風祭文庫・異形変身の館






「魔法少女 だいた☆マクラ」
(第1話:夢の中で契約したような)


作・徒然地蔵(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-362





都心近郊の安アパートの一室。

冴えない独身サラリーマンの枕辺は、

今日もダラダラと深夜アニメを見ていた。

するとこんな時間に携帯が鳴った。

「誰だよこんな時間に…もしもし?」

「今晩わ。

 君、抱き枕に興味はないかい?」

「はぁ?

 何?

 悪戯?

 切るよ?」

「まあまあ、そう言わずに!

 僕は君に最高の抱き枕を抱いて欲しいんだ。

 すぐに届けるから。」

「い、いりません!

 今時、送り付け商法かよっ

 受け取らせておいて法外な金額を

 請求してくるんだろ!」

「そんなんじゃないってば。

 お金なんか絶対に請求しないから安心してよ。

 僕は只、この抱き枕の抱き心地の良さを…」

「しつこいなぁ!

 本当にもう切るよ!」

「あ、ドアの前にもう商品を置いてあるからね!

 それじゃあ!」

「はっはぁ!?」

ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ…

電話はもう切れてしまっていた。

「な、なんの悪戯だよ。

 いい加減にして欲しいよな、全く!」

そうは言うものの、

枕辺は玄関が気になった。

「…ホントに置いてあったりして。」

気になってドアを開けるてみると、

そこにはダンボール箱が置かれていた。

『抱き枕』と書かれている。

「い、いつの間に…一体誰が…」

見回しても辺りには誰もいない。

訝しみながら部屋で箱を開けると、

電話の通り中身は抱き枕だった。

「ふーん。

 魔法少女の等身大イラスト付き抱き枕か…

 表は半裸で万歳してるポーズだな。

 お約束の中世騎士風コスチューム。

 ふふふ。

 このあどけない表情、

 俺的にはかなりの高ポイントだぞ。

 裏はと…

 こっちは裸んぼで俯せのポーズか。

 辛うじて左胸を見せたり、

 左ももを上げて僅かに股間を見せたり…

 これも俺好みだな!」

枕辺はジッと抱き枕を見つめた。

「せ、せっかくだし、

 ちょっと抱いてみるか…」

枕辺は抱き枕を抱いて布団に倒れ込むと、

恐ろしい程の心地良さに襲われた。

「す、すげぇ!

 信じられない!

 この吸い付くような肌触り!

 それに暖かいオーラに

 包まれてるような気持ちすらする!

 す、すごいぞ!

 それにこのキャラの愛らしさときたらもう…!」

枕辺は抱き枕を抱きしめながら

体を左右に何回も転がして、

全身でその感触を楽しんだ。

「むふふ。

 最高!

 なんて言うキャラか知らないけど、

 今夜は君は僕のものだ!」

枕辺は抱き枕をより強く抱きしめ、

少女の顔に頬ずりをした。

「ううん!

 いい!

 可愛い可愛い可愛い!」

少女の顔が枕辺の顔に何度も押しつぶさる。

ムクッ

枕辺の股間が大きく膨らんだ。

「ヤバイ、

 ムラムラしてきた。

 そりゃこんな抱き枕を目の前にして、

 何もせずにいる方が無理だよ。

 据え膳食わぬは男の恥。

 抱き枕抱かぬも男の恥。

 よ、よぉし…」

枕辺は服を脱ぎ捨てて抱き枕を抱き直した。

ペニスはもうビンビンになって天を向いている。

「ふふふ。

 魔法少女ちゃん。

 肌で感じ合おうね!

 やっぱり生が一番だよね!」

枕辺は抱き枕に丸出しの陰部を押し付け、

腰を前後に動かし始めた。

シュッシュッシュッシュ

「ああ…」

枕辺のペニスが布地に擦り付けられる。

その布地のもたらす甘い摩擦に、

ペニスはさらに膨らみを増すのだった。

シュッシュッシュッシュ

「ああ…最高だ…

 この柔らかい肌触り、

 癖になりそうだよ…」

顔には恍惚の笑みが浮かんでいる。

シュッシュッシュッシュ

「はぁはぁ…」

二次元の少女を相手に、

枕辺はだんだんと息を荒らげ始めた。

シュッシュッシュッシュ

「はぁはぁ…

 いい!

 いいよ!

 とってもいい!

 萌える!

 萌えるよ!」

シュッシュッシュッシュ

先から出たカウパーが

布地にジンワリと染みを作る。

「き、君も濡れてきたんだね!」

枕辺が腰を振る度に、

またギュッと抱きしめる度に、

布地の上の少女はその姿を歪ませた。

「はぁはぁ…

 も、もうっ!」

腰を振るスピートがさらに速さを増した。

「イ、イクッ!

 イクッ!

 イッちゃうよぉ!」

ドビュッ!

ドビュッ!

ドビュッ!

限界を迎えたペニスは一気に精を吐き出し、

生暖かい精液は腹と布地の間を

ベトベトに汚したのだった。

「はぁはぁ…

 この抱き枕気持ち良すぎ…」

枕辺は強い眠気に襲われ、

そのまま眠りに落ちてしまった。



「あ、あれ?ここは…」

気がつくと枕辺は

樹々が鬱蒼と茂る夜の公園に佇んでおり、

少し離れた所に

さっきの少女が立っていた。

「な、なんだ?

 コスプレ娘か?

 弓矢まで持って。」

スッ

少女が弓に矢を添えて肩の高さまで持ち上げた。

「ん?

 あの弓矢、

 ひょっとして俺の方に向けられてる?

 作り物にしても

 武器を向けられるのは気分が悪いな」

少女は弓を十分に張り、

狙いを定めて矢から手を離した。

シュンッ!!

放たれた矢が枕辺の頭を掠める。

ビィィィン!!

振り返ると矢は、

枕辺の後方にあった樹に

深々と突き刺さっていた。

「なっ…何すんだっ!

 いきなり!

 危ないじゃないか!」

「私は魔法少女マクラ。

 あなたは私に倒されるべき存在。

 ゆえに退治する!」

「ちょっ、ちょっと待てよ!

 倒されるべき存在ってどういうことだよ!」

「あなたは私に

 対価を支払わなければならない。

 支払い方法は一つだけ。

 モンスターとして私に倒されること」

「たっ対価って何の対価だよ?

 俺はお前からは何も貰ってないぞ!」

「これ以上知る必要はないわ。」

マクラが次の矢に手をかける。

枕辺はそれを見て走って逃げ出した。

「まっ、待てっ!」

「嫌だ!」

追いかけてくるマクラを振り切って

枕辺が物陰に隠れると、

見計らったように携帯が鳴った。

「やあ。

 抱き枕、気に入って貰えたようだね!」

「…抱き枕…

 そ、そうだ、抱き枕だ。

 俺は抱き枕を抱いて眠ったんだ。

 ということは、ここは俺の夢の中…」

「まあ、大体そんなとこかな。

 君がいるのは魔法少女の物語の世界なんだ。

 今の君のキャラ設定は

 人に化けてるモンスター。

 変身して正体を現し本来の豪腕で戦うけど倒される。

 初期の仮設定だけどね。

 嫌なら魔法少女ってのはどうだい?

 今、この世界は魔法少女を必要としているんだ。

 僕と契約して、魔法少女になってよ!」

その時、マクラが現れた。

「見つけたわよ!

 変身なんてさせない!」

至近距離に立つマクラの持つ弓の矢は

もう放たれる寸前になっている。

「ヤバイ!

 お願いだ!

 今すぐ俺を魔法少女にしてくれっ!」

ピカァァァッ!!

枕辺は瞬く間に眩い光に全身を包み込まれた。

「…あ、あああ…」

その光の中で、枕辺は意識が遠のいていった。



つづく