風祭文庫・異形変身の館






「彼の秘密」


作・風祭玲

Vol.710





うわぁぁぁぁっ…!!

その瞬間、

一斉に客席から歓声が沸き起こり、

吹雪のごとく桟敷席の座布団が舞い踊る。

ハァハァ

響き渡る歓声をバックに

荒い息をし続ける小兵力士・雅乃華の前では、

優勝を大手をかけていた大関が無惨に突っ伏していた。

「勝った…」

全身から滝のような汗を流し雅乃華は、

勝ち名乗りを受けながら勝利を実感していると、

ムクリ

倒された大関はゆっくりと起き上がり、

ジロッ

雅乃華を一目見るなり、

「やりやがって…」

と悔しそうに一言残して土俵から降りて行った。



「あはは…

 勝っちゃった…

 あの大関に勝っちゃった」

TV局のインタビューを受けるため、

花道を歩く雅乃華は幾度もそう呟く、

身長は175cmそこそこ、

体重は100kg行くか行かないかの、

そっぽ型の力士があのブルドーザーを思わせる、

巨漢の大関を相手に大相撲の末、白星をあげた。

まさに夢のようなこの出来事に、

「よっよしっ」

雅乃華は改めて気合を入れようとした時、

ムクリッ

廻しの中で何かが大きく動いた。

「!!っ」

それに雅乃華がすぐに気づくと、

ギュッ!

廻しを引き上げ、

「だめっ

 まだじっとしてて」

と小声で声をかけるが

ムリン!

ムリン!

この声に反発するようにして股間がまた動くと、

「もぅちょっとしたら出してあげるから、

 だから我慢しててよ」

とやや命令調に言い聞かせようとする。

ところが、

ムリムリムリ!!

さらに股間が反発をしようとしているのか、

その身を硬く、

そして長く伸ばし始めた。

「!!っ

 いい加減に…」

それに気がついた雅乃華が

怒鳴りながら股間を叩こうとしたとき、

カッ!

『おめでとうございます』

その行為に待ったをかけるかのように、

スポットライトが浴びせられ、

マイクが差し出された。

「え?

 あっ

 いえっ、

 どっどうも…」

まだ少し乱れた息をしながら、

雅乃華は向けられたカメラに向かって頭を下げる。



インタビューを終えた雅乃華が支度部屋に戻ると、

ムリムリムリ!

再び廻しの中が激しく蠢き始めた。

「もぅ、わかったよ」

ついに折れたのか蠢きまくる股間に向かって

雅乃華はそういうと、

床山の手入れも程ほどに、

廻しを締めたままシャワールームへと飛び込むと、

ズルッ!!

腰に締めている廻しを解きはじめた。

バラバラ…

バサッ!

解かれた廻しが床に落ち、

ビンッ!

そっぽ型ながらも

筋肉隆々の雅乃華の股間より

身を硬くしたイチモツが元気良く持ち上がる。

そして、それを見下ろしながら雅乃華は

シュッシュッ

軽く扱きながら、

「・・・・・・・」

なにやら呪文のような言葉を呟くと、

ビクビクビク!!!

そのイチモツは独りでに激しく揺れ始め、

グリグリ

グリグリ

と、まるで雅乃華の体から抜けようとしているかのように、

その体を左右にひねっていく、

そして、

ポロッ…

ついに雅乃華の体から外れてしまうと、

ビチャンッ!

イチモツは床の上に落ちてしまった。

だが、

床に落ちたイチモツはそれで終わりではなく、

プルプルと震え出すと、

次第にその大きさを大きくさせ、

さらに、

ニュッ!

ニュニュッ!

外れたばかりの付け根の部分より、

二本の肉槐が伸びてくると、

その肉塊は長く、太くなり始めた。

そして、伸びていくにつれ

その肉塊は次第に二本の脚へと形を作り、

グニュッ!

伸びた脚が膝の辺りから折れ曲がると、

グリンッ!

大きく回転して、

イチモツは脚を下にZ字型をした

ひれ伏し正座をする形へと向きを変える。

さらにひれ伏したイチモツの頭部、

ツルリと剥けている亀頭が起き上がり始めると、

胴体部分がくびれ出し、腰とお尻を作り出し出す。

また、しわまみれの袋と共に

その中に入っていた二つの玉は縮みながら形を整えると、

柔らかなふくらみへと変化し、

その両脇から伸びた肉槐は細長い両腕に変化してゆく。

こうして体を形作っている間に

逞しくいきり立ったままの亀頭は

その高ぶりのまま縮み出し、

付け根が細く、

張り出していたエラは急速に消え、

そして、ピンッと張っていた裏筋を切るように

横一文字の口が開くと、

切れた裏筋は盛り上がって鼻へと姿を変えると、

さらに顔の各部分が削りだされ、

また、ツルリとした肌から髪が伸びていった。

そして最後に

カッ

閉じていた目が大きく見開かれると、

ジロッ!

前に立つ雅乃華を見つめた。

「ごっごめんね、

 華乃…」

その途端、

シャワールームに男ならぬ少女の声が響き渡ると、

「もぅっ、

 雅っ

 いつまであたしをくっさい廻しの中に押し込めているのよ、

 一番が終わったらさっさと出してくれる約束じゃなかったの?」

イチモツから変身した少女は雅乃華に詰め寄った。

ところが、

「ちょちょと落ちついて、

 とても勝てるとは思っていなかった大関に勝っちゃったから、

 つい、感傷にふけってしまったのよ、

 別にいじめるとかそんなつもりはなかったのよ」

と再び少女のわびる声が響くと、

「もぅ知らない!

 お相撲は雅ちゃん一人で取ればいいのよ」

とイチモツから変身した少女の声が響いた。

そのとき、

ガタン…

シャワールームの外から物音が響くと、

ハッ!

ハッ!

シャワールームの中に居る背格好の同じ二人の少女は振り返ると、

「とっとにかく、

 華乃ちゃん、また合体しましょう

 こんな姿を見られたくないし」

と大銀杏を頭に結う少女が提案した。

「うっうん」

その言葉に華乃と呼ばれた少女はうなづくと、

下に落ちた廻しを拾い上げる。

すると、

「ちょっとぉ、

 なんで、華乃ちゃんが

 あたしの廻しを持つのよ」

と大銀杏の少女が指摘すると、

「なっ、何を言っているのよっ

 今度は雅ちゃんがオチンチンになる番よ」

と華乃は言い返す。

「なにを言うのよ、

 今日はあたしが土俵に上る日よ、

 華乃ちゃんは一日オチンチンでいる日なのよ」

負けじと雅も言い返す。

再び二人が喧嘩状態になるが、

「!」

雅があることに気づくと、

「そんなことを言っても、

 いま大銀杏を結っているのはあたしよっ、

 何も結っていない華乃ちゃんが出て行けるわけないでしょう?」

と指摘をした。

「うっ」

雅のその一言に華乃は言葉に詰まると、

「わかったわよっ

 その代わり、

 明日、覚えていらっしゃいよ」

と言い残すと、

ペタン!

とその場に座り、

雅に向けて背を向けると、

「さぁどうぞ!」

と誘いをかける、

「うふっ」

そんな華乃を見下ろしながら雅は小さく笑うと、

背を向ける華乃に覆いかぶさり、

「・・・・・・」

小さく呪文を詠唱した。

すると、

ニュルンッ

シュルシュルシュル

雅の局所から白い繊維状の物体が幾本も延びていくと、

華乃の局所の中へと潜り込んでいく。

その瞬間、

「あっ(ビクッ)」

華乃が小さく声を上げると、

メリメリメリ!

伸びていた手足が体の中へと引き込まれ、

括れをもった体も徐々に萎縮してゆく、

そして、萎縮してゆく華乃から養分をすいとっているかのように

雅の体は徐々に膨れ、

筋骨逞しくなっていく。

そして、

グプププ…

ニュルンッ!、

顔も失った華乃がイチモツとなり、

ツルリとした亀頭を晒したとき、

「ふぅぅぅぅ」

そこには一人の力士・雅乃華が膝を付いた姿で腰を下ろしていた。




「まったく、

 お母さん、電話でカンカンだったぞ、

 こんな姿で力士にするために育てたことはなかったてな」

支度部屋に戻ってきた雅乃華に待っていた親方が話しかけてきた。

「お父さん…」

親方を見た途端、雅乃華の口がその言葉が漏れると、

「おいっ、

 ここでは親方だ」

と親方は注意し、

「とにかく今日はがんばったな」

と今日の一番を褒め称えながら雅乃華の肩を叩くと、

「あのね、親方。

 あたしだって本当はイヤなのよ、

 でも、あたしたち姉妹がこうして力士やって、

 部屋を盛り立てないと廃れちゃうでしょう?」

雅乃華は顔を赤らめながら言い、

「はぁ、

 まさか、

 こんな姿でお相撲さんになっちゃうなんて思ってもいなかったわ、

 ねぇ、華乃ちゃん?」

と股間に下がるイチモツとなってしまった双子の妹に話しかけていた。




おわり