていたが、

「あっすみませんが、病棟の看護婦さん呼んで」

と当直医から声をかけられると、

「あっはっはいっ!!」

と言う声を残してナースステーションへ看護婦を呼びに飛び出していった。



有紗の様子は明らかに変だった。

言葉遣いがおかしい。

自分の体を見て意味不明のことを言う。

その様子を見た当直医になだめられると

ショックで混乱しているからといわれながら沈静剤を打たれ、

看護婦に付き添われて病室に連れて行かれると

そのまま寝かされてしまった。

コツコツコツ

医者と看護婦が去っていく音を聞きながら

有紗は自分の体をもう一回見る。

…僕はいったいどうしたんだ。

…女の子になっている。

…予備校から帰る途中…

…そうだ。

…僕はネコを助けようとして自動車にぶつかりそうになったんだ。

…でも、いったいこれはどういうことなんだ…

有紗は直前の記憶を呼び起こすが、

しかし、次第に打たれた薬が効いてきたのか急激な眠気が襲ってくると、

スー

そのまま静かな寝息を立てて寝てしまった。



目が覚めると、まだ女の子の姿だった。

「これは…

 どういうこと…」

この異常な事態に有紗は騒いだり、

説明を求めたりすると、

回りが気が触れたとか勘違いされそうなので、

何もしゃべらす様子をうかがっていた。

やがて看護婦を伴って医師がやって来ると有紗の検診を始めだす。

しかし、

「う〜ん…」

医師は不思議そうに首を傾げると、看護婦に指示を出し去っていってしまった。

…よっよし

医師が去った後、有紗は看護婦に向かって

あまり当たり障りのないように状況を確認しようと口を開いた。

「私はどうなったの?」

「あら、有紗ちゃん、ちゃんと話せるんだ。

 先生に聞かれたこと何で答えなかったの?」

「聞かれたことがよくわからなかったから」

用心深く答える。

「う〜ん。

 有紗ちゃんは自分がどういう病気だったか覚えている?」

「わからない。

 聞かされていた?」

質問に質問で返した。

「そうね、とっても重い病気だったの。

 でも、今は何ともないみたいなのよ。

 昨日かなりひどい状態で大変だったのよ」

「覚えていない」

…というか何が起きたかわからない。

…僕は有紗という女の子じゃないし…

「昨日、なんていうかな、心停止。

 つまり一回心臓が止まったみたいなのよ。

 でも、また動き出して夜ちょっと記憶混乱が起きていたみたい」

「記憶混乱て?」

「有紗ちゃん、自分のことを僕って言っていたようね。

 あと、自分は男だって」

「そう。

 それも覚えていない」

…何か変なことになっている。

…もしかしたら、あれか?

…元の自分は自動車にぶつかって死んでしまって

…魂の行き場が無くなってこの女の子の中に入ってしまったのか?

…確かそんなSFは読んだことがあったけど、

…現実にそんなことになるなんて…

「どうしたの?

 ぼーっとして」

「ううん、何でもない。

 もうちょっと眠りたい」

「そう、じゃあ横になるといいわ」

有紗は看護婦とそんな会話をした後、ベッドに横になった。



その頃、病棟で目を覚ました正樹はまだ起きあがれなかった。

体的には問題ないのだが、ショックのせいか気持ちが少し薄弱な感じだ。

少々頭を打っているので、明日の午前中にはCTの検査を行うことになっている。

その他にも、全体的に内部のけがを確認するため

MRI、内視鏡といろいろな検査をすることになっていた。

正樹をひいてしまったクルマの運転手は自ら救急車を呼び、

自分が悪かったことを認めているので金銭面とかの心配はなさそうだ。

痛み止めが効いているせいか体を動かすのがものすごくだるかった。

点滴も検査の結果が良好ならすぐにも取れるらしい。

しかし、立つと頭がくらくらするので看護婦に付き添ってもらってトイレに立つように言われた。



ミスを犯した天使は状況の確認が済むまで謹慎されていた。

羽の根本に輪を入れられていた。

こうされると羽を動かすことができなくなり、

普段羽から理力を放出して活動している天使はまるで動くことができなくなる。

本来死ぬはずだった少女が活力ある男の生命力をもらい生き返っていた。

生命力を奪われた男は一応無事なのだが、

帳尻あわせのように事故に遭い怪我をしていた。

男は今は何ともないだろうが、

生命力を分け与えてしまったために本来の寿命よりも早く死んでしまうことになる。

かといって、生き返ってしまった少女から生命力を抜き取ることはできない。

そこで天使は男の体に入り本来の寿命まで理力を注ぎ続けるのだ。

しかし、天使はその間天使としての活動ができず、

場合によっては男に吸収されてしまうおそれもある。

故に天使は自分の意志を強く持ち続けなければならない。

そして、目標の男が見つかると天使は羽の輪をはずされ、

種の姿になり男の中に送り込まれた。



有紗は生き返ったと同時に健康体を得ることができ、

あの日から1週間後に退院することが許された。

有紗の体の中では死んでしまった有紗の代わりに正樹の分体がいて

混乱しながらも適応しようとしていた。

正樹は種が入ってから順調に回復し

こちらももう退院できるような状況だった。

奇しくも同じ日二人は退院となり

両親と正樹をひいた運転手に付き添われ正樹は病院を退院した。

正樹がクルマに乗って走り去っていくちょうどその時、

有紗が両親に付き添われ病院から出てきた。

有紗はウインドウ越しに正樹の姿を見、驚いた表情で立ち止まった。

ただならぬ雰囲気の有紗を見て両親は

「どうしたの、有紗?

 どっか悪いの?」

心配そうに顔をのぞき込んだ。

そして、ほんの少しの間をおいて

「大丈夫、久しぶりに外に出たからびっくりしただけ」

長く伸びた髪を軽く撫でながら有紗はそう返事をしながらも

なぜかその表情は曇っていた。



退院後、正樹は家で普通に過ごしていたが、

しかし、予備校とアルバイトは大事を取り休んでいた。

ただ、何もしないわけではなかった。

入院の間進んでいなかった勉強を取り戻そうと

正樹は参考書を広げると机に向かっていた。



一方、有紗はというと

家に着くなり自分の部屋でいろいろと考え事をしていた。

…どういうことなのだろうということだ。

…もしかしたら、魂が入れ替わってしまったと言うことだろうか?

…もし、そうならどうやって元に戻ればいいのか?

…あと元に戻るとしてもそれまではここで有紗として生きなければならない。

…有紗の記憶とか持っていない自分だと変だと思われはしないだろうか。

悩みは尽きなかった。

有紗自身が自分の部屋の位置をわからないと言うのはおかしいだろうと

さっきは家に入るなり母親に荷物を持ってもらい、先に歩いてもらった。

久しぶりという振りをして家の部屋全部を見て回り、

大体の家の様子を把握することができた。

あまり広い家ではなかったので間取りを覚えるのに苦労はしなかった。

そして、ことは早い方がいいだろうといろいろな確認を始めた。

まず自分の住んでいるところはどこだろうと自分の部屋を探って住所を探し当てた。

幸いにも正樹が住んでいたところから駅を挟んで反対側ぐらいの場所で

自転車に乗れば20分ぐらいの距離だ。

また、有紗の記憶に関するものを仕入れるために

引き出しを探していると彼女の日記が出てきた。

中学に入ってからつけ始めたものらしくまだ1年ちょっと分。

パラパラと日記をめくりながら自分が置かれている状況を把握する。

この家は父、母、有紗と3人で住んでいるらしい。

正樹だった頃この近所にも来たことがあったが、

頻繁に来ていたわけではなかった。

さらに、棚の上の方にアルバムとかがあるのでそれを卸して見てみると、

小学校の卒業アルバムもあった。

そこにはクラスメイトの名前入りで集合写真があり、

写真と名前を覚えるために机の上に分けておいた。

それ以外のアルバムには有紗が小さい頃の写真もあったが、

しかし、今は必要ないだろうと元の場所に戻した。

日記に出てくる名前とアルバムの名前を照合し

自分の周りの主要人物を探した。

まだ何か無いかと探すと手帳があった。

他人の秘密をのぞき込むような感じがして気が引けたが、

これは自分のことだからと言い聞かせ開いた。

こうして、家族や友人などの情報をインプットしているとき、

夕食だと声がかかった。

テーブルの上はご馳走だった。

退院祝いでかなり腕によりがかかっている。

父親と母親はニコニコして有紗が食事するところを見ていた。

有紗が好きなものばかりらしいのだが、

しかし、正樹にとって苦手なものもあり手をつけずにいると

「これも好きだったでしょ」

と母親が言うので無理して食べる。



食事のあとは…そう、お風呂…

正樹は見栄えのする方じゃなかったので、

女性にもてたことが無く、もちろん童貞だった。

有紗となってから自分の裸を見るのは初めてだった。

病院では入浴中に目眩がして倒れるといけないからと

看護婦が体を拭いてくれたのだ。

トイレも看護婦が付き添っているので

する方に集中して股間の観察とかもできなかった。

脱衣所でどきどきしながら、正樹は服を脱ぎ始めた。

有紗は中学生だったが、まだブラジャーはしていなかった。

ほんのわずかにふくらみかけた胸はまだまだ色っぽさのかけらもなかった。

しかし、それまで女性の体を見たことがなかった有紗としては十分過ぎる刺激的だった。

「ゴクリ…」

生唾を飲み込みながらパンツをおろすと、

申し訳程度に生え始めた陰毛の真ん中にくっきりと割れ目が走る様子が目に映り、

思わずそれを指でなでるとゾクゾクするような感覚が身体を走る。

「こっこれが…おっおま…ん…

 の感覚か…」

感慨に似た感情を抑えつつ有紗は全裸になると浴室へと踏み込んでいった。

そして、

ザブン!!

まるで逃げ込むように湯船に浸かったが、

その直後、

…しまった

と後悔した。

有紗の長い髪が身体に絡まり、

まるで妖怪を思わせるかのような姿になってしまったのだ。

「う〜っ

 女ってこういうところが不便だな…」

慌てて湯船から飛び出すと、

濡れた髪をなんとか結い上げ、

髪が再び入らないように苦労しながら湯船に浸かる。

体を洗う時も有紗はとまどったが、

しかし、開き直って正樹だった頃のように洗うことにした。

それでも髪の結い上げ方が不十分なせいか、

いざ肌を洗おうとしても解れた髪が指に絡まり、

「くそっ

 こらっ」

有紗は文句を言いながら体を洗う。

胸や股間は慣れない感覚でくすぐったかった。

特に股間は開いて中を洗った方がいいのかと悩んだが、

ちょっと開いてぬるま湯をかけて終わりにした。



お風呂から上がるなり、

有紗はタオルで身体を隠すようにして拭きはじめる。

ちょっと強めに拭かないと変な気持ちになってしまいそうだった。

そして、用意されていた下着とパジャマをつけるとやっとひと息つき、

長い髪は水分をぬぐいきれなかったのでタオルを巻いて脱衣所を出た。

リビングにきたとき、

そこに有紗の父と母が待っていた。

「久しぶりの我が家はどうだ」

「冷たいものでも飲む?」

父と母が同時に響き。

その直後笑い声が追って響いた。

有紗は複雑な気持ちだった。

娘が帰ってきて嬉しいんだろうけど、中身が違っている。

「あっあの…」

ふと、自分は違う。ということを言おうとして、

有紗は声を上げたが、

しかし、

「なに?」

と聞き返す有紗の母親の顔を見ると、

「ううん、

 なんでもない」

と出かけた言葉を飲み込み、当たり障りの無い返事を残して、

有紗は部屋へと戻っていった。



時間はそんなに遅い時間ではなく

有紗は一つ試してみたいことがあった。

それは、自分のつまり正樹の家に電話をしてみようと思ったのだ。

電話の位置はリビングを出て通路の所にある。

パジャマに着替えた有紗は電話のところで深呼吸をすると、

ゆっくりと間違えないようにボタンをプッシュした。

呼び出し音のあと女性が出た。

正樹の母親だ。

「もしもし、

 あの、正樹さんいらっしゃいますか?」

「はい、おりますが。

 どちら様でしょうか?
 
 正樹は今日病院から退院してきたところで
 
 今もう寝てしまったんですよ」

「そうですか」

「何でしたら、明日にでも正樹の方から電話させますけど」

「あ、結構です。

 明日またこちらからお電話させていただきます」

有紗はそういって電話を切ると、

リビングから母親が出てきて、

「あら、どこかに電話?」

と尋ねた。

「うん、友達に退院の報告」

短めに有紗はそう返事をすると、

「そう、まだ早いけど、

 あんまり無理しないようにもう休んだら?」

「そうする、お休みなさい」

有紗はそういい残して部屋へと戻っていった。

そして部屋に戻ると、

あまり眠くもなかったが寝ることにした。

部屋を暗くするとベッドに潜り込んだ。

目をつむるとどうしても落ち着かない気分になった。

背中を丸めてじっとしていてもだめだった。

パジャマのズボンに手を滑り込ませた。

そしてパンツの中に手を入れた。

そっと指で割れ目をなぞる。

「うっ(ビクン)」

しびれるような感覚。

女の子のオナニーに興味があった。

というか、もうその誘惑にあらがえなかった。

割れ目のあたりをなぞっている内に息が荒くなってきた。

「はあ、はあ、う、う」

粘膜に指を入れる。

ぬるぬるとした液体で股間はぐっしょりだ。

そして一番敏感な部分に触れる。

「(ビクッ)くはっ!!」

電撃が全身に走った。

と同時に有紗はイってしまった。

「はぁはぁはぁ」

荒い息はしばらく続いたが、

しかし、次第に穏やかな呼吸になると

有紗はそのまま寝てしまった。



つづく



この作品は田中じろーさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。