風祭文庫・獣変身の館






「スケッチ」
(ふたりはプリキュアSS・二次創作作品)


作・風祭玲


Vol.756





ミーンミンミンミン!!!

響き渡る蝉時雨の音と

真上から照りつける真夏の日差し、

夏休みまっただ中の海岸通りを日向咲は歩いていた。

「あぢぃ〜っ

 もぅ、舞ったらっ

 どこに行っちゃったのかな」

ふと立ち止まった咲はそう呟くと、

額に手を当て、人を探す仕草をする。

そう彼女は親友であり、

そして“戦友”でもある美翔舞を探していたのであった。

「うーん、

 和也さんの話だと、

 舞はスケッチブックを持って

 あたしの所に向かったって言っていたけど…」

その日の午前、自宅で舞と会う約束をしていた咲だったが、

しかし、昼近くになっても現れない舞を探しに

舞の自宅に向かったものの、

『あれ?

 咲ちゃん、どうしたの?

 え?

 舞?

 舞なら結構前に咲ちゃんのところに行くって

 スケッチブック持って出かけたけど』

と応対に出た兄・和也からは舞は咲の所に向かったと説明された。

「…あたしのところに向かったのなら、

 すぐに着ていいはずだけど…

 うーん、

 ねぇ、フラッピ、

 何か感じる?」

咲は先日の電車での一件を思い出しながら、

相棒であるフラッピに向かって話しかけると、

『それが…

 何も感じないラピー』

と既に周囲の気配を探っていたフラッピは返事をした。

「そう…

 じゃぁ、あのナントカ・シタターレって言う奴に

 さらわれたわけでもないのかな」

その返事を聞いた咲は

ダークフォールの連中が舞の失踪に関わっていたのでは、

という考えを横において改めて海を眺める。



時間は既に正午を回り、

辺りは次第に午後のたたずまいになってくる。

『チョッピの事が心配ラピー』

なかなか見付からない舞の姿に、

フラッピは舞と共に居る相棒のチョッピの事を心配すると、

「大丈夫だって」

と咲は宥めた。

そして、ある社に続く階段の下に差し掛かったとき、

「あれ?

 あそこにいるのは舞じゃない?」

と社の階段を登った先の境内に居る舞の姿を見かけた途端、

「舞ぃ〜っ!」

咲は舞に向かって声を張り上げ、

手を振る。

だが、舞は何かに熱中しているらしく、

咲の声には何も反応を見せないでいると、

「はぁ…

 舞ったら、

 絵を書き出すとなにも聞こえなくなっちゃうんだからぁ」

咲は半ば呆れながら社の階段を登り始める。

そして、案の定、

社の境内で一心不乱にスケッチブックに向かっている舞の傍にくるなり、

「舞ったら、こんなところで何をしているのよぉ」

と声をかけた。

「!!っ」

咲のその声に舞はハッとして振り向くと、

「さっ咲ぃ、

 どうしてここに?」

と顔をヒクつかせながら聞き返してきた。

「え?

 どうしてって言われても、

 舞、なかなか来ないし、

 和也さんからは出かけたと聞いたし、

 また、あのハナミズナントカにさらわれたかと思ったわよ」

安心した表情をしながら咲は話すが、

「うっうん」

それを聞いた舞の返事はどこか硬かった。

「で、この下を通りがかったら舞の姿が見えたので…

 だから上がって来たんだけど、

 あれ?

 なにかまずいことでも?」

舞のその表情を見た咲は気まずさそうに言うと、

『おやっ、

 お友達かえ?』

突然、女性の声が周囲に響くと、

フワッ

二人の前に銀色の髪をなびかせ、

巫女装束を纏った女性が姿を見せた。

「うわっ、

 だっだれ?」

いきなり空中から姿を見せた巫女に咲は驚くと、

『ほーほほほほ…

 なかなか元気がありそうな子じゃのぉ』

袖から扇を取り出し、

口元を隠しながら巫女は咲を見る。

すると、

「さっ咲は関係ないです。

 だから、帰してあげて下さい」

慌てて立ち上がった舞は巫女に向かって声を上げると、

「舞っ、

 一体何なの?

 ダークフォールのアイツなの?」

と咲は巫女をにらみつけると、

舞に聞き返した。

ところが、

「咲は黙って、

 いいからここからすぐに離れて」

舞は振り向かずに咲に命令をするが、

『おんやぁ、

 関係ないかどうかはわたくしが判断します。

 さて、舞殿。

 お願いしてたものは出来たかのかしら』

と巫女は問い尋ねると、

「はいっ、

 これでどうかしら?」

と舞はさっきまでスケッチをしていたスケッチブックを巫女に手渡した。

『ふぅむ…』

そのスケッチを見ながら巫女は唸ると、

「ねぇ、

 教えてよ舞っ

 何があったの?

 この人は誰なの?」

と事情が飲み込めない咲は舞を突っつきながら尋ねる。

すると、

「実はね、

 あの人って人間じゃないのよ」

と舞は返事をした。

「えぇ!

 人間じゃないって…

 じゃぁなん何なの?」

思いがけない舞の返事に咲は驚くと、

『この人は神様チョピ!』

と舞の脇からチョッピが姿を見せるなり、

咲に説明した。

『それってどういうことラピっ?』

姿を見せたチョッピに続いて、

咲の脇からフラッピが姿を見せて尋ねると、

『うーん、

 とっても凄い神様としかいえないチョピ』

とチョッピは困った顔をする。

『フィーリア王女よりも凄いラピっ?』

それを聞いたフラッピはフィーリア王女よりも格上なのか尋ねると、

『違うチョピっ

 フォーリア王女やフラッピやチョッピとは全く違うんだけど、

 でも、とっても強い力を持っているチョピ』

チョッピは巫女が自分達とは異質の存在であることを強調した。

すると、

『はーぃ、

 合格よ。

 とてもよく描けているわ』

スケッチを見ていた巫女は満足そうに答え、

そして、

『残るは一つ、

 期限は日没までよぉ』

とにこやかに笑いながら、

スケッチブックを舞に返した。

すると、

「ちょっと待った、

 なにが期限なのよっ、

 なんで舞があなたのためにスケッチをしないといけないのよ」

そのやり取りを聞いていた咲が怒鳴ると、

ジロッ

巫女は咲を見据え、

『じゃぁ、あなた。

 じゃぁあなたは彼女のお仕事を手伝ってあげなさい』

と巫女は口をへの字にしてそう言うなり、

パチン!

右手の指を鳴らす。

その途端、

『わっ!』

『きゃっ!』

フラッピとチョッピは姿を消すと、

モゾッ!

咲の頭の両側が動いた。

そして、

ニョキ!

茶色い毛に覆われた耳が飛び出すと、

モゾモゾ!

今度はお尻から同じ茶色い尻尾が飛び出し、

「え?

 え?

 なにこれぇ!」

自分の体から飛び出した尻尾や耳に咲は悲鳴を上げるが、

ゾワゾワゾワ…

その身体から一斉に毛が吹き出すと、

メキメキ!

両手の指が萎縮し、

鋭く尖った丸い爪が出る獣の前脚へと変わり、

さらに両脚も踵が引き上げられ、

足先が伸びていくと、

身体を覆った毛が脚をも覆い、

見事な後ろ脚へと変化した。

さらに顔も鼻が突き出していくと、

口が大きく裂けた丸い獣顔へと変化し、

そして、身体が小さくなっていくと、

舞の前で咲は人間から獣・タヌキへと変身してしまった。

『なっなに?

 なにが起きたの?』

タヌキに変身させられた咲は自分の身体を見ながら困惑すると、

「さっ咲ぃ!」

それを見た舞が慌てて駆け寄り、

タヌキになった咲を抱き上げながら、

「咲は関係ないのよっ

 元に戻してあげて!」

と巫女に向かって怒鳴る。

だが、

『おやおや、

 一人よりも二人のほうが仕事が捗ると思ってあげたのに』

巫女はガッカリした口調でそう呟くと、

『さぁ、あまり時間はないわ、

 時間内に終わらせないと、

 永遠に人間には戻れないわよ』

と舞を見詰めながら冷酷にそう告げる。

「くっ」

その言葉に舞は悔しそうに両手を地面につけると、

ザワザワザワ…

手から乳白色の毛が生え、

その毛が手を登って行くと、

途中から赤茶色の毛へとかわり、

さらに全身を覆い尽くすと、

ブワッ!

箒のような尾が飛び出す。

その頃から身体の大きさが小さくなり始め、

さらに、鼻先が尖っていくと、

ピンッ!

頭の両側に耳が立ち、

舞はキツネへと姿を変えた。

『うわっ、

 舞がキツネになった』

舞の変身を見た咲は声を上げて慌てふためくと、

『じゃぁ、

 最後の一つ、

 頑張るのだよ』

巫女は瞬く間に白銀色のキツネへと姿を変え、

空の彼方へと消えていった。



『一体何があったの?』

タヌキになった咲が事情を尋ねると、

『うん、

 あのね』

とキツネの舞はこうなった事情を話し始めた。

それは今日の朝。

何気なく街中の稲荷のスケッチをしていたとき、

誰が悪戯したのか、

祠に安置してある”おキツネ様”が

互いにそっぽを向いた状態になっていたので

向きを直そうと舞が”おキツネ様”に触れた途端、

『お前、何をしている?』

と巫女装束姿の女性が舞に声をかけたのであった。

そして、

「おキツネ様の向きが

 これではケンカしているみたいなので」

と舞が事情を話すと、

『ふむ、

 これではいけないのぅ』

巫女はそう言いながら、

おキツネ様の向きを変えた。

そして、舞を見ると、

『どうじゃ?

 ひとつ”げぇむ”をしてみないか?』

と舞に話しかけたのであった。



「ゲーム?」

『そうじゃ、

 これからわたしが指定する祠の全てを絵に収めよ、

 期間はそうじゃのぅ、

 あの陽が沈むまでじゃ。

 どうじゃ、面白かろう?』

と巫女は舞にスケッチのゲームを持ちかけた。

だが、

「いえ、あたしはそういうことは…」

巫女の申し出を舞は断ろうとしたとき、

ムリッ!

突然、舞の身体から赤茶色の尻尾が飛び出し、

それを合図にして変化をし始めると、

瞬く間に舞は一匹のキツネへと姿を変えられてしまった。

『そんなぁ、

 なんで…』

キツネとなってしまった舞は困惑をしていると、

『おほほほ…

 ”げぇむ”はもぅ始まっておる。

 絵に収める祠の数は全部で12、

 期限は…日没までじゃ、

 対象となる祠のところにくれば人の姿に戻るから、

 それが合図じゃ、

 では健闘を祈るぞ』

と巫女は舞に告げると、

瞬く間にその姿を消してしまったのであった。



『ひっどーぃ、

 舞の都合も聞かずに無理やりキツネにしてしまうだなんて、

 あんまりじゃない?』

タヌキの姿で咲は怒ると、

『で、さっき、あの巫女は残るは一つ。

 って言っていたけど、

 もぅ11枚の絵は描いたの?』

と咲は尋ねた。

『うん、

 でもね、

 このキツネの身体だと、

 どこに祠があるのか、

 どの祠が対象なのか、

 すぐに判ってね。

 なんか、拍子抜けって感じなのよ』

キツネの舞は小さく笑う。

『そっか、

 じゃぁ、その最後の祠に行きましょうか?

 場所は判るの?』

身体を大きく伸ばしながら咲は尋ねると、

『うっうん…

 その場所だけどね、

 あの、ほら、

 大空の樹の所に祠があったでしょう』

と舞は二人にとって大事な場所である。

大空の樹のそばにある祠のことを告げた。

『そうか、

 あの祠が最後の祠かぁ…

 って、あそこって

 ここからだと目茶遠くない?』

と咲は顔を引きつりながら聞き返し、

そして、西に傾く太陽をチラリと見ると、

『大急ぎで行かないと間に合わないわよぉ!!!』

と悲鳴を上げるや否や、

タタタッ!

タタタッ!

タヌキとスケッチブックを背負ったキツネが飛び出して行く。



『はぁはぁ

 はぁはぁ

 うー、なかなか進まないよぉ

 それにしんどい…』

海岸通りをタヌキの咲とキツネの舞は並んで走っていく、

部活のランニングで走っている道だが、

しかし、人の身体と動物の身体では、

その進み具合や、

体力の消耗具合がまるで違い。

二人にとっては結構ハードな行程であった。



「おっ、

 おいっ、見ろ

 宮迫っちっ」

道を走り抜けていく二匹の動物に

宮迫と歩いていた健太が気がつくと、

宮迫の背中をつついた。

「どうしたの?」

健太のその言葉に宮迫は振り返ると、

「なぁ、見てみろよ、

 タヌキとキツネが並んで走っているぜ」

健太は興奮した口調で話す。

「確かに、

 キツネもタヌキも夜行性だから、

 昼間人前に出ることは珍しいけど、

 そんなに大騒ぎするほどのものでは」

あくまで冷静な宮迫はそう釘をさすが、

「でも、見ろよ、

 あのタヌキ、

 なんか咲に似てないか?」

と健太は指摘した。

すると、

「ダメだよ、

 そうやって人の悪口をいうのは!」

と宮迫は注意をするが

だが、

「咲の奴、

 何かに似ていると思ったら、

 タヌキだったのか、

 そうかそうか」

と健太は一人で大笑いを始めだした。

『くっ健太の奴ぅ!

 今度会ったら

 ただじゃおかないんだから』

そんな健太を追い抜いた咲は

後ろを振り返りながら怒鳴るが、

しかし、その声は彼には届くわけはなく、

やがて二人は大空の樹に続く坂道を登り始めた。

ところが、坂道を上り始めた途端なぜか咲の足取りは重くなり、

そして

『お腹空いたぁ』

と言いながらへたり込んでしまった。

『えぇ、

 もうちょっとなんだから、

 頑張ってよぉ』

座り込んでしまった咲に舞は呆れると、

『そうだ、

 ウチに行けばおやつのチョココロネがあるはず!』

と咲は自宅のぞばに来ていることを思い出すなり、

そのまま自宅の方へと向かい始める。

『ちょっとぉ、

 その姿で戻る気?』

それを聞いた舞は驚きながら聞き返すが、

空腹を満たしたいことしか考えられなくなった咲は、

舞の言葉には聞く耳を持たずに、

フラフラと自宅であるパン屋へと向かっていく、

そして、その前に来たとき。

『あっ、

 いきなりこの格好はまずいか』

といま自分がタヌキになっていることに気付くと、

ウロウロとうろつきまわり始めた。

すると、

ヌゥッ

自宅で飼っているペットのネコ・コロネが咲の前に立つと、

『おぉ!

 コロネっ
 
(って、お前ってそんなに大きかったの?)

 悪いけど、あたしのチョココロネとって来てくれない?』

と咲はコロネに懇願し始めた。

『コロネに頼んでまで…って』

そんな咲の執念を見た舞は冷や汗を流すが

ニャァ…

コロネは返事をするかのようにひと鳴きして、

ノソッと自宅へと消えると、

「あっコロネっ

 それ、お姉ちゃんのだって、

 ダメよ、

 持って行っちゃぁ、

 あぁぁ…

 お母さんっ

 コロネがお姉ちゃんのを…」

自宅から妹・みのりの声が響き、

程なくしてコロネが咲の前に姿を見せると、

チョココロネを咥えてきたのであった。

『おぉっ

 サンキュー!

 恩に着る!

 みのりに後で説明しておくから』

咲は礼を言いながらチョココロネに飛びつくと、

一気に平らげた。

そして、

『ふぅ食べた食べた』

満腹のお腹をさすっていると、

『食事は終わりましたかぁ?』

の声と共にキツネの舞が姿を見せる。

『あぁ、

 舞っ

 ごめんごめん、

 急ごう』

腹を満たした咲は本来の目的を思い出すと、

再び走り始め舞と共に大空の樹へと向かっていく、



シュワァァァ!!!

「あっ戻った!」

ヒグラシの声が鳴り響く大空の樹の横にある祠にたどり着くのと同時に

二人はタヌキとキツネから人間の姿へと戻ると、

ポン!

ポン!

チョッピとフラッピも姿を見せ、

『急ぐラピっ』

『急いで』

と声を上げた。

「うっうん」

その声に押されて舞はスケッチを開き、

祠を掻き始めた。

ザァァァァァ…

日が暮れていくに伴って、

風が吹き抜け、

大空の樹を大きく揺さぶり始める。

やがて、

フワッ!

二人の背後にあの巫女が姿を見せるなり、

『げぇむせっと』

と声を上げた。

「むっ、

 現れたわねっ」

その声に咲は巫女をにらみつけると、

スッ

舞は無言で立ち上がり、

巫女の元へと向かうと、

「はいっ

 これで最後です」

と言いながらスケッチブックを差し出した。

『どれ?』

差し出されたスケッチブックを巫女はじっくりと見つめ、

そして、

『おっけーっ

 合格!』

というと、

「じゃぁ、

 呪いは解いてくれるのね」

咲は巫女に尋ねた。

『呪い?

 そんなものはかけてないわよ』

咲の言葉に巫女そう返事をすると、

「うそっ、

 じゃぁなんで、

 あたしたちはタヌキとキツネになったのよっ」

と咲は詰め寄った。

すると、

『あぁ、あれ?

 あれはあなた達に動物の気分を味わってもらおうと思ってね。

 日が暮れれば勝手に解ける術を仕掛けたまで、

 どうだった?

 いつもとは違う視点の街は?』

と巫女は尋ねる。

「なっ

 なによっ、

 それっ

 だったら、はじめから言いなさいよぉ」

それを聞いた咲は怒鳴ると、

グッ

そんな咲を押さえて舞が出てくると、

「何時もとは違う街を見ることが出来て楽しかったです」

と返事をした。

「ちょっと、舞っ

 そんな言い方って…」

舞の返事に咲が聞き返すと、

「うふっ、いいじゃない。

 動物になれる。

 って素敵なことそう滅多にないんだから」

と笑顔で答える。

「はぁ…

 まぁ、舞がそこまで言うのなら…」

舞のその言葉に咲は頭を掻くと、

『このスケッチ、

 わたしが貰っていくわ。

 その代わり、あなた達には代償を差し上げます』

巫女はそう告げると、

9本の尾を伸ばし、

フワッ

夕暮れの中へと消えて行く。

「九尾のキツネだったんだ」

「そうみたいね」

巫女を見送った二人は並んでそう呟くと、

「さっ帰ろう」

と舞はいつもの笑顔で咲を見た。



『おーぃ、咲ぃ、

 またこのネコ缶なのかよっ』

「仕方がないでしょうっ

 我慢して食べてよ」

『そうかぁ、

 あの時、腹を空かせて動けない咲を助けてあげたのは

 どこの誰だっけ?』

「判ってますよっ

 非常に感謝しています。

 でもね、あたしのお小遣いではこれが限度なの」

ペットのネコの餌作りをしながら、

咲は一人で声を張り上げる。

そして、その背後では

「おねちゃん、

 コロネとなにをお話をしているのかな?」

「さぁ?」

咲の家族が一人で怒鳴るその姿に首を捻っていたのであった。



「全く、

 動物と言葉を交わせるようになったのはいいけど、

 なんで、コロネの言うことを聞かなければいけないのよ」



おわり