風祭文庫・モラン変身の館






「勇者入門記」
(後編)


原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-348





俺が村で最強の男となりかけたある日、

族長が俺にこう切り出した

「祭りまでの数日間、

 ほかの村や動物たちと修行してくるがよい。

 この村だけでは飽きたらんだろう」

俺がほかの村や動物たちを倒す。

俺はその興奮に自分の証を立てずにいられなかった。

そういうと俺は村を離れ、

隣の部族の村へと向かっていく。

そこでは俺たちの村とは違う習慣はあったが、

俺たちと同じような狩を行ったり、

屈強な勇者達と戦い、

時折負けることもあったが俺はその部族の強さを吸収していくように感じた。

その隣の部族の村では閉鎖的な習慣があるせいか、

俺のような人間が戦っても歓迎されるわけでもなく、

勝ってもすぐに追い出されてしまった。

村から村へと映る途中、

野生のライオンや豹が襲い掛かることがあったが、

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

俺の雄たけびの前に相手がひるんだすきに、

うまく相手の急所をつき倒すにいたっていた。

無論、あるときは落石やがけ崩れなど、

自然の驚異も俺に立ちふさがった。

こうして俺は隣の村

そのまた隣の村、

そのまた隣の村の番長…もとい勇者達と戦い、

さまざまな試練を乗り越えて村に戻ると、

「最強の勇者・ンゴリがかえってきたぞ!」

村の男たちもみな俺のことを歓迎してくれた。

こうして、村の中では最強の勇者となった俺だったが、

自分の中では勇者ンガニのことが頭に引っかかっていた。



さて、こうして村では祭りの夜を迎えた。

その祭りは、今までの村の男たちと戦うというものだった。

さまざまなボディメイクを施した男たちを、

俺が一人で戦っていくというものだった。

格闘技の合図が鳴り響くと、

最初の男が俺に襲いかかってきた。

俺がいままで戦ってきた相手に比べれば物足りない相手で、

俺は一瞬で倒してしまった。

こんな調子で2回戦、3回戦…と続く、

そして、最後の男を倒して

最強であることを改めて再確認した俺だったが、

それだけで終わりではなかった。

「うおおおおおおおおおおおおお!」

今度は男が二人ががりで襲い掛かってきた。

しかし、俺は二人のうち一人がうまくができたときを狙い

もう一人とともに倒すという荒業をやってのけた。

人数や戦い方に関係なく、

すべての可能な組み合わせで相手をなぎ倒すと、

「そこまでじゃ!」

族長の声が響いた。

「この村最強の勇者はンゴリで決まりじゃ!」

族長の一声に男たちの完成がどよめいた。

「勇者ンゴリよ、よくやった。

 さて、お主は勇者・ンガニのことが

 気になっているのではないか?

 特別におぬしを勇者ンゴリと戦わせてやろう!

 ただし、今日はおぬしも疲れておるであろう。

 今日は休むことじゃ」

族長がそういうと、

俺は部屋で休んでいた。




−−−−−−−−−−−−−−−−−

「こんばんわ!」

U部長は族長に話しかけた。

「おぬしが来るのは待っていたぞ!

 あの勇者もとてもつよくなったわい」

族長はU部長に言った。

「そうですか、よかった」

「お主には感謝しとるぞい。

 最近、村の若者が抜け出しては

 街で悪事を働くようになったのじゃよ。

 これでは我々の村も自滅してしまう。

 そこで、伝説の勇者に目をつけ、

 強い男と戦わせることで

 男たちの目を覚まさせようとしたんじゃが、

 まさかお主が見つけてくるとわ」

「いえいえ…」

「まあ、私らと業屋と言う者との関係を取り持ってくれたのもあるし、

 お主には感謝しとるぞい」

そういうと族長はU部長をンゴリの元に案内した。

U部長はンゴリの目にアイマスクを着用させると、

ポーーーーーーッ!

村の外で蒸気を上げてカップラーメンを啜っている”黒い列車”へと運び、

「ダァ、しまりまーす」

の声と共に

シュシュシュシュ

ンゴリを乗せて列車は村を後にする。



「ん…ここは…」

俺は見たこともないような場所で起こされた。

「さあ、あんたが会いたがってる人がもうすぐ登場する」

「勇者・ンガニが俺の前に…」

「だが、その前にはこれを飲んでこれを身に着けることだ」

俺の前にはコップに入ったなんとも言いがたい液体と三角形の布だった。

その液体を全て飲み干したとき、

俺のしなやかな腕の筋肉は膨れ上がり、

胸板や腹筋もハッキリと盛り上がっていく。

さらに俺の証も布の中で大きくなっているようだった。

「なんか、力がみなぎってきた」

それだけ相手も強いのだろう。

俺は男に連れられ、

一人の人間の前にいた。

その男は自分と同じような体の屈強な青年、

しかし今の自分と同じような三角形の布を身につけていた。

「俺は勇者・ンガニ。

 勇者・ンゴリよ、

 この俺と戦ってみるか?」

カァン!

ゴングが鳴り響き、

特設リングの上で俺はンガニとの勝負が始まった。

だが、相手は俺がしようとすることをすべて読み、

俺に技をかけてくる。

尽かさず俺も相手の動きを読み仕掛けるが、

常に相手のほうが上だった。

しかし、俺は持ち前のパワーで

なんとか互角の戦いを長時間繰り広げるが、

しかし、劣勢は中々挽回できない。

「こうなったら…」

俺は持てる力を振り絞って必殺技を仕掛けたとき、

「このときを待っていた!!!!

 喰らえ、筋肉バスター!!!!」

ドォォン!

ンガニの必殺技を受けた俺はマットに沈んでいく。

やはり伝説の勇者にはかなわないということか?

「勇者ンゴリ、

 いや、辰巳美香よ。

 俺と互角の力を手に入れても、

 俺にかなうことはない」

たつみ…みか…俺は忘れていたその名前を思い出した。

「俺は勇者ンガニ、

 いや辰巳尚子と言っておこうか」

たつみ…なおこ…この名前で思い出した。

俺、いやあたしは辰巳美香、

そしてここにいるのは辰巳尚子、

そうあたしの母親だ。

あたしが生まれる前にヌバの勇者の姿にされ、

パパの力で女に戻ったけど、

勇者としての力は依然残っていたのだ。

「まったく、U部長から事情は聞いたわ。

 あたしがあなたを勇者にしないようにがんばってきたのに、

 マッチョマンになりたいだなんて。

 でも、美香ちゃんがこの力をみんなに役立ててくれるのなら、

 あたしもパパも賛成よ」

「…ママ…ごめんなさい…」

そういうとママはビキニパンツを下ろし、

巨大なおちんちんを見せると、

それをあたしの穴に押し込んだ。

あたしの中に熱いものが流れていく。

気がつけばあたしは元の中学生の女の子に戻っていた。

「おめでとう!

 辰巳美香、

 今日から勇者ンゴリ改め、

 超ムキムキマッチョマン2号に任命する!

 野生の勇者の力を持ったマッチョマン、

 それがマッチョマン2号だ!

 1号と協力して活躍してくれ!」

U部長はあたしに新たな名前を与えてくれた。

「では早速、

 二人での仕事のスケジュールも結構入ってるから、

 頑張ってくれよ!」

もうすぐ1号…由紀お姉ちゃんがバカンスから戻ってくる。

そうなったら二人で…

あたしはこれからのことに胸を膨らませながら、

ポーーーーーー

シュシュシュシュシュ!!!

大海原を渡る日本行きの汽車から朝日を眺めていた。



おわり



この作品は@wolksさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。