風祭文庫・獣の館






「CFガール」
(後編)



原作・田中じろー(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-084





マヤが絶頂に達した後、

「……」

そんなマヤにトオルは話しかけずに彼女の体を拭き始めた。

その一方でマヤは呼吸を整えている。

丁寧にそして湿ったところがないように。

トオルがマヤの体を拭いていると

「ねえ」

不意にマヤがつぶやいた。

「初めてだったの。

 人にあそこを触られたのもいったのも」

「……」

「ねえ、パンダも気持ちいいんだね」

マヤは続け、

「ふふ、私、私の世話をしてくれている飼育係さんの名前を知らないわ」

とトオルの名前をマヤは尋ねた。

すると、

「田中トオル」

トオルはやや無愛想に返事をすると、

「そう、トオルさんね

 ねぇ私を可愛がってね」

とマヤはトオルに言った。

少し涙ぐんでいるみたいだ。

そして、

「元にもどれなかったら…」

と呟くと、

「戻れるさ、きっと」

マヤの言葉を遮るようにトオルは叫んだ。

「ねえ、私の身体って本物のパンダと変わらない?」

「違うよ、かなり。

 でも、普通の人ならわからないかもね。

 作った人がかなりリアルに仕上げたみたい」

マヤは少し何か考えているようだった。

毛皮がもう乾いた頃。

「マネージャーに電話したいんだけど」

とマヤが言った。

「うっうん」

マヤの言葉にトオルは電話番号をリダイヤルしてマヤの耳に当ててあげる。

やがて電話がつながると、

「あっ新庄さん?

 マヤです。

 お願いがあるんだけど。

 私のライフマスクでパンダの頭作って欲しいんだけど……そう。

 …かくまってもらっている田中さんが偶然にも動物園に勤めていて、
 
 パンダの飼育係なの。

 …だからカムフラージュして、迷惑をかけないようにできると思う
 
 …うん。

 うん。

 お願いできるかしら。

 よろしく」

電話が終わるとトオルに向き直って
 
「明日、ここにお客さんが来ます。

 私パンダになりすましてここで過ごします。

 いいですか?」

と改めて尋ねた。

しかし、

「そうはいっても決めちゃっているじゃん」

とトオルは思いながらも、

「わかった。

 でも、そんないいの?」

「私ね、アイドルになる前ものすごく陰気な子だったの。

 で、自分を変えるためにアイドルを目指したの。

 そこで、常に前向きに、先を見ることが重要って実感したの。

 ここ3日間考える時間はいっぱいあった。

 状況を考えると涙も出てくるけどいま、
 
 協力してくれる人がいるってわかったし、
 
 マネージャーと話して見捨てられていないってわかったし。

 だからお願いします」

とマヤはぺこりと頭を下げた。

「マヤちゃんを独り占めできるんだからできる限り協力するよ」

頭を下げるマヤにトオルはそう言うと、

「ありがと、

 じゃ、その為にもとりあえずここでの生活に慣れなきゃ。

 もう寝ます」

「その、今夜一緒にいるよ…。

 ああ、変なこと考えていないから、
 
 そのそういうことはできないし」

「そうね、この身体じゃね。

 でも、お礼はしたいな、
 
 えっと、口でサービスするよ」

後ろの方は消え入りそうな声だ。

「え、なんて言ったの?」

「何度も言わないわ。

 聞こえたんでしょ。

 こっちに来て。

 その…あなたの…を前を出して」

「え?

 えぇ?」

マヤの口から出た意外な言葉にトオルは飛び上がるようにして驚くと、

「もぅ!!

 女の子に恥をかかせないでよ!!」

とマヤは怒鳴り声を上げた。

「あっはいっ」

マヤのその言葉にトオルはモソモソとズボンを下ろし、

言われるとおりに自分のペニスを出した。

するとちょっとためらったような素振りを見せたが、

しかしマヤはすぐにトオルのペニスをくわえ込んだ。

丁寧に、丁寧に舐めた。

「うう…」

トオルが下を見るとあの、マヤちゃんが舐めてくれている。

異常な興奮がわき上がってくる。

「うわっ大きくなった。

 すごい」

マヤは驚きながらも奉仕するように舐めた。

亀頭から竿へ丁寧に、カリの部分を唇で刺激する。

唾液がまとわりつきペニスからも液体がにじみ出る。

その小さな口では入らないだろうというくらい奥まで飲み込んで、

すすり上げるような音を立てる。

トオルの呻くような、押し殺したような声も静寂の中に響く。

時々マヤが上目遣いでトオルを見上げる。

そして、

「でる、でるよ」

そういってマヤから身体を引き離そうとするが、マヤは離さない。

「うっ」

大量な精液がマヤの口に注がれた。

「ふぅ〜、ふぅ〜」

トオルは荒い息をついてマヤを見た。

パンダの大きな体に小振りなマヤの顔…

どう見ても異様なその生き物を眺めながらトオルは

「コレが、僕のマヤちゃんなんだ…」

と思っていた。

しかし、マヤは目の前のトオルがこんなことを思っているとも思わずに

ゴクン。

と出された精液を飲み込んだ。

そして、

「あっあたし、

 うまくできたかしら?」

とトオルに尋ねた。

「うっうん」

マヤの質問にトオルは慌ててズボンを上げながら返事をすると。

「その、さっきも言ったけ

 ど初めてなのよこういうこと。

 でもね、知識だけはあるのよ。

 ほら、私、自分が載っている雑誌必ず見るんだけど、
 
 アダルトな雑誌だとこういったこともね」

また上目遣いでトオルを見る

「その、一応興味あるんだ。

 マネージャーの目があるからそんなことはできないけど、
 
 いつか好きな人にして上げようと思っていたの…」

「すごく良かったよ」

マヤの告白にトオルがそう返事をすると。

二人とも黙ってしまった。

そして、その沈黙から逃れるかのように

マヤは引いてあるワラの上に横になり目を閉じた。

「マヤちゃん…」

またトオルも一旦外に出て、

外にあるスイッチで明かりを消して中に入ると入り口近くへ座り

壁にもたれかかるようにして目を閉じた。

すると、ふいに、

「ねえ、私ね、あなたに見つけてもらって嬉しかった。

 ここに来て良かったよ。

 おやすみなさい」

とマヤがつぶやくように言った。

その言葉にトオルは目を開いて、マヤを見た。

そして、何か声をかけようと思ったが、止めるとまた目を閉じた。



次の日、新しいパンダが、やってきた。

雄のパンダで”風風”とかいてフォンフォンという。

トオルは迎えに行き

表のパンダの檻にフォンフォンを入れると大量に届いた餌を与えた。

食欲は旺盛なようだ。

それが終わると、笹を選んで奥の隔離施設にもっていく。

「マヤちゃん、起きてる?」

「ええ」

「食べ物なんだけど、パンダ用の試してみる?

 笹なんだけど一番柔らかい部分だから」

トオルの呼びかけにマヤは無言でそれを受け取り

そして、口へと運び思い切ってかじりつく。

『うげっ

 まずい。

 しかも何か青くさいし筋っぽい』
 
そう思いながらもマヤは租借してなんとか飲み込み、

「ちょっと無理かも」

と感想を言う。

「そう、じゃあ、あとで果物をもってきてみる。

 それなら大丈夫だと思う」

マヤの返事にそういってトオルは出ていった。

マヤは万が一誰かが来ても大丈夫なように入り口にお尻を向けて寝ころんだ。



30分ぐらいしてトオルが戻ってきた。

大きなボウルにリンゴやナシが入っている。

「マヤちゃん、食事もってきたよ」

果物が入っているボウルをマヤに見せながらトオルはそう言うと、

「ありがとう」

マヤは自分が食べられそうなモノの存在に目を輝かせ返事をした。

そして、

「じゃぁ剥いてあげるね」

とトオルは言いながらリンゴを手に取り皮をむき始めた。

が、

「そのままちょうだい」

とマヤは言うとボウルに入っていたリンゴを両手で挟んで囓り始めた。

「マヤちゃん」

マヤの行動にトオルはリンゴを剥くを止めて見守った。

そして、マヤは大きなボウルに10個以上入っていた果物を全部食べきってしまった。

「ありがとう。

 こんなに食べてもまだ足りないくらい」

「体が大きいからね」

「そう……だね」

「表の仕事があるからあるからこっちに来れないけど、また来るから」

腰を上げたトオルはそう言うと、

「うん」

マヤは元気よく返事をした。



そして、その日の夜。

トオルの携帯に電話があった。

「明日の夜、マヤちゃんが頼んでいた人がこっちに来るって」

電話の向こうからのマネージャの声に

「そう、明日ですか、判りました」

とトオルは返事をすると、

「ねえ、水浴びしたい…」

と言いながらマヤがすり寄ってきた。

「うん?

 じゃあ、準備するね」

電話を切ったトオルはマヤにそう言うと

早速水浴びの支度をする。

そして、

「…お湯かけるよ」

マヤにそう言いながら洗ってあげた。

すると、

「ねえ、お願い。

 また、気持ちよくなりたいの

 この身体になってから何かうずくの。

 昼間もそればっかり考えていた。

 ねえ」

とマヤが懇願してきた。

「ちょっと待っていて」

マヤの懇願にトオルはいったん外へと出て行き、

そして、戻ってくると、

「じゃぁ、行くよ」

と告げながらトオルはマヤの背後に回ると局所の穴を刺激した。

「あっ

 ふんっ」
 
トオルの刺激にマヤは鼻息を荒らしながら興奮すると、

その途端ツルツル、ネバネバした液があふれ出してきた。

ところが、

「マヤちゃん…

 入れてもいい?」

予想外の言葉がマヤに投げかけられた。

「えっ」

その言葉にマヤは驚いて振り返ると、

「大丈夫、力を抜いて」

股間からペニスを勃起させたトオルが話しかける。

「うっうん…」

しかし、マヤは拒絶することなく静かに頷くと、

クイッ

っとトオルに尻を向けた。

ヒタッ

マヤの局所にトオルのペニスが宛われのち、

グイッ

トオルは腰に力を入れた。

すると、するっとトオルのペニスはマヤの胎内へと入っていった。

「あっ」

「うっ」

トオルとマヤ二人は同時にうめき声を上げ、

そして、トオルはゆっくりと腰を動かしはじめた。

が、やはり大きさが違う。

トオルの物では小さすぎる。

「だめか」

その感触にトオルは思わずつぶやいた。

「……」

「ごめん」

「大丈夫、手でしてあげるから」

「もういい。

 今日はもういいよ」

「そう」

そんなやりとりの後、

トオルはマヤの体を拭いてあげた。

「もう、寝ようか」

拭き終わった後、トオルは言う。

「大丈夫、今日は一人で寝るわ」

「そう、明日早く様子を見に来るから」

トオルはそう言い残して出ていった。



次の日、トオルは果物を持ってやってきた。

マヤは外に出ていた。

遊具を使って遊んでいる。

「ねえ、これ楽しいかも」

トオルに気づいたマヤは笑いながら言った。

「昨日はごめんなさい。

 私、変なこと言っちゃって」

「おはよう。

 いいよ、
 
 気にしていないよ。

 そこで遊んでいて、寝床をきれいにするから」

トオルはそういって新しいワラを持ち込んで寝床をきれいにした。

しかしその日、トオルはフォンフォンの世話に忙しかった。

フォンフォンの様子が何かおかしかったのだ。

移動で疲れたのだろうか?

環境が変わってストレスがかかったのだろうか?

昼の食事をしながらトオルは色々考えていた。

同僚が奥へ入れたらとアドバイスをくれた。

が、あそこにはマヤがいる。

一緒にするわけにはいかない。

様子を見るからと答えて置いた。

しばらく公開を控えるように園に申請して様子を見たいと伝えた。



夜。

予定通り訪問があった。

トオルはマヤの所に案内した。

「やあ、マヤちゃん久しぶり。

 大変だね役作りなんだって?
 
 でも、海外に療養治療って聞いていたけど、極秘なんだ?」

矢継ぎ早に訪問者は話しまくった。

「まあ、いろいろ。

 お願いできる?
 
 あっあと、
 
 トオルさんもよく見ていて

 あなたに取ったり付けたりしてもらうんだから」

トオルの方を見ながらマヤはそう言うと、

「ええ、大変だよ。

 覚えられる?」

と続いて男は言い、

「まあ、いいや、

 かかろうか」

男はそう返事をして荷物を広げ、

そして、数分後見事にパンダの顔が作られた。

付け方とはずしかたを覚えるのにトオルは大変だった。

「そうそう、あまり付けっぱなしにしないでね。

 肌が荒れるから」

そう言い残して男は帰っていった。



「どう、パンダでしょ。

 怪しまれずにここにいれるでしょ」

「そう、だね」

「遅くなっちゃったね。

 今日はもう寝ましょう」

パンダ顔のマヤは言う。

「はずそうか」

「いいの。

 これがあればあなたが家に帰っても大丈夫でしょ。

 知っているのよ。

 あなた家に帰ってないでしょたぶん私のために」

とマヤはトオルを気遣った。

「そうか、

 うん、わかった。

 今日は家に帰るよ」

マヤの気遣いにトオルはそう返事をして去っていった。



朝になり電話が鳴った。

フォンフォンの様子がおかしいという電話でトオルは急いで動物園に向かった。

動物園ではパンダの檻からフォンフォンが消えていた。

トオルは胸騒ぎがした。

「もしかして」

そんな思いをしながら隔離施設へと向かうが、

しかし、フォンフォンの姿が見えない。

それを見たトオルは胸をなで下ろし、

そしてマヤのいる寝床へと向かっていった。

ガチャン!!

重い音を立てドアを開ける。

そして、そこに2頭のパンダが、いた。

性交中だった。

「あっ…」

その光景にトオルは声を詰まらせると、

小さなパンダはトオルを見るなり。

「お願い…助けて」

とパンダの口がそうトオルにいった。

その声にトオルは慌てて駆け寄るが、

しかし、すでに行為は終わったようで

フォンフォンはトオルをちらりと見ると外に出ていった。



朝、早番の職員がぐったりしているフォンフォンを隔離施設に入れたらしい。

その後、うろうろしていたが、

寝床で眠っているマヤを見つけいきなり後ろから押さえ込んだ。

びっくりしてマヤが目を覚ますが、

しかし、自分に迫るフォンフォンに姿に恐怖で身体が動かすことが出来なかった。

その一方で、マヤの性器の匂いをかいで興奮したフォンフォンは

マヤのその穴に自分の物を押し込む、

ズニュッ…

マヤの性器に太くて大きなものが入ってくる。

「くっ」

マヤはびっくりして声を上げるが、

しかし、痛みは感じることはなかった。

すると、フォンフォンが動き出す。

激しく前後する動きにマヤはあわせて動く。

「うう、うう」

うなるような声を上げて快感に落ちていく。

『気持ちいい、今まで生きてきた中で一番気持ちいい』

そう感じていると

扉が開く音がした。

トオルだ。

マヤはわれに返ると、

「お願い助けて」

それだけ言って絶頂を迎え、そのまま快感で気絶した。



マヤは起きあがるとフォンフォンはいなかった。

ぐったりとした身体を起こすと不思議にすっきりとした気分だった。

あの快感が忘れられなかったが

しかし、相手がパンダだったということにマヤはショックを感じていた。

そして、その一方でトオルは飼育係控え室の机で考えていた。

あんなことになっちゃってどうしよう。

なんて謝ればいいんだろう。

「いっそこことマヤが本当のパンダになっちゃえば…」

と思わず声を出してしまい、慌てて周りを見回した。

が誰もいなかった。

よかった誰かに聞こえたらヤバイよ。

周囲に人がいないことにトオルはホッとするが、

『おやおや、注文が多いね。

 まあ、乗りかかった船だし』

と御簾の近くで小さな声がしたがこの声はトオルには聞こえなかった。



そして、マヤの所に小さな老人がやってくるなり、

「おや、なんだ顔をどうしようかと思ったが、もう準備してあるじゃないか」

といって手をパンと叩いた。

そのとき

「え?」

マヤは異変を感じていた。

作り物のパンダのマスクが自分の物になっていくのを目がよく見える。

視界が広がったのだ。

不自然だった鼻は本物らしくふくらんで前に突きだしていく。

口も何か大きく広がっていき作り物の口と同化した。

耳も良く聞こえだした。

それと同時に不自然だった体つきが完全にパンダの物となった。

「サービスじゃ」

すっかりパンダと化してしまったマヤを眺めながら老人は消えた。

「やっぱり、謝りにいこう。」

そうトオルは決め事務所を出ると、

パンダの檻では元気そうにフォンフォンが遊んでいた。

「ったく、

 気楽な…」

そんなフォンフォンを眺めながらトオルは奥の施設へと行く。

寝床にはいるとそこには間違いなく本物のパンダがいた。

「まっマヤちゃん

 どうしたんだ」

その姿を見たトオルは驚いて叫ぶが、

ガウッ

ウゥゥゥゥ

マヤはうなるような声を上げ必死で何かを訴えるが

しかし、言葉にはならない。

「まっマヤちゃん…

 そんな、
 
 マヤちゃんが本物のパンダになっちゃった。

 どっどうすればいいんだよ」

トオルはパンダになってしまったマヤに抱きついて泣いた。



数日後、控え室。

例の笹が、萎れて汚くなっている。

トオルはそれを捨てようと寺に持って行った。

捨てる間際に。

あんなことになっちゃって。

せめてマヤちゃんと変わってあげられれば。

そういいながら笹を捨ててもらった。



さらに数日後、パンダは2頭で観客を喜ばせていた。

しかも、雌パンダは妊娠しているらしく動物園にとっては喜ばしいことだった。

そして、トオルはパンダの世話をしながら、

「元気な子を産むんだよ。

 私の代わりに…」

と声をかける。


夜、雌パンダは夢を見ていた。

あの、例の小さな老人があらわれ

「お前の夢は全部叶えてやれてれしいよ。

 奉納してもらいわしもあっちに帰れる。

 達者で暮らせよ」

雌パンダは目を覚ました。

『なんだよ、夢って俺はそんなことは望んでいないぞ』

悲しそうに鳴くパンダの声が響いた。



おわり



この作品は田中じろーさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。