風祭文庫・モラン変身の館






「大都会の勇者」
(第5話:メンテナンス)


原作・inspire(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-302





「ねえ、有美。

 今日の夕方、合コンあるんだけど参加しない?

 いい男いっぱいくるみたいよぉ」

とある夏の午後、

モナカアイスを頬張っているあたしに友人が合コンの誘いをかけてきた。

しかし、

「ごめん、

 パスする。

 夕方、用事があるから…」

その言葉にあたしは申し訳なさそうに断りの返事を言うと、

「えぇ?」

友人は困惑した表情を見せながらあたしを見る。

「どうしても外せない用事なの、

 ごめんっ!」

あたしは両手を併せて拝み込む仕草をして見せると、

「もぅ仕方がないわねっ

 でも、友人として忠告をして置くわ、

 後で後悔しても知らないわよ」

そんなあたしに向かって腕を組みながら一言友人はそう警告するが、

「えへへ…」

あたしは笑ってごまかしてみせる。



あたしの名前は石田有美。

一応、大学生。

今回合コンを断ったのは別にあたしが男嫌いとか、

そういう場が苦手とかそういう理由ではない。

「で、今度の理由はなんなの?

 しょうもない理由だったら張り倒すわよ」

断る理由を友人は尋ねると、

「実は…メンテナンスが必要になって…」

とあたしは理由を話す。

「またその理由?

 まったく、アフリカの奥地に数ヶ月行って帰ってきたときから…

 なんか、あんた付き合い悪くなったわねえ。

 まあ、いいけど…

 大体、メンテナンスって何なの?

 エステでも通っているの?」

「うーん、当たらずしも遠からず…って感じかな…

 本当にごめんね…

 メンテナンスしないと調子が出なくて…」

「まあ、いいわ…。

 どこのエステに通っているのか、なんてことまで聞かないわ。

 さて、そろそろ時間だからあたしも行かないと…」

「そう…じゃあ、また明日ね」

そう言って友人は去っていくと

「あたしも時間だわ」

時計の針を横目にあたしも腰を上げ、

友人達と違う方向に歩いて行く。



大学を出て約1時間…

電車やバスを乗り継いで、

とある埠頭にある謎の倉庫そこにあたしは来ていた。

「ふぅ…」

倉庫の前であたしは大きく息を継いでいると、

ドア前に立っていたスーツ姿の男があたしに気づき、

スッと近寄ってくる。

そして、

「石田有美様ですね。

 お待ちしておりました」

と言うと男はドアに手を掛けそれを開けて見せ、

開かれたドアの奥はまるで劇場か何かの廊下になっていた。

「ありがとう」

男に向かってあたしは礼を言うとそのまま廊下を進み、

「出演者控え室その5」

と書かれたドアを開けて入って行く。

部屋の中に誰もいないことを確認したあたしは、

すかさずドアに鍵をかけると、

自分の着ている服を脱ぎ、全裸になる。

そして、あたしは自分の後頭部と背中に手を滑らすようにかける…

その途端、なぜかあたしの顔の皮が

グシャッと潰れ、

見る見るあたしの皮が体ははがれてしまうと、

まるで人の顔とか、体の部分が付いた全身タイツのようになる。

その一方で剥けていた部分からは黒い肌が顔を出し、

白い部分がなくなっていると共に黒く筋肉質な肌、

そして男性の持っているシンボル…

さらには野生部族の屈強な男の顔が現れた。



姿を見せた漆黒の肌を晒す屈強な男はため息をつきつつ、

剥ぎ取った皮を特殊な液体で満たされたバスタブの中に漬け込んでみせる。

この男、実はあたしなのだ…

あたしはアフリカの奥地を旅したとき、

野生部族の集落に迷い込んんでしまった。

その時その村ではちょうど村でいちばん屈強な青年が原因不明の死を遂げており、

復活の儀式のため、

あたしは生け贄となり屈強な男の肉体にされてしまったのだ。

まさに青天の霹靂である。

いきなり男にされたあたしは混乱し途方に暮れたのである。

それから何週間かしてようやく村の生活にもなじみかけた頃、

あたしは村外れの奥地で、

元の体の皮が捨てられているのを発見してしまったのだ。

直ぐにそれを装着してみたところ、

見事あたしは元の姿を取り戻したのである。

それから大急ぎで村から脱走したものの、

されど所詮は皮。

2週間に1度、

皮がはがれるようになってしまい、

こうしてメンテナンスを行っていたのだ。

それに、皮の下の男の体での欲求も結構たまっていたようだったし…

あたしは黒人の部族男の体をさらけ出すと、

いきなりペニスの先を扱き出した。

シュシュシュ…

ペニスをしごく音と

「はぁはぁ、あぁ…」

自分の喘ぎ声が入り混じる…

その間にもあたしのペニスはドンドン大きくなり、

ブッシュシュシュ!!!

ついには大量の白い液を放出してしまったのであった。

こうしてオナニーが一段落すると、

あたしは控え室にあった群青色のビキニパンツを穿いた。

あたしにはもうひとつ、ここでやることがある。



「さて、本日も、この方のマッチョショーです!」

この倉庫は実は政治家や財界の大物達が密かに楽しんでいる劇場で、

めったに見ることの出来ないレアなショーが繰り広げられていた。

あたしは舞台証明が輝く舞台の上で、

黒人男になりきってさまざまなパフォーマンスを行った。、

観客の中にはおひねりを大量に入れてくれるものもあるが、

それよりもこの姿を大観衆の前にさらけだすこの快感があたしにはたまらない。

あたしの次々と出すパフォーマンスで、ショーは盛り上がりを見せた。

程なくしてショーも終わり、

特殊な液体につけていた皮を取り出すと、

あたしはまたそれを装着して女子大生の姿に戻った。

二週間に一回、

あたしの肉体と精神のメンテナンスはこうして行われている。



おわり



この作品はinspireさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。