「ねぇ、教えてくれたって良いじゃない」 「そうよ、教えてよぉ」 「もったいぶらないでよぉ」 放課後の校内にそんな少女達の声が響き渡ると、 「どっしようかなぁ」 少女達の視線を一身に浴びながら 一人の少女・佐久間葉月が含みを持った返事をしてみせる。 「まったく、何様のつもりなのかしら?」 「妹だからって、もったいぶらずにさっさと教えなさいよ」 葉月のその態度に詰め寄る少女達は苛立ちを募らせるが、 しかし、彼女は兄・慧一は校内一とうたわれるイケメンであるが故に その慧一の情報を少しでも多く手に入れようと 少女達は彼女の元に集まってきているのであった。 「わかったわ」 縋るような少女達の視線を感じながら葉月がそう告げた途端、 「ざわっ」 少女達の間から一斉にざわめきが上がり、 ギンッ! 期待の視線が少女に向かって投げかけられる。 「あぁ… この視線よぉ なんか萌えちゃうなぁ」 零れ落ちるものは全て広い尽くす。 と言う言葉がにじみ出てくるような視線を一身に浴びながら葉月は 一人エッチの際に上っていく”高み”に似た快感を感じると、 「じゃぁねぇ…」 と自分だけが知っているイケメン兄・慧一の秘密を話し始めるが、 だが、その情報は決して多くは無く、 ごく限られたものであった。 「えぇ… それだけぇ」 期待していたものとは程遠い情報に少女達から不満の声が上がるが、 「あったり前でしょう?」 と葉月はあっさりと切って捨ててみせる。 「じゃぁ、あたしもぅ帰るね」 詰め寄る少女達に向かって葉月はそういうと、 下においてあったカバンを拾い上げスタスタと歩き始めるが、 「あっ待ってよ」 そんな葉月を追いかけて二人の少女が飛び出して行った。 そして、葉月を追いかけながら通学路の傍にある神社に来ると、 「ちょっとぉ」 と声を掛けながら葉月をその神社の境内へと引き込んで行く。 「なっなによっ!」 いきなり神社の境内へと連れ込まれ、 太古の昔に武者によって封じられた鬼が眠る祠まで引き込まれた葉月は 文句を言いながら握られていた腕を振り解くと、 スッ 一通の手紙が差し出され、 「お願いっ、 慧一さんにこれを渡して」 と連れ込んだ少女は懇願してきた。 「へ?」 思いがけない依頼に葉月はキョトンとしたのち、 「これって抜け駆けって奴でしょう。 あたし、そういうのは…」 とはにかみつつ断ろうとする。 「だからこそ、 こうして人目につかないところで頼んでいるんでしょう?」 そんな葉月に向かって少女は小声で怒鳴ると、 「はいはいっ、 でも、こういうのって直接手を介して兄貴に渡すべきだと思うけど」 と返事をするが、 「そこをナントカ、お願いよぉ」 葉月を拝み倒すように手を合わせて懇願をした。 「うーん、でもこんなことがバレたら、 あたし…」 と言いつつ葉月は受け取りを拒否してみせ、 そして 「悪いけど、その話は無かったことに」 そう言い残して立ち去ろうとした時、 「待って!」 去ろうとする葉月の腕を少女が掴み上げた。 だが、 「あっ」 腕をつかまれた反動で葉月の手が祠に触れてしまうと、 ザワッ! 祠より得体の知れないモノが一斉に葉月の体内へと流れ込み、 ドクンッ! 同時に葉月の心臓が大きく高鳴ったのであった。 「あっごめんっ 大丈夫?」 自分か引き止めたために葉月が祠に当たってしまったと思った少女はすかさず謝るが、 『コォォォォォ…』 肝心の葉月は祠に手を付きながら虚ろな視線で空を眺めて居るだけで、 少女の言葉には一切反応を見せない。 「ちょっと、どうしたの? ねぇってば」 思いがけない葉月の異変に少女は驚きながら、 葉月の肩を揺らそうと手を伸ばすが、 バチッ! 伸ばしたその手が弾かれるようにして押し戻されてしまうと、 『コォォ…ホォォ… コォー、ホォー こーほー』 と葉月は不気味な息遣いをはじめ出し、 さらに、 ボコンッ! ボコンッ! と体から何かが膨れる音を響かせながら、 ムクムクムク… 見る間に彼女の体は膨れ上がっていく。 そして、 ベリベリベリ! 体の変化に追いつけなくなった制服が無残に引き裂けてしまうと、 筋肉が隆起していく体を見せ付けたのであった。 「ひっ」 それを見た少女は思わず身を引くが、 ギンッ! その間にも葉月の眼に黄金の眼が見開くと、 口が引き裂け、 頭から角が伸びて行く。 「ひぃぃぃ…!」 変身してゆく葉月の姿に少女は悲鳴を上げて腰を抜かしてしますが、 葉月の変身はさらに続き、 引き裂けた制服が虎皮の褌となって筋肉隆々となった彼女の股間を締め上げると、 ガコンッ! 葉月の手に棘の鋭い金棒が握り締められる。 「おっおっ鬼っ」 その様子を見た少女は葉月を指差して声を上げるが、 だが、肝心の葉月はその言葉への恥じらいが無くなり、 『コーホー』 不気味な息遣いをしつつ金棒を大きく振りかぶって見せると、 真下の少女を金色の眼で見据え、 振りかぶった金棒を一気に振り下ろしたのであった。 「きゃぁぁぁ!」 境内に少女の悲鳴が響き渡ると、 ガコンッ! その直後、振り下ろされた金棒は地面に叩きつけられた。 モウモウと砂埃が舞い上がる砂埃の中、 「ぎりぎり、セーフか」 女性の声が響き、 制服の少女を庇いながら一人の巫女が額の汗を拭ってみせる。 「あの…」 巫女に向かって少女は尋ねようとすると、 「黙っておれ」 その言葉で巫女は少女の口を封じ、 そして、徐に立ち上がると、 「鬼も頼めば人食わぬ。とは申しはするが、 ちょともったいぶり過ぎたようじゃのっ そこを鬼に突かれたのじゃ」 と鬼を指差して巫女は言いきり、 「どれ、このわしが退治してくれよう」 そう言うなり、 シャッ! 巫女は払い串と退魔札を用意して見せた。 『コーホー』 それを見た鬼は巫女に狙いをつけ、 両腕で金棒を握り締めると、 大きく振りかぶって見せるが、 「おいっ、 前ががら空きだぞ!」 それを見た巫女は一言そう言うや否や、 ダッ! 一気に鬼の懐に飛び込むと、 タンッ! 思いっきり高くジャンプする。 そして、 「悪鬼退散!」 の声を共に鬼の額に退魔札を貼り付けて見せたのであった。 すると、 『オォォォォォォン!!!』 泣き声のような鬼の声は響き渡り、 ガクッ! ズシンッ! 地面に両膝を付けると、 さらに両腕を地面につけ、 サラサラサラ… と砂山を崩すかのように体を崩していったのであった。 「ふぅん、 この手紙をお兄ちゃんに持っていけばいいの?」 手渡された手紙の表裏を見つつ葉月は確認をすると、 「お願いっ」 と少女は手を合わせてみせる。 「いいわよっ」 そんな彼女に向かって葉月はOKのサインを出すと、 「んじゃねぇ…」 の声を残して去って行くと、 「ふぅ… 少し記憶を弄らせてもらったが、 これで丸く収まるのなら、 それでもよいか」 と木の影より巫女は二人の姿を眺めつつ呟いていたのであった。 おわり