風祭文庫・異形変身の館






「剥ける呪い」


作・風祭玲

Vol.1012





「ねぇ知っている?」

「なに?」

「この学校に妖怪が出るって話?」

「なにそれぇ?」

「あぁっあたし知っている。

 先輩の友人の妹が見たって言っていたわ」

「何よ何よ。

 何が出るって言うのよ」

「ふふっ、知りたい?」

「えぇ」

「聞いても後悔しない?」

「もっもちろんよ」

「じゃ…言うわね」

「ほらっ、そこっ

 いつまでも話をしているんじゃないのっ

 着替えが終わったらさっさと帰る

 相撲部の更衣室は狭いんだから」

「あっ、はーぃ」



秋の陽は落ちるのが早く、

輝きを失った夕空は瞬く間に漆黒色へと染まり、

やがて星が瞬く夜空へと姿を変えていく。

「秋山キャプテン。

 お先に失礼します」

明かりがともる沼ノ端女学園相撲部・稽古場に挨拶の声が響くと、

パァンッ!

「はいっ

 お疲れ様ぁっ」

その日の稽古を終えた後もテッポウ柱に向かって腕と体を動かす秋山翠は

滴り落ちる汗を拭かずに返事をしてみせる。



そう奉納相撲後の約束で二学期早々に立ち上げた相撲部だが、

あの奉納相撲の一件で相撲に目覚めた生徒の入部が相次ぎ、

いまや、弓道部や剣道部と肩を並べるほどの規模の部活になっていた。

しかし、その指導状況となると、

部の顧問である球追先生は相撲はシロウトであり、

真面目な相撲経験者は相撲部屋で鍛えられた経験がある翠を中心にして回っていたのである。



パァンッ!

パァンッ!

砂の汚れが目立ってきたマワシに汗をしみこませ、

一心不乱に翠はテッポウを打ち続ける。

そして、そんな翠に向かって稽古を終えた部員たちは次々と挨拶をして出て行くが、

彼女一人になっても翠は黙々と体を動かし続けていた。

そう、まるで何から逃れようとしているかのように…

パァンッ!

パァンッ!

パァンッ!

人気が途絶えた稽古場にテッポウの音がこだまする。

そして、どれくらい時間が過ぎたのだろうか、

汗を流す翠のそばに一人の影が立つと、

「翠ぃ、

 まだ稽古していたの?」

と呆れた声が響いたのであった。

神無月初音。

この学校の生徒会長でもあり、

この相撲部の部員でもある彼女は翠にとって無二の親友である。

「そんなに根をつめなくてもいいんじゃない?」

声が届かないのか黙々と体を動かす翠に向かって

初音はタオルを差し出しながら再度話しかけると、

「あっ初音っ」

ようやく彼女の声が届いたらしく、

翠はハッとしながら体を止める。

「あらあら、

 部員たちがみんな挨拶をしていったのに、

 上の空だったの?」

それを見た初音は小さく笑うと、

「初音さぁん、

 翠さぁんっ」

稽古場の外より野原葵と夏川弘美が呼ぶ声が響き渡る。

「はぁぃっ」

その声に向かって初音は返事をしてみせると、

「葵と弘美も生徒会手伝ってもらったのよ、

 ねぇ、一緒に帰らない?」

と翠を誘ってみせる。

「!!っ

 はっ初音、

 悪いけど…あたし…

 先に帰っていいわ。

 もぅ少し稽古していくから」

その誘いに翠は一瞬戸惑いを見せた後、

一人で居残りをすることを告げると、

「そっそう…

 でも、このところずっと居残り稽古しているじゃない。

 何かあったの?」

それを聞いた初音は不安そうに問い尋ねる。

「え?」

翠は一瞬驚いた表情をして見せた後、

そっと露になっている乳房に手を沿えながら、

「うっううん…

 なんでもないわ。

 あたし、大丈夫だから」

と、笑みを見せる。

「そう、

 判ったわ、

 じゃぁあたし達、先に帰るわ」

初音は心配そうに翠を見つめた後、

その言葉を残して立ち去っていくと、

「ごめん、初音。

 でも、やっぱり言えないよ、

 こんなこと…」

乳房を押さえながら

ポツン

と一人残る翠はそう呟いて見せる。



「ハッ」

パァンッ!

「ハッ」

パァンッ!

夜の闇が稽古場を包み込み、

その中で一人残った翠は黙々と四股を踏み続けていた。

四股を踏むごとに翠の体から汗飛沫が飛び、

体の表面を流れ落ちていく汗は股間に締めこまれたマワシへと消えていく。

そして小一時間近く、翠は四股を踏み続けていると、

ヌッ

黒い影が稽古場に忍び込んでくる。

ススッ

スススッ

忍び込んできた陰は音もなく移動し、

汗を流す翠の背後に佇むと、

クニッ

その姿を変え、

やがて、狐のシルエットへと変化した。

と同時に、

フッ

翠の背後に物の怪の気配が漂ったのである。

「!!っ」

その気配に翠は気づくなり振り返ると、

『コンコン』

の声と共に狐の影が立っていて、

「くっ、

 また来たのね」

悔しそうに狐の影を見つめて翠は言うと、

『コンコン

 お前にかかされた大恥の恨み。

 決して忘れるわけにはいきませんし、

 その体に染み込んだ”精”がお前をどんな姿に変えるのか楽しみでしてね、

 さぁ、今日こそは射精してもらいますよ。

 コンコン』

と影は言う。

「うっ

 何が楽しみよっ」

その言葉に向かって翠は言い返すが、

「!!!っ」

突然体を強張らせると露になっている両乳房を押さえた。

『コンコン

 早速始まりましたね』

それを見た影は嬉しそうに呟くと、

「くっ、

 誰が…

 今日だって耐えてみせる」

翠はそう言い返すものの、

ググンッ

ググググンッ

そんな翠の意思に反するように、

うごめくように彼女の乳房は膨張と萎縮を繰り返しはじめ、

さらに乳首も呼吸をするかのように蠢き始める。

「あぁんっ、

 くっはぁはぁ

 はぁはぁ…

 おっおっぱいがぁ…」

体中から滝のような汗を噴出し、

異様な程の盛り上がりと収縮を繰り返す胸から発せられる疼きに翠は翻弄される。

そして、その疼きに抗するかのように

パァンッ!

翠は湿って重くなったマワシをことさら大きく叩くと、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

と無心になって四股を踏み続けるが、

グニンッ

グニンッ

そんな翠を揺さぶるように生き物のごとく乳房は蠢き、

さらに強く疼いて見せたのであった。

そしてその疼きに耐えられなくなってしまったのか、

「あぐっ」

必死で抵抗してきた翠は

ついに四股を踏むのをやめてしまうと蠢く両乳房にそれぞれの手を当て、

ギュっ

っと握り締めた。

そして、

「くはぁ

 はぁはぁ」

まるで握りつぶすのと同時に男性器のごとく突き出した乳首を握りしめると、

ギュっギュっ

ギュっギュっ

っと扱くかのように指を動かし始める。

『コンコンコン

 ついに扱き始めましたね。

 コンコン

 もはやあなたはそれを止めることはできませんよ。

 それにしてもなんてお姿なのでしょうか、

 相撲の稽古の最中にそんなふしだらな真似をして、

 でも良いのですよ。

 あなたにはこれからそのお姿にふさわしい体になっていただくのですから、

 さぁ、存分に扱きなさい。

 さぁ、思いっきり扱くのです』

痴態のごとく振舞う翠を眺めつつに狐の影は笑いけしかける。

すると、

「あぐぅぅぅ」

シュッシュッ

シュッシュッ

両乳首を扱く翠はうめき声を上げてさらに強くきつく扱くや、

グニュッ!

グニュッ!

両乳房からまるで男性器のごとく勃起する乳首はさらに伸び、

その先から盛んに先走りを滴らせ始める。

「あっあっあっ、

 あぐぅ!」

まさに異様な光景である。

太さ4cm、長さ30cm近くも伸びる翠の乳首は男性器と化し、

先端には大きくエラを張り、

ツルリとした亀頭が先走りを滴らせていたのである。

その乳首を

シュッシュッ

シュッシュッ

翠は狂ったように扱き続け、

そして、

「あっあっあっ

 あぁっ!

 でっでるぅぅぅぅぅ」

と声を上げながら

プシュッ!!!

ビュビュビュ!!!

両乳首より精を噴き上げてしまったのであった。

『コンコンコン

 見事な射精ですよ。

 いかがですか、

 二本も男根を持った体はとてもすばらしいですよ。

 コンコン

 射精の快感を知ってしまったあなたはもぅ普通の体には戻れませんよ』

と射精しグッタリとしている翠に向かって言う。

「もっ戻して…

 元の体に戻して」

射精しても戻らずダラリと垂れ下がる乳首を揺らして翠は懇願すると、

『コンコン

 もぅ遅いです。

 そして悔やみなさい。

 悔しがりなさい。

 あなたはもぅ人間ではありません。

 乳房から射精をする化け物です。

 さぁ、もっと醜く変身をするのです。

 あなたが邪魔をしなければこんな目に遭うことはなかったのですよ』

そんな翠に向かって影は奉納相撲のことを指摘すると、

『さぁ、もっとすばらしい体におなりなさい』

と叫んだとき。

「お待ちなさいっ

 やっぱりあなたなのねっ」

の声と共に初音、弘子、葵、佳苗の4人が稽古場に戻ってくるなり声を上げた。

『コンコン

 おやおや、お久しぶりでございます』

戻ってきた4人に向かって狐の影は笑って迎えると、

「みっ見てくださいっ、

 翠さんのオッパイがあんなことに」

と翠の棟を見た佳苗が声を上げる。

「なんてひどい事を」

それを見た初音は影をにらみ付け、

「翠になんてことをしてくれたのよっ」

の声と共に弘子が影に飛び掛かった。

しかし、

「え?」

スカッ

狐の影の中を弘子の腕が呆気なく通り過ぎてしまうと、

『コンコン

 わたしはここには居ませんよ。

 あなた方が見ているわたくしはあくまでも影…

 影を捕まえることなどできるはずかありません。

 コンコン

 さぁ、お友達がとってもすばらしい姿になるのを見届けるのです』

と影は言うと、

スッ

その姿をかき消した。

「なっ何を言っているの、

 それにしても翠っ

 あなたなんて体にされたの」

怪訝そうに狐を見送った初音は改めて翠を見たとき、

メリメリメリ

射精し垂れ下がっていた乳首が再び力強く持ち上がっていくと、

「うぐっ」

ぐったりとしていた翠自身が首を抑えながら苦しみ始めた。

「翠っ

 どうしたの?」

「翠さんっ」

突然の事態に皆は驚き慌てると、

「ゴボッ

 おっお願い…

 ゴボッ

 みっみんな…

 ここから出て行って」

と翠は口から栗花の香りがきつい精液を吹き始め、

自分の首を絞めながら懇願する。

「苦しんでいる翠を放って置いていけるわけないでしょう」

「病院に行こう」

「そうですよ」

そんな翠に初音たちは介抱しようとすると、

「ゴボゴボゴボ

 でっ出て行ってぇぇぇ

 じゃないとあたし…」

盛んに精液を吹き上げながら、

翠は心配する初音たちを突き飛ばすが、

グニッ

その翠の喉を胸から伸びてきた大きな膨らみが突き上げた。

「みっ翠さんの喉が」

それを見た佳苗は声を上げると、

グブッ!

翠の頬を大きく膨らませる。

「ひっ」

「翠…」

メリメリメリ…

バキバキッ

翠の体中から骨が砕けていく音がこだまし、

女性らしい体形が徐々に崩れていく。

そして、彼女の脚が押しつぶされるように潰れて皺まみれの袋状になっていくと、

グリンッ

その中に巨大な玉が作られていく、

「これって…

 まさか、

 男の人のオチンチン…」

赤黒く染まっていく肌と凹凸がきえていく体を見て弘子がそう呟くと、

ゴボゴボゴボ…

グブッ!

翠の口から精液がさらに激しく噴き上げるや、

わずかに開いた口の中には舌ではない肉の塊が顔を出し、

顔も引き伸ばされるように伸びきっていく。

ゴボゴボゴボ…

グブッ!

ゴボゴボゴボ…

グブッ!

不気味な音を上げる翠の姿はもはや人と呼べるものではなく、

それとは違う姿に変わりきっていた。

そして、

ゴボッ!

一際大きい音が響き渡ると、

グシャッ!

引き伸ばされていた顔が潰れてめくれ、

一気に剥けていったのである。

「ひっ」

衝撃の瞬間に皆はいっせいに眼を背けるが、

しかし、

ニュルンッ

翠の顔があったところには剥けきった巨大な亀頭が姿を見せていて。

「うっそぉ、

 こっこれが翠?」

「おっ男の人のオチンチン」

口に手を当てながら、

長さ1m50cm胴回り60cmの

付け根にマワシを締めた姿の巨大男性器と化した翠を見つめると、

『あぁっ、

 みんな見ないで、

 お願いだから』

という翠の声が初音たちの脳裏に響いてくる。

「翠?

 これって一体」

グリングリンと亀頭の円を描くようにしてうごめく翠に向かって初音は尋ねると、

『コンコン

 奉納相撲でこの者は割り込んで土俵に上り、

 皆の精を集めた力士を倒してしまいました。

 わかりますか?

 このことが。

 そう、本来ならば最後の一番で勝ち残った者は放って姫様に収めるはずの精が、

 この者の割り込みによって行き場をなくしてしまったのです。

 コンコン

 言わばこれは罰です。

 コンコン

 男性器としてこれから延々と精を吐き出し続けるが良い』

姿を消した狐の声がそう響くと、

「そんなぁ、

 翠がこんな姿になったのはあたし達のせいなの?」

それを聞いた初音たちは驚きの声を上げると、

『大丈夫っ、

 射精をすれば…

 元の姿に戻れる…』

と翠は言い、

ペタン

ペタン

体を浮かすようにしてテッポウ柱へと近づいていくと、

ググッ

大きく体をそらしたのち、

ペチンッ

ぺチンッ

と男性器と化した体をテッポウ柱に向かって叩き始めた。

「それって…」

『オチンチンになってわかるの、

 こうするとだんだん感じて、

 射精をすることが』

と翠は言う。

「なんてこと…」

「呪いが解けるまでそうするのですか」

それを聞いた皆が問い尋ねると、

『えぇ…

 そうするしかないでしょう。

 だって、あたし…

 オチンチンだから』

と翠は答え、

ぺチン

ぺチン

とテッポウ柱を体で叩き続ける。

そして、

『みんなっ、

 早くここから去って、

 あたしが吹き上げる精を被ったら、

 あたしと同じ姿になっちゃうわ』

と警告をするが、

「判ったわ、翠。

 あなただけそんな目に遭わせられない」

「えぇ、

 こうしていられるのも翠のおかげですしね」

「そうですよ、

 翠さんだけにこんなこと押し付けちゃぁ

 可哀想よ」

「はいっ、

 翠さんの背負っているもの…

 みんなで肩代わりしましょう」

と皆は言うと、

「それぇ!」

初音たちは一斉に翠に飛び掛り、

土俵上に押し倒すとその体を扱き始めた。

『だめよっ、

 やめてっ、

 あっそんなに刺激しないで、

 だめっ、

 でちゃうっ、

 あぁっ、

 離れてみんなぁ!!』

翠の身悶える声が響いた後、

ブシュッ!

シュシュシュシュ!

相撲部の稽古場に激しく射精する音が響き渡ったのであった。



「うらぁ」

「おらおらおら」

「押せ押せ押せ」

プルンと弾むオッパイを揺らし、

全身から噴出した汗で湿るマワシを叩く少女力士たちが土俵の上でぶつかり合う。

その様子を初音が見ていると、

「そこっ、ぼけっしないっ」

と言う怒鳴り声と共に

バァンッ!

露になっている初音の背中が勢い良く叩かれた。

「ったぁぁいっ」

ジンジンと響いてくる痛みを堪えながら初音は振り返ると、

「土俵際で考え事?

 神無月初音さん?」

と言う言葉と共に緑のマワシを締めた翠が立つと、

チョンッ

テーピングされた指が彼女の額を軽く押してみせる。

「あっあぁごめん…」

その言葉に初音は反射的に軽く謝ると、

ムッ

一瞬、翠の口が真一文字に結ばれるや、

ドンッ!

胸の膨らみが揺れる間も与えない速さでその正面に当たり、

グッ

と締めている両マワシを掴みあげられる。

「あっ」

まさに一瞬の出来事であった。

「初音っ

 マワシを取ったわ」

困惑する初音に向かって翠は冷静にそう言うと、

「油断は禁物って言ったでしょ」

の声と共に両マワシを取った翠は腰を下げて一気に吊り上げてしまうと、

「あぁっ」

瞬く間に初音の踵は浮き、

ズザザザザザ…

そのまますり足で土俵際から稽古場の壁際へと寄せていく。

そして、

ドォンッ!

吊り上げた初音を稽古場の板壁へとぶつけて見せると、

「くぅぅぅ」

痛みに堪える初音は何も出来ず、

容赦なく食い込んでくるマワシの感触もあって体をよじって見せる。

「あら、

 なに、その顔は…

 まさか、吊られたマワシが食い込んで気持ちいい。

 っていうつもり?」

まるでいたぶるようにして初音を見据えつつ翠は問いただしてくると、

「そっそんなんじゃないわよっ」

顔を真っ赤にして言い返すが、

「ふふっ、

 どうだか?

 でも、稽古中に他の事を考えているだなんて、

 弛んでいる証拠よ」

と翠はキツイ口調で警告をする。

「わっ判っているわよっ」

なおも苦しげな息をしつつ初音は言い返すが、

しかし、壁に押し当てられ、

踵が宙に浮いた状態では反撃に打って出ることも出来ず、

まさに翠のなされるがままであった。

すると、

フッ

あれだけ力が込められていた翠の体から力が抜け、

それと同時に初音の体は下ろされると、

トン

踵が地面に着いた。

「翠?」

いきなり力を緩めた翠の真意を探るように初音は尋ねると、

「…らしくないわね、

 何を考えていたの?」

クリッ

クリッ

体を密着させ自分の胸を押し付けながら翠は尋ねてくる。

翠の胸の感触に戸惑いつつ初音は曖昧な返事をすると、

「ふーん」

翠は初音の顔に自分の顔を近づけ、

クイッ

っと胸を強く押し当てつつ、

「今日の後稽古、

 判っているわね」

と話しかける。

「あっ」

その言葉に初音は驚いた顔をすると、

「あらあら」

「今日は初音さんと思いっきり勝負するみたいですね」

「これは大変ですよ」

と言いながらマワシ姿の葵、弘美、佳苗の3人が寄ってきた。



「お疲れ様でした」

その声を残して制服に着替えた相撲部員達が帰宅し、

やがて、稽古場には翠・初音・葵・弘子・佳苗の5人が居残っていた。

「佳苗、

 TVのお仕事は大丈夫なの?」

不意に弘子が佳苗が学業と平行して行っている仕事について指摘すると、

「はいっ、

 マネージャさんにお願いして今日はオフにしてもらっています」

と稽古後にもかかわらず元気よく返事をしてみせる。

「初音、

 生徒会は?」

マワシを叩きつつ翠が初音に尋ねると、

「えぇ、

 今日はないわ」

初音もまた予定がないことを言うと、

「あたしも助っ人は無し、

 だから今日は存分にチンコになれるわよ」

と話を聞いていた弘子は自分から申告した。

「ちょっと弘子っ、

 そんなにストレートに言わなくても」

それを聞いた葵は困惑しながら聞き返すと、

グブッ!

早速翠の口から精液が吹き上がり、

メリメリメリ

その顔がパンパンに膨れ上がると、

体が寸胴になり、

足が潰れていく。

そして、

ズルンッ

一気にめくれ上がってしまうと、

ブルンッ!

玉袋を割るようにマワシを締めた、

ツルリとした亀頭をいただく巨大な男性器へと姿を変えた。

それを見た初音たちも顔を合わせてうなづくと、

ベリッ!

ズルッ!

次々と顔を剥き亀頭をさらすと

皆翠と同じ男性器へと姿を変える。

『はぁ…

 剥けた顔に風が当たるとこそばったいわぁ』

剥けきった赤黒い亀頭をさらして弘子は感想を言うと、

『あまり風に当てていると、

 乾いちゃって突っ張ってくるんですよ』

と佳苗も言う。

『さーさ、みんなっ、

 変身したわね。

 稽古するわよ』

変身を終えた仲間に向かって亀頭を大きく揺らせつつ翠は声を上げると、

『どすこいっ!』

マワシを締めた5本の男性器は声を合わせるや、

ぺチン

ぺチン

全身を使ってぶつかり稽古を始めだす。



『ほらっどうしたのっ、

 勢いがないわよ』

『初音っ、

 今日は思いっきり扱くわよ』

『うふっ、

 翠こそすっからかんになるまで扱いてあげる』

異形の者達による相撲が続く中、

スッ、

部室にひとりの人影が入ってくた。

そして、土俵に向かって音もなくカメラのレンズが向けられると、

『!!』

『誰だ』

その気配に気づいた翠の声が稽古場に響き、

ビュッ!

それと同時に亀頭の先端にある鈴口より放たれた粘液が人影の足下で大きくはねる。

『ちっ気づかれたか』

翠達に気づかれたことに臆することなく人影が進み出てくると、

皆の前にロングの髪を揺らして巫女装束姿の少女が姿を見せる。

『お前は…』

異形の力士達が声をそろえて尋ねると、

『初めまして…でもないですか』

と少女は頬を掻きつつ無愛想に挨拶をしてみせながら、

『先日はどうも、

 通りすがりのトラブルスィーパーです。

 あのコン・リーノが大人しく引き下がるはずはないと思って舞い戻ってきたのですが、

 全くとんでもない置き土産を残していきましたね』

少女は名乗りつつも

カシャッ

カシャッ

アングルを変えながらカメラのシャッターを切ってみせる。

『私たちの秘密を見たからには…

 お前も同じ姿にしてくれる』

男性器となった皆の姿に驚くこともなくシャッターを切る少女に向かって

翠は体を左右に揺らして迫っていくと、

『やれやれ、ひょんなことで関わってしまった奉納相撲の後始末…

 請求書はどこに持って行けばよいのでしょうか』

そう文句を言いつつも右腕を上げるや、

ヒュンッ!

パシッ

その手に長さ1mにもおよぶ鍵の錫杖が握りしめられる。

そして、

ヒュンヒュン

と少女は錫杖を巧みに裁きつつ印を切って見せた後、

『邪な者より生まれ、

 罪無き少女達を異形の姿ねと貶める負の力よ、

 我が手中にて永久の時を刻むべし』

そう文言を放った途端。

キンッ!

澄んだ音と共に少女の眼前にクラインの壺が姿を見せるや、

その壺の口を翠達へと向けてみせる。

すると、

ビクンッ!

『あっあっあっ、

 でっでるぅぅぅ!!!』

翠や初音達の悲鳴が響くや、

ビュワァァァァァ!

皆の鈴口より白濁した精が吹き上がり、

まるで搾り取られるように壺の中へと注ぎ込まれていく。

そしてすべてを出し尽くしてしまうと、

シュワァァァァ…

翠達は人の姿を取り戻し、

土俵の上に崩れる様に倒れていったのであった。



『ふぅ…

 一件落着っと』

翠達が放った精をすべて取り込み、

生臭い香を放つ壺の詮を締めながら少女は大きく息を継ぎ、

その壺を空間から切り出した収納スペースへと押し込んで見せる。

そして、

『スイッチ・オーバー!』

と声を放つや、

少女の姿は巫女装束から制服姿へと変わると、

制服のポケットより生徒手帳を取り出し、

『3年B組…鍵屋つかさ…ですか。

 まったく柵良さんもこれ幸いにと面倒な仕事を依頼してきますね』

手帳をペラペラと捲りつつ少女は稽古場より姿を消したのであった。



「あれ?」

「なにをしていたのかしら」

少女が姿を消して小一時間後、

倒れていた翠達が目を覚ますと、

「やだ…稽古場で寝ちゃっていたの?」

と初音の声が響く。

そして、慌てて体に着いている砂を叩きながら皆は土俵の片付けを始め出すと、

「あの…あたし変な夢を見ていたのです」

と佳苗の声が響いた。

するとその声に応えるように、

「え?

 あたしもよ」

「やだぁ、

 変な夢を見ていたわ」

と声が響くが、

「で、みんなは何の夢を見ていたの?」

そう翠が尋ねると、

「え?

 そんなことは言えないわ」

と言う初音の返事が響き、

「うふっ」

「うふふふふ…」

奇妙な含み笑いが稽古場に響いたのである。

そして、その日以降、

校内に妖怪が出るという噂は自然と消えていったのであった。



おわり