風祭文庫・異形変身の館






「魔法少女 だいた☆マクラ」
(第7話:わたしっ手本とかは)


作・徒然地蔵(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-373





二次元世界の邸宅の一室。

不思議な力で同級生の泳子を男性器の姿に変えた波江は、

その姿を見ながら満足気であった。

「あはは!

 泳子、オチンチンの着ぐるみを被ってるみたい!

 着ぐるみにしては生々しすぎるし顔もなくて全然可愛くないけど!

 いい様だわ!」

波江がそう言って笑い声を上げていたときである。

バンッ!

部屋のドアが蹴破られた。

「見つけたわよ!人に仇なす怪物め!」

そこに立っていたのは戦士姿の少女だった。

銀の肩当てに銀のベルト、白い服に白いスカート。

髪には金のティアラを輝かせ、両手で光の剣を握っている。

「あなた、一体何者?」

波江に少女はにこやかに答えた。

「私は魔法少女テン!テン・ビュール!

 この世界の守護者よ!

 可哀相に。あのおぞましい魔物に襲われたのね。

 怖かったでしょう?

 気が動転して笑いしか出なくなるくらいに。

 でも、もう大丈夫!」

テンと名乗ったその少女は

男性器姿の泳子を見据えて剣を大上段に振り被った。

「さあ!この魔物め!覚悟なさい!」

「まっ待って!違う!その子は魔物なんかじゃない!

 それは人間!人間が姿を変えられているの!」

「えっ…」

マクラの声にテンが動きを止めた。

その瞬間である。

ガシッ!

頭上のテンの両手首を波江の左手が掴みあげた。

「けっ剣が振れない!

 なんという握力と腕力なの!?

 気配の犯人はまさかあなた!?」

「気配?犯人?何それ?」

「くっ!不覚だわっ!

 見た目に惑わされて相手を見誤るなんて!」

「何言ってんの?

 ところであなた、今、泳子を斬ろうとしたわよね?

 泳子は私のものなの。

 泳子を貶めてもいいのは私だけ。

 泳子を傷つけてもいいのは私だけ。

 それなのにあなたは泳子に手を出そうとした。

 覚悟しなきゃいけないのはあなたの方だわ!」

波江は左手に力を入れてテンの両手首を締め上げた。

「いっ痛い!!」

テンの握っていた光の剣が

霧散してあっけなく消えてしまう。

「ふふふ。さあ、どんなお仕置きがいいかしら。

 その可愛らしいお顔をどんな風に歪めてあげようかしら。

 そうだ、決めたわ。あなたを陵辱してあげる。

 正義の味方さんのあられもない姿。

 それがあなたへのお仕置きよ。」

「やっやめなさい!」

「従うと思う?」

波江はテンのスカートに右手を入れるとショーツを掴んだ。

ビリッ!

布の引き千切られる音がする。

「いやぁ!これ以上したら後が酷いわよ!」

「はいはい。後があったらね。

 あ、変な真似したらそこの枕辺さんに

 私何するか分かんないよ。

 さ、泳子にもお仕置きのお手伝いをしてもらおうかな。」

パチン!

波江が指を鳴らすと、

泳子は手足を消失しながらみるみる縮んでいき、

あっという間に張形と呼ぶべき姿になった。

「さあ、私の手に!泳子!」

波江の声で泳子の張形は宙を舞い、波江の右手に収まった。

「剥けよ!仮性包茎オチンチン泳子!」

ムリムリムリムリ!

閉じていた包皮が再び捲れ上がる。

「…あれ?

 剥けたのはいいけど顔がなくなっちゃってる。

 この赤黒い痣みたいなの、きっと元は目や鼻だったのね。

 もう完全にオチンチンね、泳子…」

波江は泳子を舌で一舐めした後、それをテンの花弁にあてがった。

「やめなさい!」

「だから、そう言ってやめてもらえると思う?」

ズブッ

「いやぁぁ」

「あはは!いい格好ね。

 私だけの泳子をあなたなんかに咥えさせるのは癪だけど、

 楽しいから許してあげるわ!」

泳子の張形はテンの膣内で粘液を吐き出しながらグニグニと蠢いた。

「ああ!ああああっ!」

「あらあら。

 さっきまではあんなに勇ましい顔をしてたのに、

 こんなに紅くて可愛いお顔になっちゃって。

 あっけないわね。魔法少女のテンさんっ」

「はぁ、はぁ…

 接近して、気配を読み解いて分かったわ。

 あなたは魔物を宿した人間…

 うっ!くはぁぁ!」

「つまらないことを言うのね。

 私は紛れもなく人間よ。魔物なんか関係ないわ。

 きっと私、超能力に目覚めたエスパーなのよ。」

「そんな都合のいい考えしてたら、

 後でしっぺ返しを喰らうわよ…!」

「随分な負け惜しみね。

 この力は私が自然に身につけたの。

 さ、泳子ちゃんと一緒に踊り狂いなさい!」

波江はテンの花弁へ泳子の張形を押し込んだ。

「ああ!あああっ!ああああっ!!」

「ふふふ。可愛い声を出しちゃって。

 もっと感じて泳子にたっぷり蜜を与えてあげなさい!」

テンの右手が服の上から乳首を摘み上げる。

「ああ!あああっ!」

「あらあら、正義の味方がはしたない乱れぶり。

 さ、泳子、もっと思いっきり暴れちゃって!」

「だっだめ!」

グニ、グニグニグニグニ…

波江が言うが早いか、

泳子の張形はテンの体内で更に大きく蠢いた。

大量の粘液にも拘わらず

張形はしっかり膣に食らいついて離れない。

「ああ!あひゃぁ!あひゃああああ!」

「あらあら。だらしないお顔。

 目を見開いて口からは涎を垂らしちゃって。」

「ひぃ!ひはぁああ!あああああ!」

「ふふふ。もう何も考えることができないみたいね。

 泳子、あなたももう逝きたいんでしょ?

 いいわよ。魔法少女さんと盛大に逝っちゃいなさい!」

「あああ!ああああ!ああぁぁぁぁぁぁっ!!」

テンは白目を剥いて痙攣した。

ドクン、ドクン、ドクン…

同時にテンの腹に怪しい鼓動が響く。

「気持ちよかった?

 あなたじゃないわ。泳子に言ってるの。

 あらあら、こんなに白いのを吐き出しちゃって。

 良かったね。気持ちよかったんだね。」

波江は引き抜いた泳子の張形を見つめて満足気である。

テンは波江の左手に吊られたまま、悔し涙を浮かべた。



「ふふふ。私の勝ちのようね。」

波江はテンに勝ち誇った顔で告げた。

「はぁ、はぁ…

 人間が魔物を宿し続ければ破滅する。

 最後には負けてしまうのよ。」

「だから、魔物なんて関係ないって言ってるでしょ?」

「あなたは知らない間に取り憑かれたの!」

「取り憑かれた?

 もう一度言うけど、この力は自然に目覚めたの。

 他人の姿を変えてしまう能力も、この腕力もね!」

そう言って波江は頭の上でテンの両手を掴む左手を

意気揚々と見上げた。しかしである。

「えっ…」

波江は言葉を失った。

そこには自分の知っている左手はもう存在していなかった。

黒く硬い皮膚。ギラギラと光る獣のような爪。

いつの間にか筋張った筋肉を蓄えたその左手は、

もはや人間の手とは呼べないものになっていたのである。

「…う、嘘…

 な、何なの?何なのこの手…!」

バッ!

動揺して緩んだ波江の左手を振りほどくと、

テンは素早くマクラの方へ飛び退いて間合いを取った。

泳子の張形は波江の手から落ちて床に転がっている。

「くっ!」

「あなたのその左手。それが魔物を宿している証拠よ!」

「うっ煩いわね!少し力が上手く使えていないだけっ!」

「強がらないの!

 魔の力に呑み込まれたら、あなたは人間でなくなってしまう!

 助かりたかったらこれから私の言う事を聞きなさい!」

「まっぴらだわ!

 あんたの助けなんか借りないっ!」

「自分の全身をよく見て!」

「私の全身…えっ…そっそんな…いっ!いやぁぁぁ!!」

波江の肌はいつの間にか漆黒に染まっていた。

そして左手と同じく右手と両足にも鋭い爪が生え、

腕は肘まで足は膝まで、皮膚が厚くなり硬化していた。

「戻れ戻れ戻れ!元の手足に戻れ!

 だっ駄目ぇぇ!駄目ぇぇぇ!元に戻せないよぉぉぉ!」

波江が自身の体を確かめているうちにも

皮膚の硬化は胴へ向けてジワジワと進行し、

手足の筋肉はグキグキと蠢きながらその成長を続けた。

「いやぁぁぁぁぁぁ!

 バケモノなんかになりたくない!

 いや!いやよ!こんなのいやっ!

 いっ痛い!熱い!今度は背中が痛いぃぃぃぃ!」

ムグ、ムグムグムグ…

波江の背中の皮膚が内部から突き上げられて怪しく蠢く。

ググッグググッ…

「やだやだやだやだやだ、いやぁあ!」

グググ…バサァアアアッ!

「ぎゃぁぁぁああ!」

波江の背中を突き破り、禍々しいコウモリのような翼が

体液を滴らせながらその姿を現した。

「はぁ、はぁ、はぁ…いっ!いぎぃぃぃっ!」

シュウゥゥ…

続いて波江の顔から湯気が噴きあがる。

「熱い!熱い!顔が熱いぃぃ!

 助けて!助けてぇぇぇ!!」

波江は顔を両手で押さえながら床を転げまわる。

それを見たテンは唇を噛んだ。

「まずいわ!侵食が思った以上に早い!

 聞いて!

 私は今からあなたに浄化の光を浴びせる!

 そしたらあなたは自分の心の闇の部分、

 魔物に取り憑かれた原因を思い浮かべるの!

 いいわね!」

「い!いぎぃぃぃぃ!はぁ、はぁ!

 わっ私の心の闇…!

 ねっ妬ましかった!何でもできて何でも持ってる泳子が!

 私はっ!私は泳子を妬んだ!妬んでしまった!

 ぐっぐがぁぁああ!痛い!熱い!」

「そうよ!悔いてそして反省するの!じゃあ、いくわよ!」

テンは胸の前で両手をバツの字に組んだ。

「素手シウム光線!」

ビィィィィィィ!!!

「あがぁぁあああ!!」

波江はテンの腕から真っ直ぐに発せられた青い光線に打たれ、

身を仰け反らせた。

「さあ!悔い改めなさい!」

ビィィィィィィ!!!

テンの腕から光線が放たれ続ける。

波江はその光線に体をジタバタさせてもがき苦しんだが、

依然としてその体は悪魔の体のままだった。

「浄化できない!?

 自分の本当の心の闇に気付けていないの!?

 まずい、もう魔法力が…!」

波江の手の間から時折垣間見える悪魔の顔は悲痛を湛えている。

その時、マクラが声をあげた。

「波江さん!

 あなたの心の闇は妬みじゃない!劣等感よ!

 あなたは泳子さんのことが好きだった。

 でも万能な彼女が輝けば輝くほど、

 置いていかれる気がして勝手に不安になったの!

 明るく無頓着な性格に見えて、

 心の奥では劣等感を抱き苦しんでいた。

 波江さん!それがきっとあなたの心の闇!」

「ウウッ!ウウウッ!

 泳子ぉぉ!泳子ぉぉ!泳子ぉぉぉ!泳子ぉぉぉぉっ!!」

 あ!あたしって!あたしってホントばかァァアア!」

ピカァァァァァァ!!

波江の悪魔となった体が眩しく光り輝く。

続いて体から波江と動きを異にする悪魔の影が現れた。

「さあ!魔物め!今度こそ覚悟なさい!」

素手シウム光線を放つテンが腕に最後の気合を込める。

「ギ、ギギャァアアア!!」

影は一声の雄叫びを上げると光に消えた。

そして光が晴れると、

波江と泳子は元の少女の姿に戻っていた。

「泳子ぉぉ!ごめんなさい!泳子ぉぉぉ!

 あたしとんでもないことしちゃった!

 どんなに謝っても許されないって分かってる!

 でもごめんなさい!ごめんなさい!

 ごめんなさい!泳子ぉぉぉ!」

「波江、もういいよ。もういいんだったら。

 そんなに自分を責めないで。

 何か変なものに取り憑かれてたんだもの。

 それに最後には波江の気持ちで憑き物を追い出して、

 私も波江も元に戻れたんだから。

 それよりも私は、泳子が心に闇を作ってしまうほど

 私を想ってくれてたことがなんだか嬉しい…」

「泳子ぉ!泳子ぉぉ!泳子ぉぉぉ!」

テンはそれを見てホッとした表情になった。

「ふう。これにて一件落着ね。

 隅っこで震えてたあなたも、

 最後に心の闇を言い当てるなんてナイスアシスト。

 じゃあ、三人さん、ちょっと目を閉じてもらえるかな?

 うん。そうそう。

 じゃあ心の中で数を5つ数えて目を開けるのよ。

 1、2、3…」

波江と泳子とマクラの三人は

言われたとおりに数を数えるのだった。



「うーん…」

マクラは夢から覚める心地で目を開けた。

部屋は元の整理された状態に戻っており、

波江と泳子は服を着てベッドに倒れ込んでいる。

二人はマクラに続いて目を覚ました。

「…あれ?

 私は確か波江のマッサージを受けていて…

 そうか、そのまま眠っちゃったんだ。」

「泳子、私もいつの間にか寝ちゃってたみたい。

 今日の練習、ハードだったから疲れてたのね。

 それでかな?変な夢を見たわ。

 あ、どんな夢かは内緒ね。」

「あら、私も夢を見たのよ。

 夢の中身は波江と同じく内緒だけど。

 あっ、枕辺さん!

 私たち寝ちゃってた!ごめんなさい!」

「ううん、全然気にしないで。

 でももう遅いから私帰るね。」

「うん。じゃあまた。気をつけて帰ってね。」

「枕辺さん、水泳部入部よろしく!」

マクラは二人を部屋に残して家の外に出た。

するとあのテンが、

制服姿で携帯電話を耳に当てながら夜道に立っていた。

思わず立ち尽くしてしまうマクラを横目に見ながら、

テンは相手と話しをし始めた。

「もしもし?麻衣?

 こちらテン。魔物の討伐完了。

 被害者には夢ってことになってる。

 そう。夢オチ。

 最近乱発してるし私も好きじゃないんだけど、

 被害者が異常なモノ見ちゃったから仕方なかったのよ。

 あ、それから新人魔法少女、今一緒にいるわ。

 一応無事よ。

 え?私から説得?魔法少女を続けるようにって?

 やめてよ、そういうのって麻衣の仕事でしょ。

 なに?後輩指導の一環?

 シスター制?OJT?コーチング?

 でも労務管理はそっちの仕事でしょうが。

 それに後輩指導が魔法少女の仕事に含まれるなんて

 初めて聞いたわよ。

 私ら、基本的にピンで働いてるんじゃなかったっけ?

 それに次の仕事まで時間もないし。

 抱き枕になる仕事、入ってたよね。

 え?空いてる?

 Qがしくじって仕事が流れた?

 ちょっとちょっとなんなのよそれ、もう、まったく…

 はいはい、はいはい…

 じゃあ取りあえず、一緒に事務所へ帰る努力はしてみる。

 あ、努力するだけだからね。期待しないでよ。

 うん、分かった。了解。

 はいはい。はーい。」

ピッ…

テンは電話を切ってマクラの方を見た。

「…とまあ、そういう訳なんだけど、好きにしたらいいよ。」

「え?」

「だから好きにしていいって言ってるの。

 あなたの行きたいところに行ったらいいわ。

 魔法少女、やりたくないんでしょ?」

「あっあの、テンさん。」

「なに?」

「私、テンさんから魔法少女のことが聞きたい。」

「ふぅ…手本とかには向いてないと思うけど。

 いいわよ。じゃ、歩きながらね。」

マクラはテンに並んで歩き出した。



つづく