風祭文庫・モノノケ変身の館






「鬼も見慣れたがよし」


作・風祭玲

Vol.948





早春の白い陽光に照らし出され、

平和な空気に包まれている沼ノ端高校。

「はぁ…平和というか…暇だねぇ」

そんな空気に呑まれてか

昼休みの学園カフェで暇をもてあますかのようにして、

夢原希が座っている丸テーブルの真ん中に向け

べたぁっと上体を寝そべらせて見せると、

「もぅ、希ったら、

 はしたないって」

そんな彼女の姿を見た夏木凛は周囲を気にしながら小声で注意をする。

「だってぇ…」

その注意に希が不服そうに口を尖らせると、

「そんなに暇なら練習場で一汗流してくれば?、

 なんか最近、動きが鈍っているように見えるけど」

と凛は希の技の切れが鈍っていることを指摘した。

「ギクッ!

 そっそれは…

 その…」

その指摘に希が腰を上げて言い返そうとしたとき、

「でも…

 何も無いってことは良いことじゃないですか?」

謎の怪光線を放つカメラの手入れをしている春日野麗は

この雰囲気が嫌でないことを言う。

「でしょ?」

麗の言葉に希は目を輝かせて見せると、

「でもこの調子じゃ

 ぷりゅあ・ふぁい部も開店休業。

 下手すりゃぁ廃部ってことも…」

凛は先行きを案じてみせる。

と、そのとき、

カサッ

一枚の新聞紙が風に吹かれて飛んでくると、

希の頭に覆いかぶさった。

「うわぁぁ、

 いきなり真っ暗!

 何がどうたの?」

頭から新聞をかぶったまま希は慌ててしまうと、

「なにパニクっているのよ、

 ただの新聞紙じゃない」

凛は呆れつつ新聞紙を剥いで見せる。

「なんだ、新聞紙だったのかぁ」

ホッ

と胸をなでおろしす仕草をしてみせる希の横で、

「なになに?

 怪盗・ヱターナルまた現る。

 ○月○日深夜、U市向日葵台の貴金属店を怪盗・ヱターナルが襲い、

 展示してあった秘宝を奪った。

 110番通報を受けた県警はパトカー十数台で駆けつけたものの、

 ヱターナルは警官隊を蹴散らすようにして逃走。

 県警の度重なる失態を対し県は県警の銭潟警部を呼び…」

凛は新聞の文面を読み始める。

「怪盗なんて怖いですね」

凛の横から覗き込む麗がささやくと、

「…県知事は特別声明を出し、

 県民の財産と安全の保証のため、

 県立の自衛隊もしくは防衛軍の設立を県議会に提案すると明言…

 まぁ…

 これは警察やお役所の仕事。

 あたし達には関係ないわ」

と紙面と叩きながら凛は言う。

すると、

「そういえばさ、

 可憐さんの姿が見えないけど」

希は同じテーブル席に座る秋元小町に水無月可憐の姿が無いことを指摘した。

「可憐なら生徒会よ。

 部活の他にも生徒会もしているのでいろいろ仕事があるの」

微笑みながら小町は可憐の事情を話す。

「そっかぁ、

 生徒会の会長だもんね、可憐さん

 平和であっても平和なりに生徒会の仕事は減らないか」

事情を知った希はそう言いながら感心するようにして大きく頷くと、

「うわぁぁぁ!!

 逃げろぉ!」

築60年、木骨石造り3階建ての時計塔校舎の一角より突如生徒達の悲鳴が上がり、

バンッ!

とあるクラスの窓が大きく開かれるや否や、

そこが2階であるにもかかわらず

ワラワラと制服姿の男子や女子達が零れ落ちるようにして飛び出してくる。

「なっ何ぃ?」

「どうしたんでしょう」

それを見た凛と麗が驚きながら腰を上げると、

「うわっ、

 ど、どうしたの?

 どうしたの?」

希もまた呆気に取られるが、

しかし、

「クスッ

 また2年B組の唐君ね」

小町は一人慌てずに笑い、

「5・4・3…」

カウントダウンをし始める。

そして、

「1・0っ!」

彼女の口からその言葉が出るのと同時に、

カァァァァ!!!

教室の中が白と黒の放電が作る渦で満ち溢れ、

『渡のぉぉ、

 バカぁぁぁ!!!』

少女の怒鳴り声と共に

チュドォォォォン!!

爆風が窓をすべて吹き飛ばして教室が爆発したのであった。



ズズンンンン…

パラパラ…

「また唐か…」

保健室の天井より降り落ちてくる砂埃を巫女は呆れながら見上げると、

「ねぇ、舞…

 これってまたうちのクラスじゃない?」

巫女の治療を受けてる少女・日向咲(ひなた・さき)が

付き添いの少女・飛翔舞(ひしょう・まい)に向かって話しかける。

「”じゃない?”

 じゃなくてぇ、間違いなくそう。

 また唐くんが騒ぎを起こしたんだわ」

話しかけられた舞はため息半分に呆れて見せると、

「宮迫くん、倒れなければ良いけど」

「はぁ…それよりもクラスに戻ったら、

 お掃除よ、咲ぃ…」

二人はそう話し合い、

ガックリと肩を落としてみせる。

すると、
 
「ほれっ、

 治療は終了じゃ」

と治療を終えた巫女が活を入れるかのように

包帯が巻かれた咲の足をひっぱたいてみせると、

「あいたぁ!!」

保健室に咲の元気な声が響く。

「黒魔術研究会も良いが、

 無茶はあまりするな。

 わしの仕事を増やすでない」

飛び上がる咲を横目で見つつ巫女は注意をすると、

「ど、どうもありがとうございました」

包帯が巻かれた脚を庇いつつ咲と舞は保健室から出て行くと、

「おっお願いします」

治療の順番待ちをしていた男子生徒が青い顔で巫女の前に座ろうとしたとき、

「さっ柵良さんっ、

 治療を…」

杖を突きボロボロになった唐渡が保健室に入ってきたのであった。

「なんじゃぁ、唐ぃ、

 ちゃんと順番を守らんか。

 まっその程度では治療の必要も無かろう」

息も絶え絶えの渡を蔑視しつつ巫女は突き放したように言うと、

「そんなぁ…」

渡はショックを受けたような表情となり、

「こっこんな大怪我をしているんですよぉ!

 急患なんですよぉ!

 最優先で診てくれたって良いじゃないですかぁ」

と涙ながらに訴えながら巫女に縋りつこうとするが、

「ほほぅ…

 大怪我とな?

 急患とな?」」

ワナワナと髪の毛を逆立てつつ巫女は渡を見下ろして見せる。

そして、

「え?」

伸ばした手を巫女のヒップに添えていた渡か巫女を見上げたとき、

「大怪我で息も絶え絶えな救急患者がぁ、

 人の尻なんぞ触る余裕など無かろうがぁぁ!」

と言う巫女の怒鳴り声と共に、

グワシャァァン!!!!

渡は保健室の窓ガラスを突き破り、

「ぶるぅいんぱるすぅぅ〜」

声を残し青く晴れ渡った春の空に向かって消えていったのであった。



「まったく…

 また業者を呼ばねばならぬでは無いか」

無残に砕け散った窓枠を見ながら巫女はそうぼやきつつ振り返ると、

「うーむ、

 春とは言っても未だ名ばかり、

 窓を開け放つには風が冷たいですね」

真剣に考え込んでみせる渡が

先ほどまで巫女が座っていた椅子に腰掛けていたのであった。

「唐ぃぃ〜っ」

そんな渡に巫女は目を吊り上げ迫るが、

「おっ」

何かに気付いたのか急にその表情を解くと、

渡に向けていた視線を上へと上げて行く、

「?」

巫女の様子の変化に渡は小首を傾げると、

パサッ

いきなり渡の視界を翠色の髪の毛が遮り、

『そんなところで何をしているの?』

と言う声と共に渡の真正面に角を生やし逆さまになった少女の顔が下がったのであった。

「!!っ」

その顔を見た途端、

渡の顔から一気に血の気が引き

ムギュッ!

その渡の肩を少女の手が握り締めるが、

「あーこれこれ、

 ここで暴れるでないぞ、

 他の者の迷惑になるからな」

二人を見ながら巫女はそう注意をしてみせると、

『判ってますって』

その注意に少女は笑みで答えるや否や、

フワリ

渡の体が宙に浮き、

水平に空中移動をしながら保健室から消えた直後、

カァァァ!!!!

閃光が廊下を覆い尽すや否や、

『まだ懲りないかぁぁぁ!!!』

少女の怒鳴り声と

「うぎゃぁぁぁ!!」

白熱した放電と渡の悲鳴が上がったのであった。

「飽きもせず…」

事の顛末を見届けた後、

巫女は呆れ半分にため息を付いてみせると、

「あの…僕の治療は…」

とずっと無視されていた男子生徒が自分を指差してみせる。



「ふぅ、

 何とか一段落か」

保健室にやってくる生徒の姿がようやく消えた昼休み前、

巫女はホッと一息入れていると、

スッ

一人の人影が巫女の正面に立ち、

ストン

と空いている丸椅子に座ってみせる。

「まだ、患者がおったのか、

 なんじゃぁ、

 どこぞ具合が悪いのか?」

新たな患者が来たと思った巫女がそう尋ねながら正面を向いた途端。

「おっお主は!」

と驚きの声をあげる。

『お久しぶりです。

 柵良さま』

広く知られているものとは若干デザインが違う巫女装束を身に付け、

長く伸びたこげ茶色の髪を背中で束ねる少女は一見小学生低学年程度に見えるが、

しかし、頭の左右から飛び出す獣耳と、

お尻から伸びる筆のような尻尾が少女が人外の者であることを物語っていた。

「玉梓…」

少女を見つめつつ巫女は少女の名前を呟くと、

『御変わりはないようで』

と玉梓と呼ばれた少女は微笑んで見せ、

「なんぞ…

 用か」

笑みを浮かべる玉梓とは対照的に

巫女は懐から顔をのぞかせている払い串に手をかけつつ尋ねると、

『えぇ、柵良様に用件がございまして、

 こうして罷り越したのです』

とすまし顔で巫女の質問に答えて見せる。

「ほほぅ…

 用件とな?」

その返事に巫女は浮かした腰を下ろして再度椅子に腰掛けると、

「その様子ではたいした用件ではなかろう、

 大方、女狐…いや、玉藻からの伝言であろう?」

と玉梓の用件を問い尋ねる。

すると、

『嵯狐津姫…様ですわ』

すかさず玉梓は言い直して見せ、

『お察しの通り、

 嵯狐津姫様からのお言葉をあなた様に伝えるために

 こうしてまかりこしました』

と要件を告げた。

「どちらでも構わぬであろう。

 名前を変えても早々中身までは変わぬわ、

 ところで、お主らは鍵屋を引っ張り込んで何をする気だった?」

巫女は鍵屋の件を持ち出し問い直すと、

『いえいえ、

 鍵屋様はご自分より私たちにご協力を願い出たのですわ、

 引っ張り込むだなんてコトは致しておりません』

と玉梓は指摘は違うことを言う。

「ほほぉ…

 まぁ、本人がこの場におらぬでは何とでも言えるがのぉ」

玉梓の返事を意地悪く受け止めながら巫女は言い返し、

「鍵屋を動かすにはそれなりの対価が必要じゃ、

 主ら、その事を知った上でのことか?

 あぁ見えても…」

と忠告をしようとすると、

『存じておりますわ』

その言葉を遮るようにして玉梓は返事をする。

「ほぅ…

 まぁ鍵屋の全てを知った上での行いならばこれ以上は何も言うまい。

 で、狐よりわしへの言伝とはなんじゃ?」

そんな玉梓を見ながら巫女は嵯狐津姫からの言伝について尋ねるが、

ところが、

『嵯狐津姫様をご信用されないのであるなら、

 わたくしは何も申し上げられません』

いきなり玉梓はツン!とそっぽを向いてしまうと、

椅子から立ち上がり、

出入り口に向かってスタスタと歩き出してしまった。

「ん?

 もぅ帰るのか?

 わしに言伝を伝えなくてもよいのか?」

立ち去ろうとする玉梓に向かって巫女は話しかけるが、

『いいえっ

 結構ですっ』

玉梓はそういい残すと、

バタンッ!

力いっぱい扉を閉めてしまったのであった。



キーンコーン!

眼下に望む校舎より放課後を告げるチャイムの音が響き渡る。

『うーん』

昼、怒りに任せて巫女が勤務する保健室より飛び出してきてしまった玉梓は、

校舎を見下ろす位置にある神社の境内より自分の行いを後悔していた。

『嵯狐津姫様からの言伝を伝えるのが私の使命…

 それを果たさぬまま飛び出してしまっては…

 姫様になんて申し開きをしたらよいのか』

自責の念に掛かりながら玉梓は考え込んでいると

ハァハァハァ

ハァハァハァ

と荒い息遣いの声が学校から神社へと伸びる上り坂から響いてきた。

『ん?』

その息遣いに気が付いた玉梓は振り替えると、

「まったく、

 忍の奴め、

 何か言うとすぐに鬼に化けて電撃を浴びせるものだから、

 こっちの身が持たないぞ」

と坂を登ってきた唐渡はブツブツ文句を言い始める。

そして、鬼封じの祠まで来ると、

「こらぁ!

 お前が忍に余計なものを与えるから俺が苦労しているだろが!」

そう怒鳴りつつ渡は祠の建物を蹴り上げるが、

しかし、何も起こるらず、

「イテテテ!!!」

の言葉と共に渡は蹴り上げた拍子に痛めてしまった足を庇いながら、

ケンケン飛びをしてみせる。

『あれは…』

そんな渡の姿を見て何かを感じた玉梓はすかさず懐より一冊のカタログを取り出し、

パララララ…

すばやくページをめくり始める。

そして、とあるページでその動きが止まると、

『リストナンバー・C10-14989…

 沼ノ端高校・2年B組・唐渡

 貴重度・A+っ!!』

そのページに書かれている文句を読み上げるなり

『これって、最高級のお宝じゃない』

と目を輝かせながら改めて渡を見つめ、

『アイツを連れ帰れば嵯狐津姫様もお許しになられるはず、

 うふっ、あたしってあったまいい!!』

自分の頭で思い描いた皮算用の結果に、

玉梓はピョンピョンと飛び上がりながら喜ぶと、

『とはいっても、

 この格好では無理か』

と自分の体を見下ろし考え込む。

そして、何かが閃いたのか

ヒラリ

玉梓じゃ一枚の葉を自分の頭に載せると、

『では早速…』

の言葉と共に何かを念じてみせる。

すると、

ポヒュンッ!

小さな爆発が起き、

程なくして爆発に伴う煙が収まると、

スタッ!

制服姿のスレンダーな美少女がその場に立っていたのであった。

『よしっ、

 これならオッケー』

変化した自分の姿に満足しながら玉梓は渡の方へと歩き始め、

そして、祠の傍に来たとき、

『うぐっ、

 うぅぅぅっ』

と胸を押さえる仕草をしながら蹲ってみせたのであった。

「!!っ

 ややっ、

 どうしたのですか、

 お嬢さんっ!」

少女の存在に気付いた渡は慌てて蹲る少女の下へと駆け寄ると、

『じっ持病の妁がぁぁ〜』

そう言いながら少女は堪える表情を見せる。

「それはいけない、

 ささっ

 こちらで…」

苦しむ少女を介抱しながら抱き起こすと、

「うーん、

 どこかで休むところを…」

と周囲を探し始めた。

『どこのどなたかは知りませんが、

 ありがとうございます』

ギュッ

自分を抱き上げる渡に向かって少女は礼を言うと、

「礼に及びません。

 当然のことをしたまでです」

白い歯をキラリと輝かせ渡は返事をして見せる。

すると、

『あっあそこにベンチが』

と少女は祠のすぐ傍に置かれていたベンチを指差すと、

「やや、

 あんなところにベンチが…

 っていつの間に…」

さっきまでは無かったはずのベンチが

いきなり現れていることに渡は小首を捻るが、

『細かいことは気にしないでください』

そんな渡の耳元で少女がささやくと、

「あはは…

 そうですよね」

相槌を打ちながら渡はベンチへと向かい、

そっと少女をそのベンチへ寝かせたのであった。

『重ね重ねありがとうございます』

「いえいえ、

 お近づきの印にお嬢さんのケータイの番号かメアドを教えてください」

礼を言う少女に渡はそう言い寄って見せると、

『そんな…

 この場ではお教えられませんわ』

渡を押し戻すようにして少女はそう返事をし、

『そうだ、

 お礼に来て欲しいところがあるのですが』

と持ちかけた。

すると、

「え?

 デートしてくれるの?

 本当に?」

少女の言葉をどのように理解したのか不明だが、

渡は喜びながら少女の手を握り締めて見せる。

その途端、

『渡!!』

境内に三池忍の怒鳴り声が響くと、

ビクッ!

一瞬、渡の体が飛び上がり、

そして、恐る恐る振り返ると、

パリッ

パリパリ!!

放電するオーラを吹き上げながら、

怒りの表情を見せる忍の姿があり。

「げっ、

 忍っ!」

それを見た渡は慌てて握っていた手を引っ込めるが、

『ちょっと目を放した隙に…

 もぅ、違う女の子にちょっかいを出すなんてぇ』

事の一部始終を見ていたのか、

忍の怒りは収まるどころかさらに燃え上がり

ビリビリ

と空気が振動し始めた。

『これは…

 すぐにコイツを回収しないと…』

思いがけない状況の変化に少女は焦りを感じながら渡の手を握り、

「さっ急ぎましょ」

と声を掛けるが、

「そこで何をしておる」

学校より戻った巫女が渡達に声を掛けたのであった。

『あっ、柵良先生!

 もぅ、渡ったらまた女の子にちょっかい出しているんですよ』

柵良の登場に忍は不服そうに渡と少女を指差して見せると、

「ん?

 お主…

 玉梓ではないか、

 そんなものに化けて唐相手に何をしようと言うのじゃ?」

と巫女は一発で少女の正体を見抜きつつ呆れた口調で話しかける。

「え?

 柵良先生のお知り合い?」

それを聞いた渡は呆気に取られながら返事をすると、

「そうじゃ、

 その者の正体は玉梓と言う狐じゃぞ、

 それでも良いのか、唐ぃ」

渡に向かって巫女は呆れた顔でそう言うと、

「いっ」

慌てて渡は少女との間に空間を作る。

『ちっ、

 あと一歩だったのにぃ』

渡との間にできた空間を感じながら、

少女は悔しそうな表情を見せると、

スッ!

制服の懐から一枚の狐面を取り出し、

『こなりゃぁ、

 ヤケだぁ!

 いでよ、コン・ワイナー!!!』

その声と共に自分が座っていたベンチに向かってお面を放り投げてみせる。

すると、

『コン・ワイナァ!!!』

神社に異様な声が響き渡り、

メキメキメキィィ!!!

巨大なベンチ妖怪が出現したのであった。

「やれやれ」

迫るコン・ワイナーを巫女は見上げながら、

「ぷりきゅあ5、

 来ておるのだろう。

 お主らの出番じゃ」

と声を掛けると、

「出番ですってぇ、希さぁん」

「おっけぇ!

 行くよみんな!」

「Yes!」

「ぷりゅあ・めたもるふぉーぜ!」

と立て続けに少女達の声が響き、

コン・ワイナーの前にユニフォームスタイルが凛々しい

5人の少女達が立ちはだかり、

「うりゃぁぁぁぁ!!!」

一斉にコン・ワイナーに飛び掛っていったのであった。

「さて、

 化け物はあの者たちに任せて…」

たちまち始まった戦闘を横目で見つつ巫女は渡と少女の方を振り向くと、

「さて、どうする」

と話しかける。

『なによっ、

 コン・ワイナーが負けるわけ無いでしょう』

迫る巫女に少女は強気の姿勢を崩さず。

ポンッ!

『コーン!!!』

の声と共に巨大な化け狐へと変身をしたのであった。

「げっ!

 なんじゃこれはぁ!」

化け狐を見上げながら渡が驚きの声を上げるが、

ほぼ同時に

「ぷりきゅあ・くりすたるしゅーと!!」

の声と共にきゅあ・どりーむが放った必殺技が決まってしまうと、

『こん・わいなぁぁぁぁ!!!』

大した活躍もせずにコン・ワイナーは呆気なく倒されてしまったのであった。

『げっ!

 あぁん、もぅ、

 なによ、役立たず!!!

 これからってところじゃないの。

 ちっ仕方が無い、

 今日のところはこれで許してあげるわ』

それを見たた化け狐は悔しがりながら姿を消してしまったのであった。



「俺は狐に騙された居たのか」

すべてが終わったとき、

渡はそう呟くと、

ヒシッ!

と彼の肩が握り締められる。

そして、その感覚に渡の視線が動いて行くと、

ニコッ!

と笑みを見せながらも角を伸ばす忍の姿があった。

「しっ忍ぅ!」

それを見た渡が彼女の名前を呼ぶと、

カァァァァァァァ!!!!

辺りが白い光で覆われ、

「うぎゃぁぁぁぁ!!!!」

追って渡の悲鳴が響いていたのであった。



「鬼も見慣れたがよし。

 とは言うが、

 いったいいつまで続けるつもりじゃ?

 お主らは」



おわり