風祭文庫・モラン変身の館






「沙織」
(第1話:アニの誘い)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-092





「え?

 何?

 あたしのこと呼んでるの?」

その日、ディンガ族の村を訪れていた沙織はあることに気づくと、

一緒に周っていた幼馴染の穣から離れ一人ブッシュの奥にある小屋に向かっていた。

それはディンガ族の同い年ぐらいの少年が沙織を手招きしていたからだった。

初めてのアフリカ。

しかも、日本と全く違う生活スタイルにすっかり魅了されてしまっていた沙織は

興味本位でその少年へと近づいていった。

「なーに?」

ここにきてから何度も見てしまっているものの、

裸同然のその姿に恥かしくなりながら沙織は尋ねた。

できるだけ顔を見つめていても、彼の姿全体が目に入ってしまう。

首、腰、腕にトンボ球の飾り紐を付けただけの姿で、

ペニスを剥き出しにした姿のまま沙織を見つめる少年。

ペニスが揺れるのが視界に入って沙織はドキドキしていた。

「○○○○」

「えっ、あ……ごめん。

 あっあたし、言葉が分からないの。

 うーん……英語なら通じるのかな?」

去年から習いだした簡単な英語の文章を構築しながら沙織は慌てる。

しかし、少年は沙織を足元から頭のてっぺんまで舐めまわすように眺めるとニヤリと笑い、

「○○○○○○?」

と話しかけてくる。

「え……何?」

少年に何かを尋ねられたらしいと気付いた沙織が一歩彼に近づいた…その瞬間、

「○○○○○っ」

少年は何かを呟くと、

ヌッ

リーチの長い腕を持ち上げ、沙織の眉間に指を突き立てる。

すると、

「あっ…」

バン!!

その瞬間、沙織の頭の中に何かが弾けた様な、

強引に戸を開かされたような音が響くと、

ス…

まるで潮が引くように沙織の意識は薄れ、

フラッ

ドサッ!

崩れるようにして沙織は倒れてしまった。

そして、それからどれくらい時間が経っただろうか、

「うっ(ズキっ)頭が痛い……

 あれ?
 
 あたし……
 
 どうして?」

朦朧とする意識の中、沙織はゆっくりと目を醒ます。

頭痛が少しずつ引いていき、ぼやけていた視界が徐々に戻ると、

暗い天井の下、沙織は自分が寝かされていることに気付いた。

「えっ!?

 なんで、あたし、こんなところで?

 うっ……」

そして、起き上がろうとして沙織が身体に力を入れた途端、

ズキン!!

沙織の頭に頭痛が走った。

「くぅぅぅ」

その痛みに沙織は頭を押さえると、

再び横になり周りを眺めた。

(そっか……あたし、ディンガ族の村にきてたんだっ)

小屋の中の様子を眺めながら、沙織は記憶を手繰り寄せ、

そして自分のいる場所に再確認した。

しかし、いま居る小屋自体は初めて見るもので、

少なくとも昼間に見物したものではなかった。

「どうして、あたし……ここにいるの?」

昼間に見た最後の記憶。

…ディンガ族の少年に会って、そして……眉間に指を突きつけられて…

「っ!?

 あいつ、
 
 あたしに何をしたの?

 ……

 それとも、あたしが突然倒れて寝かせておいてくれただけとか?」

一瞬、嫌な憶測をしてしまった沙織は慌てて否定をすると自分の状況を確認をする。

頭痛がして気分が悪い自分が小屋に寝かされている。

それは単に自分を休ませておいてくれただけかもしれない。

そんな解釈が沙織を少し安心させた。

「うん……大丈夫だよね?

 きっと……気分がよくなったらみんなが迎えにきてくれるんだ」

沙織は自分を納得させると小屋の中をもう一度見回した。

ここはどんな家なのだろうか?

先ほどのディンガ族の普通の家とは違い、

雰囲気がおかしいのは確かだ。

呪術的な道具や仮面、祭壇のようなものがおいてある。

そして、自分がその中心にいる。

(もしかして……呪術であたしの回復をお祈りしてくれたとか?)

そう考えた沙織は苦笑いをすると、少し離れたところにある焚き火を見つめた。

「○○○○○」

そのとき、反対側の入口から声が響くと、

「あっ」

沙織は首だけを回転させた。

「あ、さっきの……」

すると、そこには意識を失う前に会ったディンガ族の少年がいた。

「○○○?」

「大丈夫。まだ頭痛はするけど、

 だいぶよくなったみたい」

彼の言葉を理解していなかったが、

沙織は雰囲気だけを察して返答していた。

彼も沙織のいうことを理解していないみたいだが、

しかし、頷いてくれる。

そして、自分の胸に手を当てて

「アニ」

といった。

「アニ?

 それって、きみの名前なの?」

「アニ、○○○」

彼の仕草から沙織はどうやらそうらしいと気付き、うれしくなった。

「あたしは、沙織っていうの。

 沙織…わかる?」

自分の顔に人差し指を向けて沙織は自分の名前をゆっくりと言う。

すると、

「サオリ、○○○○」

少年は喜んでその名前を呟き、何度も頷いた。

「よかった。

 あたし、ちょっと不安だったんだ。

 ねえ、アニ。
 
 みんなはどこにいるか知ってる?」

沙織は安堵しながらアニと呼ぶディンガの少年に尋ねると、

「○○○○?」

さすがに会話は成り立たないようで、アニはちょっと困った顔をして顔を振った。

「あは……ごめんね、

 さすがに会話にならないよね」

「○○○○、○○○○○」

沙織の言葉にアニの方も何かいうが、

しかし、沙織にはさっぱり分からく、

「ううん、ごめん。

 あたしも分かんない」

沙織は仕方なく頭を振った。



その後はときたまアニと無意味な会話をしながら、

沙織は小屋の中で何かをしているアニを見つめていた。

何かの準備をしているらしいとも感じたが、

質問をするわけにも行かず黙ってそれを見つめる。

そして、次第に形になっていくそれを見て、

自分を中心にして何かが行われていることに気付いた。

「ねえ、アニ。

 何をしているの?」

「○○○○○」

「はあ……やっぱり分からないか……」

沙織は言葉が通じないのを少し残念に思いながらアニを見つめる。

しかし、アニの顔がさっきよりも険しくなっているのを見て、

何か大事なことをしているらしいと思った。

「邪魔しちゃいけないのかな……」

沙織は何が行われていようとしているかも知らずに、

アニが進めている儀式の準備を見つめる。

とそのとき、

チャッ!!

アニは1本の槍を手に取ると、

サクッ!!

素早く沙織の股の間に突き刺した。

「え?

 槍?

 ねっねえ、アニ。

 何をするつもりなの?」

その槍に視線を向けながら少し不安を覗かせた表情で沙織が尋ねるが、

しかし、アニは無表情のまま黙々を作業を続け、

「○○○○○○」

とディンガ族の言葉で答えるだけだった。

やがて、表から足音が近づくと、

アニの父親らしいディンガ族の男が小屋に入ってくる。

「え?

 誰!?」

(アニの……お父さん?)

顔付きからなんとなく判断した沙織だったが、

その男の顔に湛えられている嫌な笑いにゾッと寒気を感じた。

「何?」

「○○○○」

「○○○」

沙織の言葉に返事をせずにアニと彼の父親は何かを会話していると、

やがて話は終わったのかアニの父親は頷きながら、

自分の首から下がる青いトンボ球の飾り紐を外すと、

沙織に近づいて来きた。

「ちょっ、ちょっと……何ですか?」

無言のまま父親は沙織に近づいてくると、

沙織はディンガ族の男特有の匂いを嗅いだ。

「うっ。

 あ、あのっ」

困惑する沙織に構わずアニの父親は手を広げると、

すっと沙織の首の後ろにその手を回し、

沙織の首にディンガ族の首飾りをつけられてしまった。

「え……これ?」

一瞬プレゼントかと思い、沙織が気を抜いたとき

かぁっ

青白くトンボ球が輝き出した。

「やだ、

 なによこれぇ」

輝くトンボ球に沙織が困惑をしていると、

父親はニヤついた顔を引き締めると何か低い呪文のようなものを呟き始める。

「えっ、何!?」

首の周りで起きている異変と父親の呪文に沙織は慌てるが、

しかし、体を動かすことは叶わなかった。

(ウソ……一体、何が起きてるっていうのよ!?)

次第に首飾りが熱さをもってきているのが分かる。

そして

トクン…

トクン…

首飾りから発した熱いものが沙織の首に入り、

それが自分の頭に上ってくるような錯覚を覚えた。

「あ、はぁ、

 はぁ、
 
 はぁ、
 
 はぁ」

次第に締め付けられるような息苦しさを感じ、

沙織はうつろな瞳のまま息を荒らげていく。

(何……何かが入ってくるみたい……)

徐々に世界が廻り出すような不思議な感覚が沙織を包み、

平衡感覚すらなくなっていく。

男の呪文は歌のように沙織の頭を巡り、

その響きを焼きつかせていく。

(○○○○○○♪)

「はぁ、

 はぁ、
 
 はぁ、
 
 はぁ、
 
 はぁ」

息苦しさの中で沙織は熱さが体全体に広がっていくのを感じていた。

筋肉痛のように体が痺れ、じんじんとした痛みのようなものが走っていく。

そして、何より下半身の股間辺りが燃え上がるようになっていくのを感じた。

(くはぁ…ァソコが……

 うっ、何なのよ!?)

自分の中を突き抜けていくようなおかしな感覚が何度も下半身を震わせる。

びくっ

びくっ

今までに感じたことのない強い勃起感が股の間に存在している。

「はぁはぁはぁはぁ」

その強烈な感覚に沙織は放浪されると次第に意識を失っていき、

そしてついに沙織は気を失ってしまった。



次の朝…

「ふあ………あたし……えっ!?」

目覚めは非常に心地よかった。

が、沙織は薄い肌寒さに思わず驚いて飛び上がった。

低血圧で朝は弱いはずなのに不思議なほどの目覚めだった。

「何っ、あたし、裸っ!?」

そう、沙織が驚いていたのは体に布地が感じられないという感覚だった。

これは裸であること以外考えられない。

「ウソ……」

起き上がって見た自分の体は予想に違わず、

すっぽんぽんの自分の姿だった。

「なんで、あたし……」

羞恥心のあまり泣き出しそうになるが、

よく見ると腰や首、腕にもトンボ球の飾り紐が付けられていた。

「ど、どうして、あたしがこんなものを!?」

沙織は顔を真っ赤にして腕輪を見つめる。

フィットしているそれは嫌いではなかったが、どうも落ち着かない。

(もしかして……ここの人と同じ格好にさせられちゃったの!?)

冷や汗が脇から素肌を流れ落ちる。

(でも……ここって男の村だって……

 女の人は普通いないんでしょう?

 この格好って男の人のじゃ?)

沙織がそう考えていたとき、アニが気付いたように小屋に入ってきた。

「キャッ、アニっ、ちょっと出て行ってよっ!」

沙織は恥かしさのあまり胸を隠し、アニに抗議の視線を向ける。

しかし、アニはニヤニヤして見つめているだけだった。

「○○○○」

「えっ、な、何よ!?」

ふと沙織は急に胸のボリュームの異変に気がついていた。

女の子らしく少しは膨らんだはずの胸が、

逆に少し小さくなったようなおかしな触感が腕にある。

「え、え、えっ!?」

沙織は大慌てで腕を解くと、上半身を見下ろした。

すると、確かに見慣れた胸の大きさは少しばかり縮まり、

乳首の色も褐色がかり小さくなっている。

「なんで?」

「○○○○」

「わっ」

沙織が驚く間もなく近づいてきていたアニは沙織に飛び掛ると押し倒していた。

「○○○○」

「や、やだっ、アニ、やめてよっ」

沙織は悲鳴を上げかけるが、いきなり唇を奪われてしまう。

分厚いディンガ族の唇が沙織の唇を覆い、吸い付く。

「んーっ、

 んんーっ!?」

衝撃のあまり沙織は目に涙を浮かべるが、

気にすることなくアニは沙織に抱きついていた。

アニの息の匂いが直接沙織の鼻に入るだけでなく、

お風呂に入らないせいか強いディンガ族の体臭も沙織は強烈に嗅ぎ取っていた。

そして、アニの唾液が沙織を犯して行くように唇を介して沙織の中に流れ込んでいく。

沙織は吐き出したかったが、アニの唾液は確実に沙織の満たし、

ごくっ

沙織は思わず飲んでしまった。

(やだ、やだよっ……なんで、アニの唾なんか)

そう思いつつも、なぜか沙織は興奮し始めている自分に気付いた。

初めてのキス。

それを強引に奪われ、唾まで飲まされている。

ディンガ族のアニの唾を味わっている自分。これが他人の唾の味。

そう思うだけで沙織は心臓がバクバクしていくのを感じた。

(ど、どうしちゃったのよ、あたし!?

 あたし、おかしいよっ)

焦る気持ちの一方、アニの肉体を求めている自分。

アニの匂いがたまらなく、

それを自分と重ね合わせたくなるような欲求が生まれ、

沙織は無意識に抱きつき返す。

ほぼ全裸ゆえに汗がこびりついたアニの肌が

昨日の朝シャワーを浴びた白い沙織の肌に擦り合わされている。

アニの新たに浮かぶ汗は沙織の肌にべたつき覆っていく。

沙織はディンガ族の匂いに包まれていく自分に興奮していた。

「んふっ、

 んーっ、
 
 んーっ」

またアニも見慣れない元女の体に欲情し、

これを変えていく興奮に取り付かれていく。

この女の体をディンガに変える。

それこそがアニと呪術師の目的だった。

(な、何……あたし……なんか)

朦朧としながら沙織が性欲に突き動かされているのを感じて、

アニは唇を離すとペロリ…沙織の顔を舐め始めた。

(やだ、汚いよっ!

 や、やめてえ)

そのとき、既に沙織の唇は腫れたように膨らみ、

色も茶褐色に変色すると、ディンガ族の唇へと変わり出していた。

「や、やめてっ」

沙織がそう声に出したとき、沙織の声は擦れていた。

喉に硬いものの影が小さく動き沙織の声を変声させ始めていたのだ。

そんな沙織の変身を見届けながら、アニは沙織の顔を舐めていく。

「い、いやぁっ」

沙織は首を振ろうとするが、押さえつけられてほとんど動かせない。

アニは沙織の鼻を中心的に舐め、鼻の穴の周りを舌で撫で上げる。

じーん

くすぐったさと何ともいえない軽い疼きが鼻を走っている。

すると、そんな中少しずつ沙織の鼻は横に伸び、綺麗な整った鼻が崩れ始めた。

穴は横に伸び、鼻の頭からじわじわと茶褐色に染まっていく。

「は、鼻なんて…や、やめてよっ」

沙織は抵抗するものの、その妙な感覚に快感を感じ始めていた。



「あたし……なんてことしちゃったの……」

その日の夕方、沙織は呆然としながら小屋の中で佇んでいた。

あのあと、止められなくなった沙織はアニを必死に求めついには交わってしまったのだ。

もっとも沙織がアニを求めたのはディンガの精を自らの体を受け入れ、

変身を進めるためだったのが、そんなことは沙織自身気付くはずもなかった。

じーん

「あ、あう……」

自分の初体験にショックを受けていた沙織だったが、

しかし、求めたのは自分。

だからこそ、まだこの程度で済んでいるのかもしれなかった。

それよりも沙織は体の変調の方が心配だった。

朝よりも浅黒くなった肌。

さっきからジンジンと響くクリトリス。

覗き込んでみると沙織のクリトリスは見たことがないほど膨らみ、

親指ほどになっていた。

「ど、どうして……」

唖然として沙織は夕飯の味すらも覚えていなかった。

そして迎えた夜。

沙織は変な夢を見ていた。

そんな夢は本当にはじめてだった。

それは、股間に真っ黒いペニスを生やしそれを自分が扱いている夢だった。

(気持ちいい。とめられないよお……で、でも、こんなことしちゃっ)

自制しようとするもののあまりに強く激しい性欲が自分を包み込み、

手を止めることが出来ない。

手の中にある太く硬く敏感な肉棒。

それは間違いなく自分の感覚であり自分の一部だった。

そして、

「うっくっ」

沙織は身体を小刻みに震わせると、

シュッ

ブシュッ!!

己の股間より熱いマグマを吹き上げてしまった。

その瞬間、

「い、いやぁぁぁぁぁ!!!」

自分が射精するのを感じた沙織は悲鳴をあげながら飛び起きていた。

目の前には浅黒い飾り紐以外は全裸の肌。

そして、股間には皮を被った親指大の肉棒が突き出ている。

「ひいいいいっ」

シャーッ!!!

それを見た沙織は衝撃のあまり、思わず失禁してしまったが、

しかし、失禁の尿は沙織の本来あるべきところからではなく、

股間の膨らみきった肉棒の中を通り抜けその先端より噴出していく。

「ど、どうしてえ、

 なんで、なんで!?」

肉棒の先端より弧を描いて吹き上がる尿の軌跡を見ながら沙織は混乱し、

慌てて股間を撫でてみると、

そこには確かに昨夜大量に迸った愛液が残ってはいたが、

しかし、陰裂は閉じ大陰部が両側が膨らみはじめている様子が手に伝わってくる。

「な、何なのよっ、これっ!?」

その感覚に沙織は心臓が爆発しそうなほど鼓動しているのを感じながら、

体を曲げて股間を覗きこむと、

そこには小さなペニスと化してしまったクリトリスと、

口を閉じ、一本の浅い溝となってしまった股間しか存在しなかった。

「そっそんな…

 あっあたし…

 女の子じゃなくなってしまったの?」

溝と化してしまった股間を幾度も撫でながら沙織は力が抜けた口調で呟く、



「あ、ああっ………」

シャー…

次の日は衝撃の連続だった。

昼間、アニに無理やり立ち小便を強要された沙織は

立ったまま成長するペニスを握らされると放尿させられ、

放尿を終え後、

腰がびくびくっと震えるのを感じたとき、

「あぁ…いっいぃ…」

沙織は立ち小便に快感を感じるようになっていた。

そして、夕方、

昨日と同じようにアニと共に祭器の前で沙織は絡み合っていたとき、

「あんっ!!」

トロ…

アニにペニスを刺激させられた沙織は

ペニスの先端から透明な液体を垂れ流してしまったのだった。

「やだ……肌が黒くなってる………それに…匂いも」

沙織は焚き火の光に自分の体を見つめながら、

悲しみとも興奮ともつかぬ気持ちを抱いていた。

(あたし……

 もう女の子にには戻れないの?

 このまま男の子になっていくしかないの!?

 それも……

 ディンガ族の男の子に?)

そう呟きながらディンガ族化していく自分の姿を妄想しつつ沙織は股間を見つめる。

そして、その視線の先には小学生のとき見た穣のペニスと同じくらいのサイズになった

沙織のペニスが頭を擡げていた。

「あたし……

 男の子に………

 ううっ、そんなのいやだよぉ…」

股間のペニスを見つめながら沙織は泣きつづけ、

そして、いつしか寝入ってしまっていた。

しかし、その夜の夢は更におかしさを増していた。

目の前にディンガ族の男の子がいたのだ。

それもアニではなかった。

「だ、誰?」

怯える全裸の沙織の前でディンガの少年は自分の胸に手を当て

「サオリ」

と名乗り、その姿こそが沙織がなるべき姿だといわんばかりに、

ニヤリと笑った。

「違うっ、

 あたし、あたしが沙織よっ」

少年の笑みに沙織はそう言い返すが、

しかし、、少年は沙織を指差し、

「グレ」

と告げた。

「グレ?」

「グレ」

沙織がそう名乗った瞬間。

少年は沙織の唇を奪っていた。

「んむっ、

 んーっ、

 んーっ」

少年のキスに最初は抵抗していた沙織だったが、

しかし、徐々に力が抜けていくと、

いつしか、彼を受け入れてしまっていたのであった。

熱く、熱く、本当に熱いキス。

もう一人の自分と入れ替わるキス。

体に熱風が巻き起こり、中身が吸い取られ、

別の何かが押し込まれていくような感覚が沙織を襲う。

「んーっ?

 んんーっ!?」

ディンガ族の音色が、グレの声音が沙織の中に入ってくる。

何の意味も持たない音が沙織の中で響き、踊っている。

様々な音が奏で合い、次第に沙織の中の何かと置き換わっていく。

(いや……

 ディンガ族の言葉が……言葉がっ)

まるで洗脳されるような感覚。

頭の中がディンガ族の音しかない。

大音響ではないのに、

頭の全てがディンガ族の音色で埋まっていく。

(聞きたくないっ、聞きたくないよおっ)

沙織が必死に抵抗するものの、

その流入は止まらなかった。

”○○○○〜♪”

(ああ、分かる……

 分かっちゃう……

 い、いやあああ)

夢の中で沙織の姿は徐々にグレと名乗る少年の姿じみてきていた。



つづく



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。