風祭文庫・異形変身の館






「ママ」
(前編)


作・風祭玲

Vol.487





はじめに…

このお話は"らんおう”さんより提供して頂いたネタを使用して書き上げました。
ネタを提供して頂いた”らんおう”さんに感謝致します。

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「じゃぁ、ここで」

「うん、楽しかったわ」

夜の帳が降りた住宅地の角であたし達は立ち止まると、

周囲に人影がないことを確かめ会うと、お互いに抱き合った。

「真奈美…」

「敦君」

時間にして10分くらいお互いに抱き合った後、

キスをしようと唇を寄せた。

すると、

ゴホン!!

突然、咳払いの声が響き渡ると、

キィ…

キィ…

懐中電灯を片手に自転車を漕ぐ警察官があたし達の横を無言で通り過ぎていった。

「もぅ!!

 でっかくのシチュエーションが台無しじゃない」

と文句を言って

去っていく警察官の後ろ姿を見ながらあたしは舌を出すと、

「あはは」

敦君は軽く笑い、

「キスはまた今度な」

と言ってあたしの肩を叩いた。

「うっうん」

敦のその言葉にあたしは仕方がなく頷くと、

「ごめんね、

 あたしんち、門限がきつくて…」
 
と謝った。
 
しかし、敦は

「いいよ、いいよ

 そんなこと気にするなって、
 
 それよりも時間大丈夫か?」

と腕時計を見ながらあたしの門限の時間が迫っていることを指摘すると、

「あっ

 ごめん!!
 
 こんど、この穴埋めはするからね」

制服を翻してあたしは駆け出すと、

次第に小さくなっていく敦に向かってそう言った。



あたしの名前は津坂真奈美…

都心の高校へ通う18歳・高校3年生。

彼である敦と学校帰り、渋谷で遊んで帰ってきたところである。

「ただいまぁ」

玄関のドアが開けるのと同時にあたしは声を張り上げると、

「真奈美っ

 こんな遅くまで何処に行っていたの?」

とママが玄関先に飛び出してくるなりあたしに注意をした。

「どこって、

 友達のところよ」

注意するママに靴を脱ぎながらそう返事をすると、

「その友達って、

 男の人ではないでしょうねぇ」

ママは鋭い視線であたしを見据えながら尋ねると、

「学校の友達よ、

 と・も・だ・ち

 女の子に決まっているでしょう?」

とあたしは言った。

無論、嘘である。

「そう?

 それなら、良いんだけど、
 
 でも、真奈美
 
 最近、ちょっと遅いわよ、
 
 友達と遊ぶのも良いけど、
 
 もぅ少し早く帰ってくるのよ」

あたしの返事にママはそう言い残して台所へと戻っていく、

そして、

「ご飯は?」

とあたしに夕食を取ったのか聞いてくると、

「友達と食べてきたから要らない!!」

あたしはそう返事をしながら自分の部屋へと入っていった。



「まったく、五月蠅いんだから…」

部屋に戻ったあたしはそんな文句を言いながら、

チャッ

携帯電話を開くと表示された電話番号帳よりある電話番号を選択すると、

ピッ

ボタンを押し、ベッドの上に腹這いになりながら、今日のデートの状況を親友の桂子に報告し始めた。

「そーなのよ」

「へぇぇ…」

「うんっ判った、

 じゃぁ、明日また学校で」

桂子と話をしているときふと眠気を覚えたあたしは約1時間ほどの通話で電話を切ると、

「さて、お風呂にはいるか」

と背伸びをした後、テキパキを支度をしてバスルームへと向かう。

そして、バスルームのドアを開けようとしたとき、

「あぁ、真奈美…

 今日は寒いからこれをお風呂に入れなさい」

ママがひょいと顔を出すと、

そう言いながら紙包みをあたしに手渡した。

「なにこれ?」

黒蛇堂…と書かれているその紙包みをあたしはシゲシゲと眺めると、

「冷え性に効くんだって」

とママはあたしに言う、

「へぇぇ…そうなの?」

ママの説明にあたしは感心しながらバスルームへ入り、

そして、サラサラとその紙袋の中身を入れると、

フワリ

花の香りのようなそのような香りにバスルームが包まれていった。

「はぁ

 なんか気持ちいい…」

その香りに包まれながらあたしは湯船に身を沈めた。



カチッ!

ピピピピピピピピピピピ!!!!

翌日の朝、あたしの耳元で目覚し時計のベルが響き渡る。

――ん、もう、もう少し寝たかったのにぃ。

朦朧とした意識の中であたしはそんな文句を言いながら、

無意識に手を伸ばし目覚し時計のスイッチを押そうとしたが、

ところが、

――あっあれ?

  おかしいな、手が動かない…

あたしは腕を伸ばそうと力を入れるが、

しかし、それに応えて動くものは無く、

――ちょちょっと

  どうしたの?

あたしは意味もわからずに布団の中でもがいていた。

――なんか、変…

動かない腕にあたしは違和感を感じながらもさらに力を入ようとするが、

あたしは腕を動かすのはどうすればいいのか、判らなくなっていた。

いや、と言うよりそもそも腕の感覚が無いのだ。

――え?

  え?
  
  どうしたの?

全く感覚のない腕にあたしは慌てて自分の体の状態を確かめようとした。

ところが、

――見えない…

今度は起きているはずなのにあたしの目は開かず、

それどころか足も感覚が無く動かすことが出来なくなり、

そして、首もまったく回らなかった。

――いっ一体…あたし…どうししゃったの?

  まさか、変な病気にかかって体が麻痺してしまったの?

雑誌などにたまに掲載される難病のことが脳裏に横切るとあたしをさらに慌てさせる。

――いや、いや

  誰か助けてぇ
  
  そんな、一生寝たきりだなんてイヤよ!!

動かない口に開かない目、

そして、寝返りすら出来なくなってしまった状態にあたしはパニックになったとき、

ムリッ!!

突然あたしの体の中に何かが溜まり始めると、

ムリムリムリムリ!!

見る見るあたしの体は膨れながら伸び始めた。

――え?

  え?
  
  今度はなに?

  何が起きたの?
 
状況がさっぱりの見込めずあたしは困惑していると、

ズズズズズ…

あたしの体はさらに膨れ、

そして、それに合わて首の後ろ動き出すと

シーツと擦れ、それは快感となってあたしを襲い始めた。



――あっ(びくっ!)

  あぁ…
  
  かっ感じちゃうぅ
  
  なになんで…
  
  ただシーツと擦れているだけなのに
  
  こんなに感じちゃうの?

ゾクゾクと悪寒のような快感があたしの首筋から発せられ、

そして、その快感があたしの体の中を駆けめぐる中

あたしはプルプルと震えていた。

しかし、膨れていくにつれあたしの体は剃りはじめると、固くなっていった。

そして、ついにあたしは背中から頭のてっぺんまでピンっと反り返ってしまったまま、

まったく動かなくなってしまった。



――いっ一体どうなってるのよ!!

私は思いっきり叫んだがしかし声は響かなかった。

と、そのとき、

「真奈美ー?」

廊下からママの声が響いた。

――あっ、

  ママが…

そう、あたしの頭元では相変わらず目覚まし時計が鳴り続けていた。

「いつまで寝ているの真奈美?

 もう、目覚まし時計鳴らしっぱなしよ!!」

半ばあきれ気味ママの言葉が響くと、

ガチャッ!!

あたしの部屋のドアが開かれ、

ピピピピ…カチッ!

けたたましく鳴り続けていた目覚し時計のベルの音がピタリと止んだ。

どうやらママが部屋に入ってスイッチを切ったらしい。



――まっママ…

ママの声にあたしはこの状況をどうにかして欲しくて必死に呼びかけようとしたけど

でも、相変わらず声は出ない。

すると、

「もう、この子ったらいつまで寝てるの?

 学校に遅刻するでしょう!!!」

目覚ましを止めてもなかなか起きないあたしにママはしびれを切らしながら、

バッ!!

と布団がめくられると、

「……ひっ!?

 きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

一瞬の間をおいてママが悲鳴が悲鳴を上げた。

――え?

  きゃぁぁぁって…

あたしは部屋に響き渡ったママに悲鳴に驚くと、

「あ、あなたぁーっ!」

追ってパパを呼ぶママの叫び声が家中に響き渡った。



――ちょ、ちょっと、ママ、どうしたの?

  そんなに驚いて、
  
  ねぇ、
  
  一体あたしどうなっちゃったの?

響いたママの悲鳴にあたしは思いっきりそう叫ぶと、

「ま、真奈美?

 どっ何処にいるの?」

とママはあたしの声に応えた。

私の言葉は依然として声にはならなかったどどういう訳かママには通じたらしい。

――まっママ!!

  あたしの声聞こえるの?

「えぇ、聞こえるわ、

 まっ真奈美、あなた、いま何処にいるのよ、
 
 それにあなたのベッドに居るこれって何なの?」
 
ママはどうやらあたしが見えないみたいで必死に見えないあたしに呼びかける。

――いっいるわよ、

  ベッドの上に…
  
  あたし、ベッドの上で寝ているのよ。

ママの呼びかけにあたしは必死でそう答えると、

「ベッドの上って、

 え?
 
 そ、そんな……
 
 こっこれが真奈美、あなたなの?」

――そっそうよ、あたしよ、

  ベッドに居るのは正真正銘の三枝真奈美よ。

とあたしが叫ぶと、その途端ママの声が途切れた。

――まっママ?

  ねぇ、
  
  あたし、一体どうなっているの?

ママの声が途切れたことにあたしは不安を感じながらママに話しかけるが、

でも、いくらママを呼んでもママは応えてくれなかった。

――ママ?

  ねぇ、
  
  応えて、あたしどうなっているの?

返事がないママにあたしは幾度も尋ねると、

「そんな

 そんな…」

息遣いで分かるくらいママは震え、

そして、小さく聞こえてくる声には絶望を感じさせるものがあった。

――ママ…

そんなとき、

「どうした、芳美、

 大声を上げて」

と言う声と共にパパがあたしの部屋に入ってきた。

――パパ!!

ドタタタ!!

「あっあなた!!

 大変なのよ、
 
 真奈美がぁ
 
 真奈美がぁ!!」

パパに向かってあたしが話しかけるのと同時に、

ママはパパに向かって走り、

そして、必死な声で訴えた。

「なんだ、芳美、

 そんなに血相を変えて、
 
 真奈美がどうしたって言うんだ」

必死で訴えるママにパパはそう制すると、

「いっいいから、

 真奈美を見て、
 
 たっ大変なのよ!!!」

とママは状況がつかめないパパに向かって叫んだ。

「真奈美がどうしたって?」

ママの声にパパは文句を言いながらあたしのベッドに近づいてくる、

そして、

「真奈美っ

 いつまで寝て居るんだ!!」

と声を掛けてきたとき、

「うっうわっ、

 何だ、これは?」

パパはいきなり驚きの声を上げると、

ドタン!!

尻餅を突いたような音が追って響き渡った。

――ぱっパパ…

  何よ、一体何だって言うの?
  
  あたしの身体どうなってるの?

  パパにママ、
  
  教えて、あたしどうなっちゃったの?

不安がどんどん大きくなっていく中、

あたしは叫ぶようにママとパパに問い掛けた。


すると、

この声もパパに届いたのか、

「ま、真奈美か?

 真奈美ぃ、
 
 お前
 
 いまどこに……」

パパはあたしを捜すような声を上げると、

「あ、あなたぁ、

 そっそれ
 
 ま、真奈美ですよ、こっこんな姿に……」

と必死であたしを探すパパにママが震える声で

いまベッドにいるのがあたしであると言おうとしたその時、

「どうしたの?

 母さんに父さん、大騒ぎをして…」

あたしと5つ違いで今年中学生になったばかりの弟・陽一の声が響いた。

「あっ

 よっ陽一ぃ
 
 たっ大変、
 
 真奈美が、おっお姉ちゃんがぁ」

弟の声にママは床を這いずるような音を上げて叫ぶと、

「ちょちょっと、

 お母さんどうしたの?

 お姉ちゃんに何かあったの?」

ママのあわてふためく姿に弟は呆れるような声を上げてあたしが寝ているベッドへと近づいてきた。

そして、

「お姉ちゃん、

 その年で寝小便でもしたの?」

とからかうように声を掛けてくると、

「え?…

 うっうわぁぁぁぁぁ!!!
 
 何だこれ!!
 
 すっげぇ、
 
 でっけえチンコ!」

と突然驚くような大声で叫んだ。

――え、ちっチンコ?

  チンコっておっ男の人のオチンチンのこと?
  
  ええー!

  あたしが、あたしがそのオチンチンになっているっていうの……?

  ね、ねえ。

  それ、本当?

  ねぇ本当なの?

弟の叫び声を聞いたあたしはそう問いただすと、

「あ、あれ、

 姉ちゃんの声がするよ…」

と弟は再び驚きの声を上げ、

「ほ、本当にお前…真奈美なのか?」

あたしの声を聞いて気持ちを落ち着かせたのか、

さっきとは落ち着きを取り戻した口調のパパがベッド上のあたしに向かってそういいながら

さわっ

っと私の背中に誰かの手が触れた。

――ひぁ!

その瞬間、あたしの体全身をしびれるような感覚が走った。

そう、まるで電気が流れるような…

でも、これってすごく…

――気持ちイィィ。

あたしは駆け抜けていった快感に反応するようにして身体を仰け反らせてしまった。

どうやら全身が快感に痙攣を起こしてるみたい。

「き、気持ちいいって

 真奈美…あなた…」

ママの声が震えている。

今のあたしの声が聞こえちゃったみたい。

「そ、そんなぁ、これが真奈美だなんて…

 あ、あなた、どうしましょう」

「い、医者に……」

「でも、こんな姿で、

 どうやってお医者様に…

 これが娘だって、真奈美だってどうやって説明をするの?」

「そっそれはだ、

 とっとにかくそう説明するしかあるまい。
 
 現に真奈美はこんな姿になってしまっているんだ!」

「でも!!」

「俺だって、どうしたら良いんだか判らないんだよ」

と言う具合に二人はあたしの脇で言い争いを始め出し、

最初はあたしの体についてことだったが、次第に

「あなた、

 あたながしっかりとしてくれないから真奈美がこんな姿になってしまうんですよ」

「おっ俺の責任かよ

 それを言うならお前こそカルチャースクールとかナンダカンダ言って
 
 家を留守にしているではないか。

 真奈美がこんな姿になったのはお前が真奈美や陽一を放っているからだろう」

と責任問題のなすりつけあいになってしまい。

その挙げ句

「と、とにかく、

 俺はいったん会社に行くから、
 
 今日はお前が真奈美の面倒を見ていてくれ」

「そんな、あなた、

 娘がこんな状態なのに……、
 
 あなたって人は……」

「どっちにしろ、こんな状態じゃどうしようもないだろう。

 今日はどうしても外せない会議があるんだ。

 それじゃ、あとは頼むぞ」

とパパは逃げるようにしてそんなことを言うと、

ドタドタドタ!!

部屋から出て行ったのか足音があたしの部屋から遠ざかって行った。

「まったく

 すぐ仕事に逃げるんだから」

そんなパパの足音にママのあきれたような声が追って響くと、

「お母さん、

 ぼ、僕もここに……、いるよ」

ジッとあたしを見ていたらしい弟がそうママに言うと、

「いいわ、あなたは学校に行きなさい。

 後は、ママが何とかするから」

とママは弟に中学へ行くように促した。

「で、でも」

ママの言葉に対する弟・陽一の声は不安そうだったが、

「あなたがいてもどうしようもないでしょう、

 さぁ、さっさと支度をしなさい」

とママが再度促すと、

「う、うん」

 ねえ、おねぇちゃん、元に戻るかな?」

弟は不安そうにそう尋ねた。

「判らないけど、

 でも、大丈夫よきっと
 
 あっ、お姉ちゃんのことは他の人に言ってはダメよ、
 
 こんなこと人に知れ渡ったら、大変なことになるから」

と弟の言葉にママは頷き、そして釘を刺した。

無論、あたしだってそうでなきゃ困る。

「じゃぁ行ってきまーす」

やがてその声を残して弟は中学へと登校し、

部屋にはママとあたしが二人っきりになってしまった。



――あ、

その頃になって少しずつあたしの目の前が明るくなってきた。

目が見えるようになったのかな…と思ったがどうも少し違う。

よくは分からないんだけど、

目じゃなくて体中の他の別の感覚が敏感になってるみたい。

それで感じ取ったモノが頭の中に目で見たのと同じ部屋の中の光景を

頭の中に浮かびあがらせているようなそんな感じ。

前も後ろもない、狭い範囲でしか見えないけど、

でも、自分の周りの状況が手に取るように分かった。

目が見えなくなると耳とか鼻とか他の感覚が敏感になる。

っていうけど私の場合もそうみたい。

――はぁ…

視界が開けたことにあたしは思わず安堵すると、

スグに自分の体のことが気になった。

パパとママは言葉を濁していたけど

でも陽一ははっきりとあたしをチンコって言っていた。

チンコ…

男のアレ…

パパと陽一のは見たことがあるけど、

でも、その姿は全然違っていた。

陽一のはどこかかわいらしさがあったけど、

パパのは怖いと言うか気持ち悪いと言うか…

でも、それを言ったら敦にも同じのが付いているんだよね。

そして、そのチンコがあたしの中に入ってきて…赤ちゃんを…

そう思ったとき、

かぁぁぁ!!

あたしの顔が真っ赤になると、

ググググググ!!!

萎み掛けていたあたしの体が膨張を始めだした。

――あ、

  ダメダメダメ!!

膨張をする体にあたしは驚き、

そして、頭の中に浮かんだモノを必死でかき消した。

そのとき、何処にあるのか判らないけど

トロ…

あたしの口から暖かい滴がゆっくりと流れ落ちた。

やがて、体が落ち着いてくると、

あっあたし…

本当にオチンチンになっちゃったのかなぁ…

そして、じっと天井を見据えながら、

男の人チンコの感覚って触覚くらいしかないと思っていたけど、

その辺はどうなんだろう。

こうして見えるってことは何か超能力みたいな物なのかな。

と思いながら

グルリ…

あたしは自分の周囲の状況を確かめた

どうやら私の置かれているのは私の部屋のベッドの上だった。

そして、ベッドのその横には涙で目を真っ赤にしたママの顔があった。



――ママ。



あたしはママに呼びかけた。

「ま、真奈美」

――ねえ、あたしいまどんな姿になってるの?

「そ、それは……」

ママが口篭もる。

――大きな、その、男の人のおオチンチンになってるって本当。

あたしのその言葉にママが悲しそうな顔で黙って肯いた。

――ねぇママお願いがあるの、

  あたし自分の姿を確かめたいの。

そんなママにあたしはそう言うと、

「え、真奈美ちゃん…

 目が見えるの?」

あたしの言葉にママは驚きながら尋ねると、

――うん、目とは違うけど回りは見えるの。

  でもあたしの姿はちょっと分からない。

  ねぇ、鏡、あたしを鏡の前に
  
  鏡にあたしの姿を映して」

あたしの部屋には鏡が無い。

確かとなりのママ達の寝室に姿見があった筈だ。

「で、でも……、いいの?」

――おねがい、ママ。

ママはあたしの言葉に溜め息を吐くのと共に頷くくと、

あたしに向かって手を差し伸べた。

サワッ!!

ママの手があたしの身体を抱きかかえる。

それと同時に触れられたところからくすぐったいような快感が全身に広がっていく。

――あん。

「だ、大丈夫?」

その快感にあたしが上げた声にママが不安そうにあたしを覗き込むと、

――う、うん。

  へっ平気よ。

あたしは一瞬、頭に浮かんだ「もっとさすって欲しい」という強烈な欲求を押さえながら返事をした。

すると、

グイッ!!

視界が一気に動き、

ギュッ!!!

あたしはママに抱きかかえられるとママと一緒に隣の寝室へ入って行った。

自分のいまの姿を見るために…



つづく