風祭文庫・異形変身の館






「草原の営み」


作・風祭玲

Vol.924





サバンナの草原を乾いた風が吹き抜け、

その風の中を黒々と輝く裸身を晒し、

朱染めの腰布を風にはらませながら一人の男が進んで行た。

チャラン

チャラン

赤土を練り込み髪を結い上げ、

首周り腰周りなどにつけた極彩色のアクセサリを誇らしげに掲げながら、

男は手にした槍をゆっくりと掲げて見せる。

目指すは目の前で悠然と寝そべってみせる一頭のライオン・シンバ…

それを仕留めたとき男は勇者として崇められるのであった。



ハァハァ

ハァハァ

一歩一歩、シンバに近づくにつれ男の呼吸は苦しくなり、

瞳は小さくなっていく。

そして、

ザッ!

一瞬の鋤を突いて男はシンバの前に飛び出したとき、

ハッ!

あたしは目を覚ましたのであった。

「まっまた、この夢…」

激しく脈打つ胸を手で押さえながらあたしは枕もとの時計を見ると、

時計の針は5時半を指していた。

「はぁ…」

時計を眺めながらあたしはため息をひとつつき、

おもむろに手を伸ばすと、

シャッ!

閉じていたカーテンを開けて見せる。

その途端、夜が明けたばかりの街の姿が目に入って来た。

「はぁ…

 恐らく今日の夜。

 いや、夕方かもしれない…」

そう呟きながらあたしは壁に掛かるカレンダーを見ると、

今日を示している数字につけられている赤丸が目に飛び込んできた。

すると、

ギュッ

カーテンをあけた後、

私の胸元に来ていた右手の拳に思わず力が入った。

そう、今日あたしは変身する…



キーンコーン…

女の子として一人の女子高校生として受ける授業はあっけなく終わり、

しばしの間、教室からお別れとなる。

だが、そんな感傷に浸ることなく、

あたしは”変身”のための支度を始めだしていた。

サバンナとの回廊が開くのは旧校舎にあるあの”忘れられた部屋”だけ、

だから”変身”するのなら自宅ではなく、

この学校であり、

あの”教室”でしかなかった。

やがて部活で汗を流した生徒達が帰宅し、

校舎内を静寂と闇が包み込むのと同時にあたしは行動を開始する。

とは言っても、

変身後必要となるものは全て”教室”内に置いてあるので、

”教室”に向かうのはあたしの身体一つ。

あっでも、一応カバンも持っていくことにする。

カバンだけ机に置きっぱなしには出来ないから…



居残っている生徒に見つけられないように

慎重に旧校舎へ続く渡り廊下を歩き、

あの”忘れられた教室”の前に来たとき、

「前島さん…」

とあたしを呼ぶ声が響いた。

「ひっ!」

薄暗い校舎内で突然呼びかけられたため、

あたしは思わず悲鳴を上げてしまうと、

「あの…

 ぼっ僕です、

 武藤信二です」

と言う声と共に気弱そうな男子があたしの前に立った。

「むっ武藤君?」

どこかで見たようなことがある顔にあたしは考え込んでしまうと、

「同じクラスの武藤です」

と彼は自分があたしと同じクラスであることを強調した。

「あはっ

 ごめんごめん…

 なかなか名前と顔が一致できなくて」

彼に向かってあたしはそう返事をすると、

キッ

武藤はあたしを見つめ、

「あのぅ、

 まっ前島さんっ

 実は…」

と話を切り出してきた。

「はっはい…」

その言葉にあたしは反射的に返事をすると、

「前島さんって、

 時々、居なくなりますが、

 なんか理由があってのことですか」

と尋ねてきた。

「え?

 えぇっっと」

いきなり核心を突いた質問にあたしは答えに窮してしまうと、

「答えてください。

 ぼっ僕は前島さんのことが心配で心配で…」

と彼は訴える。



「あたしのことが心配?」

思いがけず飛び出た武藤の言葉を聞き返すと、

「はいっ」

彼は威勢良く返事をし、

そして、

「姿を消す前に必ずここに来るようですが、

 ここに何があるのです?」

と質問をしてきた。

「それは…」

その質問にあたしは言葉を濁すと、

ジュルッ!

いきなり口に中に苦い粘液が広がり始めた。

「!!っ」

それに気付くのと同時にあたしは口を押さえると、

「どうしたんです?

 何か気持ち悪いんですか?」

と武藤は理由を尋ねるが、

だが、

ゴボゴボゴボ…

あたしの口の中に広がる粘液はさらに増え、

また飲み込もうとしても、

止め処なく喉の奥から吹き上がって来てしまうため、

ツー…

ボタボタボタ…

粘液があたしの口から漏れ始めてしまった。

「うぅーっ」

必死になってあたしは口を閉じようとするが、

だが、

メキッ!

下あごの骨が割れてしまうと、

ボロボロ…

歯を吐き出しながら

グニィィィッ

あたしに口は上に突き上げられるように曲がり始め、

プッ!

上唇が大きく上に湾曲してしまうと、

骨が割れた下あごは下に湾曲し、

両頬が一気に口を塞ごうと張り出してきた。

あたしの口がまるで鈴の口を思わせる姿に変わってしまうと、

ボタボタボタ…

粘液がさらに溢れだし、

もはやそれを止める事は出来なくなってしまっていた。

その一方で、

ムリッ!

あたしの秘所で小さく縮まっていたクリトリスが急激に膨らみ始めると、

ムクッ!

あたしのスカートを押し上げていく。

「!!!っ」

「!!!っ」

歯を失い、

口も利くことが出来なくなってしまったあたしは前に立つ武藤を突き飛ばし、

”教室”へと飛び込んでいく、

そして、

「待ってください!」

そんなあたしを追って武藤も教室に入ってくるが、

ダン!

あたしは武藤の存在を無視して膝を落とし、

床に手を付いた。

その途端、

ドロォォォッ!

閉じることが出来ない口から透明な粘液が相変わらず吐き出され、

コリッ!

首の付け根に肉芽のようなものが出来てくると、

粘液の中に白いものが混じり始める。

”変身”が始まってしまったのであった。




「まっ前島さんっ

 一体どうしたんですか?

 何が始まったんですか?

 せっ先生を呼びましょか?」

そんなあたしの姿を見て武藤はうろたえるが、

ギュッ!

そんな武藤の脚をあたしは掴むと、

首を左右に振った。

だが、

メリメリメリメリ…

あたしの”変身”は容赦なく進んで行き、

武藤の前であたしは”変身”していく姿を晒すことになった。



これまで誰に見られることがなかった”変身”を

武藤に見られることはあたしには耐えられないのだが、

もはやどうすることも出来ない。

ムリッムリムリムリ!!!

股間から飛び出してしまった陰核はさらに膨らみを増し、

その大きさも”ビー球”から”ピンポン球”、

さらに”ソフトボール”の大きさを越えてしまうと、

次第に人の顔へと姿を変えていく、

それに反比例するかのように、

あたしの顔は萎縮をはじめだすと、

骨が砕け、

髪が抜け、

目を失い、

耳が消え、

徐々にノッペラボウのような顔へとなっていく、

そして、

ムリッ!

顎の周りに”カリ”が飛び出してしまうと、

ギュギュギュ…

首周りにできた海綿体が充血を始めだした。

ププッ!

ププププッ!

モノを吐き出すだけの存在なっていく口からは相変わらず粘液を吐き出し続け、

あたしの首から上は固く勃起する男性器・オチンチンへと姿を変えてしまった。

その一方で人の顔へと変わっていく陰核は、

パキッ!

その内部に骨が形成されていくと、

目・口・鼻が開き、

そして耳が出来上がっていく、

さらにあたしの足は指を伸ばし、

筋肉隆々の腕へと変わってしまうと、

今度は腕がスラリとした脚へと姿を変え、

肌の色が漆黒色に染まっていくと、

新しく出来た顔から朱色に染まる髪が伸びはじめた。

『くはぁ

 はぁはぁはぁ』

ついにその”顔”から息が通ってしまうと、

ムリッ

あたしの首筋はお尻となり、

一方で腰は背中へと変わって行く。

そう、あたしはひっくり返しになっていくのだ。

そして、足となった手を踏ん張ると、

手になった脚が床を突き放して、

あたしはひっくり返しで立ち上がる。

だが、その姿はひっくり返しに人間が立ち上がったわけではなく、

漆黒色の肌をさらし、

筋肉が無駄なく張り詰める男…

そう、サバンナの戦士・モランが起き上がり、

ジロリ…

モランは自分を見つめている男・武藤をにらみつけたのであった。



「嘘…だろう…」

武藤は目の前の変身劇が信じられずに呆然とするが、

ひっくり返ってモランになったあたしはそんな武藤に構わず、

バッ!

朱染めの腰布を身体に巻き、

さらに極彩色の首飾りや頭飾りをつけていく。

そして、槍を手に取ると、

チラリ

再度武藤を見た。

「ひっ!」

マサイの戦士・モランに見られた途端、

武藤は縮み上がるが、

あたしは衣の裾をまくり、

そして、その中に下がるオチンチン、

いや、元のあたしの顔を握って見せると、

『武藤君、

 これがあたしの本当の姿なの。

 この教室の中であたしはたっぷりと精を注がれたの、

 そして、こんな体にされてしまったの』

と話しかけたのであった。

「!!っ、

 前島さん…

 話が出来るの?」

モランの手に握り締められるあたしを見つめながら武藤が聞き返すと、

『いまのあたしはマサイのオチンチンなの…

 こうして身体をひっくり返してマサイとなるのが、

 あたしの運命なの…』

とあたしは一方的に言う。

「そんなぁ、

 どうすれば元に戻るの?

 ぼっ僕、

 前島さんのことが…」

そう言いながら武藤はあたしに傍に駆け寄り、

あたしを握るマサイの手からあたしを奪い取ると、

「どうしたらいいんだよぉ」

と泣きながら話しかけてきた。

『それは…』

その問いにあたしはそう言いかけるが、

『…じゃぁ、キスをして』

とあたしは武藤君にキスをするように命じたのであった。

「え?

 キスって」

あたしの命令に武藤君は動揺をしてしまうと、

『キスをしながらあたしを扱くのよ、

 そうやって、身体の奥に溜まっている精を抜けば、

 その分、早く元に戻れるわ。

 でも、精に触れてはだめよ、

 触れたら武藤君がマサイになっちゃう…

 だから、出る直前に離れるのよ』

とあたしは説明をする。

「うっ」

あたしのその言葉に武藤は思わず引いてしまうと、

『そう、あなたのあたしへの思いはその程度だったの、

 じゃぁサヨナラ。

 あたし急いでサバンナに行かないといけないから』

そう言うなりあたしは武藤の身体を突き飛ばした。

だが、

「待って、

 キスをすればいいんだろう」

武藤はあたしの前に立ちはだかると、

膝を付き、

衣の裾を捲りあげた。

そしてその中でぶら下がっているあたしの顔を手を添えながら持ち上げると、

チュッ!

縦に開く口に自分の唇を重ね合わせたのであった。

『!っ

 武藤君…

 そこまでしてあたしを…』

てっきり諦めるものと思っていたあたしは武藤の行為に驚き感動を覚えるが、

その暇を与えずに、

シュッシュッ

シュッシュッ

武藤はあたしを扱き始める。

『うぅっ

 はぁっ

 うぅっ』

いまの顔である元陰核がうめき声を上げ、

一方であたしはこみ上げてくる精液を格闘を始める。

そして、ついに一線を越えようとしたとき、

『出る出る

 出ちゃうぅ!!

 うぉぉぉぉぉっ』

モランの頭が声を上げるのと同時に、

ビシュッ!

あたしは盛大に精液を吹き上げてしまったのであった。



乾いた風が吹き抜けてゆくサバンナの草原を黒々と輝く裸身を晒し、

朱染めの腰布を風にはらませながら一人の男が進んでいく、

『またここに来てしまったなぁ…』

そう思いながらあたしは捲れあがる衣の下より風を感じていた。

すると、

スッ

そんなあたしの身体の腕に黒い腕が絡まされ、

隣に朱染めの衣を身体に巻いた女性が身を寄せて来た。

『武藤、

 なんで、精を飲んじゃったの?

 あれほど出る前に離れろっていったのに』

そんな女性に向かってあたしは話しかけると、

女性は足首まで覆っている衣の裾を捲り上げ、

そして、局部を晒すと、

『後悔はしてないよ』

と武藤の声が響いたのであった。

『本当に…』

『うん』

互いに股間をさらしながらあたしたちはそう会話を交わすと、

『じゃぁ、またキスをして』

『いいよっ』

その声と共にモランはそっと女性を抱き上げ、

そのまま草原に寝かせると、

その上に覆いかぶさる。

そして、熱く硬くなったあたしの顔を女性の縦溝が近いてくると、

『前島さん…』

『武藤君…』

武藤君はあたしにキスをして、

そのまま一気に飲み込んで行く。

そう、サバンナの真ん中で男と女の営みが始まったのであった。



おわり