風祭文庫・異形変身の館






「Flower」


作・風祭玲

Vol.755





「北緯30度5分

 東経154度2分?」

GPS付きのノートPCがはじき出す数値を読んで

田沢信義の表情は急に曇る。

「どうかしたか?」

そんな彼の表情に俺は恐る恐る話しかけると、

「ありえない…」

と信義は呟いた。

「ありないって…

 なんだよ?」

その言葉に高輪真一が即座に聞き返すと、

「この場所には島はないはずなんだよ」

信義はそう強調して荒々しく腰を上げた。

「えぇ!」

それを聞いた俺達がほぼ同時に驚きの声を上げると

ザザザ…

ギギギ…

波の音共に船底より不気味な音が響き渡ってくる。

「しーっ、

 静かに…」

その音を聞いて俺は人差し指を口に当てると、

コホンッ

咳払いの声が響き、

真一がエンジンルームへと向かっていった。



俺達が乗るクルーザーはいま海の中で止まっていた。

俗に言う座礁いうやつだ。

全く今日はついていなかった。

久々の休日、

親父のクルーザーを借りて俺達3人は海釣りに出かけたのだが、

しかし、秘密のポイントに到着しても魚は一匹も釣れず。

仕方なく他のポイントに移動しようとしたとき、

海の上をすべるように移動してきた霧に飲み込まれてしまったのだ。

全く視界の聞かない乳白色の世界を俺は北に向かってクルーザーを走らせるが、

だが、無線もレーダーもGPSも全く使い物にならず。

ただ闇雲に突っ走っていると、

ガリッ

ガガガガ!!!

船底からいやな音が響き渡り、

クルーザーはその船足をピタリと止める。

ものの見事な座礁。

幸い横転するようなことはなく、

クルーザーは静かに打ち寄せる波にその身を晒すが、

だが、前進することも後退することもままならない中、

立ち込めていた霧がゆっくりと晴れてくると、

俺達の目の前に島影が姿を見せたのであった。



「島がないはずって、

 現に島があるじゃないか。

 あの島が中ノ鳥島っていうんだろう?」

キャビンの中で俺はそう尋ねながら

俺は窓から見える島を指差すと、

「うん

 そうとしか考えられない」

と信義は頷き、

そして、

「それにしても、

 港を出たのは今日の朝。

 それが午後の3時になんでこんな場所にいるんだ?」

と訝しがった。

「ん?

 言っている意味が判らないが?」

信義の言葉に俺は首をかしげると、

「中ノ鳥島って、

 あの小さな岩が出ているだけで、

 中国が言いかがりをつけている島のことか?」

エンジンルームから戻ってきた真一が聞き返すと、

「浸水は大丈夫だよ」

真一は俺に船に浸水がないことを教えてくれた。



「それは沖ノ鳥島のことだよ」

真一の質問に信義は即答する。

「なっ何が違うんだ?」

意味が判らない俺は尋ねると、

バッ

信義は海図を広げ、

「いいか、本州の南。

 丁度大阪あたりから真っ直ぐ南に伸ばした太平洋の真ん中に浮いているのが

 沖ノ鳥島だ。

 一方、本州の東南の海上

 金沢と東京を結ぶ線を東南の方向に伸ばした先にあるのが中ノ鳥島」

そう説明をしながら、信義は海図の上を指差すが、

しかし、その場所には島の印は何所にもなかった。

「あれ?

 島がないじゃん」

それを見た俺は思わずそう呟くと、

「それよりもこの地図を見て不思議に思わないか?」

と信義は聞き返した。

「え?」

その言葉に俺は信義を見ると、

「いいか、

 俺達が出向してきた伊豆の港はココ、

 そして、いまはここにいる。

 たった半日で一千キロを超えるところにきているんだよ、

 俺達は…」

トントンと海図を指で叩き、

信義はそう説明をすると、

「おぉ!!!」

俺は目を剥いて声を上げた。



「霧か?」

それを聞いた真一がそう呟くと、

「うん、

 あの濃霧が俺達をココにまで連れてきたみたいだな」

と信義は出航して間もなく、

三宅島の近海でこのクルーザーを取り囲んだ霧のことを指摘した。

そして、

「そう。

 まるでこの幻の島に呼び寄せられたみたいに…」

と信義は呟く。

「おいおい、

 俺は冗談で言ったんだぞ、

 第一、この21世紀の世の中にだ。

 世界の隅々まで飛行機が飛び交い、

 人工衛星だって空を飛んでいるんだぞ、

 もぅこの星には”?”が付く場所は存在しないんだぞ」

それを聞いて真一がそう力説すると、

「じゃぁ、お前はその自分の目で世界の隅々まで見て来たのか?」

と信義は指摘した。

「うっ」

その指摘に彼の口が止まると、

「この星はまだ判らないことが一杯あるんだよ、

 そしてそれを判ったようなフリをしている。

 それが人間だよ」

と信義は呟いた。

「じゃぁ、なんで信義はこの島のことを知っているんだ?」

それを聞いていた俺はそのことを尋ねると、

「明治時代に中ノ鳥島に上陸した人が居たんだよ。

 でも、再度、中ノ鳥島を見つけることが出来なくこの世を去り、

 そして、島は地図から消された」

と信義は答え、

「じゃぁ、俺達はその明治の人に続いて2番目にこの島に来た。

 というわけか?」

そう俺は結論付けた。

「まぁな…」

俺の発言のあと、

信義は頭の後ろに手を組み、

大きくのけぞると、

「けっ馬鹿馬鹿しい」

話を聞いていた真一は突然そう言うなり、

「ちょっと、表で頭を冷やしてくるわ」

と言い残してキャビンから出て行った。




「え?

 真一が居ない?」

夕方、真一の姿がクルーザーから消えたことを、

信義から聞かされた俺は驚くと、

「とっとにかく探そう」

とデッキに飛び出した。

その途端、

フワッ

辺りには仄かに甘い香りが漂っていて、

スンスン…

「何だこの匂いは?」

と俺は鼻を動かす。

「何かの花の匂いのような」

同じ様に匂いを嗅ぐ信義もそういうと、

「クルーザーにいないとしたら、

 島に上陸したんだな」

と鬱蒼と木々が生い茂る中ノ鳥島をみた。



「よっ

 こらしょっ」

「うわっ」

クルーザーが座礁をしている岩礁から中ノ鳥島まで



海岸線を埋め尽くす木々を乗り越え、

俺と信義は真一の姿を探して、

さらに島の奥へと進んでいく、

そして、歩くこと1時間、

ようやく島の中央部に足を踏み入れた途端、

サァァ…

絡み合う樹木は一気に姿を消し、

代わりに絨毯を敷き詰めたような、

真っ赤な花を咲く大群落が姿を見せた。

「なんだぁ?

 この花は?」

「すごい…」

これまで見たことがない花の群落に俺は驚いていると、

「これは…

 ランの仲間だよ」

と花の花弁を見た信義はそう俺に告げた。

「ラン?」

信義のその言葉に俺はしげしげと花を見ると、

「すごい…

 こんなランの大群落だなんて…」

信義は感心しながら群落を見つめ、

そして、この群落の奥に塔のように聳え立つものに気がつくと、

「なぁ、あれ

 なんだ?」

と指差した。

「お前も気付いたか」

信義の言葉に俺も頷くと、

俺達は群落の中を歩き、

その塔へと近づいていった。

そして、その近くに来たとき、

「随分デカイな…」

「あぁ」

それが、吹き上がる噴水の如く半球状に枝葉を張る巨樹であることに目を見張った。

「この島って新種の植物の宝庫か?」

樹を眺めながら俺は呟くと、

「いや、

 この樹もランだよ」

と信義は俺に言う。

「え?

 この樹もランだってぇ?」

その言葉に俺はシゲシゲと樹を見上げると、

「枝にチラホラ咲いている花が、

 下の花と同じ形をしている…

 下の花と同じなのか?

 この樹は」

目を輝かせながら信義はそう呟いた時、

急に風向きが変わると、

ムワッ

腐臭を思わせる悪臭が漂い始めた。

「くっせーっ」

「何だこの臭いは」

むせ返る悪臭に俺達は慌てて鼻を覆い、

「なんて臭いだ…まったく」

鼻が曲がりそうな臭いの中、

俺達は樹の周りを歩いていくと、

「真一っ!」

木の根の傍、

咲き誇る赤い花の中に真一が倒れているのを発見した。

「おいっ、真一っ!」

「大丈夫か」

大急ぎで真一に駆け寄り、

そして抱き起こそうとするが、

「なんで、こいつ…

 素っ裸なんだよ」

と真一が全裸で倒れれていることに疑問を持った。

その一方で、

「なんだこれ?」

信義は真一の傍で萎んでしまっている奇妙なものを見つけるが、

それを拾う前に、

「おいっ、

 急いでクルーザーに運ぼう」

俺はそう話しかけると、

「あぁ、判った」

信義はそう返事をすると、

伸ばしていた手を引っ込め、

俺と共に真一を担ぎ、

クルーザーへと連れて行った。



「どうだ?」

「うーん、

 脈はあるし、

 呼吸もある。

 ただ、呼んでも、

 叩いても意識が戻らない…」

心配そうに真一の容態を尋ねる信義に、

彼をベッドに寝かせた俺はそう返事をすると、

「やはり医者に見せたほうが

 いいんじゃないか?」

と信義は呟いた。

「それは判っている。

 でも、衛星電話は使えない。

 クルーザーは頑として動かない。

 これじゃぁ、打つ手は無いぞ」

そんな信義に俺はそう指摘すると、

ドンッ!

壁を殴る音と共に、

「だからって、

 このまま見ているだけかよっ」

冷静な信義には珍しく感情をむき出しにした。

そして、

「あっ、

 すまん。

 つい…」

と謝ると、

「いいんだよ、

 俺だって…」

俺はそう呟き、

拳を握りしめた。

真一の容態はいっこうに変わらず夜が明けた。


「おいっ、

 武雄っ

 ちょっと来い」

ソファーの上で転寝をしていた俺は信義の怒鳴り声に起こされると、

「ふわっ

 どうした?」

と目ボケ眼で答えた。

すると、

パァァン!!

キャビンに何かが叩かれる音が響き、

「痛い…」

俺はジンジンと熱を持つ頬押せながら涙を流していた。

「目が覚めたか?」

そんな俺に信義が話しかけると、

「真一が大変なことになっている」

と俺に告げた。

「なにっ?」

それを聞いた俺は慌てて飛び起きると、

真一を寝かしてある部屋に飛び込んだ。

すると、

フッ

部屋の中を蜜を垂らしたような甘い匂いが充満していて、

そして、ベッドの上には透き通るように白い肌を持ち、

ダークグリーンの髪をプックリと膨らむバストまで垂らした女性が

上半身を起こして俺達を見ていた。

「だれ?」

思わず俺はそう呟くと、

『ふふっ

 いやだなぁ…

 僕だよ』

と女性は口元に手を当ててそう返事をすると、

身体を横にずらし、床に白い脚を置く。

そして、括れかけたウェストと

小ぶりなヒップを見せ付けるようにゆっくりと立ち上がり、

音もなく俺達に近づいてきた。

「お前…

 まさか…

 しっ真一か?」

近づいてきた女性に俺は尋ねると、

『うふっ』

女性はその細い指を俺の胸元から顎下へかけて撫でるように動かし、

フワッ

甘い匂いを振りまきながら部屋から出て行った。

「おいっ、

 何所に行く気だ?」

女性を追いかけ俺は尋ねると、

『ふふふふふ…』

女性はただ笑いながらキャビンからデッキへと向かい、

まるで空中を舞うタンポポの綿毛のように島へと向かっていった。

「追いかけようっ!」

それを見ていた信義がそういうと、

「あぁ…」

俺も頷きクルーザーから岩場へと降りた。



ハァハァ

ハァハァ

絡み合う木々が覆う海岸地帯を抜け、

あの赤い花が咲き乱れる花畑に出ると、

俺達のはるか先をあの女性が歩いていて、

その先にはあの巨木がまるで女性を招くかのように、

枝一面に花をつけていた。

「おいっ、

 あの腐った樹、

 花をつけているぞ」

樹を指差して俺が声を上げると、

フワッ

あの女性が漂わせていた甘い匂いが風に乗って漂ってきた。

「うっ

 なんだ、この匂いは…」

昨日嗅いだ腐臭とはちがう強烈な香りに俺は鼻を塞ぐと、

『ふふふ…』

先を行く女性は巨樹に寄り、

その裸体を擦り付けた。

すると、

シュッ!

巨樹の枝より一本の弦が伸びると、

女性の股間へと伸び、

『あんっ』

女性の体内へと挿入される。

そして、

『あぁぁんん』

女性は甘い声を上げながら身悶えると、

ムリッ!

見る見る乳房が膨らみを増し、

ウェストもキュッと引き締まった。

さらにヒップも大きさを増し、

その白い肌がほんのりと紅潮してくる。

「なっなんだ、

 こいつ…」

見る見る色気を増してくる女性の姿に俺は2・3歩引き下がると、

ザンッ

俺の後ろにいた信義が惹かれるように前へと進み出た。

「おいっ、

 信義っ

 何所に行くんだ、

 そっちは…」

巨樹の根の上に腰を落とし、

そして、脚をM字に開いて手招きをする女性のところに向かおうとする

信義を引きとめようと俺は手を引くが、

ハァハァ

ハァハァ

鼻から荒い息をする信義は

ドンッ!

俺を突き飛ばして振り切ると、

シャツを脱ぎ、

ズボンを脱いで裸になると、

手招く女性に襲い掛かった。



『あんっ』

『あんっ』

『あんっ』

甘い香りを振りまく巨木の下、

女性の甘美な喘ぎ声と、

ハッハッハッ

まるで憑かれたかのように腰を振る信義の鼻息が響き渡る。

そんな二人の様子を俺はただ眺めていると、

サラララ…

巨樹の枝に咲いていた花が散り始め、

ムワッ

同時に甘い香りが腐臭へと変わっていく。

「うっ、

 この臭いは…」

昨日ここで嗅いだその臭いに俺は逃げ出そうとすると、

『あぁ…

 あぁぁん、

 いっちゃうっ』

と女が声をあげ、

そして、

ビシッ!

女の顔に縦にヒビが入った。

「え?」

白い顔に走った黒いヒビに俺は驚いていると、

「うぅぅっ

 あぁぁぁ!!!」

ついに限界に達したのか、

信義がうめき声を上げながら、

ビクビクビク!!

その腰を小刻みに震えさせた。

と同時に、

『あおっ

 おぉぉぉぉっ』

女は目を剥き、

身体を激しく震わせると、

ビシビシビシッ

顔に入ったヒビが全身を回り、

そして、

バクッ!

一気に引き裂けると、

ブワァァァァァ!!!

体の中より白い綿毛にを付けた茶褐色の種を撒き散らすように飛ばし始めた。

「種…」

俺の頭を飛び越え、

そして、島の周りを渦巻く霧の中へと消えていく種を呆然と見詰めていると、

ドサッ!

人が倒れる音が響き。

「!!っ」

その音に俺は振り返ると、

巨樹の根元に全裸の信義が倒れ、

彼の横には白い物体がクシャッと潰れた姿で落ちていた。

「これって…

 昨日真一が…」

そう、昨日、

行方不明になった真一を発見したときと全く同じ構図に、

俺は思わず震え上がると、

信義をそのままにして一目散にクルーザーへと逃げ帰ってしまった。



「クソッ

 動けっ

 動けよっ」

戻った途端、

クルーザーの操舵室で俺は島からの脱出を試みるが、

だが、

ゴゴゴゴゴッ

座礁をしているクルーザーはエンジンの唸り声と

メリメリメリ!

船体のきしむ音を上げるだけで、

ビクともしなかった。

だが、

「動け、

 動け、

 動け」

こんな島からスグにでも逃げ出したかった俺は、

幾度も幾度もエンジンを起動していると、

メリッ

メリメリメリ!

船体に入った亀裂が広がったのか、

クルーザーが徐々に傾き始めた。

そして、

ボンッ!

エンジン室から爆発音が響くと、

火災が発生したのか、

煙が操舵室へと流れ込んでくる。

「ちくしょう!!!!」

俺は涙を流しながら操舵室から飛び出し、

そして、岩伝いに島の海岸に避難すると、

ドゴォォン!

程なくしてクルーザーは煙を噴き上げながら、

海の中へを没してしまった。

もはや、ここから逃げる手立てなかった。



翌朝、

一種も出来ずにいた俺の背後からあの甘い匂いが漂ってきた。

「!」

その匂いに俺は振り返ると、

『うふっ、

 迎えに来たよ』

深緑の髪を長く伸ばし、

白い肌を朝日に輝かせる女性が俺の背後に立ち、

俺に声をかけてきた。

「信義か?」

女性に向かって俺は尋ねると、

『うふふっ

 今度は武雄の番だよ』

女性はそう告げると、

俺の手を引き、

あの巨樹の所へと連れて行く。

昨日と同じ満開の巨樹の根の上、

伸びてきた弦が女性の股間に挿入されると、

『あはんっ』

女性は身悶えながら、

妖艶な色気を放つ女へと変身してゆく、

そう、まるで大輪の花を咲かせるように…



甘い匂いがきつくなってきた。

だが昨日のような不快感はない。

トクン…

知らずに俺の心臓は高鳴り、

股間も熱く、

猛々しく硬くなってきた。

『さぁ、いらしてぇ』

女は根の上に寝そべり、

脚をM字に開脚してみせると俺を招く。

もぅ抗することは出来ない。

俺は汗臭いシャツを脱ぎ、

ズボンに手を掛けた。


肌と肌が重なり合い。

そして、俺の耳を女の喘ぎ声が響く。

ハッハッハッ

俺は腰を振りながら巨樹を見上げ、

そして、

「おまえ…

 昔からこんなことをしてきたのか

 種はお前の種なのか?」

と尋ねた。

すると、

ザワッ

樹は数かに枝をざわめかせて見せる。

「畜生っ」

それを見た俺は悔しさに歯を食いしばりながら、

腰を振り、

そして、

「くぅぅぅぅぅ」

増してくる締め付けを感じながら、

己の精を女の中に放った。

「あぁ…」

体中から精を搾り取られ、

そして、ジワジワと得体の知れないものが、

体の奥から根を張っていくのを感じながら、

俺は目の前を飛んでいく綿帽子を眺め、

『信義ぃ、

 お前も…』

そう呟きながら気を失った。



あれからどれくらい時間がたったのだろうか、

海岸を埋め尽くす樹の上で俺は霧が覆う海面を見ていた。

サラッ…

たまに吹いてくる風に

深緑色をした長く伸びた髪が微かに揺れると、

ピクッ

小さく膨らんだ胸のバストがゆれた。

『男が来る…』

風の匂いに乗って来たその匂いに

俺の身体は敏感に反応すると、

フワァァァ

このときを待っていたかのように甘い匂いを放ち始めた。

そう、いまの俺は南海の小島で咲き誇るのを待つ小さな蕾。

そして、その蕾を大きく開かせるのは…



おわり