風祭文庫・モラン変身の館






「四年間」
(最終話:四年目の決断)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-238





「そうか…

 そんなことがあったのか…

 …やっぱり4年は長かったんだ」

英美の口から出てくる衝撃の事実に僕は驚き、

さっきまでの勢いはどこかに消えていた。

あの毛皮の男の小屋の中でディンガの少年に変身をした英美。

変身していく英美を見届けたあの長の手によって

性の目覚めも…

思春期もディンガとして体験することになった英美。

いくら12年間、日本人の女の子として生きてきていたとはいえ、

ディンガの男として生きてきた4年間は

あまりにも大きかったことを僕は知ったのであった。

ディンガとなった英美は精通やオナニーどころか、

幼馴染とのセックスまで済ませ、

ディンガではもう大人扱いまでされているのだ。

もはや、日本人の女の子に戻ることなんて考えてもみなかったのだろう。

「まだ……

 ディンガになって半年くらいなら、

 元に戻れたかもしれない……

 けど、あたしの中でナンの魂が……

 ううん、あたしの魂がナンとなってしまった以上、

 もぅディンガ以外の生活なんて…考えられないのよ」

無言の僕に向かって英美は俯きながら英美は話す。

「あたしの魂って……」

英美の言葉の意味を僕は問い尋ねると、

「あたしはナン。

 生まれ付いてのディンガのナンなの。

 英美としての12年間の記憶はある…けど、

 でも、ナンとしての昔の記憶だって断片的でも…

 間違いなくあたしの中にあって、

 しかも、この4年の記憶は…

 すべてディンガのナンとして経験してきたものなのよ」

と訴えながらディンガ族独特の精悍な顔つきをした男。

いや、4年前までは12歳の女の子・英美が僕を見る。

「そんなこといわれても……

 俺、納得できないよ。

 英美に会うために、
 
 英美を元に戻すために、

 俺はここに来たんだ。

 なんて言われ様とも英美をディンガにしたままになんて…

 俺、絶対できないんだよっ」

僕はそう力説するが、

「・・・・」

その一方で英美は困ったような表情で見ていたのであった。

「くっ!」

そんな英美の顔を見ながら僕は悔しそうに歯を食いしばり、

「英美だって、

 12年間、女の子・英美として生きてきたことを忘れたわけじゃないだろ?」

と尋ねると、

「……あ、あー、

 ま、まあ……

 でも、あたしは

 ディンガのナンとして生きていくことを覚えてしまった…の。

 スウムするたびに

 あたしの中でナンとあたしがひとつになって、

 あたしはディンガのナンの生まれ変わりになったの。

 だから、あたしはナンとして生きることにした。

 なのに………いまさら、元に戻れだ…なんて……

 だいたい、元に戻れるかすら分からないじゃないか?」

と英美は言い返す。

「うっ、それは…

 英美の方が……

 ずっと長やあの毛皮の男に居たんだし……

 な、なあ……ひとつ気になっているんだけど、

 あの時、

 お前は自分から進んで毛皮の男や長の居る小屋に入って行ったよな。

 あれは自分の意思なのか?

 それに…

 ”あたしのことは忘れて”

 と言って俺を小屋から放り出したのはどういうことなんだよ、

 自分から望んでディンガになったのか?」

と僕は英美がディンガに変身したときに見せた行動について問い尋ねた。

「うっ」

僕の質問に英美の表情が険しくなり、

「わからない…」

と俯き加減に答えてみせる。

「判らない?

 なんで?」

それを聞いた僕は食い下がると、

「あたし…

 この村に来てディンガ達の姿を見たとき、 

 なんて美しい体をしているんだろう。

 と思った…

 どうすればこうなるのかなって思ってた。

 そしたら…

 教えてあげるって囁かれて…」

と英美は返事をしてみせる。

「囁くって誰に?

 あの時、英美に言い寄ってきたディンガは居なかったはずだぞ」

返事の矛盾点を僕は突くと、

「頭に…はっ話しかけられたのよ。

 頭に響くように…

 こんな姿になってみないか、

 なってみたいならこっちに来いって…」

と英美は言う。

すると、

「だから、あの時、

 村の中を駆け回ったのか?」

あの時、英美が僕の手を引っ張りながら村の中を駆け回ったことを指摘すると、

コクリ

英美は縦に首を動かして見せた。

「だったら、それって、

 操られていたわけじゃないか、

 英美は操られてあの小屋に行き、

 そしてディンガにされた…

 だったらなんで僕を追い出すんじゃなくて、

 毛皮の男や長に文句を言わないんだよ」

と言い返すと、

「言っても無駄だから…」

そう英美は答えた。

「無駄って…」

その言葉に僕は声を詰まらせると、

「さっきも言ったとおり、

 長は死んだ息子・ナンを生き返らせたくて、

 毛皮の男・呪術者に頼んで贄となる者を呼び寄せていたの。

 その術にあたしは掛かってしまったのよ、

 世界に僅かしか居ないナンと同じ波動を持つ者…

 それがあたしだったの」

と英美は言う。

「そんな…」

「あたしがあの村に来たのは偶然じゃなくて必然だったのよ、

 そして、あたしはディンガになった。

 これは決まっていたことなんだ。

 だから、あの場はああやって祐樹を追い出すしかなかった」

「だからといっても」

英美の言葉に僕は感情を露にすると、

「でも本当はディンガなんかになりたくは無かった。

 ……けど、

 ディンガになったばかりは…言葉も分からなかったし……

 元の英美に戻りたくなっても、

 長や呪術者と話しのしようもなかったんだ。

 そしてディンガの言葉を…喋れるようになった頃には

 あたしも…ナンの体に馴染んできていたし……

 父さんがナンを失って……あたしが息子として帰ってきたことで

 喜んでくれたのを知ってしまったから、

 強くは言い出せなかった。

 もちろん、反発はした…

 でも、そうしている内にあたしの中でナンが芽生えてしまったの」

と英美はディンガとして暮らしていくにつれて、

ディンガに染まっていったことを告白した。

「じゃあ、英美は……

 ナンの魂のせいで元に戻りたくなくなったっていうのかよ?」

それを聞いた僕は焦ったようにいうと、

「それは……あると思う。

 あたし、最初は英美の体に…
 
 英美の姿に戻りたかった。

 そして、祐樹や…ママやパパと会いたかった。

 けど………ナンの体で生きている内に、

 ナンの気持ちがあたしの気持ちになった。

 なぜだか分からなかったけど、

 ケナが好きでたまらなくなった。

 女の村との境で……

 ケナを見たとき、あたしの中でナンが目覚めたの。

 ああ、懐かしいって……

 ケナの小さい頃の記憶や、
 
 ケナをからかっていた頃の記憶が一気に流れ込んできて

 あたしは、身も心もナンになった。

 祐樹を好きだった気持ちも忘れて、

 あたしはケナに夢中になった。

 不思議だった……わ。

 でも、あたしは男としてあの女を好きになっていた。

 いや、ずっと好きだったことに気付いた。

 ケナが……英美から見てかわいいのか、魅力的なのかは分からない。

 けど、ナンとしては、すごく魅力的で……たまらなかった。

 あたしも、おかしいとは思った…のよ。

 本当は見ず知らずの女、なのに幼馴染のケナだって分かっちゃったんだから。

 それに……あたしは本当は女なのに……

 ケナのことを思うだけでイリガがカウカウなっちゃうんだから。

 だけど、あたし、戸惑いながらも

 ケナを思いながら、スウムするようになった。

 そして、女の村との境に行く度にケナを探した。

 ケナを見ては心臓が破裂しそうになった。

 それで、ケナもあたしに気付いて

 あたしに抱きついてくれた。

 事情を知って……ケナは、

 あたしをナンに目覚めさせてあげるっていってくれた。

 あたしをナンとして受け入れてくれた。

 それで……あたしはナンとしてケナと交わった。

 死ぬ前と同じようにあのウルチの中に、イリガを突き立てて……

 くっ……ははっ

 実はあのとき、おれ、祐樹のこと一瞬頭が過ぎってた。

 一瞬だったけど……

 でも、次の瞬間、

 おれは、自分がもうディンガの男であることを知ってしまった。

 英美はもういない……

 ここにいるおれは、ディンガのナン。

 生まれ変わったディンガのナンなんだってね……」

次第に男言葉を話しながら、

英美はナンとしてケナと交わったことを満足そうに英美は俺に言う。

「英美…」

その告白に僕はただ顔を青ざめるばかりだった。

「じゃあ、英美はナンの幼馴染の女のために……

 自分を捨てたっていうのか?」

すぐに僕は言い返すと、

「自分を捨てた?

 別に捨てたわけじゃない……
 
 ただ、ナンとして生きることを決めただけ。

 だって……あたし、もう英美じゃないんだもん」

英美はそう言うと剥き出しのペニスを握って見せる。

「おいっ、そんなの長とか呪術師の思う壺じゃないかっ!?

 そんな簡単に諦めていいのかよ?」

英美に向かってまた僕は怒鳴ると、

「諦める?

 そりゃ、あたしは諦めたのかもしれない……

 でも、その方が……あ、あー、げ、現実的だったからよ。

 あたしの体はディンガ族のナンという男。

 あたし自身、最初は嫌だった…

 けど、男としてスムラシしちゃったし、

 それが当たり前になっちゃったの。

 頭の中もディンガに……性格もナンと同じになっていくの…

 自分でも分かってた。

 何時の間にか死ぬ前と同じように『喧嘩っ早いナン』って

 呼ばれるくらいに…なっちゃったんだからね。

 感覚が違うのよ。

 英美だったときとは……

 だって……あたしの中で

 げ、げっ、げき、劇的に何かが変わっていくのを感じたわ。

 長の言うとおり、

 あたしの中で芽生えたナンが一気にあたしと同じ木になったのよ。

 ナンという木の幹が、あたしという木の幹のし、芯を突き抜けていって…

 根も茎も、一緒になっちゃって……

 あたしもナンも同じ木になった。

 あたしは、体だけじゃなくて、魂もナンになったのよ」

と英美は言い返す。

「それだって、無理やりじゃないか?

 ナンの魂を埋め込まれたのだって、

 英美が望んだわけじゃない。

 ナンになることを英美は心のそこから望んだのか?

 見も知らずの……

 しかも、死んだディンガ族の男にされちまったんだから。

 あいつら、そんな英美を内側から変えていったんだろう?

 ディンガの男になってしまえるようにって……

 そんなのあいつらの勝手じゃないか?」

「それは……思ったことはある。

 けど、あたしも楽しんでしまったの。

 嫌だったけど……

 ナンの魂にえ、えい、影響されていたのかもしれないけど、

 あたしもディンガの男としてスウムするの楽しんでた。

 我慢できなくなってた。

 このイリガを自分のものとして受け入れていたのよ?

 いまさら、文句なんていえないじゃない?

 父さんにどういえばいいわけ?

 父さんは、あたしがスウムしてるのも、

 ケナとウルチしてるのも知ってる。

 死んだ息子の体で……あたしが何してるか知ってるのよ。

 そりゃ、あたしにもナンの記憶はある。

 けど、あたしは本物のナンじゃないんだから……

 ここまでしておいて………元に戻せだなんて」

僕に向かってそう言った後、

英美はうな垂れたて見せる。

僕はもう黙ってはいられなかった。

「じゃあ、英美は12年間の自分を捨てちまうつもりなのかよ?

 12年、英美として過ごしてきたときを無駄にしてしまうつもりなのか?

 俺や、英美のおばさんやおじさんと過ごしてきた時間をなかったことにするって

 そういうことなのかっ?」

「……12年間のあたし……か」

僕の指摘に英美は思わず考え込むと、

「な、4年は長かったかもしれない。

 だけど、12年間の自分の人生をばっさりと切り捨てられるはずがないだろ?」

「それは……

 そうだけど……」

「それに……

 前はいえなかったけど……

 俺は英美が……

 英美のことが

 好きなんだ。

 英美を失いたくない」

「祐樹………」

僕の言葉にディンガの青年は絶句して見つめた。

漆黒の肌の顔にある白い瞳がじっと僕の顔を捉えている。

「あたし……

 あたしは……

 ぐっ」

この4年間胸の奥に押し込んできた悔しさが込み上げてくる。

ディンガの裸体の勇者・ナンとなった英美は

久々に英美としての自分の気持ちに気付いていた。

「あたしも……

 祐樹のこと……

 す、好きだったよ」

勇者としての資質。

ことわり。

それを投げ捨てでも、

英美はナンではなく女の子の英美として泣きたい気分になっていた。

「じゃあ、なぜ諦めるんだよっ」

「だって……

 待っても、待ってもきてくれなかったんだもん。

 あたしの体が……

 ナンとして

 どんどん男らしくなっていくのに

 誰も迎えにきてくれないんだもの。

 それじゃあ……

 もう…ディンガとして生きていくしかないんだって

 思っちゃうじゃないのよぉ〜」

「それは……

 遅くなったのは謝る…けどさ」

「祐樹っ!」

そう言うと英美は再び僕の自分より小さい体を抱きしめていた。



パチパチ…

くべられた薪が鳴り、

炎がユラユラと粗末な小屋の中を照らし出していた。

「それにしても呪術によって……

 英美がディンガになっているだなんて……

 考えてみれば驚きだよなぁ」

しみじみと呟く僕の言葉を聞いて

ディンガの姿をする英美は苦笑いしながら、

ディンガの食べ物をごく普通に食べていた。

「それより祐樹は、食べなくていいの?」

「うん……

 英美には悪いんだけど……

 こっちの食べ物は食べない方がいいって。

 俺、こんな食事、普段してないからさ、

 お腹壊しちゃうよ」

今度は僕が苦笑いする番だった。

「ふ〜ん、

 味はないけどおいしいよ」

そんな僕を見ながら英美は食べ物を口にして見せると、

「はあ……

 英美はこんな食事をいつもしてるんだなあ」

と僕は英美がディンガと同じ食事をしていることに改めて気付くのだった。

「変われば……変わるもんだよね……」

僕の思いに反応するように英美の方が口を開く。

「あたし、4年前は……

 普通の日本人の女の子だったのに……

 まさか、たった4年でディンガの勇者になっちゃうなんてね。

 へへ……この村にきたときは思いもしなかったな」

「まったくだよ。

 英美がディンガのナンになってしまうだなんて……

 俺、

 今でも悪夢を見るんだ。

 英美が目の前でディンガ族に変えられていく光景が出てきて

 『助けて』『お願い、助けて』って俺にいうんだよ。

 だけど、英美の肌はどんどん黒く染まっていって…

 股間から……アレが生えてきちまうんだよな」

「そうなのか。

 あたしも、

 ディンガに変身した頃はよく悪夢見たな。

 女の子のあたしがどんどんディンガ族に染められて…

 飛び起きてそこにあるのは、
 
 本当にディンガにされたあたしの体。

 股間からイリガがおっ勃ってて……

 泣き叫んだこともあったっけ……」

だいぶ日本語を取り戻した英美だったが、

その口調は未だ不自然なところもあった。

「うっ、あ……」

「どした?」

「ごめん。

 あたし、変身した頃のこと、思い出すと……

 スウムしたくなっちゃうんだ。

 なんか分からないけど、興奮しちゃうんだよね」

「お、おい……」

僕は顔を引きつらせながら股間に手を伸ばす英美を見つめる。

剥き出しになった漆黒のペニスは既に充血し始め、

痙攣するように首を擡げ出していた。

「はあ……

 祐樹、見て……

 これが…あたしのイリガ」

「や、やめろよっ、英美っ」

僕は止めようと英美に近づくが

逆に腕を英美に握られてしまうと、

「お願い、握って……

 もう我慢できないのっ。

 あたし、あたしだって……本当は認めたくなかった。

 けど、これはあたしのイリガなの。

 今のあたしのスウムなのっ。

 お願いっ、祐樹も認めてっ」

そう言いながら無理やり僕の手を英美のペニスに触れさせられる。

熱く硬く太い、男の肉棒。

4年前英美の股間に生えたソレは、

ここまで英美と共に育ち、

英美に男の性を刻み込んだのだ。

「ど、どういうつもりだよっ、英美っ!?」

「あたしの……胸の奥のもやもやした気持ちを

 取っ払いたいのっ!

 あのとき……

 あたしにイリガが生えた瞬間を知ってる祐樹に

 祐樹に

 あたしのイリガを認めてもらいたいのっ。

 そうすれば…

 あたしは……

 本当にイリガを受け入れられるっ。

 本当のディンガになれるっ」

「そ、そんなの認めるかよっ!」

「だめっ。

 するんだっ、祐樹っ。

 スウムしろっ、祐樹っ」

英美は急に人柄が変わったように言う、

強烈なディンガの匂い。

そして、生臭い男の精の匂いと、

汗や土の匂いが僕の鼻を刺激し、

(これが……今の英美の体……)

そう思いながら見つめる英美の体は逞しく

筋肉が無駄なく張り詰め、

細く長く伸びた手足、

細長く縮れ毛を載せた頭、

アフリカの強い日光に耐える漆黒の肌、

12年前の英美とはかけ離れた姿に彼女はなっていたのであった。

「さあ、やろ!」

シュッ

シュッ

その声と共に無理やり僕の手を巻き込み英美は手淫を始めだした。

「英美っ」

僕は驚きながら英美の顔を見上げる。

そして、恍惚とした英美の表情をみた途端。

男の体に囚われた英美の魂はディンガ族・ナンの肉体の味を知り、

ナンの淫らな記憶を知り、

今まさにディンガの青年として覚醒しつつある。そんな気を僕はしていた。

『はあ、はあ……あぁケナっ』

英美はディンガの言葉を漏らしながら僕の手ごと手淫を続ける。

シュッ

シュッ

(何をやってるんだ、英美っ!?)

焦る僕は目の前のディンガの青年の中に英美とナン二人の姿が重なるのが見えた。

ナンの体で性に目覚め、

ディンガへと生まれ変わりつつある英美の魂と

英美の肉体の中で復活しつつあるナンの魂。

それらが今まさにひとつになろうとしている。

『はあっ、

 はあっ、

 はあっ』

英美はディンガの男の喜びを知ったためか、

その魂は……

首から上が英美、

首から下がディンガのナンというなんともチグハグな姿で

4年の間、最初は嫌々だったとはいえ自らの一部として受け入れ、

男に生まれ変わりつつある英美を示していた。

そして、

根元を同じくするナンの魂は腰から下が英美とひとつになり

次第に上半身が英美の魂と重なっていく。

『はあっ、

 はあっ、

 はあっ』

英美にとって僕との再会はもしかすると儀式のひとつだったのかもしれない。

ディンガへと変わってしまった自分を再認識し

本当の意味でディンガを受け入れるという儀式。

英美の4年はあまりに大きすぎた。

先進国の文化から切り離され

完全にディンガの伝統と習慣の中にのみ生きる生活。

そして、自分の性を決める思春期を

ディンガとして過ごしてしまったのだから……

if……

もし英美があの夜、ディンガに変身していなかったら、

英美は日本人の女の子として成長しているはずだった。

しかし、あの夜の出来事は大きな分岐点だったのだ。

英美はディンガの少年になり、

ディンガとして成長し、青年になった。

女とも交わり、勇者となった。

英美にとってもはや取り戻すことのできない長い時間の流れ。

あの分岐点があったことすら忘れることができれば

彼女は完全なディンガになる。

それをするために英美は僕に自分のペニスを扱かせているのだ。

「英美…

 本当に良いのか?」

英美のペニスの感触を確かめながら僕はふと尋ねると、

「いっいいの…

 あたしは…はぁ…
 
 ディンガ族の勇者ナン…」
 
顎を突き上げながら英美はそう返事をし、

僕の手を掴むと自分のイチモツへと導いていく、

そして、硬く伸びるイチモツに僕の手が触れた瞬間。

僕の中で何かが吹っ切れた。

そして、

「わかったよ、ナン」

僕はそう返事をすると、

ギュッ!!

固く勃起している英美…いや、ナンのペニスを握りしめ。

そして、ナンの背後に回り込み空いているもぅ片方の手を添え、

「僕が君を真の勇者にしてあげる」

と耳元で囁きながら

シュッシュッ

ペニスを扱き始めた。

「あっ

 うっ
 
 はっはっ」

僕による攻めが始まった途端、

ナンは自分の手をペニスから除けダラリと垂れさせ、

そして、そのまま体を僕に預けると、

ただひたすらペニスからの刺激に身をゆだねた。

「はっ

 はっ
 
 はっ」

「はっ

 はっ
 
 うぐっ」

僕とナン、二人の男の呼吸は次第に同調し、

ナンは小さく苦しみだしはじめる。

それは最後に残った英美の心をディンガ族の勇者にするための苦しみかも知れない。

長によって99%ナンに作り替えられた英美。

でも、長でも呪術者でもその最後の1%を変えるが出来なかった。

そして、1%の英美を抱えたままナンはディンガとして生きてきていた。

4年は長すぎた。

もし、3年半前ならナンは英美に戻れたであろう。

しかし、その期限を大幅に過ぎてしまっていたのだ。

カケラとなった英美の心に苦しむナン…

4年経ってやってきた僕に出来るのは

ナンをディンガの勇者として送り出すしか他なかった。

「ごめん、英美…

 もっと早く…
 
 もっと早く…助けに来れば良かった…」

僕は心の中で謝りながら先走りでベトベトになり

爆発寸前のナンのペニスを扱き続ける。

そして、

「あっあっあぁぁ!!!」

喘ぎ声を上げるナン…英美に最後のフィニッシュを決めたのであった。



9月…

「じゃぁ行ってくるね」

始業式のため、制服に袖を通した僕は机の上に置かれている写真に向かって僕は話しかける。

そこには逞しい黒檀色の裸体を輝かせながら

ウシの世話をするディンガ族の一人の青年の写真が飾ってあった。

彼の名前はナン…

アフリカ・ディンガ族の勇者だ。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。