風祭文庫・モラン変身の館






「勇者入門記」
(前編)


原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-347





あたし、辰巳美香。

中学2年生の女の子。

だ・け・ど

3年前にママの部屋にあった人形にキスをして以来、

時々、黒人の男の人になっちゃうんだ。

ヌバ族っていうらしいんだけど、

うふっ、とっても逞しくて、

オチンチンがパパのよりも大きいの。

それでたまたま変身しちゃったところを誘拐犯に攫われちゃって、

そのときに友紀お姉ちゃん…

(「超ムキムキマッチョマン」てのに変身できるんだけど)

に助けられてから、

変身して友紀お姉ちゃんのことを手伝ってた。

だけど、あるとき

友紀お姉ちゃんにご褒美をおねだりしたら、

「そうね、

 もうちょっとマッチョマンとして1人前になったらね」

って言われちゃったの。

どうしたら一人前になれるかしら…



「どうすれば一人前のマッチョマンになれるのかな」

そんなことを考えていたとき、

Uプロデューサーに連絡があった。

彼に呼ばれて出向いてみると、

ちょうど、プロデューサーが入ってくるときに

はある映画の悪役のテーマソングが流れていたわ。

「美香、

 いや勇者・ヌブリよ、

 お前はもっと強くなりたいか?」

と尋ねられた。

Uプロデューサーはおそらくマッチョマンとして

強くなることを言っているのだと思って、

「はい」

あたしは生き生きと答えると、

「じゃあ、今すぐに変身してくれ。

 それに、

 私は今日付けで企画編成部長に昇進した。

 これからはU部長と呼んでくれ」

とあたしに言う。

「それはおめでとうございます」

そう言いながらあたしは服を脱いで、

ムンッ!

すぐに勇者ヌブリの姿になり、

穿いていたパンツに手をかけようとしたそのとき、

「おっと…

 パンツを穿く変わりにこれを装着してくれ」

とU部長はあるものを手渡した。

「これは…?」

「アイマスクというものだ」

「はぁ」

ヌプリになることとアイマスクとの関係がわからないまま、

あたしはアイマスクを装着する。

すると、何か眠くなると、

そのままあたしは倒れむように眠ってしまった。


−−−−−−−−−−−

「よし、寝たな」

ヌプリが寝入ったことを部長は確認すると、

ドンッ

自分の背後に”愛国”と書かれた駅名標を置く。

すると、

バァン!

閉じられていたドアが勢いよく開くと、

カッ!

強い光を放つ前照灯を高々と掲げた男を先頭に、

黒スーツ・黒メガネ姿の男達が一列になって入ってきた。

そして、

U部長を横に見て隊列が止まると、

「ではよろしく頼みます」

U部長は先頭の男に一枚の切符を手渡した。

【愛国⇒幸福 下車前途無効】

そう書かれてている切符に先頭の男は

パチン!

鋏を入れると。

ズイッ

勇者ヌブリの体を隊列の男達は軽々と担ぎ上げる。

すると、

男達の口で駅でよく聞くメロディベルが奏でられ、

「まもなく一番線より、

 竹島、尖閣、沖ノ鳥島経由地球東回り

 通勤快速・アフリカ行きが発車します。

 どなた様も乗り遅れないようお願いします」

と駅のアナウンスがされる。

そして、

「ダァ、しまりします」

の声が響くと、

ざっ

男達の腰の高さをロープの輪が囲み、

カッ!

先頭の男が掲げた前照灯が光ると、

「ポーーーーーー」

三番目の男が汽笛の音を奏で、

「シュシュッシュッシュッ」

五番目の男が両手で動輪が回る仕草をしてみせる。

そして、

それ以外の全員で

「ガッタンガッタンガッタン」

と声をそろえると、

隊列を組んだ男達はU部長の前を発車したのであった。

「(汽車ゴッコ…か、

  出来ればあれには加わりたくなかったが)」

勇者・ヌブリを乗せて響き渡る汽笛の音を聞きながら

U部長はそう呟くと、

シュシュシュ…

ポーーーーーー

次の列車が入線してきた。



シュシュシュシュシュ

ポーーーーーーーー

夜の街を”黒い列車”は汽笛を響かせて走り抜ける。

シュシュシュシュシュ

シュシュシュシュシュ

黒い列車は野を越え、

山を越え、

川を渡り、

谷を越え、

最終の新幹線に乗って一路西へと向かっていく、

そして、海へと躍り出た列車は、

狼藉者に不法占拠されている島では

出合え!出合え!の合図から、

風車が周り、印籠が出るまでの大立回りを演じ、

または西海に浮かぶヤギの島では

島の周囲で嫌がらせをする不審船を蹴散らしていく、

シュシュシュシュシュ

ポーーーーーーーー

愛国⇒幸福行きの”愛国列車”は

大海原の幾千もの山と谷を越え

やがて、朝日輝くアフリカへと到着したのであった。

−−−−−−−−−−−



「はずせ」

「うん?」

アイマスクをはずしたとき、

そこには見たこともない光景があたしの前に現れた。

強い日差しが照りつける中にほとんど草原しかなかった。

そして、自分と同じような屈強な男達が

獲物を追っかけて狩りをしている姿だった。

「ここは…」

あたしは”幸福”と書かれている駅名標の前に立つU部長に質問をすると、

「見ての通り、

 ここはヌバ族の村だ。

 マッチョマンになるためには、

 まずはヌバ族の完全なる特徴を

 マスターしておく必要があると思ってね。

 百日後にこの村では祭りが行われる。

 それまでにこの村での生活を体験してもらう。

 実は族長と私はわけありの仲で、

 族長もこの事実は知っている」

「私が族長だ。

 ンゴリよ、お前はこの村で生活してもらうぞ」

そう言いながらマッチョマン顔負けの肉体美を誇る族長は

あたしを村の中に案内をした。

村の中はほとんど話で聞くような原始生活だった。

日の出とともに1日は始まり、

日の入りとともにほぼ終わる。

村の男たちは動物などを狩をしながら生活していた。

族長は、あたしにこれらの生活について丁寧に説明していた。

だが、あたしは今までとは違いすぎる生活にただ戸惑うばかりだった。

ああ…こんなところに…早く帰りたい…

あたしはため息をついていた。

「あ…言い忘れていたが、

 おぬしが元に戻れる能力は封印しておいたぞい。

 まあ、修行にならんということじゃからな」

「はぁ」

あたしはこの村に来て百日間、

この姿のまま生活しなければならないのかと思うと憂鬱になる。

「そして、

 ここがおぬしの住む場所じゃ」

族長がそういいながらあたしが住む場所をさした。

いかにも原始民族が住むような、

日本で言えば縄文時代の住居を思わせるせるようなつくりだった

その後仲間たちを紹介した。

「勇者・ンガニのようになることを期待しておるぞい…」

勇者・ンガニというなぞの言葉を残し、

族長は去って行く。

あたしはすぐに仲間たちに自己紹介すると、

勇者・ンガニがどのような人物なのかたずねた。

15年以上前に突然姿を現し、

最強の力を誇ったが、

その2年後に村から姿を消してしまったという、

まさに村の中でも伝説として語り継がれていた。



日が沈むころ、

あたしは恐る恐る水面を見た。

「(これがあたしか…

  まあ、この姿には慣れてたけど)」

目の前に浮かぶのは

しなやかな四肢の筋肉と十分に張り出した胸板と割れた腹筋、

面影こそは元のあたしの顔だったけど、

なんといっても巨大なおちんちんが生えているのだ。

シュシュシュシュシュシュ…

気がついたらあたしは自分のおちんちんを激しくしごいていた

「ああん…ああん…ああん…」

ドピュ!

喘ぎ声を上げながらあたしは大量の精液を放つ、

「ついに勇者の証を立てたのか!

 お前も今日から立派な勇者である。

 勇者ンゴリよ、

 この槍を持つがよい!」

そういうと一人の男が槍を差し出した。

あたしは槍を持たされ、集落に戻っていた。

集落のかなでは何もないためか、

常にあたしは自分のおちんちんに目が言っていた

「あああん…ああん…ああん…」

あたしは何もすることがないと

常に自分のおちんちんをしごき、

射精をしていた。

それ以外のときは

もちろんヌバ族の男として狩にいそしんだり、

走ったりしていた。

だが、今まで都会で暮らしていたためか

どうもほかの男たちのようにうまくはいかない。

「なんだよ、新入り。

 せっかく伝説の勇者のことを聞いて期待していたのに!」

村の男たちはみんなあたしに対してこのような態度をとる。

だけど、常におちんちんをしごき、

精を出し続けるあたしの姿を見て、

村の男たちも放っては置けないようだ。

「勇者ンゴリよ、

 お前に戦闘というものを教えてやろう」

そういうと男はあたしをある場所に連れて行った。

その場所は村の中で何人もの男たちが集まり、

まるでレスリングや相撲のような戦いをしている場所であった。

男たちは赤茶色や黄色い泥を体に塗り、

さらにはさまざまな色の塗料、

動物の体の一部や引っこ抜いた草などを身につけている。

「さあ、お前にもほどこしてやろう!」

男たちはあたしに大量の泥を塗ったり、

戦ってる男たちと同じような体にした。

その間、あたしはさらに股間を大きくさせていた。

「さあ、戦闘だ!

 お前は勇者として、

 ここにいる男たちと戦わなければならない」

そういうと男たちはあたしに茶色いベルトのようなものを渡した。

あたしはそれを身に着けた。

同じころ同じようなベルトを身に着けた男たちが奇声を上げていた。

目の前の男たちはあたしとおなじか、

それ以上に屈強な肉体をしていた。

だが、もともと負けず嫌いだったのか、

あたしは彼らを内心打ち負かしてやろうと思っていた!

「戦闘開始!」

あたしと相手の男は激しく取っ組み合った

その間、相手と自分との激しい戦い、

そしてその間に改めて股間をおったてていること…

その戦いは互角に行われていた。

だが、間一髪のところであたしは押し倒されてしまった。

しかし、

「よくやったな…」

相手の男はあたしの力を認めてくれたようだ。

「次は俺を打ち負かせて見ろ!」

あたしはこの戦いに勝たなければならないと思った。

翌朝、あたしは男たちとともに狩に出かけた。

都会にいたころは動物園でのんびりとした動きしか見せなかった動物たちも、

この野生の世界では獰猛に激しく動いている

はじめのうちはあたしもよくわからなかったが、

動物たちの行動を見抜いて先手を打てるようになった。

「ンゴリよ、お前もだいぶ一人前になってきたな!」

村の男たちもだんだんあたしのことを認めてきた。

それから、あたしは昼間は野生動物を、

夜は村の男たちを相手に戦う日々に明け暮れていた。

その中であたしはだんだん強くなっていき、

村の中でも一目おかれる存在となった。

だが、同時にあたしは都会にいたころのさまざまな記憶を忘れていき、

ついには自分の名前まで忘れてしまったのだ。

俺は勇者ンゴリ、

あと25日後の祭りが楽しみだ。



つづく



この作品は@wolksさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。