風祭文庫・異形変身の館






「魔法少女 だいた☆マクラ」
(第3話:もう何も”イタ”くない)


作・徒然地蔵(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-364





「…萌エ…萌エ…」

枕辺はゆっくりと動きを再開し、

マクラの薄ピンク色になった割れ目を

ペロペロと舐め始めた。

(…ああっ…)

マクラは鋭敏になったそこを責められて

益々体が火照ってしまった。

(…自分に舐められて感じちゃってる…)

暫く愛撫を続けた枕辺は、

マクラに馬乗りになった。

そこに見えたのは反り返ったペニスだった。

(毎日見てたものが、今はこんなに怖い…)

枕辺はマクラの小さな縦筋に

そのペニスを宛てがった。

(そ、そんな、布地に入る訳が…)

スウゥ…

ペニスの先端が二次元世界へと吸い込まれる。

(いっ…痛い…)

マクラの初な割れ目にとっては、

僅かな挿入も楽なものではなかった。

(痛いっ痛いっ!

 もっと優しくして!私の気持ちを分かれ私!

 もっとゆっくり!

 初めてなんだからもっとゆっくり!)

言葉が届かないことが分かっていても、

マクラは言わずにはいられなかった。

「…処女…萌エル…破瓜…萌エル…」

枕辺は半分ほどペニスを挿入した所から、

一気に最も深い所までペニスを突き差した。

(ウッ!ウウウウッ!!)

マクラは必死に痛みに耐えた。

(…い、痛い…痛いよ…)

そんなマクラに枕辺が抱き付いてきた。

「…イイ…萌エ…可愛イ…」

(私の肉体、魂が抜けて

 惰性で動いているに過ぎないにせよ、

 もう少し何とかならないのっ)

「…」

パフッパフッパフッパフッ

枕辺がマクラに腰を振り始めた。

(も、もう!せっかちなんだから!)

そんなマクラに構わず枕辺は

ピストン運動を続ける。

パフッパフッパフッパフッ

(はぁ…はぁ…

 何か慣れてきたみたい…

 だんだん気持ち良くなってきた…)

パフッパフッパフッパフッ

マクラは枕辺の顔をジッと見つめた。

(そっか。私、いつも寂しかったんだ。

 あんたの顔見てて分かったよ。

 ずっと苦しめてたんだね。ごめんね…)

「…ウウ…」

パフッパフッパフッパフッ

「…ウウ…ウウ…」

(イキそうなのね。切なそうな顔して。

 分かる…分かるよ。

 いいよ。思いっきり出してっ)

枕辺の腰の動きがスピードを上げた。

パフッパフッパフッパフッ

(はぁ…はぁ…はぁ…)

「…イク…」

ドクッ!ドクッ!ドクッ!

(ああ、中に熱いのが入ってきてる!)

ドクッ!ドクッ!

(はぁ…はぁ…)

射精は止まることを知らず、

枕辺が体を小さく痙攣させて射精する毎に

マクラの色彩はその濃さを増した。

(はぁ…はぁ…はぁ…

 全身が鋭敏になっていく…

 熱い、熱いよぉ…)

一方で枕辺の肉体にも変化が起こった。

キラッ…キラッ…

枕辺の肉体が

実写に近い三次元グラフィックになり、

続けて色数を減らしながら徐々にそのリアルさを失って、

ノッペラとした見た目に変わっていく。

スッ…スッ…

身長も肩幅も段々と小さくなり、

女性の丸みを帯びていくのだった。

髪は伸び、顔は幼くなっていく。

シュッ…シュッ…

ペニスは勃起しながらも細くなり、

睾丸は小さく萎縮していく。

そして中心に縦筋の入った陰嚢は、

少しずつ女性の陰部へと変化していくのだった。

ドクッ!ドクッ!ドクッ!

なお続く射精の度にマクラと枕辺の変化は進んだ。

そしてやっと射精がおさまった時、

抱き枕には

美しい魔法少女のカラーイラストが現れていた。

そして枕辺は、

人間の男の姿から三次元グラフィックの

少女になっていた。

(わ、私の今日までの肉体が、

 女の子のグラフィックになっちゃった…

 オチンチンが消えちゃって

 女の子の縦筋が入っちゃってる…

 何でだろ、急に悲しくなってきちゃった。

 私、冴えない自分と世の中にウンザリしてた。

 どうなってもいいとも思ってた。

 けど、今日まで一緒だったカタチが

 失われるのはやっぱり、やっぱり…

 私、甘ったれてただけだった…)

マクラの目に薄っすらと涙が浮かんだ。


マクラが三次元グラフィックの少女となった

自分の肉体を悲しい目で見つめていると、

携帯から例の声が聞こえてきた。

「気分はどうだい?」

(…)

「起こっていることに理解が追いつかないのかい?

 人間は男女とも

 男性ホルモンと女性ホルモンの

 両方を持っていることは知っているよね。

 なら理解は簡単さ。

 マクラの三次元の肉体は

 男という要素を排出し続けた。

 結果、女という要素が残ったんだ。

 それから三次元要素の排出に加え、

 マクラとの同期化が…」

(そんな説明、求めてないわ!

 私、ココロが、ココロが、もう…)

その時、マクラは視界がグルッと回って

布団が見えた後、何も見えなくなった。

(え…)

三次元グラフィックの少女となった体が

抱き枕全体をひっくり返したのである。

さっきの面には

マクラの線画が描かれていたが、

こちらの面には何も描かれておらず無地だった。

三次元グラフィックの体はゆっくりと

その無地の布地の上に四つん這いになる。

(な、何?)

「さあ、三次元ともこれでお別れだよ。」

その体は時間をかけて

崩れ落ちながら抱き枕と同化した。

そこに現れたイラストは、

全裸でうつ伏せの状態になりながら、

三次元の方を見るマクラの姿だった。



「…ううっ…」

マクラが目覚めたのは夜の公園だった。

枕辺であった時に抱き枕を抱いて眠り、

やってきた世界。

魔法少女にしてくれと願った世界。

マクラは自分の全身を見回した。

「私の体、

 少女の体になっちゃってる…

 着てる服は学校の女子の制服…」

すると例の声が携帯から聞こえてきた。

「どうだい?マクラ。魔法少女マクラ。

 魔法少女になった気分は?」

「どうもこうもないわ。

 こんなこと…

 そ、そうよ、やっぱりこれは夢じゃ…」

「夢だと思うなら

 目が覚めるのをずっと待っていればいいさ。

 全く君の柔軟性のなさには呆れるよ。

 まあ人間の柔軟性のなさは歴史を見れば

 今に始まったことじゃないけどね。

 でも仕事はちゃんとしてくれよ。」

「仕事?」

「ああ、そうとも。

 君は魔法少女マクラ。

 人々に夢と希望を与え、

 そしてモンスターと戦うんだ。」

「夢と希望を与えモンスターと…

 そうだわ。

 さっき私を倒そうとした魔法少女は?」

「彼女は魔法少女の使命から解放された。

 君と会うことはもうきっとないだろう。」

「そう…」

マクラは当てもなく街を彷徨い歩き、

街外れまでやってきた。

「やっぱりここ、異世界なんだ…」

街の外には綿花畑がどこまでも広がっていた。

月明かりに照らされた綿花畑には、

身長の5倍程もある巨大な綿花が点在している。

「私、この世界で魔法少女として

 生きていかなくちゃいけないのね…」

マクラが見上げた目前の巨大な綿花は、

その花の終わった茎に

見事なコットンボールを実らせて、

夜風にゆらゆらと揺れているのだった。



都心近郊の安アパートの一室。

朝の放送の流れる付けっ放しのテレビ。

昨晩までここに居た住人の姿はなく、

その代わりのように

魔法少女の描かれた抱き枕が転がっていた。

そしてその傍らには、

何故か綿の詰まった抱き枕カバーが一つあった。

けれども夜が明け切ると

抱き枕も抱き枕カバーも

そしてそれらを入れていた箱さえも

綺麗さっぱり何処かへと消えてしまい、

住人を失くした部屋だけがそこに残されていた。



つづく