風祭文庫・モラン変身の館






「沙織」
(第3話:穣との再会)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-095





穣の幼馴染である沙織が

ディンガ族の村で行方不明になってから一週間が経っていた。

「沙織…

 一体どこに行ってしまったんだよぉ」

目の前から消えてしまった沙織の姿を求めて、

再び穣一人があのディンガ族の村を訪れたとき、

ガサッ!!

物音と共にブッシュの中より一人の人影が歩み出てくると穣へと近づいてきた。

「誰?」

その音に気づいた穣が足を止めると

一歩、一歩踏みしめるように近寄ってくる人物を見つめる。

陽の光の加減で人物の詳細をつかめない穣は目を細めると、

「沙織?」

と一瞬沙織の幻を見たような気がした。



沙織がディンガ族の村で行方不明になったのは、本当に突然だった。

ふと訪れたディンガ族の村、

二人が親から離れて見物をしているときにそれは起きた。

ほんの少しの間、穣が村の中にある物に気を取られている間に、

後からついて来ていたはずの沙織の姿が消えてしまったのだ。

「沙織?」

最初のウチは立ち止まっている自分を追い抜いていった。

そう思い、穣は沙織を追いかけてたのだが、

しかし、沙織の姿は何処にも無く、

さんざん沙織も姿を探しながらも見つけられないまま

村の中心に戻ってきたとき、村は騒然となった。

ディンガの長も協力して村の周囲も探してくれたものの

しかし、翌朝になっても沙織は見つからず

穣とその家族は報告のため、一旦街へと戻ってしまったのだった。

そして、1週間が過ぎた。



「な、何?」

近寄ってくる人物の素性を穣は探る。

「え?

 でっディンガ?

 ディンガの男?」

自分に近寄ってくる人物は間違いなくディンガ族の少年だった。

衣服は一切身に着けてなく、

黒い肌に股間のペニスを露にし、

トンボ球で出来た腰飾りや首飾りを衣服の如く飾り立てるその姿は

ある意味”男と言う性”を見せ付けるには十分過ぎる姿だった。

故に、少年と呼ぶよりも青年よ呼んだほうが良いかもしれない。

しかし、向かってくる少年の姿は他のディンガ族と比べ彼はの肌はやや色素が薄く、

何処と無く色白と言う言葉が当てはまるようだった。

そんな姿のディンガ族の少年に惹かれながら穣は

「な、何?」

と目の前に迫った少年に声をかけると、

「………」

ディンガ族の少年からの返事は無く、

黒い肌から浮き出るように覗く目でじっと穣を見つめていた。

無言の時間が過ぎて行く、

「なっなんだ…」

自分を見つめるディンガ族の少年の姿に穣は一歩下がると、

『……○×△…』

ようやく彼は口を開き、何か言葉を穣に向けて告げた。

「え?

 いま、なんていったんだ?」

少年の告げた言葉を理解できなかった穣は困惑をしながら、

「あっごめんっ

 僕…
 
 君の言葉わからないんだよ、
 
 あっ待って、
 
 いま通訳の人、連れてくるから」

そう言うと、通訳の人を連れてこようと来た道を戻ろうとして駆け出したとき、

ガシッ!!!

彼の長い手が伸びると穣の腕を思いっきり掴んだ。

「え?

 なっなに?」

ディンガ族の少年の思いがけない行動に穣は驚くと、

グイッ

彼は何も答えずに穣の腕を掴んだまま自分が出てきたブッシュへ入ろうとする。

「ちょちょっと、待って

 僕を一体何処へ連れて行くんだよ」

少年の行動に危機感を感じた穣が抵抗をしながら叫び声を上げるが、

「………」

少年は無言のまま

グイグイ

と穣の腕を引き、

ズザザザザザッ

「うわっ」

少年の力強い腕力で穣はブッシュの中の空間に無理やり引きずり込まれてしまった。

「わっ、

 な、何するんだよっ!?」

ブッシュの中をディンガ族の少年に引かれる穣は抵抗を試みるが、

しかし、自分の腕を引く少年の力は

中学二年生の穣にとって抵抗する術もないような強烈な力で、

小学校の頃から柔道を習っている穣の腕を持ってしても容易には外すことができなかった。

「くそっ

 なっなんてヤツだ…」

もしもこれが試合だったら…

と思いながら穣は前を行く少年の姿を見ていると、

ザザザザ…

視界をさえぎっていたブッシュが切れ、

二人は小さな広場のようなところに躍り出た。

「ここは…」

6畳ほど広さを持つ空間を興味深そうに穣はキョロキョロしていると、

クンッ

彼の腕が引かれ、

ヌッ!!

穣の目の前にディンガの少年が立った。

「なっなんだよっ」

自分をここに引き入れた少年の態度に穣は憮然としながら少年を再度見る。



確かに背の高さは頭一つ分くらい自分より高いが、

しかし、細身の体と縋るように見える瞳のせいか、

それほど威圧感は感じることはなく、

体格よりもその細い手足についた筋に注目が行ってしまう。

「き、きみは?

 ぼっ僕をどうする気だ?」

警戒をしながら穣が逞しい少年に問いかけると、

ポロッ

ポロッ

少年の瞳から大粒の涙が溢れ始めたと思うのと同時に、

閉じられていたその口が開くと

「ゆっ、ゆゆゆゆ…

 ゆ・た・か〜」

少年は声変わりのした声で穣の名前を呼んだ。

「えっ、なんで僕の名前をっ!?」

少年の口から出た自分お名前に穣は混乱するが、

しかし、それに構うことなく、少年はたまらなくなったように抱きつく。

「おっおいっ

 なんだよいきなり…」

自分に抱きつく少し色白いとはいえ黒褐色の肌と、

ディンガ族特有の体臭に穣は驚いていると、

「あ、ああああ…

 あたし、

 よっ

 …さ、ささ沙織なのよ……」

と少年は更に驚くべきことを喋った。

「はぁっ!?」

少年の口から出た思いがけない言葉に穣は呆気に取られた。

無理も無い、

穣が知っている沙織と、いま自分抱きついているディンガ族の少年とでは

あまりにもかけ離れた姿だったからだ。

「あは…

 なっ何を…」

戸惑いながら穣は返事をすると、

「あああ

 あたし、ここっ

 こんな姿に

 なっななちゃたけど……

 ほっほっ本当に沙織なの。

 お願い、穣。
 
 しし信じて」

おかしなアクセントとドモリとつっかえつっかえながらも、

少年がおかまのような日本語を喋っているのに愕然としつつ、

穣は少年の顔を見つめた。

細長い頭。

短い縮れ毛以外ほとんど髪の毛の見当たらない頭皮。

広い額。

広がった鼻。

そして分厚い肌と同じ色の唇。

何処をどう見ても、

このディンガ族の少年と沙織との共通点を見出せることができなかった。

しかし、じっと自分を見つめるその目元に沙織の面影が僅かながら感じられると、

「さ、沙織って、きみがっ!?」

と穣は聞き返した。

すると、

コクリ…

少年は素直に頷き、

「そそそうなの、

 ああたし、

 沙織なの。

 分かる?」

少年は泣きそうな勢いで穣に迫った。

彼の汗の匂い、

息の匂いが顔にかかり、

穣は沙織とは全く違うディンガ族の匂いを嗅いだ。

「そ、そんなこと、信じられるわけないし

 できないよ」

臭いを嗅ぎながら穣はそう訴えると、

「だだって、本当なんだもん。

 あああたし、

 ふふ藤沢沙織なのよ。
 
 ゆゆ穣、お願い

 しし信じて」

半信半疑になっていた穣だったが、

その聞き覚えのある口調にハッとした。

それにこのアフリカに沙織の口調を真似できるような人間が他にいるとも思えない。

だからこそ、穣は少年の言葉をようやく受け入れることが出来た。

「……本当に沙織なのか?」

「う、うん……」

「本当に?」

「そそうよ」

「まっマジで?」

「だだからぁ」

「どうして……そんな」

穣の困惑したような言葉にゆっくりとディンガの少年・グレになった沙織は返事をする。

そして、沙織が呪術師の息子のアニに手招きされ、

村でも一部の人間しか立ち入ることの出来ない呪術師の祭壇がある小屋に入ってしまったこと、

そこで穣たちが沙織で探し回っている間にも儀式が執り行われ

沙織に『女を勇者に生まれ変わらせる』秘術が掛けられたこと、

さらに呪術を強める青色のトンボ球でできた腰飾りや首飾りを付けられ

この一週間、呪術師の小屋で裸で過ごさせられたこと、

その間に変身が進み股間からクリトリスが膨らみ始めたこと、

体つきも変化し、肌の色も変わっていったこと、

四日ぐらい過ぎたところで、長い髪の毛も全て抜け落ち、

ディンガ族の少年らしい体つきになったこと、

勇者の証を立てさせられ、

昨日グレというディンガの名前を与えられたことなどを告げた。



「あああたし……

 だから…も、もう……
 
 ディンガ族になっちゃったのよお」

と沙織はディンガ族の少年・グレとなってしまったことを涙ながらに訴える。

「そんな……

 沙織が……
 
 ディンガ族なんて……」

想像を超える沙織の訴えに穣は呆然としながらそう呟くと、

「うぐっ…

 うぐっ…」

黒い肌に覆われた身体を丸めながら沙織は嗚咽していた。

「どうして、

 その……アニとかいう奴についていったんだよ?

 そいつのとこに行かなかったら、
 
 沙織は…ディンガにならずにすんだんだろ?」

「そそそんなの……分かってるよ。

 でででも、まさか変身させられるなんて……
 
 ディンガ族になっちゃうなんて……

 そそんなの分かるはずないでしょ?

 これでも…あたしだって……後悔してるんだから」

穣の問いかけに沙織はそう返事をしながら項垂れる。

「それで、本当に元に戻れないの?」

「わわ分かんない。

 ででも、あたし、まだディンガ族になっていってる途中らしいの。

 だだから、まだあたしはディンガ族になりきってないし、

 ゆゆ穣とこうして喋れるんだけど、

 けけど…そうはいっても、

 こっここの姿じゃもう誰も信じてくれないでしょう?」

穣の言葉に沙織は訴えるように言い返す。

「そうか……

 でもそうなるとさ、

 その、

 沙織に術をかけた呪術師に頼んで元に戻してもらうしかないんじゃないの?」

「でも、あの人たちはあたしをディンガのグレにすることしか考えてないのよ。

 あたしがディンガ族になりきれば……

 ううん、グレになりきってしまえって思ってるのよ。

 だって、あの人たちにとってはそれが秘術が成功したってことなのよ?」

「でも……こうしてバレちゃったじゃないか?

 沙織が出て来れなかったのは、
 
 沙織に秘術を掛けてることを知られたくなかったからだろ?」

「それは……そうかもしれないけど」

「なら、元に戻る方法だってあるに決まってるよ。

 ほら、沙織も元気出してよ」

「う、うん……

 でも、この体になるのに一週間も掛かったのよ。

 元に戻るっていったって……」

「そっか」

沙織が自分の体を見下ろしたのにつられて

穣もディンガ族のグレとなった沙織の体を見下ろす。

細身の逞しい黒褐色の体に巨大なペニスが生えている。

「うわ……」

そのペニスの大きさに穣が思わず声を上げると、

「あっ、

 やっやだ…」

沙織も初めて気付いたかのように手でペニスを隠した。

しかし、そのサイズゆえに全てを手で隠すことは不可能であり、

大半は掌から飛び出している。

「ホントにチンポ生えてるんだ……」

「う、うん……最初は何も生えてなかったんだけど……

 だんだん大きくなってきちゃって……

 一週間経ったら、こんなに」

「そうか」

「あ……」

そう穣が答えたときグレの様子が急変した。

その声に合わせるように

ポウ

彼の腰や首に掛けられているトンボ球が輝き始めると

沙織の表情が変わっていく。

「くはぁはぁ……

 はぁ…はぁはぁ」

「ど、どうしたの、沙織?」

「だだだ、駄目……押さえて……」

「え?」

「ああああたし……

 はぁはぁ

 いっ、いやぁ……

 おおお、お願い、見ないで」

沙織は必死に耐える表情をしながらそう訴えるが、

しかし、そのとき穣は沙織の股間で黒いペニスが脈打ち

勃起し始めているのに気付いた。

「う、あ、あう」

沙織に不釣合いな巨大なペニスは今のディンガの体にフィットし、

徐々にその雄姿を股間に見せ始める。

「そ、そんな……沙織」

「だだ駄目……

 あたし、我慢できない……」

「やめろよっ」

「そそそそんなこといったって……あっあたし」

「何やってるんだよ、沙織っ!」

ディンガ族のグレとなってしまった沙織に向かって穣が必死に叫ぶが

「うっ……あ…だ、駄目。

 ご、ごめん。

 うくっ…」

沙織はそこまでいうと

「はぁ…

 はぁはぁ…

 はぁはぁはぁっ

 う、うぉぉぉぉぉぉ」

突然人が変わったように勃起するペニスを扱き始めた。

ポゥ…

まるで沙織を操るかのごとく腕に付けられたトンボ球が発光し、

そして、沙織は自分の中に植えつけられたグレの魂とシンクロすると、

同じ快楽を味わっていた。

「沙織……」

「くはぁ!!」

シュッシュッシュッ

黒い肉棒の上を沙織の黒い手が往復し

その先端の鈴口から絶え間なく我慢汁があふれはじめる。

その一方で、沙織は顎を突き上げ

男の快感を味わいながら必死にオナニーに励んでいた。

「こんな……」

唖然とする穣の前で

シュッシュッシュッ

グレとなった沙織の痴態はどんどん激しさを増していく。

「う、ううううっ」

沙織の喉が唸ると、

グィッ

その腰を突き上げ、まもなく来る射精に備えると、

「ぐぅ

 ぐぅ

 ぐっ

 グォォォォォォ!!!」

沙織の口から響き渡る雄たけびと同時に、

ブッ、ブシュゥゥゥッ

穣の目の前で、突き上げられた漆黒のペニスより白い体液が勢い良く吹き上げた。

ブシュッ

ブシュッ

ブシュッ

まるで噴水のごとく沙織は精液を吹き上げると、

「うっ、うっ、うっ……」

情けない表情をしながら射精の快感に耐えていた。

そして、沙織が精液を全て搾り出していたとき、

「あれは…」

ブッシュの向こう側でアニが沙織を見つめているのに気づいた。

「さっ沙織

 あ、あいつは……」

「はあはあはあ……うっ」

ビュッ

最後に残った精液を吐き出しつつ、

穣の視線を追うように沙織も隣の茂みを見る。

すると、そこには沙織と同じ姿勢で快感に耐えるアニの姿があった。

「あ、アニ……はあはあ」

それを見た沙織がアニの名前を叫ぶと、

ザッ!!

アニは一目散に逃げていったのだった。

「あいつがアニなのか?」

「う、うん……

 そっか……
 
 あたし……
 
 見られてたんだ」

そう言いながら沙織は射精の余韻に浸りながら、ペニスを撫でている。

「お、おい、沙織」

「ご、ごめんね………

 こ、こんなことしちゃって……

 ううっ、あたし、あたし……」

沙織は徐々に冷静さを取り戻すと、顔を手で覆い、

「じゃあ、あいつが沙織をディンガ族に……」

と穣が指摘すると、

「そ、そうなのよ……

 あいつ、あたしがディンガ族になっていくのを喜んでいるのよっ。

 もう、いやっ、いやっ……
 
 なんで、あたしがこんな目に遭わなきゃいけないのぉ」

久々に沙織らしさを取り戻したグレは涙をようやく流していた。



「ねえ、まだ残っていて大丈夫なの?」

「うん、取りあえず何か分かりそうかもしれないっていって、

 今夜はここに泊まらせてもらうことにしたから」

「そっか、よかった……」

夜。

二人はまだブッシュの中にいた。

戻ってきた穣の言葉にグレは安堵の表情を浮かべて穣に近寄る。

見た目がほぼディンガ族になってしまっている沙織の姿に戸惑いながらも彼女を見つめていた。

そして、沙織が座りなおしたとき、

穣は獣のようなきつい体臭がすぐ傍から漂ってくるのに気付くと、思わず鼻を指で擦った。

(これが……沙織の匂い…なのかな?)

そのことを沙織に感づかれないように穣はゆっくりと指を戻す。

それでも、幼馴染の女の子の体臭の変化に穣はショックを内心隠し切れなかった。

「ねえ、そんな格好で大丈夫?」

「う、うん……

 最初は恥かしくてたまらなかったけど、
 
 今は平気みたい。

 それにここ暑いしね。

 ディンガ族にとっちゃ、これが服みたいなものらしいの」

そう言いながら沙織はトンボ球を通した腰紐を指で引っ張って見せる。

「それにしても……

 本当に変身しちゃうなんて…
 
 信じられないなあ……

 沙織がディンガ族なんて」

「あたしも……信じたくないよ。

 けど、これは現実なの。

 夢だって信じたかったけど、
 
 あたし、本当に変身していっちゃってるのよ」

沙織は悲しそうに黒褐色に染まりつつある、今の自分の体を見下ろしていた。

「呪術かあ……要は呪いみたいなもんなのかな…」

「うん……はっきりいうと呪いみたいなものだよね。

 普通の女の子だったあたしが、
 
 あのアニみたいなディンガ族の男の子になっちゃうなんて」

「なんだってあいつら、こんなことを」

「アニの話じゃね……死んだ友達を蘇らせたかったんだって……」

歯軋りさせる穣を沙織は心配そうに見つめながら言う。

「死んだ友達を蘇らせる?

 そのために沙織をディンガ族にしたっていうの!?」

「……多分ね。

 ねえ穣、知ってた?
 
 あたしの体、そのグレというディンガ族の男の子と同じ姿になっていっているのよ」

「え?」

「あたしをグレとおんなじにするって……

 いってたから。

 それにアニは、それは素晴らしいことだぞって……
 
 女から勇者になれるなんて名誉なことだって……」

「どこか名誉なんだよっ。

 一方的だし、沙織の気持ちなんか無視してるじゃないかっ」

「けど、ここの女の人にとっちゃ、

 名誉なことなのよ、多分……

 アニは日本人のことだって、何にも分かってないもの」

「だけど……」

「それに、入っちゃいけないっていわれてたのに、

 呪術師の小屋に入ったあたしが悪いのよ。

 あたしが入ったとき、あそこは呪術の準備してたとこだったの。

 それで……丁度獲物がきたって………」

「それって……結局沙織はそいつらの犠牲者ってことじゃないか!?」

「そだね」

「ようしっ、長に頼んで元に戻させようぜ。

 僕が直接かけやってやる」

「だ、駄目よっ。そんなことしたら……あたし」

「何だよ?」

「だって、長だって知ってるのよ。

 あたしが呪術師のところでディンガ族に変えられてるって」

「何だって!?」

「でも、長も呪術師には文句いえないし、

 黙って見ているしかないのよ。

 呪術を守ることはディンガ族のためでもあるらしいから」

「そんな……」

「だから、あたし、ディンガ族のグレにならなきゃいけないのよ。

 穣には本当のこというわ。

 実際、あたしの心も体もディンガ族になり始めているの。

 ちょっとずつだけど、ディンガ族の常識とかも分かり始めてきてる。

 グレの記憶みたいのも夢に見たりしちゃうし……

 あたし、あと一年くらいしたら心もグレと同じディンガ族の男の子になっちゃてるきっと」

「ちょちょ待ってよ」

投げやりに言いつつも、涙ぐむ沙織に穣は慌てた。

「ど、どういうことなんだよ!?」

「だって……アニはそのためにあたしに呪術を掛けたのよ?」

「とにかくだ、

 僕はもうグレが本当は沙織だってこと知ってしまったんだよ。

 そのことを突きつけたら長だって無視はできないさ」

力強くいう穣に、沙織はどこか救われるような気持ちに初めてなった。

「そっか。

 なら、あたし、元に戻れるかもしれないよね?」

「もちろんだとも、僕がついてるだろ?」

「ありがとね、穣」

「うん、僕だって沙織にディンガ族になって欲しくないしな」

「…うん」

穣の言葉に沙織はそう返事をすると頷いていた。



「それにしても、ディンガ族の体って逞しいんだなあ。

 元が沙織の体とは思えないよ」

ようやく場の雰囲気が落ち着いたところで、

穣は改めてディンガ族になりつつある沙織の現状に見つめていた。

「あたしだって、今も信じられないよ。

 けど、ちょっとずつちょっとずつ体が変わっていっちゃって……

 気が付いたらこうなっちゃっていたの」

「へえ」

恥かしそうにする沙織に、穣が好奇心満々な瞳でその体つきを眺めている。

呪術によって女の子から男の子に変身した体。

元は自分の気になる女の子だった体である。

気にならないはずもなかった。

またそれと同時に穣の中で今までに感じたことのない興奮が噴き出し始めていたのだ。

「呪いで沙織の体がディンガ族になるなんてなあ」

「うん……まさかあたしが男の子になっちゃうなんて思いもしなかった」

「なぁ、ちょっと触って見てもいい?」

「え?

 こんな体を?」

「だって、こんなに逞しい体見たことないんだもん」

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけよ」

穣は沙織の逞しい体つきに関心を示しつつも、

沙織がディンガ族の肉体になっていることに胸の高鳴りを押さえられなくなり始めていた。

(僕、何考えてるんだろう……

 でも、元に戻れるなら今しか沙織のこんな姿見れないんだよな?)

そう思いながらゆっくり手を伸ばして沙織の腹筋に触れる。

と同時にディンガ族特有の体臭が湧き上がってきた。

「く、くすぐったい……」

「はぁ、沙織、すごいよ。

 こんなに硬い筋肉がある」

「そ、そう?」

沙織もまんざらではない様子で、

自分の触られている下腹部を見つめた。

穣はドキドキしながらも、手を這わせゆっくりと上にあげていく。

「ゆ、穣っ」

「……」

沙織が必死に我慢するなか、

止められなくなった穣は硬い胸板の真ん中まで手を持ち上げていた。

ザラッ…

沙織の黒い肌から砂と汗が混じったモノが落ち、

何日も風呂に入っていないのであろう沙織の不潔な状態がよく分かる。

そして、何より嗅いだことのないような強い匂いは、

かつての沙織のものでは決してなかった。

(沙織からディンガ族の匂いがしているんだ……)

そう思うだけで今の穣は興奮していた。

「沙織、お風呂に入っていないんだよな?」

「う、うん……ここじゃお水ほとんどないみたいだし……

 あたしは変身のために小屋に閉じ込められてから。

 ……汗臭い?」

「ま、まあね。

 というか、本当にディンガ族の匂いがするんだな」

「え?

 そう?」

穣の言葉に沙織はショックを隠しきれず、自分でも胸元を拭って嗅いでみる。

「う、うん……臭いね。

 ちょっと気が付かなかった……」

「まあ自分の匂いって分からないっていうしね」

穣は自分でもおかしなことをいっていると自覚しながら妙に恥かしかった。

しかし、沙織は自分がそんな状態にあったことを気にしなくなっている自分に不安を覚えつつも、

なぜか欲情に似た気持ちも感じていた。

「腕触ってもいい?」

「あ、う、うん……」

細い腕。

以前の沙織にあった肌の柔らかさが消え、

逞しい筋が張っているのが分かる。

変身後水で洗い流されることのない汗が溜まり、

垢と細かい塩の結晶が光っていた。

(一週間で……こんなになっちゃったんだ)

そのザラザラした肌に触れながら、穣は沙織の顔をふと見つめる。

ディンガ族へと変身していっている最中の彼女。

その顔はほぼディンガ族に染まりきっていた。

黒褐色の肌。

分厚い唇。

横に広がった低い鼻。

陰影のはっきりした目元。

充血した目に虹彩の色が違う瞳。

そして、何よりあの綺麗な長髪はどこにもなく、

ほんの僅かに盛り上がる縮れ毛だけが沙織の頭についていた。

「ど、どうしたの?」

「沙織、鏡とは見たのか?」

「うん……そんなにディンガ族みたいに見える?」

「いや、沙織は沙織だよ」

「やっぱり髪の毛のせいなのかな?

 こんな短い縮れ毛だと、そんなに違って見える?」

沙織のそんな悲しそうな声に穣は思わずびくっと体を震わせる。

「ま、まあね。

 大丈夫。

 元に戻してもらったら、
 
 きっとあの長い髪だって生えてくるよ」

「うん」

「今はさ、この状況を楽しむくらいの気持ちでいた方がいいんじゃないかな?」

「う、うん。そうだよね」

沙織の顔がディンガ族になりきりつつあるのを隠して穣はいった。

「まさか、こんな髪の毛が……あたしに生えてるなんてね。

 触ったら…分かるんだけど、最初は本当に怖かったよ。

 髪の毛がどんどん抜けていくし、額が広がっていくし……
 
 肌も黒くなってきてたしね」

「うん……けど呪術ってすごいな」

「まあ…そだね。

 一週間前はディンガ族になっちゃうなんて思いもよらなかったし」

「うん……」

穣は黙ったまま、今度は沙織の股間を密かに覗き見ていた。

トンボ玉ででいた飾り紐だけの剥き出しになっている沙織の股間。

そして、そこにあるディンガ族の男性器。

「沙織はこれをどんな風に感じているのだろうか?」

そんな気持ちを止められないまま、

「なあ、沙織はチンチンが生えてきたときどうだったんだ?」

と尋ねてしまった。

「え〜っ、そんなこといわないでよ」

「でも……現実のことだしさ、聞いておきたいんだ」

「う、うん…」

沙織は困った表情になりつつも、自分の股間を見つめていた。

「タチションくらいはしたんだろう?」

「え、うっうん。

 っていうか、今は普通かな。

 最初はすごく嫌だったけど…」

と沙織は言って苦笑いをしてみせる。

しかし、その顔を見ていると沙織本人とは思えない。

これが今の沙織。

変身してしまいディンガ族になってしまいつつある沙織。

(沙織がタチションしてるのか……なんか、すごいな)

そう思いながら穣は顔を赤らめ、沙織を見ていた。

「ふう……

 でも、こんなことが起きるなんてね。

 呪術を掛けられたときはただ体が熱くて……
 
 まさか変身が始まってるなんて思わなかったんだ。

 けど、体の筋肉が張ってきたり、
 
 あそこの中で何かが張り詰めてきたり…とかしてきて

 次の日、目が覚めたら、
 
 これがニョキって…まだ小さかったけど、出ててね。

 わけが分からなくなって、取り乱して、アニに押さえつけられて……

 三日目には男に変身していってるんだっていうのは実感してた」

「……」

「三日目の夜に気が付いたら、

 股から何かが膨らんで出てきてて……
 
 あれ、男の子のき、金玉っていうのかな?

 あれだったんだね」

「それで男になったんだ」

「うん……

 もう、あたし、とにかく混乱して落ち込んで、
 
 もう二度と日本に帰れなくなるのかって思った」

「僕と会えて本当によかったよな」

「うん」

「っていうかさ、これって本当に本物なんだよな?」

「さ、触りたいの?」

「え……いや、なんていうか、沙織のだし」

「なら、いいけど……」

穣の申し出に恥らっているのか沙織はモジモジすると、

そんな沙織の姿に穣の心は興奮し始めていた。

「じゃ、じゃあ確かめていいか?」

「………う、うん」

穣はそう尋ねると、

待ちに待ったように沙織のペニスに手を伸ばして行く、

硬く逞しく股間に勃起している黒褐色のペニス。

その巨大な肉棒は穣自身のものを遙に凌駕していた。

(すごい、こんなのが沙織に生えているんだ)

そう思いながらゆっくりと穣の手が沙織のペニスを包むと、

ビクン!!

勃起したペニスは激しく脈動した。

「うっ」

小さく声をかみ殺している沙織自身も興奮しているのだろう。

「熱いし……硬い……長いし太いんだな」

「そ、そう?

 けど恥かしいよ」

「なあ、初めてのオナニーはどうだった?」

「えっ……」

「オナニーだよ、オナニー

 さき、あれだけ激しくヌいたんだから、
 
 初めてのときはショックだったろう」

「そんな……」

穣の言葉に沙織は羞恥心のあまりオロオロしている。

「当然、射精はしたんだろ?」

「それは無理させられた……けど……」

「じゃあ、どうだった?」

「う……それは……気持ち…よ、よかったけど……」

「じゃあ、僕がそのときのコトを思い出してあげるよ」

「えっ!?」

沙織が驚く間もなく、ぎこちない手付きで穣が愛撫を開始する。

自分のものではないのでやりにくいようだが、

他人にされることに慣れていない沙織には強烈な快感だった。

「あ、いっ、うっ、駄目っ」

「気持ちいいんだろ?」

「そ、それは、そう…あっ、だけど……」

ディンガ族のペニスで欲情していく沙織に穣はとてつもない興奮を覚えていた。

かつては何もなかった股間に生えているペニス。

そこから沸き立つディンガ族の精液の匂い。

ヌルッとした手触り。

何度も沙織が射精している証でもある。

「ああ、

 んっ、

 んっ、

 んっ、

 穣っ、

 だっ駄目ーっ」

硬いカリの首の下を握り締められ、よがる沙織。

穣は沙織の変身してしまった股間に釘付けになっていた。

揺れる睾丸を収める袋。

槍のように突き出したペニス。

女性器のあった沙織の股間は完全にディンガ族の男性器に置き換わっていた。

(沙織にディンガ族のチンチンが生えて、それで興奮してるんだっ!すごいっ)

シュッ

シュッ

シュッ

「あ、あ、あ、

 あああっ、

 ううぅぅっ」

黒い槍と化したペニスの先端より溢れ出す我慢汁。

そして淫らな顔付きになっていく沙織。

「でっ

 出る

 出る

 出る

 でるぅぅぅぅぅぅぅ」

そう訴えながら沙織の身体が痙攣し始めると

ブシュッ

ブシュッ

ブシュッ

ペニスはついに中から体液を射出してしまった。

本来ありえない…女の子だった沙織が射精している。

その光景に穣は飲み込まれていった。

精液が飛び散っていく。

「うわあ……」

手に取ると、糸を引く白濁した粘液。

一週間前まで女の子だった沙織がその男性器から出した男の精だった。

「はあ……気持ちいい」

そして、嫌悪感でいっぱいだったはずの沙織は思わずそう呟いてしまっていた。



つづく



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。