風祭文庫・異形変身の館






「魔法少女 だいた☆マクラ」
(第2話:それはとっても息苦しいなって)


作・徒然地蔵(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-363





「…今日の放送は全て終了しました。

 どちら様も 火の元をお確かめの上、お休みください…」

ザァーーーーー

(…んんん…)

部屋で目を覚ました枕辺は驚いた。

体が細長い窮屈な布袋の中に閉じ込められており、

視界には布地しか見えない。

そしてそれ以上に気味の悪いことには、

布袋の外から誰かが抱き着いているのである。

(だっ誰だ!離せ!)

枕辺は叫んだが

その声は枕辺の知らない所で掻き消された。

(くっ!くそっ!体が動かない!

 おかしな薬でも使われた?

 まっ、まさか恐ろしい犯罪に巻き込まれてる!?

 だっ誰か!誰か助けてくれ!!)

届かない声で助けを求めていると、

その何者かは抱き着くのを止めた。

そして、

ズズ…ズズ…

枕辺を足の方にあるらしい布袋の口から

引っ張り出し始めた。

ズズ…ズズ…

あっと言う間に体の半分が引き出される。

ズズ…ズズ…

胸まで引き摺り出され、

何者かは左手でその胸を掴んできた。

ズズ…ズズ…ズボッ!!

頭部から布袋が抜け、枕辺の視界が開けた。

(え…)

目に飛び込んできたのは、

動けない自分を左手で掴み上げる男の姿だった

男は裸で、右手には被せられていた布袋を持っている。

その顔には見覚えがあった。

(う、嘘…嘘だ…)

枕辺は唖然とした。

(こ、これは…俺じゃないか…)

目に映っているその男は、

枕辺自信だったのである。

けれどもその目は虚ろで人の生気が感じられない。

(ど、どうなってるんだっ)

その時、眼前にいる枕辺の後ろに掛け鏡が見えた。

(映っているのは…

 裸で立つ俺の後ろ姿と、

 その左手に掴み上げられた抱き枕…

 今俺は左手で掴み上げられている…

 ということは…ということは…)

枕辺は鏡の中の抱き枕を凝視した。

(白い布地に何か描かれてる…

 さっきと違う魔法少女の線画だ…)

そしてあることに気が付いた。

(何でだよ…

 何で鏡の中の線画の女の子の目線と

 俺の目線がぶつかってるんだっ!)

枕辺は恐る恐る自分の体に目を落とした。

そこには線画付きの白い布地が見える。

(こ、これって…これって…!!)

枕辺はしっかりと自分の体を確認する。

(だ、抱き枕になってる…

 俺の体が…

 抱き枕になってる…)

すると床に落ちていた携帯が鳴り勝手に通話が始まった。

「やあ。気分はどうだい?

 君はもうすぐ完全な抱き枕に、

 そして魔法少女マクラになれるんだよ。

 新マクラの誕生だ。」

(ふざけるな!何で俺がっ!)

「君から願ったんじゃないか。

 それに大声を出さないでよね。

 ま、君の声は三次元には届かないけどさ。」

(こ、こんなことって…

 これは夢だ。悪い夢に違いない。

 頼む!早く覚めてくれ!)

「君はもうとっくに夢から覚めているよ。

 正確にはさっきの世界は夢じゃないけどね。」

(夢でも現実でも何でもいい!

 こんなのは嫌だ!人間に戻してくれ!)

「それはできないよ。

 君の魂はもう二次元に同化しちゃってるんだ。

 だから君はもう肉体を捨てて、

 二次元の体になるしかないんだよ。」

(肉体を捨てる?二次元の体になる?

 な、何を言ってるんだ!)

枕辺の思考が混乱を極めた時である。

バサッ!!

抱き枕と化した枕辺、すなわちマクラは

布団の上に放り投げられた。



魔法少女の線画付き抱き枕になったマクラに、

枕辺が迫ってくる。

(まっ待てっ!)

そして、

ムギュッ

マクラは枕辺に強く抱き着かれた。

(やめろ!気持ち悪い!)

すると枕辺が小声で呟いた。

「…吸イ付クヨウナ…肌触リ…

 …包マレテルヨウナ…気持チ…」

(は、離れろっ!)

枕辺はマクラを抱いて

体を左右に何回も転がした。

「…最高…最高…」

(何が最高だよっ)

「…今夜ハ君ハ…僕ノモノ…」

(何が僕のものだっ)

枕辺はマクラの顔に頬ずりをした。

「…可愛イ…可愛イ…」

(けど…)

マクラの顔が枕辺の顔に何度も押しつぶさる。

(けど、これが俺…)

ムクッ

枕辺の股間が大きく膨らんだ。

「…抱キ枕…抱カヌモ…男ノ…恥…」

(このどうしようもないのが…)

枕辺のペニスは天を向いている。

「…肌デ…感ジ合オウ…」

(この気持ち悪いのが…)

「…生ガ…一番…」

(生の俺…)

枕辺がマクラに陰部を押し付け

腰を前後に動かし始めた。

シュッシュッシュッシュ

「…アア…」

(くっくそ…)

枕辺のペニスがマクラに擦り付けられる。

シュッシュッシュッシュ

「…最高…癖ニ…ナリソウ…」

(さ、最低だ…)

枕辺はだんだんと息を荒らげ始めた。

シュッシュッシュッシュ

「…ハァ…ハァ…

 …萌エル…萌エル…」

(最低だ。最低だよ。今のお前、否、俺は…)

シュッシュッシュッシュ

枕辺のカウパーがマクラを汚した。

「…君…モ…濡レテキタ…」

(もうやめろ…)

枕辺が腰を振ったり抱きしめたりする度に

マクラはその姿を歪ませた。

「…モウ…」

(くっ!)

腰を振るスピートがさらに速さを増した。

「…ウウウ…イグ…イグウッ!」

ドビュッ!ドビュッ!ドビュッ!

(…きっ気持ち悪い!)

ペニスは一気に精液を抱き枕に吐き出した。

(俺は…俺は…)

マクラは己の射精姿を見せられ、

暗鬱とした気持ちにさせられた。



携帯から声が聞こえてくる。

「ふふ。自分のオナニー姿に

 そんなに落ち込むことないじゃないか。

 さっき君は同じことをして幸せだったんだろう?」

(うっ煩いわよ!わたしは…

 あっあれ?何で女の言葉なの?

 男の言葉が喋れないっ!

 それに声もこんなに高くなってるっ!)

「そりゃあ君は魔法少女だからね。

 女の子の声と言葉でないと。」

(いっ嫌!)

「そう思うのは最初だけだよ。

 すぐ心の中まで女の子に染まっちゃうんだから。」

(うううっ)

「そうそう。体の感覚が良くなったろ?」

(そう言われてみると…どうして?)

「君の肉体が出した精液さ。

 その精液はね、君の肉体から

 三次元男性という構成要素を抽出して、

 二次元女性という構成要素に変換したものなんだ。

 二次元女性の心身を構築し、

 線画に色を付けてくれる。

 精液の付いた所がカラーになってるだろう?」

(ほ、本当…)

半分脱いでいるコスチュームも含めて、

線画だったマクラの全身が薄く色を帯びている。

特に精液を直接浴びた腹周辺は色がくっきりとしていた。

(や、やだ、

 色と感覚が鮮明になった股間が熱い…

 あ、あれ?私の三次元の肉体、何か様子が…)

「そりゃあ、構成要素の一部だけを

 集中的に排出してるからね。

 歪も生まれて当然さ。

 さ、きっとそろそろ次のラウンドが始まるよ。」

(私、私の肉体から精液を注がれながら

 二次元の女の子にされちゃうんだ…)

マクラはジッと自身の肉体、枕辺を見つめるのだった。



つづく