風祭文庫・モランの館






「ムルシへの誘惑」
(第2話:勇者への変身)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-086





「ああっ、んあっ、んはあっ!」

真美は本能的な部分から徐々にコエにムルシ族の男に染められていく。

ウルカから立ち上るのツタのような『もや』は真美の細長い頭部にまきつき

額から真美の精神に入り込んでいた。

「ああっ、何っ……これっ、たまんないよぉっ……

 あんっ、あんっ、あんっ」

真美はウルカを必死に上下に動かす。

シュッ

シュッ

シュッ

我慢汁の音も混じり、音はどんどんいやらしくなっていった。

「あぁっ、あぁっ、あぁっ、あぁっ!」

真美は少しずつ『もや』に言語野を侵されつつあった。

頭の中に訳の分からない音や単語が

じわじわと入り込んでくる。

(ああっ、あたしが溶けちゃうぅ。

 何かが入ってきちゃうっ!)

真美は錯乱するように必死にウルカを動かす。

そして、

真美の中にムルシの言葉が少しずつ浸透していく。

(・・・・・・・っ

 ・・・・っ)

真美はその何か訳のわからない歌のようなリズムを味わいながら

自らも頭の中でそのリズムをかなで出した。

それがムルシ族の言葉だとも知らずに。

「はあっ、はあっ、はあっ!」

ウルカからはその間もウルカに仕込まれたコエの魂の複製が真美に巻き付き、

真美の額から真美の魂のど真ん中に根を張るようにコエの魂を突き刺し込んでいる。

既に真美の性欲はムルシの男の子のものに染め上げられ

コエの記憶の断片が注入されると

脳裏に見たこともないはずのムルシの女の股間を映し出していた。

(ああ、・・・・・っ)

真美はムルシの言葉で性交を願う。

ムルシの女との性交を妄想している。

シュッコ

シュッコ

「ああっ、・・・っ、・・・っ」

その途端、真美の言葉が乱れ始める。

ムルシの言葉のリズムが混じりコエの声そのものだった。

「ああっ、んんっ、・・・っ!」

真美は知らず知らずのうちにムルシの言葉を使っていた。

そして、

コエの魂から女との交わりの記憶が流入すると、

真美は自ら望んでそれを貪った。

「ああぁっ、ああぁっ、ああぁっ!」

真美は日本語らしくないイントネーションで声を震わせる。

真美は未だに自分がコエの魂の複製と交わっていることに気が付かなかった。

真美はコエとの一体感を感じながら

登りつめていく。

「あぁぁぁぁっ!!!」

腰を必死に突き上げ、真美はウルカを握り締めた。

ブチュゥッ

ビュワッ

ビュワッ

ビュヲッ

真美はコエの魂に巻き付かれていることも知らずウルカの中に射精していた。

今まで最高の快感が真美を包み込む。

なんともいえない満足感が満ち足り、真美はウルカから手を離したとき

ピキッ

握り締められていたウルカに亀裂が僅かに入ったのだった。

それからどのくらいだっただろうか?

真美は元の自分の姿への変身の真っ最中だった。

精液を垂らしているペニスは徐々に色が薄くなり小さくなっていく。

まるで小学生の男の子のペニスぐらい変化すると

自ら折れるように股の真ん中に張り付いていく。

「はあはあはあはあ……」

ぴゅっ

最後にペニスの穴が肉芽から離れると最後の精液が噴出した。

「んはあっ!」

真美はドキドキしながら自らの変身を眺めている。

肌が白くなり、

細く脂肪がついた手足に曲線美が戻ってくる。

甘い女の子の体臭が少しずつ自分から漂ってくる。

「ふんっ、ふんっ」

真美は未だに面影の残る横に開いたコエな鼻で女の子の匂いを嗅ぎ取り興奮していた。

「はあはあはあっ」

(ああ、なんだろ……すごくむらむらする……)

真美はペニスを扱きたくなる気持ちでいっぱいになっていた。

ぷりっ

ぷりっ

ぷるっ

逞しい胸板が少しずつ丸く膨らみ乳首も張り出しピンク色になっていく。

それに真美は釘付けになっていた。

まるで初めて日本人の女の子の裸を見たムルシの男の子のように。

「はあっ、はあっ、はあっ……」

(たまんないっ……あたし、こんないい体だったの……)

言葉遣いこそ、真美のままだったが

しかし、真美の思考はかなりコエのものに近づきつつあった。

「し、したいっ……・・っ!」

真美はそのとき混ざったムルシの言葉に気が付いていなかった。

「ああっ、いいっ、

 いいよぉ〜」

真美は風呂場でオナニーに夢中になっていた。

女の快感がすごく新鮮に感じられる。

まるで初めて女になったような気分だった。

そして、真美は自分の女性器に食らい付きたくなるような衝動に憑り付かれていた。

「ああっ、

 ああっ、

 いいっ、
 
 いい!!」

そう叫びながら真美は無意識のうちに

自分の割れ目より溢れ出す愛液でベトベトになった自分の指を口に入れて舐めまわす。

その愛液の味を味わいながら真美はクリトリスが小さいながらも硬く勃起するのを感じていた。

そして、

「あんっ、

 あんっ、
 
 いい!!」

その指を舐めながらもう片方の手で乳房を弄ぶ。

「ふうっ、

 ああっ!!」

(な、何……この感覚……

 まるで初めて女になったみたいな……

 ああっ、おかしくなっちゃいそう…

 自分のなのに……

 それに食らい付きたい…

 あぁ舐めてみたい……)

真美は自分の乳首を眺めながら

それにむしゃぶりつきたくなっていた。

そして、鏡に自分を映していると

自分の顔がどんどんいやらしくなっていく。

ぺろっ

(え……)

真美は舌なめずりをしている自分に気付き

急に我に返ったのだった。

「な、なんで……あたし……

 や、やだ……どうして?」

混乱しながら自分の変貌ぶりに唖然とする。

急に鳥肌が立つのを感じて真美は慌ててシャワーを浴びると

自分の部屋に戻ったのだった。

「うっ……

 すごい匂い………」

冷静さを失い、ムルシ族の男の性欲に身を任せたまま

自分が行ったオナニーの名残が部屋の惨状を見せている。

床に飛び散り水溜りのように溜まっている白濁した精液。

ムルシ族の男性特有の体臭が自分の女の子の部屋に立ち込めていた。

(あたし……コエに変身して……こんなことしちゃってたの)

それを見た真美は一瞬吐き気を催したが、

しかし、後片付けをしないといけないと思い部屋へ入る。

そして、精液の溜まっているところに近づいたとき、

思わず鼻を覆った。

「こっこれ…

 ……あたしが出したんだよね……」

ベットリと床に付着している精液を見ながら真美はそう呟くと、

どきっ

どきっ

っとなぜか真美の胸が高まってくると、再び興奮し、

そして、真美は女の子の指で自分がコエに変身している間に

自分で射精した精液にそっと触れる。

ねちゃっ

粘性のある白濁した精液が指から伸びて糸を引く。

「うわっ……

 こんなのがあたしの体から出てたなんて……」

その様子に真美はショックと興奮が混ざりさらにドキドキしていく。

(あたし、どうしちゃったっていうのよ……

 普通の女の子のはずだったのに……

 男の子に変身して…

 しかも、ムルシ族の男の子に変身して…

 こんな射精までしてるなんて……

 あたし、おかしいよ)

真美は自分がおかしくなっていっていることを自覚しながらも

またこの精液を出してみたい衝動にかられていた。

股に生えた逞しいムルシの勇者の象徴から熱い体液を吐き出す

あのときの欲望と快楽を思い出すと

心臓が今にも破裂しそうだった。

「はあ、はあ、はあ……」

(駄目……着替えてさっさと後片付けしないと……)

頭の中を広がっていく妄想を振るい払いながら、真美は立ち上がると

なおも絡んでくる妄想を必死に抑えようとした。

しかし、

バスタオルを解き机に向かうと自然な動きで真美はウルカを手に取っていた。

「え………?」

真美は自分の右手に握られているウルカを見て唖然とする。

「あたし、何してるの?」

真美はそんな自分にびっくりしながら見つめていたが、

そのとき、

びりっと電気のような刺激が真美の体を突き抜けた。

(や、やだっ……

 ま、また……
 
 またやっちゃった!?)

ウルカからの合図に真美は驚くのと同時に後悔をした。

そう、今までは変身が始まる前に親に見つからないようにウルカを隠していたのだが

しかし、ウルカの中に射精してしまったのと

自分への変身への興奮ですっかり片付けるのを忘れていたのだ。

(だ、駄目っ!

 あたし、また変身しちゃう!!)

真美は心の中でそう叫ぶが、

しかし、真美は心臓は

ドクン

ドクン

と激しく波打ち、

それを感じながら真美はこれから始まろうとする変身に身構えた。

しかし、このときはいつもの変身とは異なっていた。

股に近づけられるウルカの上にできた裂け目から

『もや』がひゅるひゅると漏れ出すと

真美の全身を巻きつくように伸びて真美の裸体は紐を巻かれたようになっていく。

「えっ!?」

真美は鏡の中に映る自分が『もや』に巻きつかれているのに気付き驚いた。

(な、何っ!?

 これって何なのっ!?)

驚く真美に構わずに『もや』は首に巻き付くようにして数回周っ後

ひゅるる…と真美の顔の前にくる。

「ひっ……」

目の前に現れた『もや』の煙の先端に真美はぎょっとするが

しかし、

シュッ

まるで弾丸のように『もや』は一気に加速すると真美の額を貫いた。

「あっ!?」

額を貫かれた瞬間、真美は体を硬直させると、

ビクンッ

ビクンッ

と立ったままの体を痙攣させる。

そして、目を見開いたまま鏡に映る自分を見つめていた。

(あ……頭が……あっ、熱い。

 前の方から燃え上がるみたいに熱くなってく……

 つ

 つあっ!!)

真美は片手でウルカを持ったまま立ち尽くし

『もや』に頭を貫かれたまま頬を赤く染めていった。

(はあ……何……

 頭が……ぼうっとする……

 風邪でも引いたみたいな……

 ああっ……

 んんっ……

 気持ちいい)

そう感じながら真美は鏡の中の自分を見つめていると、

ドクン

ドクン

ウルカから伸びる『もや』はまるで鼓動するかの様に脈動を始めると、

ゆっくりと真美の魂に根を張り、

そして光の粒子を真美の魂へと放出し始めていた。

シュルルルル…

ウルカから伸びる『もや』の筋を通って光の粒が真美の額から頭の中へと入ってくる。

それはウルカに込められたコエの魂の複製の本体より

真美へ向かってコエの魂のかけらが流れ込んで来ている証であった。

その一方で真美は

「ああっ、な、何ぃ?

 この音…このリズム…
 
 この言葉!」

自分の思考とは関係なくムルシの言葉や歌のリズムの奔流が頭に入って来るのを感じると、

その音や言葉は真美の心の中に溶け込むように入ってくる。

(ああ……何、これ……

 ムルシで聞いた……
 
 あの音が……聞こえる……

 ムルシ……・・・・・っ

 ・・・・っ)

ムルシの言語は真美の中で徐々に意味を持ち

そして、真美の思考の中に溶解していく。

真美の思考の色にムルシの色が混ざり濁っていく。

「ああっ、たまんないっ!!」

突然真美はそう叫ぶと腰を落すと、

そのリズムに感じているようにびくんっびくんっと震えていた。

(ああ……あたしの中に……

 ムルシが……

 ・・・・っ!)

真美は倒錯した快感を覚えながらムルシに染められていく自分に興奮していた。

「いいっ、いいっ……

 あたしをムルシに……・・・コエ」

真美がそう漏らした途端、

体を取り巻いていた『もや』が一気に真美の体に溶け込むと

真美の白い肌が日焼けでもしたようにじわっと黒く染まり出した。

そして、全身から

ビキッ

ビキッ

ムキッ

と筋肉や骨の蠢く音が鳴り響くと

真美の体形が徐々に…だが普段より激しく変化していく。

乳房は張り出す筋によって上下左右に引き伸ばされるように胸板に形を崩し、

クリトリスはムクムクと成長するとムルシ族の男性器へと姿を変えていく。

ムクッ

ムクッ

真美の鼓動が呪術と関係しているのように鼓動にあわせ

クリトリスが震えながら巨大な肉棒へと変わっていく。

「う、うあああ〜っ」

真美は大声を上げながら変声期を迎え、

喉に男らしい喉仏を発達させていく。

全身から変身の熱さに伴う発汗が起こり

真美の全身からムルシの男の体臭が噴き出していく。

女の子のままの鼻の粘膜にムルシの匂いが鋭く感じられた。

「あ、あたし……またムルシ族に……なっちゃうぅぅ」

真美は悶えながら変身に耐える。

そして、興奮しながら生えてきたコエと同じペニスを扱き始めた。

シュッ

シュッ

「ああ、んっ、んっ」

真美は再び感じられるようになった男性器の感覚にうっとりしながら漆黒の逞しい体を震わせ

男のオナニーを始めていた。

そして、それにあわせ真美の頭蓋骨が変わっていく。

ゴキッ

ゴキッ

顎が逞しく横に伸び鼻の穴が大きくなる。

目の周りが張り出しアフリカのムルシの血統が真美を変えていく。

真美は自分の顔がムルシ族に変わっていくことにゾクゾクするような快楽を覚えていた。

自分でもまんざらではない女の子の顔が

たまたまアフリカで会ったムルシ族の男、コエの顔へと代わっていく。

「はあっ、はあっ、はあっ……」

真美は自分の肉体が民族や人種すら超えて

別人へと変貌していくことにたまらない興奮を感じていた。

(あ、で、出ちゃう……

 あたし、また射精しちゃうっ!!)

女の子であったはずの自分が本来体験することなどできるはずのない

『射精』をしようとしていることに真美の心臓が破裂しそうだった。

そして、真美はムルシの男としての高みと喜びを登りつめたその瞬間、

真美の股間に生えた男性器よりムルシの血統を持つ精液を

ブシュウッ

ビュウッ

ビュッ

ビュッ

と激しく吹き上げ、射精をしてしまった。



「ああ、

 はあっ、
 
 はあっ、
 
 はあっ……」

今日は既に先ほどの変身も含めて七回目の射精だった。

先ほどの変身で五回もしていた真美だったがムルシの精をそう簡単に尽きないのか

それとも再変身したことで精を取り戻したのか真美はまたオナニーに耽っていた。

(あたし……

 こんなことばっかりしてたら……

 あ、ば、馬鹿になっちゃうよ……

 で、でも……き、気持ちいいっ!!

 と、止められないよぉ。

 ど、どうしたらいいの……あたし)

真美は股間に生えたペニスを扱きながら嵌まり込んでしまった男のオナニーに困惑していた。

それでも気持ちよさは変わらない。

(あたし……

 だんだん馬鹿になってくみたい……

 ああ、こうしてると……

 どんどんムルシ族に染まっていくみたい……

 ・・・する度に

 あたし、勉強してきたこととか忘れていくの……

 コエの・・・にのめり込んで

 ・・・しちゃうたびに

 あたし、コエの魂が入り込んで

 あたしがコエになってっちゃうの……

 ああっ、たまんないっ!!)

真美は妄想しながら興奮を高ぶらせていく。

自分が体だけではなく体につられて頭の中までムルシになっていくような

そんな妄想に耽っていた。

しかし、

それは妄想に留まらなかった。

その真美の妄想を叶えるかのように消えかかっていた『もや』が再びウルカから溢れ出すと

真美の額から光の粒を送り込んでいく。

「ああっ、んっ、んっ、んっ」

その途端、真美は止まりかかっていた手淫を再開し

股間に生えたムルシの男の象徴を必死に扱き始める。

(あ、頭に……入ってくる……

 あの音が……ムルシの音が……

 ああ、気持ちいいっ!!

 あたし、あのときのコエとおんなじになってく……

 あたし、勉強してきたこととか忘れて行っちゃうの……

 オナニーする度に…

 ムルシ族の男の記憶があたしに溶け込んで……

 あたしはムルシに染まっていっちゃうの

 あたしはあたしの記憶を少しずつ奪われて……

 数学も古文もわかんなくなって……

 頭の中までコエとおんなじになっちゃうっ!!

 ムルシ族と何もかも同じにされちゃうの

 あたし、ムルシに同化させられちゃうっ!!)

真美の妄想はどんどんエスカレートとしてオナニーを登りつめていく。

その間にもウルカから伸びる『もや』から光の粒が真美の中に溶け込み

今度は真美の中から漏れ出した光の粒がウルカの中へと吸収され始めていた。

「ああ、ああっ、ああっ、ああっ!!」

真美の魂の変化は更なる激しい快感を呼び、

真美は激しく悶える。

そして、真美の中ではウルカのリズムが真美の心を満たし

真美の中から何かが抜け落ちていっていた。

(な、何……まるであたしが別の何かに変わっていくような……

 気持ちいいっ!!

 ・・・・っ!!

 たまんないっ……・・・・っ!!)

真美は、ムルシ族の思考を混ぜ込みながら陶酔している自分に気が付いていなかった。

「うっ、うっ、うっ!!」

真美は男のように腰を突き上げ真美という女の中にムルシの魂を犯し込むように

ブシュッ

ジュッ

ビュッ

と射精をする。

「はぁ

 はぁ
 
 はぁ
 
 はぁ……」

ようやくすっきりしたような久々の爽快感を覚えながら真美は射精の余韻に浸るが、

しかし、真美は変身したコエの肉体のまま、ただぼうっと突っ立っていた。




「はぁ……あっあたし、どうしたんだろ……」

真美はなぜか元の姿に戻らないまま家の中をぶらついていた。

元に戻るのが面倒臭いような…

もう暫くコエの姿でいたいような思考が真美を支配していた。

真美は一階に下りてくると冷蔵庫を開け適当に食事をする。

皿を出すのも面倒でビニールを毟り取ると被り付いていた。

真美は椅子の上で胡座をかき

普段の彼女らしからぬ仕草で貪るように冷蔵庫の中身を平らげていく。

「おいしい……

 こんな食事初めて…したみたい……?」

真美はなぜか新鮮な濃い食品の味に感動しながら食事を終えると

床に寝転んでいた。

フローリングの冷たさが気持ちいい。

背中の肌に直接触れる木の床の冷気。

普段の土の感触とは全く違っていた。

(土の感触?

 あたし……あれ?裸!?)

自分でもおかしな思考に気付き真美は起き上がる。

そのとき真美は変身したムルシ族の少年コエの姿のまま

自分は股間にペニスケースのウルカ付け寝転んでいた。

「あたし………」

このことに気づいた真美は

普段の自分らしさを取り戻すと唖然として自分の体を見つめる。

(あたし……どうして、こんなことを……)

慌ててテーブルの方を振り返ると

テーブルの上は毟り取ったビニールの包装で散らかっていた。

「あたし……どうしちゃったの!?」

真美は怖くなって慌てて片付けると自分の部屋に戻った。

歩くたびにウルカが揺れるが

なぜかそれがしっくりきてしまう自分。

真美は自分に何が起きているのか分からなかった。

「……ひ、酷い……」

自室の部屋のドアを開けるとここ八回以上の射精で

精液があちこちに飛び散った真美の部屋の惨状が目に映る。

ムルシ族の男の匂い。

精液の香りが充満している。

真美は慌てて雑巾を持ってくると

粘着質にかぴかぴになり始めていた精液を拭き始めた。

「面倒臭い……

 はあ」

いつもなら苦にならない部屋の掃除がやけに邪魔臭くなってきて真美は椅子に座る。

目の前にある宿題。

まるでやる気にならない。

真美はぺらっとページを捲って見た途端、

一瞬ぞっとするのを覚えた。

「あれっ!?」

コエと同じ真っ黒な指で捲っている数学の課題。

難しい漢字が読めない。

それ以前に数式の意味がおぼろげにしか分からない。

簡単な掛け算すらすぐには思い出せなかった。

(あたし……どうなっちゃってるの!?)

真美は頭から血が引いていくのを感じていた。

(まさか……

 ホントにあたし、馬鹿になっちゃってるの!?

 も、妄想だと思ってたのに……

 あたし、本当に記憶を奪われてるの!?)

真美は恐ろしさに胸をバクバクさせつつ、

知らない内にウルカの中のペニスを勃起させていた。

真美は慌てて英語の教科書を取り出す。

一学期にした最初の方のページを開く。

「え、えっと………」

簡単な単語はなんとなく分かるような気がするが

習ったはずの文法やむずかしめの単語は

習ったことすえあやふやになっていた。

(あたし……こんなの、勉強したっけ……

 あれ……わかんない……

 わかんないよっ!!

 ど、どうしようっ!?)

ドクン

ドクン

真美は驚愕と共になぜか興奮もし始めていた。

「あ、い、いやっ……

 ちょっ、ちょっと……」

真美自身も自分のペニスが勃起して

ウルカがきちきちになっていることに気付き慌てる。

(なんで……

 どうしちゃったの、あたし!?

 そ、そういえば……
 
 さっきの変身だって、なんかおかしかったし…

 ま、まさか……あたし、本当にムルシ族になりかけてるの?)

真美は緊張から脇から冷や汗が噴出し始める。

きつい自分の体臭にどんどんおかしな方向へ興奮していく真美。

「はあ、はあ、はあ……」

(だ、駄目……

 このままじゃ、ホントにおかしくなっちゃうよぉ)

そう思っているのに真美のペニスは硬く太く充血していく。

「はあ、はあ、うっ!」

ピキッ

そのとき

真美が先の変身で作った亀裂は更に大きくなった。

(と、とにかく……元に戻って……

 それで、考えなきゃ……

 このままコエの姿でいたらもっと大変なことになるかもっ!!)

混乱する真美は自分がもっとムルシ族に変心してしまうことを妄想して

不謹慎にも更に興奮を高ぶらせる。

しかし、真美と一体になっていたウルカはその妄想に応え始めた。

ムワッ

ウルカから噴き出すように『もや』が出てくると

「いっ、な、何っ!?

 こ、この煙っ、さ、さっきの!?」

真美は驚くが嫌な予感がして慌てて椅子から立ち上がる。

しかし、煙から逃げようにも

股間に生えるように聳え立つウルカは真美から離れず煙との距離は変わらなかった。



つづく



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。