風祭文庫・異形変身の館






「初仕事は触手」



原作・音二郎(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-229





ある日、私宛に一つの小包が届けられた。

送り主の名前欄には”祈願成就下請連合”とある。

新手の詐欺商法かしら…

そう思って封も切らずにゴミ箱へ放り込もうとしたとき、

ふと先日ネットのアンケートサイトで回答した会社の名前である事を思い出した。

抽選で何名様だか発送をもって発表と代えさせて云々…

ある意味”やり逃げ”感たっぷりなプレゼント内容のくせに質問テーマは確か

「小さな親切をどう思いますか?」

だった。

その妙に小市民っぽいテーマに惹かれて結構真面目に回答して送信ボタンを押した記憶が甦る。

「確か当選者は2桁いなかった筈よね……

 よく当たったもんだわ」

呟きながらカッターナイフを探し出して小包を開けてみる。

中から出てきたのは、

青い石のネックレスと折りたたんだコピー用紙、

それと梱包材だけだった。

不思議な事にこの合成サファイアか色ガラスとしか考えられないサイズの石からは、

その手の模造品に溢れている”紛い物”っぽさが全く感じられなかった。

もっとも、私自身宝石に詳しいわけでもないので、

”女の第六感”レベルの感想でしかないのだけれど。

そして、同梱されていたコピー用紙を開くと、

近所のコンビニで必要な数だけ刷ってきましたと言わんばかりに、

手書きの説明が書き込まれていた。

上手ではないけど、読み易い字だ。

「ふむふむ。

 『おめでとうございます!

  貴女は祈願成就下請連合の構成員に見事採用されました。』

 ?何よ、その怪しげな団体……」

こりゃババを引いたかな…と逃げ腰状態で続きを読むと、

この石の使い方が書いてあった。

「ええと、

 『願いを叶えたい人の事を思い浮かべ

  ”そなたの願い叶えてしんぜよう”

  と唱える事で相手の望むものに変身できる』

 はぁ?」

子供の頃見てた魔女っ子アニメじゃないんだからそんな事できるわけがない。

寝言は寝てから言ってもらいたいものだ。

私はクーリングオフが利く事を祈りながら、

返送先の住所を調べようと包装紙を手に取り送り状の送付元住所を確認しようとした。

とその時、

玄関のチャイムが能天気に響き渡った。

「ハ〜イ。

 どちら様です?」

「あたしあたし。

 急に押しかけちゃってゴメン、

 双葉。

 今、大丈夫?」

駆けつけたドアの向こうから聞こえてきたのは葉子先輩の声だった。

「いえ。

 今日はバイトも無いから、

 別にこれと言って用事は無いですけど……どうしたんです?」

突然の葉子先輩の訪問。

私は急いでドアを開けると、

「悪いねぇ…」

そう言いながら葉子先輩はコンビニの袋に満載されたアルコール類一式を

よっこらしょ!

と持ち上げ、

「いやぁ…何かさっ、

 急に双葉と飲みたくなっちゃってさ」

と私に告げた。

「そっそうですか…

 …あっ今からあるものでおかず作っちゃいますから、

 1時間くらい待てますよね?」

「ん……もう少し早くならない?」

「(はぁ…)頑張ります」

私はこっそりため息を吐きながら葉子先輩を部屋に招き入れた。

先輩はかなり煮詰まってるようだ。

とりあえずは冷蔵庫の常備菜と…

後は飲みながら作るので我慢してもらおう。

葉子先輩は私の通う大学の1学年上に在籍している。

スポーツとか体を動かす事は苦手で、

容姿も特に優れている訳でもなく、

どちらかと言うと地味な外見のひとだ。

一方、本業の学生としても当人曰く「中の下」だそうだ。

ただし、副業としているエロ小説家となると、

そちらに興味の無い私でも名前を聞いた事があるくらいに売れている。

まぁそちら方面で人気作家になるくらいだからきっと経験豊富なんだろう。

と思って試しに聞いてみたら、

男女両方ともやる事はやってみたので、

一応、経験値はそこそこは有るけども、

でも、恋人というシロモノは未だ見つからない。

と言う返事が遠くを見つめる切ない微笑と共に返って来た。



女性は勿論、

男性ともそういう経験……



恋人の一人、

いや、異性の友達ですら持った事の無い私としては、

「その内、良い事がありますよ」

としか答えられなかったのだが、

その私の答えが何故か先輩のツボにジャストミートしたらしい。

以来、

遊園地だの映画だの居酒屋だのと何かと誘ってもらっている。

そんな先輩がいきなり我家を襲撃して「飲もう」と言い出す時は、

”副業”で煮詰まっている時と相場が決まっている。

しかもおかずを作る時間を短縮してでも「すぐ飲もう」と催促してくるとは……

よっぽどやばい状況らしい。

いくら売れっ子作家でも原稿を落としてたら干されちゃうのに、

また無理なスケジュールを組んだのだろうか。

それ以前にそんな修羅場の真っ最中に酒を飲んで敵前逃亡なんかしてどうするつもりなのか……

「よく考えたら、

 何で私が先輩のマネージャーか編集者みたいに心配しなきゃいけないのよ……」

嬉しそうに居間兼台所へ向かう先輩の背中を見ながら私はもう一度ため息を吐いた。

「でねぇ……ちょっと、

 双葉ぁ……ちゃんと聞いてる?」

「はいはい。

 ちゃんと冷奴作りながら聞いてますよ」

「ひゃあやっこはいーからぁ、

 やさぁいためぇ〜」

「はいはい。

 先輩が冷奴をちゃんと食べてくれたら、

 その間に野菜炒めも作っちゃいますからね。

 良い子にして待ってて下さいね」

「ひゃ〜ぃ」

案の定、

先輩はいつもの3倍のペースで酔っ払っていた。

顔はおろか、

耳たぶ、

首筋まで赤く染まったその姿は3倍と言う言葉に相応しいものである。

もっとも、愚痴さえ言わなければ十二分に色っぽいのだが……

家主の意向を確認する前にお泊りを決定し、

さらに酔っ払うのだけは止めていただきたかった。

だからと言って断るつもりも、

それを口実に襲うつもりも……

勿論襲われるつもりも全くさらさら無いのだけれど。

まぁ、今回に限ってはその気持ちも解らないでもない。

締め切り1週間前になって8割がた書き上げていた原稿のテーマが変更されてしまえば、

そりゃあ先輩でなくても敵前から自主退却の一つもしたくなる。

しかも最初のテーマである

”転校生のイケナイ秘め事”

から変更された新しいテーマが、

”ファンタジー世界の陵辱”

その上先輩の担当は

”触手”

となるとただ事ではない。

実体験を基に話を作る先輩にはまさに無理難題としか言えない。

加えてここまでテーマの大転換を行ったくせに、

締め切りの延長も執筆陣の変更も無しって言うのもどうかと思うのだが、

全く、先輩みたいにファンタジー等の想像系テーマを苦手とする人だっているのに…

「あたひなんかまだいーわよぉ?

 はーちゃんはすらぃむとえるふのれずもので、

 ちーたんはにんぎょのやおぃ。

 ここんなんか、

 どらごんとごーれむとのさんぴーなんだから〜」

良いの?

触手の方が?

それと……私が心配する事でも無いだろうが、

こんなアンソロジー本、マトモに売れるのだろうか?

「いっその事、断っちゃえば良いんじゃないんです?」

「しょーもいかにゃぁのぉ〜。

 ぱたちんには、

 おせわになってるのぉ〜」

あ。

先輩の頭がテーブルに沈みかけてる。

そろそろ、お布団を準備した方が良いかも。

「はい、

 先輩。

 冷奴ですよ?」

「にゃあぁ〜ふたば〜〜ふたばはよーこのままになるひとらるらぁ〜」

私に抱きつこうと服を掴んでよじ登り始める先輩。

何が言いたいのかよく解らないが、

どうやら最期の一線を超えてしまったようだ。

「そーらぁ。

 ままぁ、

 あのまほーつかってぇ〜」

……魔法?

あぁ、あのペンダントの事か。

しかしあんな物に効果があるとも思えないのだが。

「やだー!

 まほーまほー!!」

まずい。

とうとう駄々をこねだした。

こうなると、もう手が付けられない。

真似事でも何でもして早く鎮まってもらおう。

私は隅に放り投げていた箱の中からペンダントを引っ張り出してきた。

説明書には特定の持ち方とかは書いてなかった筈なので、

青い石を両手の間に挟んで、胸の前で手を合わせる。

ふと前を見ると、

先輩の好奇心に満ちた瞳が爛々と輝いていた。

そのまま先輩の顔を見ながら、

「そなたの願い叶えてしんぜよう」

と私は呟いた。



一瞬の間を置き、

「?」

先輩が私の手元を覗き込むのと同時に、

ペンダントの石から淡い光が放たれた。

「きゃ?!」

「ほぇ?」

石から放たれた光はその周囲をしばらくの間照らした後、

空気に溶けるように薄らぎ、

そして消えていった。

後には……あれ?

ペンダントも消えちゃってる?

「双葉……ペンダント、

 どうしたの?」

すっかり酔いと眠気の醒めた先輩が私に問いかけてきたけど、

私はそれどころではなかった。

手が……両方の手の平が、ムズムズとしてきていたのだ。

まるで手の平に口が出来て、

それが開きたがっているような、

そんな妙な感覚。

慌てて自分の手を見た私は信じられない光景を目の当たりにしてしまった。

手の平が親指と小指を結んだ線を境にして二つに割れているのだ。

手首まで割れた”口”の内側全面を、

歯の代わりなのか無数のイボが健康サンダルみたいに大小交えてびっしりと覆っていて、

もじもじと蠢いている。

薄赤色の体液が”喉”の奥から垂れてきて、

イボに滑りと妖しい輝きを与えていた。

5本の指は盛り上がってきた肉に埋もれてしまって既に見えなくなっている。

「い、

 いや……何よ、これぇ……」

「ええっと……レッドスネイク?」

「……先輩、どこぞの東京マジックショーぢゃないんですから」

これ以上ボケに突っ込む余裕、無いですよ?

そんな無言の圧力を込めて先輩を睨み付ける。

その時だった。

どくん。

と、

何かが脈打った。

心臓じゃない。

心臓よりも外の、

しかも左右両方から同時に……。

脈打ったのは両方の”手”だった。

正確にはさっきまで私の手だった”モノ”。

今は目の無い蛇のような姿で、

肘の存在すら消えている。

私の意志とは無関係にゆっくりとくねっていて、

まさに蛇そのものだ。

いや。

蛇とは思えない淫靡なくねり方をするそれは、

それこそ先輩が書きあぐねている”触手”そのもののように見える。

「な、何したの……双葉……?」

怯えたように震える先輩の声。

そして恐々とそれを見つめる先輩の表情。

また、私の両手が、

どくん。

と、脈打った。

――先輩の細い体に抱き……

ううん、巻き付きたい。

脳でなく、

”両手”が思考していた。

そのまま私の意志を無視した”左手”が、

しゅるるると先輩の右手に巻き付いていった。

「きゃあああ?!」

可愛い悲鳴を上げて先輩が逃げ出す。

一方でそれを阻止するかのように、

今度は”右手”が後ろを向いた先輩の右脚に巻き付いた。

そのままきゅーっと腿を絞るようにしながら這い登っていく。



「え?  ひゃああ?!  あ……やだぁ……」 次の瞬間、先輩の悲鳴が湿り気を帯びた。 自分の悲鳴と私の”手”から逃れようと先輩は身を捩る。 それを逃がすまいと”手”はその口と胴から汗……否、 薄赤色をした体液を滲み出させて先輩の体へ振り掛け、 巻きついた胴をくねらせて先輩の肌に擦り込んでいく。 「や……双葉ぁ……止めてよぉ」 先輩の願いを叶えるべく両手を引き戻そうと力を入れてみるが、 ”両手”は私の意志を無視して先輩の体を弄り始めていた。 先輩の太腿を二周した”右手”が両脚の付け根をショーツの上から軽く甘噛みする。 ”口”の内側に敷き詰められているイボ達が、 木綿の布地越しに爽やかな香りを漂わせていた薄い毛と その下で綻びかけている厚い陰唇にざわざわと貼り付き、 蠢いて刺激を与え続ける。 長く伸びた幾本かのイボが”口”からはみ出して ショーツの端や内腿から股関節の辺りを突っつき撫で回し、 それに合わせて先輩の下半身がぴくんぴくんと痙攣する。 先輩の右手に巻き付いてその脇の下を堪能していた”左手”は、 そこからタンクトップの下に潜り込み、 鎖骨から左肩、 首筋の裏を通過して喉元に”咬み”付くと、 無数のイボ達が顎のラインやこめかみ、 両耳たぶをたっぷりと舐り吸い付ていた。 それに飽きると”左手”は小ぶりな二つの丘に挟まれた谷間を埋めて そのまま右の乳房を抱え込み、 頂にある乳首を”口”に含むと、 新たな餌を与えられたイボ達が先輩の小さな乳りんとその周囲を圧迫し始める。 徐々に膨らみ始めた乳首を摘み、捻り、折り曲げ、 責められた右の乳首は痛々しいまでに膨れ上がると、 残された左の乳首まで切なそうに勃っていた。 「イヤ……ダメ……そんなぁ……」 体液を刷り込まれ私の”手”に弄られるたびに、 先輩の肌からは淫靡な香りが漂っていった。 拒絶の言葉の中にまで同じ淫らな匂いが混入し始めている。 それに中てられるように、 私の呼吸もどんどん荒くなっていった。 頭がぼおっとして何も考えられない。 それどころか、感じた事、思った事を口にしても声にならず、 掠れた呼吸音だけが聞こるだけだ。 そして、先輩の股間…… ショーツの底に透けて見えるぱっくりと開いた陰唇の更で その奥から溢れ出る甘い液の源がひくひくと私を誘うように震えていた。 (入れたい……) 何を? (入れたい。私の中から溢レ出ルモノヲ!) 突然、先輩のよりは慎ましやかに濡れそぼっていた私のショーツの一点が急に盛り上がり、 それに合わせて私のクリトリスが布地に押し付けられ始めた。 胎内からこみ上げる塊が膣を飲み込みながらクリトリスと一つになる。 ついにショーツを食い破ったクリトリスは、 太く長く成長しながらスカートの中から鎌首をもたげ、 無数のイボに埋め尽くされた”口”を大きく開いた。 私の股間は両手のそれよりも更に太い触手となった。 両手の愛撫に蕩けきった表情の先輩が視線を私の股間に向ける。 大きくくねる3本目に目を見開き、 淫猥な溜め息を吐いた。 そして一言、 「イエロースネイク?」 どうやらまだまだ余裕があるようだ。 反対に私の中で何かが切れた。 「流石ですね、  葉子先輩?」 そう呟いた私は股間の触手を先輩の胴に巻き付けて体を宙に浮かせた。 両手の愛撫を中断して先輩の体から離す。 先程は出なかった声が今度はあっさりと出た事に私は気付かなかった。 今まで動かせなかった触手達が思い通りに動くようになっていた。 「あ……ん……?」 拒んでいた愛撫を中断された先輩がモノ欲しそうに私を見下ろした。 その蕩けた瞳の色が自身の状況を把握するに連れて驚きと怯えに彩られていく。 「じゃあ先輩、  キッス・オブ・ファイヤーといきましょうね」 そう告げて私の左右の手は先輩の手をそれぞれ飲み込んでいく。 「え?  や……何?  これ……」 今までとは比べ物にならないくらい切迫した先輩の喘ぎ声が聞こえる。 先輩の手を飲み込み終えた両手は、 続けて先輩の乳房も飲み込みながら互いの口を合わせた。 愛し合う恋人達のように”口”づけたまま、身をくねらせる。 「やだぁ……中、の、  いぼいぼがぁ……うそ、  手が、  手だけで……イっちゃうぅ!」 先輩の頭ががくんと仰け反り垂れ下がる。 気持ち良すぎてイったまま気を失ったようだった。 「葉子先輩?  まだまだですよ?」 私はやはり触手と化した両足を伸ばすと、 先輩の足をやはり1本ずつ飲み込ませた。 太腿までを飲み込まれ、 腰骨を伸びてきたイボに吸い付かれて、 先輩の意識が戻ってくる。 「きゃあああああ?!」 両手両足嬲り続けるイボの快感に先輩が大きく叫ぶ。 先輩の口を封じる為、 私の喉の奥から何かがこみ上がってきて舌と融け合わさり、 6本目の触手となって口から溢れ出た涎のように薄赤色の体液を垂らしながら、 私の舌は先端を割り開きながら先輩の口へ潜り込み、 先輩の舌を”飲み込む”と、 ”喉”の奥へ引きずり込んだ。 割れた舌先が捲れ返り先輩の口蓋に貼りつく。 イボを蠢かせて先輩の口の中を愛撫すると涎が溢れてきたので、 全て吸い込み、飲み込んであげる。 先輩の四肢に”喰らいついた”私は、 胴に巻きついていた私の”おちんちん”を解いて引っ込めた。 代わりに私の肌のあちこちから現れ始めた無数の触手達を伸ばして、 先輩の全身に満遍なく吸い付かせていく。 先輩は全身のほとんどを私の触手に覆われていた。 私がどこかの触手を身じろがせるたびに、 その部位をぴくんぴくんと痙攣させて反応してくれている。 時折、 先輩の全身が震えてイった事を知る。 今の私は床に置かれた剣山のようになっていた。 その針の一本一本が触手となり、 先輩に絡み、吸い付いている。 私は唯一先輩から離していた触手…… 私のおちんちんを先輩の股間へと近づけた。 イクたびに愛液が迸るそこを、 濡れそぼったショーツが張り付き守っている。 おちんちんはショーツの底を横へ寄せ、 開ききって喘いでいる陰唇内側へそっと”口”づけた。 ”口”の先端をちょっとだけめくり返して、 並んでいるイボで綻んだ花弁とその周囲を愛撫してあげると、 濃いピンク色をした肉の花が更なる愛撫を求めるように震えて、 その中心から愛液がとめどなく湧きかえる。 おちんちんは泉の中心を貪るように吸い付き、 湧き出てくる蜜を啜り始めた。 熱くて甘いものがおちんちんを遡って私の胎内を満たしていく。 愛液をすするたびにおちんちんの外皮に突起が現れ、 それがイボへと育っていった。 大小様々なイボが根元までを覆い尽くしぬらぬらと動き始めたのを見て、 先輩の握りこぶしくらいはありそうな先端を泉の奥へ捻り込む。 入り口を無理やり拡張させられた泉が 少しずつおちんちんを呑み込むたびに、 先輩の足は硬直して小刻みにはねた。 ずっぽりと呑み込まれたおちんちんは、 愛液に浸りきった洞窟の中を蠢くイボで刺激しながら、 ゆっくりと進んでいく。 襞をひとつひとつ乗り越えるたびに、 洞窟はきゅんと狭まり、 先輩の全身が震える。 子宮の中に到着したおちんちんはその壁を一通り愛撫してから後退り、 泉の入り口まで戻る。 もう一度、 今度は先程よりは速く子宮の中まで到達して、 また入り口に帰る。 おちんちんが奥へ突き進むと先輩の体は大きく戦慄き、 入り口へ戻ろうとするおちんちんは、 襞に締め上げられ引き止められる。 おちんちんはこの往復をスピードを少しずつ上げながら何度も繰り返した。 往復するたびに先輩の体の震えは大きくなっていく。 その震えに導かれるかのように私の胎内の熱い塊がおちんちんへ、 そしておちんちんの中を先端へと昇っていく。 おちんちんが何十度目かに子宮の中へ到達した時、 その先端から塊が迸り出た。 熱い溶岩のような濁流が子宮の中で荒れ狂い、 空隙を全て埋め尽くしていく。 濁流が子宮の壁を叩いた瞬間、 先輩の体が反り返った。 既に意識は飛んで、 体だけがびくんびくんとはね続ける。 おちんちんに出口を塞がれ溢れ出る事のできない溶岩流は子宮を内側から圧迫し、 先輩のお腹が臨月を迎えたみたいに膨らんだ。 それでもまだ熱いモノが私の中から迸り続けている。 このままでは先輩のお腹が破裂しそうなので、 私はおちんちんを引き抜いた。 話に聞いていた精液とは違う、 毒々しいまでにピンク色のねっとりとしたものが、 今までおちんちんを収めていた洞穴から溢れ出てきた。 同じものがいまだにおちんちんからも迸っている。 私は先輩の体を床の上に横たえた。 痙攣の収まった体に、 おちんちんから吐き出される粘液が降り積もっていく。 しばらくして、 ようやくおちんちんからの”射精”が止まった。 先輩の体から全ての触手を離す。 私は今までに感じた事の無い充足感に満たされながら、 自分の体から生えている無数の触手を揺らした。 先輩が意識を取り戻し、 お風呂で体を清め、 お泊まり用にストックしていた下着と私のドレッサーから見繕った服を着て、 慌てて帰っていったのが約1時間前。 『あのペンダントって本物だったのね。  ありがとう、  双葉。  これで何とか締め切りまでに書き上げられそうよ』 そう言い残して去っていった先輩の顔はこれ以上無いくらいに晴々として、 明日への希望に満ち溢れていた。 そして私はといえば、 床にへばり付いた粘液を剥がしてバケツに集めている。 触手の姿から元に戻るのは簡単だった。 気を失った先輩を見ながら、 (早く元に戻らなきゃ) と思った次の瞬間には元に戻っていた。 ただし触手が破いた服までは元に戻らず、 裸の私の首に例のペンダントがぶら下がっていた。  後には、 ”触手プレイ”の副産物…… 大量の粘液とビリビリに破かれた服の残骸が二人分、 ひっくり返った料理と割れた食器類が残った。 それらを一人でのろのろと片付けながら、 私は溜め息を吐くことしかできなかった。 『このお礼は必ずするわ。  何でも好きなものをねだってね』 粘液の臭いでクラクラしている頭を抱えながら、 先輩の言葉を反芻する。 おねだりは最上級のハウスクリーニングか……いっそ、 新しい部屋にするべきか。 開け放っている窓から見える月を私は潤んだ瞳で見上げた。 後日、 出版された本を借りて読ませてもらったが、 先輩が書いたものは 「触手に変身しながら仲間を襲う冒険者」 の話で、 繰り広げられる痴態はあの時とほぼ同じだった。 実体験さえ積めばバリバリに書ける先輩の面目躍如な傑作…… と言っても良いとは思うのだが……。 何か割り切れないものが、 未だ私の中にわだかまっている。 こうして先輩の願いは無事叶えられた。 だけど。 初体験も済ませていない乙女の初仕事が、 触手になって同性の先輩を襲う事って……。 神様……私、 何か悪い事をしましたか? おわり この作品は音二郎さんより寄せられた変身譚を元に 私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。