風祭文庫・モラン変身の館






「沙織」
(第2話:変身・グレへ)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-093





「いやあああ!!」

早朝、沙織はディンガ族に変身してしまった自分に気付き飛び起きていた。

慌てて見つめる手足と体。

しかし、その肌は浅黒さが増し、

股間からは昨日よりも一回り大きくなった黒褐色のペニスが勢いよく朝勃ちしていた。

「はぁはぁ、

 そんなあ」

朝勃ちするペニスの様子に沙織はショックを隠せず、涙ぐむが、

べとべとする自分の脇の汗に気付き、

腕を上げて匂いを確かめてみると、

「……臭い

 ……こんなの
 
 …あたしの汗の匂いじゃないよお」

ディンガ族化していく自分の姿に沙織は一瞬、意識が遠のくのを感じると

上半身をふらつかせ、倒れるようにその場に横になった。

「あたし、このままディンガ族にされちゃうの……

 もうママにもパパにも……

 穣にも会えないのかな……

 いやっ、そんなの絶対にいやっ!!

 あたし、藤沢沙織だもん。

 ディンガ族なんかになりたいくないよぉ」

沙織は次第に漆黒に染まりつつある肌を見つめながら、蹲まろうとする、

しかし、

ゴキッ!!

「痛たっ……」

関節に痛み感じると沙織は再び起きあがり、

そして、改めて自分お体を見た。

ゴキッ!

ミシッ!!

沙織の体中の骨が鳴り、いたるところの筋肉が張っている。

「やっぱり……変身が進んでるんだ」

ゾクッ

変化して行く自分の姿を感じるのと同時に沙織の肌に鳥肌が立つ、

そして、

「いや、ディンガ族なんかに変身したくないよぉ。

 誰か、助けて…」

とかすれる声で沙織がそう泣き叫んだとき、

コト…

アニが姿を見せた。

「アニっ、

 元に、
 
 元に戻してよっ!

 あたし、ディンガ族なんかになりたくないっ!

 男になんかなりたくないよっ!」

アニの姿を見た途端、

沙織は彼に向かって怒鳴り声を上げると、

『何を…

 お前…言って…いる?

 話せ…ちゃんと』

アニの口から出た言葉がなぜか沙織には意味が伝わり、

「え?」

そのことに沙織は目を剥いた。

そう、理解の出来るはずもないディンガ族の言葉を沙織は理解してしまったのであった。

『ふっ

 お前、そろそろ話せるんだろ?
 
 話せよ?』

『話すって?』

アニの言葉に返事をしてしまった沙織は

変声の進んだ少年らしい声でディンガ族の言葉を喋る。

『え!?

 僕は何を喋って……ええっ!?』

その口から漏れるディンガ族のリズムに沙織は寒気を感じると、

慌てて口を噤むが、

『ふふっ、ちゃんと喋っているじゃないか?

 分かるんだろ?
 
 僕たちの言葉が…』

『僕は……どうして?』

『ふふふ、

 そう、お前には僕の友達の魂をくれてやったからな。

 喋り方もそっくりだぞ』

そう言いながら沙織を見つめるアニはニヤニヤ笑みを浮かべていた。

『そんな……

 僕は……
 
 僕をどうする気なんだ?』

沙織はすっかりディンガ族の少年になってしまったかのような言葉でアニに問い詰める。

『お前はディンガ族に生まれ変わるのさ。

 僕の友達の代わりとして、
 
 ディンガ族の勇者になる』

『勇者になる……』

その言葉を聞いた途端、沙織の胸はなぜか弾けた。

(な、何、この気持ち……

 あたしがディンガ族なんかになりたいはずなんか…)

『そ、そんなのいやだ……

 お前は何いってるんだ。元に戻せっ』

沙織はそのときめきを押し隠すようにして喚いた。

『ふふ、面白いな。

 お前は女として生まれながら、

 これから勇者としての人生を味わえるんだぞ。

 何がいやだっていうんだ?』

『そんな……』

『ほら、イガリをそんなにおっ勃てといて何をいってるんだ?』

「い、いやあっ」

そう言いながらアニに勃起していたペニスを握り締められ沙織は悲鳴を上げる。

そして、力任せにアニを追い出したとき、

ムリッ!!

すっかり皮の捲れあがった己のペニスに気付いたのだった。

沙織の股間に漆黒の巨大な肉棒・ペニスは剥けきり

その内部で成長していた亀頭を露わにしていた。



「そんな……

 あたし………
 
 どうして」

アニが去った後、

沙織は小屋に鏡が置いてあるのに気付くと思わず覗き込んでしまったが、

しかし、四日ぶりに見る自分の素顔に目を剥いた。

以前の顔と比べると目の周りの凹凸がはっきりし、

また目付きが変わっていた。

さらに鼻は低く横に広がり、

唇は太く褐色に染まっている。

何よりもいまの顔付きから沙織らしさのかなりの部分が失われいたのであったのだ。

「これ……夢で見た男の子の……顔」

沙織は焦るように、鏡を見つめながら手を這わせる。

「そんな……

 そんな……
 
 そんな……
 
 あたしの顔がっ」

(いやっ、いやっ、あたしがディンガ族になっちゃってるぅ……)

自分の肉体を崩されていくような絶望感を味わいながら

沙織はガックリと手を床に告げるが、

しかし、沙織の股間からはもう感覚的に慣れてしまったペニスが勃起したままだった。

そして、

「んっ、やっ、いっいやぁ…
 
 なんで…」

沙織はその勃起する違和感に股間を眺めながら歯を噛み締めながら、

「そんな……

 こんなの……
 
 いやよっ、いやだよお」

と嗚咽を上げるが、

ムリッ

ムリッ

自分の鼓動にあわせるように沙織の股間のペニスは揺れ、

凶器の如く浮き出た血管が絡まりグロテスクなペニスを沙織は見つめていた。

(こんなのが……

 こんな醜いオチンチンがあたしに……)

黒光りするペニスを眺めながら沙織はそう呟いていると、

ドクンッ

ドクンッ

肉の槍ははちきれんばかりに膨らみ、

硬さを増していく、

そんなペニスを見ながら沙織は緊張しつつも、

オシッコするときのように手を自らのペニスに触れた。

「か、硬い………

 こっこんなに硬く…なるの」

フニャフニャだったときには考えられないような硬さに

沙織はギュッとペニス握り締めその感覚に喘いだ。

「あっ」

(な、何、これ……

 び、敏感………)

沙織は同世代の女の子がそうであるように、

ほんの少しの芽生えてしまった好奇心にペニスを観察し続ける。

そして、紫黒いペニスの先端。

亀頭の形に驚きながらそっと触れてしまうと、

「あうっ!」

(い、いや……何………痛いくらい、

 敏感なんだ……ここ)

「ああ……」

感じてくる快感に沙織は驚き、

そして少し手を離してみて、

今の自分の興奮を示すように

ビクンッ

ビクンッ

と震えるペニスに改めて驚いた。

(すごい震えてる………これがオチンチンなの……)

「な、なんか……

 変な気持ちに……
 
 だ、駄目……

 うっくっ
 
 はぁはぁはぁ
 
 ダメよ」

夢の中で射精して気持ちを思い出してしまった自分に沙織は気づくと慌て頬を叩くが、

しかし、

パラッ

その自らの頬に活を入れたとき、

沙織の大切な髪の毛が数本の束になって落ち、消えていった。



「ウソ!!……

 あっあたしの髪が……
 
 なくなってる!!………」

翌朝、目覚めた沙織は鏡の中の自分の姿に凍り付いていた。

昨夜までポニーテールにしていた髪の毛は全て抜け落ち、

ツルツルの坊主頭になっていたからだ。

そして、顔付きは更にディンガ族らしくなりつつあった。

「そんな……そんな………あたし」

呆然としながら立ち上がった沙織だったが、

しかし、そのとき体から関節の痛みが消えていることに気付いた。

「痛みが消えている…

 ま、まさか……」

徐々に馴染んでいっていたせいか、

忘れてかけていた体の変化はほぼ完了しつつあった。

アニらに比べれば色白いとはいえ漆黒の肌。

細い細身の体に、筋肉のみが付いたような手足。

縮みきった後むりっと発達した胸板。

沙織の体は元の名残をほとんど残していなかった。

「いやぁ、

 なんで、
 
 なんで、
 
 あたしが……」

『ふふ、いよいよ勇者の証を立てる頃合だな』

沙織が鏡の中の自分に夢中になっていたとき、小屋を覗き込んでいたアニは一言呟いた。



『やめろ、

 やめろ、
 
 離せっ』

沙織は祭壇に寝かされたまま、必死に抵抗していた。

五日目の夜。

沙織はディンガ族の男へと生まれ変わるための最後の儀式を迎えていた。

『ふふ、

 お前には男の…勇者の証を立てさせて、
 
 ディンガの名前を授けてやる。

 感謝するんだな』

『ふざけるなっ、

 離せっ、
 
 離せっ』

『言葉遣いも大分慣れたみたいじゃないか?

 思った通り、生まれ変わり具合もいいみたいだ』

『何だって!?』

『サオリ、お前は僕の友達の魂の波にとても近かったんだ。

 だから、お前に魂を入れればすぐに波が合わさって
 
 馴染むって思ったからディンガにしてやったんだぞ』

『そ、そんなのを僕望んでないっ。

 さっさと元に戻せっ』

『はっ、もうイリガの感覚も馴染んでるくせによくいうぜ。

 そろそろ勇者の証だって立てたくなってきてるんだろ?

 大人しくディンガになれよ』

『お前、楽しんでるだろ?

 僕をディンガにして楽しんでるんだ』

『分かるか?

 そうだろうな、

 お前みたいな他所の者の女に
 
 ディンガのよさを分からさせてやりたいっていうのは本当だ』

『そんなの知りたくない。

 僕はサオリだ。
 
 普通の女の子だ』

『そこまでディンガに染まっておいてサオリはないだろ?

 お前は行方知れずで、
 
 その間にディンガになってしまったんだ。

 もはや、お前の家族もお前だと分からないだろうよ』

『そ、そんな……

 そんなの信じるものかっ』

『どっちでもいい。

 お前は今からディンガになる。
 
 そうすれば諦めをつくだろう』

そう笑い声をあげるとアニは沙織に呪文を聞かせ始めた。



『〜〜〜〜〜♪』

ディンガの言葉を知ってなお意味が掴めない呪文。

その呪術は術を増幅するボタン球の力も得て、

沙織の体に浸透していく。

ムリッ!!!

『うっく、

 うっく……』

横になった沙織の股間より槍のような巨大なペニスが姿を見せ勃起していく。

『イリガの気持ちはどうだ?』

『い、いい、いいわけないっ。

 こんなのいるものかっ』

『じゃあ、証を立ててもそういえるか試してみるか?

 証を立ててればそれまでだけどな』

『や、やめろお』

沙織の必死の抵抗も空しく、

アニは沙織のペニスを掴んでいた。

『うっ、うくっ』

『サオリ、お前も何度かこの感覚は味わっていたのだろう?

 どうだ、胸の奥から力強く激しい感情が沸き立ってくるだろう?

 それが男の証拠だ』

(いや、いや、やめてっ……

 ううっ、嫌なのに、嫌なのに止められないっ……)

『これが自分の体を認め、証を立てるんだ』

「い、いやあ」

ディンガ族の体と化した沙織は最後の一線で戦っている。

しかし、

『ふふふ』

シュッ

シュッ

シュッ

アニは沙織のペニスを握る手を上下に動かし始めたのだ。

「ふぁっ、

 い、いやあっ、
 
 やめてえ」

敏感なペニスの肌を他人の手が行き来する。

己の肉棒を扱かれるという初めての体験に沙織の女の意識は飛びかけていた。

「ふぁっ、

 ふぁっ、
 
 ふぁぁっ」

『ふふ、女としてイコウというのか、面白い』

「こんなの……こんなの……ウソだっていってよお」

『逃げようとしても無駄だ。

 もうすぐお前はディンガの勇者の証を立てる』

「違うっ

 あたしは…

 あたしは、藤沢沙織よっ。
 
 ディンガ族なんかじゃないよぉっ」

と沙織はアニに向かって叫ぶが、

シュッ

シュッ

プチュッ

しかし、沙織のペニスから我慢汁が零れ出していた。

『いいぞ、

 いいぞ、
 
 勇者の証を立てる準備が整ったようだな』

「い、いやあ、

 いやあ、なんか……
 
 つっ、何かが……」

自分のペニスから溢れ出した我慢汁に沙織は混乱始めていた。

『ふふ、勇者の証と共にお前ディンガの名を授けよう』

少年の声ながら偉そうにアニは沙織に話し掛ける。

(ディンガの名前!?あたしの!?)

「そんなの要らないっ、

 要らないよっ!

 くっはあっ」

シュッ

シュッ

それなのに沙織は体が熱くなっていくのを感じていた。

ディンガになっていく自分。

沙織はそれに興奮を覚えていたのだ。

(ああ……

 おちんちんが痺れて………
 
 何、何なの、これ……)

「うっ、

 ううっ、
 
 出ちゃう、
 
 何かが……おしっこじゃなくて、
 
 何、これっ……
 
 あぁ、いやあっ」

『ふふ、男の精を出したくてしょうがないのだろ?』

(『男の精』?)

そのディンガの言葉は、沙織の興奮を一層高ぶらせた。

『さあ、ディンガになれっ、ディンガになるんだっ』

「あたし、あたしがっ……ディンガにっ」

沙織の体中から汗が噴き出し、ディンガ族男性特有の匂いを立ち込めていく。

そして、沙織は体の本能に従うように自らも腰を振り始める。

「ぅっ、ぅっ、ぅっ、うぅっ、うぅっ」

『いいぞ、いいぞ』

(ああ、いけないのに……こんなことしちゃいけないのに……気持ちいいっ)

沙織は禁断の味を知りつつあったのだ。

ディンガ族の男としての性感。

その気持ちよさを。

その代償は、藤沢沙織という自分そのものだった。

(ああ、分かる……で、

 出てくるっ、
 
 体の奥から、
 
 も、もう漏れちゃうっ)

『さぁ、ディンガの名を名付けてやる。

 さぁ出せ』

「あ、あ、あ、出ちゃうっ!!」

(あたしが……あたしが……グ、レに)

沙織は顎を突き上げ、男性の本能に従っていた。

沙織のペニスの中を新しい体液が突き抜け、

ブチュゥッ

白濁した精液という名の粘液を生まれて初めて吹き上げたのだった。

「グレになっちゃうぅぅぅぅあああああ」

『お前のディンガの名前はグレだ』

沙織が自らの名前を叫ぶのと、アニの命名は同時だった。



「はぁはぁはぁはぁ……」

(あたし………あたしは……)

生まれて初めての射精に呆然しながら、

沙織は手に纏わりつく自分の精液を見つめていた。

熱くどろどろした自分の体液。

初めて見る精液だった。

『グレ』

『グレ』

アニに促され、沙織は完全に声変わりしてしまったグレの声で自分の名前を呟く。

「あ、ああ、ああああ」

プビュビュッ

沙織は自分がしでかしてしまった自体に気付き、

今までに感じたことのないような興奮と後悔の念を感じながら、

残った精液をペニスから吐き出していた。



「あたし………取り返しの付かないことしちゃった……」

泣き喚きたいのに、

もはや沙織の瞳から涙が溢れることはなかった。

不思議と胸の中が空っぽになったような気分だった。

「あたし、もう帰れないんだ。

 ディンガ族のグレっていう男の子として生きていかなくちゃいけないんだ」

悔しいのに、どこかで喜んでいる自分がいる。

それが気持ち悪くてたまらないのに、

それ以上の感情が湧いてこない。

「どうしてなの………

 なんで、あたしがディンガ族にならなきゃいけないの……」

沙織は射精したときの快感と

手にした自分の精液の気持ち悪さを無理に思い返して自分を責める。

(あたしが………

 精液を……
 
 精液を出しちゃうなんて……
 
 おぇっ)

「くっ、うえっ………」

ようやく本当の自分の気持ちに戻り、沙織は嗚咽し始めていた。

「どうして、あのときアニに近づいたのよ、あたし」

自分がこうなってしまった原因を考える。

「あのとき……

 アニに付いていかなきゃ……
 
 あたしは……沙織のままだったのに」

沙織は股間に生えた巨大なペニスを見つめてそう呟いた。

ビクッ

ビクンッ

ビクンッ

変身のときの興奮が蘇り、沙織のペニスが勃起始める。

「だ、駄目よっ、何してるの、あたしっ」

ビクンッ

ビクンッ

黒く太く硬く逞しいペニス。

それは間違いなく今の沙織の所有物だった。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

ギュッ

そしてそれを沙織は自らのペニスを握り締めていた。

『僕のイリガ』

ディンガの言葉が口を付いたのにも関わらず、

沙織は呆けたかのように握り締めつづける。

『ああ、僕のイリガ』

シュッ

沙織の手が思わず上下に動き、カリ首に直撃する。

電撃のような気持ちよさが沙織を貫いた。

『あぁ、あぁ、気持ちいい』

自分がまるでグレと混ざっていくかのような気持ちになり、

沙織はすっかり興奮していた。

『これが、僕のイリガ』

それは生まれて初めてのペニスへの手淫だった。

ぎこちない動きだった手は次第に勢いづき、

沙織は男性の性欲に突き動かされていく。

このとき、グレの魂のかけらは沙織をリードしていたのだ。

沙織をディンガに導くために。

沙織をディンガに生まれ変わらせるために。

『あぁっ、

 あぁっ、
 
 あぁっ』

沙織は欲望に忠実にペニスへ快感を与えていく。

それはもはや、かつての沙織ではなかった。

ディンガ族の勇者・グレ…

まさにその姿そのものであった。



『う、

 うぅ、
 
 ぅぅ、
 
 ぅぅ、
 
 うおおっ』

ブシュゥッ

ブシュッ

ブシュッ

グレは確かに沙織を初めての男のオナニーへ誘い込み、

そして染めていく、

(あぁ、あたし、何してるよっ………

 こんなことしちゃ……駄目なのに、駄目なのに)

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

日本人の女の子からディンガ族の少年に姿を変えた沙織は、

理性では拒みながらも肉体の欲求には逆らえずオナニーをしていた。

かつてはなかった男根を扱き、

精液を出すことを求め、

オナニーしているのだ。

(い、いや……やめて、やめてるのよ、

 あたし……こんなの、こんなのおかしいよっ)

沙織の心の中ではそう叫んでいるのに、

しかし、その快感は間違いなく本物だった。

ディンガ族の男のペニス。

それが沙織の股間に生やされ、

沙織はその気持ちよさの虜になっていた。

(気持ち悪いのに……

 気持ち悪いのに……
 
 なんで、あたし、こんなことしてるのよっ)

心では泣きたいのに泣けない。

それは沙織の中に、

ディンガ族になってしまった自分に倒錯的な興奮を覚えてしまったからだった。

「こ、こんなのに負けちゃ駄目、

 駄目なのにっ。

 あ、あ、あたし、
 
 う、ううっ、
 
 うくぅっ!!」

ブシュウッ

ビュッビュッビュッ

沙織はブッシュの中で果てた。

大量の精液を地面に撒き散らし、

当に性欲が盛んなディンガ族の思春期の少年だった。

(き、気持ちいい………

 たまんない………
 
 ああ、これがディンガ……
 
 ディンガの男なんだ)

嫌悪感はあるはずなのに沙織は手に付いた精液をマジマジと眺め、

そして、匂いを嗅ぐ。

「これが……あたしの………精液」

吐き気がする一方で誇らしくも感じてしまう自分。

沙織は自分が分からなくなり始めていた。

「まさか……あたしがディンガの男になっちゃうなんて……」

沙織は精液を出したばかりのペニスを掴むとその敏感さに顔を顰めた。

「あぁ………何てことしてるのよ……あたし」

余韻が収まってくるに従って、沙織の理性が戻ってくる。

(あたし……

 このままディンガ族のグレになっちゃうつもりなの?

 こんなとこにいたら…
 
 あたし……本当にグレになりきっちゃうんじゃ……
 
 いや
 
 いやよ、そんなのっ!

 あたしは藤沢沙織よっ!

 こんな姿でいたくなんかないっ!)

沙織は蹲って、自分のありようを嘆いていた。



そして迎えた朝、

当たり前になった朝勃ちにも驚かず沙織は目覚めた。

夢の中で、沙織は元の自分の体を好き放題舐めまわしていた。

それはまるで変身するときにアニにされたことと似ているようだった。

「最悪………」

見ると、沙織のペニスからどろどろした何かがこびり付いている。

「う、うわっ……」

沙織が初めて体験した夢精であり、

そして、それが沙織に諦めを齎していく、

「あたし………

 もう元に戻れないのかな……

 日本に帰れないのかな……」

ディンガ族の男の子になりきってしまいつつある体で立ち上がると、

沙織は呪術を掛けられた小屋より表へと出て行く。

あれから一週間が過ぎていた。

沙織の家族や穣の家族も、帰国予定を既に過ぎているはずだった。

「もうみんな帰っちゃったよね……」

そう呟きながら沙織は一人一人の顔を思い出しすと思わず泣きたくなったが、

しかし、なぜか涙はこみ上げてこない。

胸の奥底に潜むグレの魂のかけらが沙織の感情も弄んでいるのかもしれなかった。

「どうしたらいいの、あたし……

 もう体だって……

 ディンガの男の子とかわんないよぉ」

沙織はブッシュの影に座り込むと、

萎えてしまった剥き出しのペニスを弄びながら

一週間前、上ってきたその先を見つめていた。

とそのとき、

「ゆ、穣っ!?」

沙織は視線の先に幼馴染の穣の姿を見つけると、

ドクン!!

その心臓が大きく高鳴った。

「穣が…」

「穣が…」

「穣が…」

一度は諦めた希望が沙織の胸の中を駆け巡り、

そして、それに合わせるように、

ムクムクムク!!!

萎えていたペニスに血液が送り込まれると、

その中の海綿体が充血し膨れ、固くなってゆく。

「穣…」

まるで惹かれていくように沙織、

いや、ディンガ族の勇者・グレは一歩を踏み出しすと、

「穣…

 あたしよ…

 あたしはここよ…

 こんな身体に…

 臭くて…

 真っ黒で、

 オチンチンが固くなる身体にされちゃったけど… 

 お願い、

 気づいて、

 あたしをディンガの呪縛から解き放って…」

ビンッ!!

股間にそそり立つニスを勃起させながら、

グレは歩いてくる穣の方へと向かって行った。



つづく



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。