風祭文庫・獣の館






「Dr.ナイトの人体実験」
【レポート7:絵美の場合】



作・風祭玲


Vol.219





カッカッカッ!!

黒板にチョークで大きく三宅絵美と言う文字が書かれる。

「はっ、今日から君たちと共に勉強することになった

 三宅絵美さんだ」

担任の教師はそう教室へ向かって横に立っている少女の紹介をする。

シーーーン…

しかし、教室内は一切の私語はなく、

また、生徒達の視線は一斉に絵美へと向けられていた。

「…どうしたんだ?、お前ら…

 いつものようなリアクションがないぞ」

担任はそう言うが、

「………」

教室内は不気味な沈黙を保ったままだった。

「…先生…大丈夫ですから」

絵美は担任に向かってそう言うと、

「…そうか…」

担任は彼女のある一点に視線を合わせないようにして、

一言そう言うと、

「じゃぁ、この列の一番後ろの席に座りなさい」

そう彼女に指示をすると、

「はいっ」

絵美は小さい声で返事をすると机と机の間に設けられた通路を通っていく、

と同時にクラスメイト達の視線も自動的に移動していく。

「うぉっほん!!」

担任は咳払いをすると

「いまから出席をとる」

そう言うと、次々と名前を呼び始めた。

そして、その中で絵美は俯いたまま顔を赤くしていた。



「はぁ…

 早速付いたあだ名が

 ホルスタインか…
 
 これじゃぁ、前の学校と一緒だね」

夕方、絵美はそう呟きながら改札を抜けると、

さわぁ〜っ

っと風がたなびく駅前に出た。

「…おいっ見ろよ、あの女の子…」

「…うわぁぁぁ、でっっけぇ…」

道端で座り込んでいる柄の悪そうな連中が

絵美の胸を指さしてひそひそ話をし始める。

「………いつものことよ」

絵美はスグにでも怒鳴りたい心情をかみ殺して平然と歩いていく、

ユサッ

ユサッ

眼下の二つの盛り上がりが弾むようにして揺れる。

道行く人たちも呆気にとられながら彼女を眺めていた。

「はぁぁぁ…

 何でこんなに大きくなっちゃったのかなぁ…

 もぅ普通のブラでは支えきれないし
 
 Gカップなんてイヤ!!」

と絵美は特注のコルセットで支えられている

砲弾のような自分の胸を眺めて呟いていた。



そして、その上下に揺れる乳房をにらみ付けながら歩いていく彼女の後ろを

スゥゥゥゥ…

一つの影が現れると、

「…う〜む

 あのGカップの胸は見事な素質だ、

 よし、今日予定の娘は来月に回して、

 今日のターゲットはあの娘にしよう…

 彼女ならさぞかし立派なのに変身してくれるな」

影は感心しながらそう呟くと、

ヒュン

っとその場から消えた。

ナーオ…

その横で一部始終を見ていた三毛猫が鳴き声を上げる。



「…行方不明…?」

この近所で多発している行方不明事件の立て看板を横目で眺めながら

「うわぁぁぁ…

 この辺って危ない所なんだ、

 全く、お父さんも何もこんな所に引っ越さなくても良かったのに…」

と思いながら絵美が歩いていくと、

東の空に銀貨のような満月が昇り始めてきた。

ひゅぉぉぉぉ…

一陣の風が絵美の周囲を吹き抜けていく、

「はぁ…明日からの学校生活…

 なんか憂鬱だなぁ…」
 
夕焼けの赤みが消え、青から黒へと変わっていく空を眺めながら

絵美がそう呟くと、

「こんばんわ」

突然彼女の背後から男の声が掛けられた。

「は?」

その声に驚いた絵美が思わず振り返ると、

スゥゥゥ…

黒いマントを身に纏った男が彼女の後ろに立っていた。

「キャァァァァァァ!!」

男の異様な格好に絵美が悲鳴を上げるが、

しかし、

彼女の悲鳴を聞きつけて馳せ参じる物は誰一人としていなかった。

「はははは…

 無駄ですよ、

 人間の嗅覚に作用してこちらには足を向けないようにする薬品を

 この道の要所要所にこの薬を撒いておきましたので、

 誰一人としてココにやってくる者は居ませんよ」

と説明しながら男は小さなスプレー缶を絵美に見せた。

「そっそんなことが出来るんですか?」

男の説明に絵美が聞き返すと、

「ははは…

 私に不可能なことはありませんよ」
 
男は胸を張って絵美にそう答える。

そして、

「さて、

 では、そろそろ作業に取りかかりますか」
 
と言うと、

ゴソゴソ

男はポケットから筒状の物を取り出すと、

カチッ

その先に針のような物体を取り付けた。

そして、

ピュッ

っと液体を吹いたそれを見たとき、

絵美はいいようもない恐怖感に襲われると1・2歩男から下がり、

ダッ

っと一目散に駆けだした。

「ふふ…

 逃がしはしないよ
 
 わたしの可愛い実験動物ちゃん…」

見る見る小さくなっていく絵美の後ろ姿を眺めながら男はそう呟くと、

フッ

っと姿を消した。

「(はぁはぁ)

 ひょっとして…あいつ…

 行方不明事件の…」

絵美はさっきの男が多発している行方不明事件に関係しているコトを

本能的に悟っていた。

「とにかく、お巡りさんにしらせなきゃぁ」

弾む乳房を気にしないで絵美は駅の方向へと走っていく、

すると、道の行く先に一人の人影が見えてきた。

シルエットからそれが警官と判断した絵美は、

「お巡りさぁーん!!

 助けて!!」
 
と叫びながら走り寄った。

「どうしたんですか?」

制帽のような物を被った人影が声を掛けると、

「あっあたし見たんです、

 この先で怪しい男を…
 
 間違いありません。
 
 あの男…
 
 この辺で多発している誘拐事件の犯人です。」

肩で息をしながら絵美がそう告げると、

「その男とは…

 …こういう人相かい?」

と人影が外灯の下に出てくると、

間違いなくさっきの男が絵美の前に立っていた。

「ひぃぃぃぃ!!」

それを見た絵美は悲鳴を上げる。

「ははははは…

 元気な娘だ、
 
 実験動物はそれくらい元気が無くてはね」

男はそう言いながらが笑い声を上げると、

ガシッ!!

逃げようとする絵美を羽交い締めにするなり、

プスッ

っと彼女の首筋に注射器を差した。

「あっ!!」

チクンとする痛みに絵美は目を剥く、

「…動かないでぇ…

 いま動くと、死んじゃうよぉ…」
 
男のさらなる声が絵美の身体を縛り付ける。

すぅぅぅぅ…

シリンダーが押されると、

注射器の液体が絵美の体内へと注入されていく。

そしてすべての液体が絵美の体内にはいると、

フッ!!

男は絵美の身体から手を離した。

しかし、

ドッ

絵美の身体は力なくその場に倒れると、

「ふふふふふ…」

その様子を眺めながら男は微かに笑う。

「なっ何をしたの?」

起きあがりながら男の行為を絵美が訊ねると、

「ははは…さぁ?」

っと男はとぼけて見せた。

そのとき、

ドクン!!

絵美の心臓が大きく高鳴った。

「うっ、なに?、この感覚は」

ドクン!!

ドクン!!

痛いくらいに高鳴る心臓に絵美が戸惑っていると、

「…いいことを教えてあげようか…

 君はもうすぐ、”あるもの”を失って
 
 変わりに新しい”あるもの”を手に入れるんだよ」

と優しく囁いた。

「ある物を失う?」

男の言葉を絵美が繰り返すと、

「ほらっ、もぅ始まったよ」

男が絵美を指さしてそう言った途端。

シュルシュルシュル

見る見る絵美の巨乳が萎むように小さくなっていく、

それに合わせて、

ズルッ

巨乳を支えていたコルセットから重みが消えていく。

「いやぁぁぁぁぁ

 何これぇ!!!」

絵美は慌てて胸を庇ったが

しかし、

シュルルルルルルルル………

Gカップもあった巨乳は瞬く間に消えてしまった。

「いやぁぁぁ!!

 あたしのオッパイが!!」

まるで男性の胸のように真っ平らになってしまった自分の胸を見て

絵美が悲鳴を上げると、

「いどーぃ!!

 そりゃぁ邪魔と言えば邪魔だったけど、

 でも、いくら何でも無くなしてしまうなんて!!」

涙ぐみながら絵美が男に抗議をした。

すると、

「ははは…

 大丈夫だよ…

 もぅすぐ
 
 もっと素敵で
 
 もっと君に似合うおっぱいが出来上がるよ、
 
 ほらっお腹を見てごらん…」

絵美の腹部を指さして男が言うと、

ピクッ!!

ムリッ!!

絵美の下腹部が膨れ始めた。

「やだ、何コレ!!」

その様子に慌てた絵美は下腹部を押さえたが、

ムリムリムリ!!

彼女の下腹部は見る見る膨らんでいき、

押さえている手を押し出し始めた。

ムリムリムリ!!

ギギギギギギ…

膨れていく下腹部にスカートが大きく引き延ばされると、

ついに、

ブチン!!

耐えかねたホックが引きちぎれると、

ボヨォォォォン!!

バレーボール大に膨らんだ肉塊が絵美の下腹部に飛び出した。

「いやぁぁぁ!!」

それを見た絵美は悲鳴を上げる。

ムリムリムリ…

肉塊は更に成長し、

またそれに合わせるようにして、

ニュニュニュ!!

肉塊の左右両側にピンク色をした肉の棒が6本生えそろっていく。

「ははは…君にふさわしい見事なおっぱいだねぇ」

男が満足そうにしていうと、

「こっこんなの、まるでウシのオッパイじゃないの!!」

っと絵美は男に向かって食ってかかる。

すると、

「ウシのオッパイって、

 だって君はウシなんでしょう?」

男が絵美にそう返すと、

「何言ってんの!!

 あたしは人間よ」
 
絵美は強い調子で男に言ったが、

「本当に君は人間なのかい?」

っと男は絵美にそう尋ねた。

「なにを…」

「…本当は君はウシなんじゃないじゃないの?

 だって、その毛はどう見てもウシの毛だよ」

男が絵美を指さしながらそう言うと、

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!

 なぁに、これぇ!!」

絵美の悲鳴がスグに上がった。

ジワッ

悲鳴を上げる絵美の肌には乳白色の毛が生え始め、

さらに身体のあちらこちらには黒毛がブチ模様を作っていた。

「イヤ!イヤ!!イヤ!!!」

取り乱す絵美に肉体の変化が追い打ちをかける。

ビキビキビキ!!

グギギギギギ!!

脚の筋が大きく発達すると、

それに合わせて脚の骨が姿を変え始めた。

メキメキメキ!!

続いて、

絵美の全身の筋肉と骨が姿を変えていくと、

グググッ

絵美はいつの間にかお尻を大きく突き出した格好になる。

そして、

ガシッ

前のめりになりながらも絵美は必死になって耐えていたが、

しかし、

グググググ!!

両足が変形し始めると、程なくして、

ポトッ!!

絵美の足から靴が脱げ落ちてしまった。

カツン!!

蹄の響きのいい音がアスファルトの路面に響く、

「これは…」

変形していく自分の体に絵美はただ驚くばかりだったが、

しかし、絵美の身体はそうしている間にも作り替えられていた。

ムリムリムリ!!

90°に曲がってしまった腰が大きく発達していく。

また両腕も前足に変化し、両手にも蹄が生えそろう。

ベリベリベリ!!

身体の変化に突いていけなくなった制服や下着が引き裂かれると、

絵美はウシの身体を持つ少女の姿になっていた。


カツン カツン 子牛のようにして絵美は4つ足で立ち上がると、 「可愛いよ…」 男はそう呟きながら絵美の頭を撫でながら、 カラン!! 彼女の首にカウベルが付いた首輪を掛けた。 カラン カラン 絵美は盛んに首を振りながら、 「いやぁぁぁぁぁ!!  こんなのはいやぁぁぁ」   と泣き叫んだが、 しかし、彼女の変身はコレで終わりではなかった。 そのときでも絵美の首だけは何とか人間の面影を残していたが、 しかし、変身はその絵美の首もウシのそれへと変化させていった。 ググググ… 絵美の顔が細長く伸びていくと、 顎も伸び、 そして、 ゴボッ!! 舌も厚く伸びた。 「うっ〜うっ〜」 舌が伸びてしまったために絵美は言葉をしゃべることが出来なくなってしまった。 すると、 ブン!! 尻尾か伸びお尻のところで左右に振れ始める。 メキメキ!! 髪が抜け落ちた後の頭の両側から小降りの角が生えると、 「うっ〜もっ  うっ〜もっ」 絵美の口から牛の鳴き声が漏れ始めた。 「さぁ…いいんだよ、  思いっきり鳴いても、  君はもぅウシなんだからね」 男が囁くと、 ついに絵美は 「ンモォォォォォォォォォォ!!(助けてぇぇぇぇぇ!!)」 っとウシの鳴き声を上げてしまった。 パチパチパチ ウシの鳴き声を上げた絵美に男は拍手を送る。 「おめでとう、君は立派なウシだよ  さぁ、僕の研究所に戻って乳縛りをしようなぁ」 と言うと男は形が変わった絵美の耳を優しく撫でた。 そして… 「…あぁ、今夜も月が綺麗だ」 と男は空に浮かぶ月を眺めながらそう呟いた。 男の名は”Dr.ナイト”… 彼の魔の手が次に狙う獲物はすでに決まっている。 おわり