風祭文庫・獣の館






「Dr.ナイトの人体実験」
【レポート8:靖子の場合】



作・風祭玲


Vol.220





「いやぁぁぁぁ〜」

銀貨のような満月が昇り始めた夜道に女性の叫び声が響く、

「…おぉーぃ、

 そんなに嫌がらなくても良いじゃないかよ」

「うへへへ…

 約束通り、俺達と楽しいことしよう。

 って言っているんだからさ」

「この期に及んでイヤとは言わせないぞ」

などと言いながら数人のジャージ姿の屈強な男達が、

悲鳴を上げ逃げる彼女を追いかけていく、

「助けてぇ!!」

女性はなおも助けを求めて走るが、

しかし、行方不明者の情報提供を呼びかける看板と雑木林、

そして寒々と道を照らす外灯ぐらいしか彼女の目に入ってくる物はなかった。

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

裸足で逃げる彼女の息が徐々に上がっていく、

「ほらほらどうしたの靖子ちゃんっ、

 そんな足取りじゃぁ

 スグに捕まっちゃうよ」

一方、彼女の後を追う男達は半ばゲームをしているかのように余裕があった。

「あっ!!」

ついに疲れが足に来たのか靖子が足をもつれさせながら倒れると、

「はーぃ捕まえたぁ

 もぅ鬼ごっこは終わり?」

「もっと遊びたかったなぁ」

「俺達はまだまだ余裕だぜ」

などと言いながら男達は彼女の周りをあっという間に取り囲んでしまった。

「…お願いです。許してください」

靖子は顔を上げると男達にそう懇願した。

男達は一瞬顔を見合わせると軽く頷き、

「ダーメ!!

 だって靖子ちゃん約束したでしょう、

 今日の試合に勝ったら何でもくれるって」

と男達の一人が彼女に言い聞かせるようにして言うと、

「まぁ、しょうがねぇわなぁ…

 レギュラーメンバーがことごとく謎の怪我で出られなくなったんだから」

別の男が頭を掻きながら靖子にそう言うと、

「謎の怪我って…そんな…

 じゃぁ、やっぱりあなた達が武君や哲也君達に怪我を追わせたのね!!」

そう彼女がきつい口調で叫んだ、

「おやおや、何を根拠にそんな根も葉もないことを言うんだよ、

 俺達が出たおかげで今日の試合は勝てたんだろう?

 武や哲也の様な軟弱モノじゃぁ勝てなかったぜ」

靖子に向かって水泳部の部長・田所仁がそう言うと、

「何言ってんの、

 今日の試合だってあなた達が裏で相手チームに悪さをしたに決まっているわ」

靖子は田所を睨み付けながら叫んだ、

「うわぁぁぁ、いまの一言…傷ついたなぁ…

 おれ達、あんなに頑張ったのになぁ…」

「そうだよぉ、マネージャーが部員を犯人呼ばわりするなんて、

 ちょっと酷いんじゃないか?」

と男達…そう靖子がマネージャーをしている水泳部の2・3年の部員達が

次々と靖子に迫ってきた。

「よぉし、じゃぁこうしよう!!

 マネージャーにはこの責任をとってもらって、

 ココにいる者達を慰めてくれよなっ」

田所がズイっと靖子に迫りながらそう言うと、

「おいっ」

っと合図した。

すると、

「えへへ…」

部員達はニヤケ笑いをしながら靖子に近づいていくと、

たちまち彼女を羽交い締めにしてしまった。

「いやぁぁぁ…武っ助けてぇ!!」

靖子の口から助けを呼ぶ悲鳴が上がる、

ところがその言葉に部員は驚くと一斉に顔を見合わせ、

「おぃ、いまの聞いたか!!」

「聞いた聞いた」

「おっどろいたなぁ」

一斉にそう言うと、

ハッ

靖子は慌てて口を閉じた。

「やっぱマネージャーは竹島の奴とデキていやがったんか」

腕を組みながら田所は靖子を見下ろしながらそう言うと、

ニィ…

っと笑みを作りながら、

「…徹底的に嬲ってやる」

と呟いた。

サァー

その言葉を聞いた靖子の顔から見る見る血の気が引いて行く。



ビリビリビリ!!

月夜に布が破れる音がこだました。

ドサッ、

下着姿の靖子が道路上に転がると、

「にへへへへ」

にやけた笑いを作りながらたちまちその周りを部員が取り囲む。

そしてその様子を、

「…………」

靖子はただ怯えた目で見つめていた。

すると、

田所はおもむろにジャージのズボンを降ろすと、

「そいつを押させつけろ」

と言葉短めに部員に命令をする。

その途端っ

ガバッ

靖子の身体は抵抗できないように押さえつけられると、

ヒィ!!

靖子の目に恐怖が浮かび上がる。

そして、

ジワジワ

と部員の手が靖子に迫ってくると、

「いやぁぁ!!」

ついに、残った最後の砦である下着を奪われ、

白い裸体が月明かりに照らし出された。

「へへへ…いくぜ…」

そんな靖子の身体を舐めるように眺めながら

田所は猛々しく勃起した己の男根を扱いた後、

靖子を覆い被さるようにしてのしかかり、

そして、

ヒタ…

靖子の女陰に宛った。

「うぅうぅ」

靖子は口を真一文字に結ぶと、その目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

すると、その時、

「こんばんわ…」

突然、部員に向かって誰かが声をかけた。

「!!!っ

 誰だ!!」

犯行現場を見られた為か部員達は大きく取り乱だすと、

「やぁ…」

満月を背にして一人のシルエットが浮かび上がった。

すると、部員達は

「なんだてめぇーは」

「見せモンじゃないんだぞ」

「さっさといっちまえよ」

と口々に言いながら立ち上がると人影に向かって詰め寄っていく、

しかし、人影は

「なぁにただの通りがかり者ですよ…」

と言うと、

「たっ助けてください」

這いずるようにして靖子が人影の足下に縋った。

すると、

「おや…お楽しみの最中でしたか」

全裸の靖子を眺めながら人影はそう言うと、

「どうぞ、続けてください」

と手をさしのべながらそう言った。

その声に靖子の顔に絶望の二文字が浮かび上がっていく。

しかし、部員は、

「なにを…

 盛り上がった場を台無しにして、

 続けてくれだとぉ!!」

と人影に向かって食ってかかった。

「おや、人に声をかけられただけで盛り下がってしまうんですか、

 あなた達のお遊びは…」

人影がヤレヤレと言うジェスチャーをしながらそう言うと、

「ふざけるんじゃーねぇっ!!」

「どうしてくれるんだ!!」

「責任取れよ」

部員は罵倒するようにして人影に向かって怒鳴ると、

「責任ですか…」

人影は何か考えるそぶりをした。

そして

「判りました…

 では○○高校水球部の方々に敬意を表して…」

と人影が言った途端、

ヒュン!!

人影は素早く部員の間をくぐり抜けた。

プシュ!

プシュ!

プシュ!

そして、人影が通り過ぎる際、

その首筋に何かを当てると、素早く打ち込んでいく。

「なっ

 いま何をした!!」

首筋を押さえながら田所が怒鳴ると、

「いやぁ…暑いですなぁ…」

と人影は月を眺めながら返事をすると、

「ふざけるんじゃ…

 え?
 
 あれ?
 
 なに?」
 
声を上げた田所の声が見る見るハスキーな声へと変わり始めた。

「なっなに…

 なんだコレは…」

まるで鈴のような少女の声を上げて田所はうろたえると、

「おっおい…」

「俺達も…

 どうなってんだ!!」
 
続いて他の部員の声も田所と同様に変わっていった。

「お前…俺に何をしやがった」

少女のような声を上げながら田所が人影に向かって怒鳴ると、

「はははは…

 あなた方にすばらしい身体をプレゼントしてあげるんですよ、
 
 一生水の中に居ても大丈夫な身体をね…
 
 さぁ、そろそろ本格的な変身が始まりますね、
 
 いやぁ、私が改良した新しい薬がどんな効果を見せてくれるのか
 
 楽しみだなぁ(ははは)」

人影は嬉しそうに笑った途端、

ドクン!!

田所の身体が大きく動いた。

「なに?」

彼は不安そうに自分の身体を眺めていると、

ビクンッ!!

再び彼の身体が波打つように大きく動いた、

「うっ」

苦しいのか田所はその場に崩れるように蹲る。

ドクン!

ドクン!!

彼の身体の中を血流が激しく動き回り、

全身から汗が滝のように吹き出すと、

ボタボタ…

吹き出した汗が下の路面に小さな水たまりを作っていった。

そして、

ハァハァ

徐々に息が荒くなっていくと、

ドクン!!

更に大きい一撃が彼の身体を見舞った、

そしてそれと同時に、

グ…グググ…

逞しく筋肉が盛り上がっていた田所の身体がゆっくりと小さくなり始めた。

ミシミシミシ…

また変化していく身体に合わせるようにして太い骨も小さく細くなっていく、

ハラハラハラ…

「あああああ…」

腕を覆っていた体毛が抜け落ちていく様子を見ながら、

田所は自分の身に起きていることが信じられないような声を上げると、

「ふふふふ…」

人影は小さく笑いながら彼の変身をジッと眺めていた。

その一方で田所の身体は胸筋が張り出していた胸から筋肉の膨らみが消えると、

見る見るジャージがだぶつきだした。

そして、

その下ではピンク色に染まった乳首を頂点に二つの膨らみが可愛らしく膨らんでいくと、

日に焼けて色黒だった肌も白く繊細な肌へと変わり、

また、腹筋が筋を作っていた腹も筋が消え柔らかな曲線を描き始めた。

「そんな…

 おっ俺…女の子に…」

すっかり華奢な肉体へと変化した彼の姿はまさに少女そのものだった。

しかし、彼の変身はコレで終わりではなかった。

ミシミシミシ…

彼の両足が股間から一つにくっついていくと、

程なくして足は一本の肉棒と化してしまった。

そして、その上に

ジワジワジワ…

朱色の鱗が沸き出すようにして足だった肉棒を覆っていく、

「なっ…」

見る見る彼の腰から下が朱色の鱗に覆われると、

足先がのあたりから幾本の筋が伸びていくと大きな鰭へと変化した。


「いっいやぁぁぁぁ!!」 ピタン! ピタン!! 足先が鰭に代わりついに立てたくなった田所は 鰭を路面に叩きながら悲鳴を上げ転げ回ると、 シュルシュルシュル… その彼の頭から緑色の髪が伸びて行った。 「にっ人魚…」 田所が人魚のなっていく様子を見せつけられた他の部員は思わず縮み上がったが、 しかし、彼の変身は既に部員の運命でもあった。 やがて、 「うわぁぁぁ」 「いやぁぁぁ」 次々と他の部員も人魚へと変身していくと、 「助けてぇ…」 「いやぁぁぁ」 「こんな姿は…」 そう言いながら道路上でうごめく人魚達を眺めながら、 「う〜ん…  この間の兎といい…    どうも男だとこういう結末になるか…」 人影は思案するような台詞を言う。 「………」 自分を襲った部員が目の前で人魚になったのを見た靖子は、 あまりもののことに腰を抜かしていたが、 しかし、自分への危機が去ったコトを悟ると、 「…あっありがとうございました」 と人影に向かってお礼を言った。 ところが、 「ん?  あぁ、一つ忘れていたよ」   人影は靖子を見るなりそう言うと、 プスッ 彼女の首筋に注射器を立てた。 「え?」 驚く靖子… 「やっぱりコレがいちばんだ、  あっ動かないでねぇ」 人影はそう言うとゆっくりとシリンダーを押し込む、 「あっあのぅ…」 針を抜き取られた後、靖子が訊ねると、 「人魚と言えば…何かなぁ…」 人影は靖子に向かってそう告げた。 「人魚?」 靖子の頭にある物の姿が連想された途端。 ドクン!! 彼女の身体を何かが駆け抜けていった。 「なに?」 驚く間もなく、 ビキビキビキ!! 靖子の身体に変化が始まった。 ハラハラハラ… 頭の毛や身体の体毛が次々と抜け落ちていくと、 ジワジワジワ… 彼女の肌が見る見る暗い灰色へと変化していく、 「なっなに?」 靖子を襲う変化は更に進み、 両手の指は張り出していく手のひらに飲み込まれ、 両足も一つにまとまると足先は三日月を割ったような鰭へと変化した。 ムリムリムリ… 腰回りが膨らみ、美しいS字カーブを描いていた体の線が消えると、 ググググ… 靖子の顎が細長く尖っていく、

「うっ、  けっ    きゅぅー    キュィー」 ついに言葉が喋れなくなった靖子は鰭と化した両腕を振りながら盛んに声を上げると、 ムリムリ、 背中に背鰭が生え頭の上に鼻の穴が開いた。 「ふふふふ…」 「キューィ!!(なっなんで…)」 「キューィ!!(元の姿に戻して)」 一頭のイルカが笑みを浮かべる人影の足下ではねていた。 「ふふ…やっぱりイルカか…  さて、人魚にイルカ…  これは観賞用の水槽でも作るようだな…」 人影はそう呟きながら不安そうに自分を眺める人魚達とイルカを眺めていた。 「…あぁ、今夜も月が綺麗だ」 彼の名は”Dr.ナイト”… 彼の魔の手が次に狙う獲物はすでに決まっている。 おわり