風祭文庫・モランの館






「ジュワニ」
(最終話:染まる魂)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-072





明菜がジュワニになってから一月半が過ぎた。

元は明菜だった魂は、ジュワニの魂として肉体に馴染んだと呪術師は元明菜に告げた。

そう新しく生まれ変わったジュワニはアヤニ族の生活に慣れ

アヤニらしい生活を送っていた。

ただ、その心は未だ明菜のままだった。



ある夜

呪術師は元明菜…ジュワニの様子を伺いにジュワニの小屋を訪れていた。

もちろん、本人には気が付かれないようにである。

簡素な作りのアヤニの小屋は隙間から中が覗き見られる。

中の焚き火の灯りもあって、中の様子は観察しやすかった。

その中でジュワニは食事を済ませていたらしく

物憂げな表情で焚き火を見つめていた。

「あたし……このままジュワニとして生きていかなきゃいけないのかな…」

日本語で呟くジュワニ。

昼間はアヤニの言葉でアヤニの若者らしく振舞っているのにその様子は明菜のままだった。

呪術師もそれが気になって見にきていたのだが…

ジュワニは、棒を手に床に何かを刻みつける。

七つの模様が並び、端で折り返して次の行に移っていた。

恐らくカレンダー代わりに何日経ったか日を刻んでいたのだろう。

「もう…一月半も経ってる…

 お母さんたち、日本に帰っちゃってるよね…

 帰りたい、帰りたいよぉ。

 でも、こんな体じゃ、あたし……」

ジュワニは悲しそうに呟くと膝の間に頭を埋めた。

暫くそのままじっとして

物思いに耽っているようだった。

呪術師は日本語で話し未だ少女のままジュワニをじっと見つめていた。

「はぁはぁ…」

しばらくしてジュワニは荒い息をしながら顔を上げると

小屋の隅にある彫像を眺める。

「あたし、このままなんてイヤ…

 はぁはぁ…

 一体どうしたらいいの……

  あたし……

 元の体に戻りたいよぉ」

ジュワニは泣くのを堪えながら立ち上がると彫像を取りに行く。

手に取った彫像の薄汚れた鏡にジュワニの顔が映る。

ジュワニはじっと自分を眺めながらさらに息を荒くしていた。

「あたしの顔……

 はぁはぁ…

 あたしの……顔…

 なんで映してくれないのぉ」

ジュワニは以前の自分の顔を思い返していた。

細い眉

二重瞼とほどよい長さの睫

自分でも気に入っていたかわいらしい瞳

バランスの取れた鼻

さくらんぼ色の唇

肩にかかる手入れのされた髪

以前の自分を思い出していくだけでジュワニのペニスは勝手に勃起し

股間に硬くグロテスクな肉棒を勃ち震わせる。

「あ、んっ……

 あたし……

 あたしっ」

ジュワニは自分のかつての裸体を妄想し始めていた。

白く淡くピンクがかった綺麗な裸体を

明菜の十六歳の女の子の体を

そうしているとジュワニは今まで感じたことのない感情が

ムラムラと湧いてくるのを感じた。

「あたし……

 元に……

 元に戻りたいよぉ」

そういいながらも、

ジュワニのペニスは触れてもいないのに爆発寸前なほどに膨れ上がり、

ビクンビクン

と脈打つ様はジュワニの雄性を誇示していた。

「あ……

 うっ、ヤダ……

 なんで…」

ジュワニ自身も硬く痛いほどに勃起するペニスに気付き

ようやく自分自身の下半身を見下ろす。

(触ってもいないのに……こんなになっちゃうなんて……)

ジュワニは自分が性的に興奮してペニスを勃起させてしまったのを知ったのだ。

「はぁはぁはぁ……

 一月前はこんなのなかったのに…

 あたしに……

 はぁはぁ…

 イリガが……

 ああ、駄目…」

ジュワニは明菜の肉体の回想から現実に戻ってきていた。

(あたし、また興奮しちゃってる……止められないよぉ)

ジュワニはイケナイと思いつつも

一月半前に交換され、自分の肉体となった『今の肉体』に感じ、

自分が妄想だけで勃起させてしまったペニスをじっと熱く見つめている。

(あたし……体を取り替えられちゃったんだよね……

 アヤニのジュワニっていう子の体と……

 あたしが…

 アフリカで生きてるアヤニ族になっちゃうなんて……

 こんな真っ黒な体になっちゃうなんて…

 あたしの体は……

 ここで生まれ育ったんだよね…

 なのに、あたしの魂がその中に入ってて……)

ジュワニは、再び自分を味わい始めていた。

他人の肉体を感じている自分に

他人の体でオナニーしてしまう自分に

異性の体になって射精なんてしまっている自分に

ジュワニになってお風呂に入らなくっても平気になりつつある自分に

そう興奮しているのだ。

「あたし……

 ジュワニの体に…

 あたしがジュワニ…

 ハァハァハァ……

 こんなのって…」

ジュワニは鏡を見つめていた。

アヤニの言葉がわかるようになって初めて知った

『魂を肉体に馴染ませる儀式』

それがこれなのだ。

それは自分が望まない方向に自分を誘ってしまう。

そう知りながらもジュワニになってしまったことに興奮を覚えてしまった元明菜は

この鏡をオナニーする道具として使ってしまっていた。

鏡は己をジュワニに溶かしてくれる。

自分がジュワニに溶け込んでしまいそうになる陶酔感こそ

ジュワニが男のオナニーにハマってしまった原因だった。

「はぁはぁはぁ…

 いけないのに……

 出ちゃう…

 出ちゃうよぉ

 ああっ、んっ、んっ、んんっ!!」

ジュワニのオナニーは更に激しさが増す。

呪術師は息を飲んでその光景を眺めていた。

なぜなら、明菜の魂の色を残す言葉に対して

ペニスを扱くその様子は当にアヤニのジュワニそのものだったからだ。

「はぁはぁ……

 んぅっ、くぅ〜っ!!」

ブチュッ

ジョッ

ジョッ

ジョッ

ジュワニの肉体から白濁した熱い迸りが飛び出していく。

元明菜はジュワニがかつてしていたオナニーを

そのまま再現するほどその体に馴染んでいっていた。

明菜が村を訪れたあのときアヤニの男でさえハッとするような可憐な少女が

ジュワニの肉体に根を張り、

当たり前のように『勇者の証』をたてている様はある意味成功だともいえた。

しかし、呪術師はその出来だけでは満足ならなかった。

ジュワニは勇者となり、女たちと子孫を作らねばならない。

そのためには、ジュワニに残る女の心が邪魔だと考え

新たにジュワニに掛けるべき呪術を思案していた。



その深夜

ジュワニが寝込んだ頃、呪術師は儀式の準備をしてジュワニの小屋へと戻った。

中を覗くとすっかりジュワニは寝込んでいる。

呪術師はそろりそろりと中に入ると彫像をジュワニに向けその背後に座り込んだ。

そして、

『○○○○』

と何かを呟くと

キラリと彫像の鏡が光り

向けられていたジュワニがビクッと反応を示した。

それを確かめると

『○○○○○』

まるで何かのお経のような呪文を歌のように詠唱していく。

そして、その呪文は夢の中のジュワニを侵していった。




…夢の中でジュワニ、いや、”明菜”は小屋の中で浮かんでいた。

 呪術師の小屋の中で明菜は一人の少女で寝ていて

 「あ、あたし!?」

 それを見た途端、”明菜”は思わず叫んでしまった。

 それは一月半前

 肉体の交換が行われてその夜の光景のようだった。

 突然小屋の中に月の光が差し込むと

 年老いた呪術師と今のジュワニ(明菜)の肉体を持つ本来のジュワニが入ってくる。

 (これって……体を取り替えられたときの?)

 ”明菜”は宙を漂いながらその様子を呆然として眺めている。

 そうしている内に明菜の肉体の横に立っていたジュワニが

 明菜の傍に横に並んで寝転ぶとその二人の頭の間に

 呪術師が何かが絡み合っているような彫像を置き

 それに手を翳し始めた。

 『○○○○』

 「始めるぞ」と呪術師はいった。

 当時は分からなかったアヤニの言葉が

 ”明菜”には当然のごとく分かった。

 『いいよ、ムイェ』

 本来のジュワニは決意したかのように力強く言うと
 
 呪術師は黙って頷き呪文の詠唱を始めた。

 『○○○○○』

 詠唱は低く唸るような声でリズミカルに続き

 その内容はアヤニの言葉を会得した”明菜”でも分からなかった。

 「はぁはぁはぁ…」

 そこに女の子の喘ぐような息の音が耳に入る。

 眼下を見下ろせば明菜の肉体はが寝魘されているようで
 
 汗を浮かべながら苦しそうな表情をしている。

 横のジュワニも明菜よりかは我慢しているようだったが

 何かに耐えているような顔つきだった。

 (これが……肉体交換の儀式…)

 宙にいる”明菜”はただそれを眺めるいることしか出来なかった。

 明菜は更にうめき出すと

 「はぁっんぅっ……んぁっ」

 足を擦り合わせ出した。

 気になって移動してみると

 スカートの浮いているところからベトベトに濡れたショーツが見えた。

 ゴクンッ

 その衝撃的な光景に”明菜”は思わず生唾を飲み込む。

 あのときは意識がなかったので、何かが起きていたのか分からなかったが

 呪術によって性的に興奮していたようだ。

 (これが……

  あのときの…あたし……)

 ”明菜”は元の自分を見るというよりは

 男が他人の女を見るような眼差しで釘付けになっていた。

 足の間に見えるショーツは平らで

 今のジュワニになった自分は明らかに違っている。

 ”明菜”は宙に浮かびながら自分の股間で勃起しているジュワニのペニスを握った。



そのとき、夢の中の明菜と現実のジュワニはリンクし

現実のジュワニも自らのペニスを握っていたのだ。

呪術師は詠唱を続けながら、

ペニスを握り締めるジュワニの姿を見てニヤリとした。



 夢の中の”明菜”は元の自分に胸を高鳴らせながら近づいていく。

 夢のはずなのに

 ”明菜”は明菜の体から発散される女の匂いを嗅いでいた。

 その艶めかしい匂いに”明菜”はペニスが更に硬くなるのを感じた。

 (これがあたしの匂い……)

 興奮の度合いがどんどん大きくなる。

 ”明菜”は肉体の明菜の股間に頭を突っ込んでいた。

 スカートの中でショーツは真ん中の辺りがグッショリと濡れ

 愛液が溢れているのが目に見えた。

 「はぁっ……ふぁっ、はぁっ」

 すると、明菜の喘ぎ声が上の方から聞こえて

 ”明菜”は…元は女性だった魂は男として興奮していた。

 (女の匂いがする……

  たまらねぇ……)

 ”明菜”は男としてジュワニとして明菜の肉体に欲情していた。

 そして、股間のペニスはその魂の興奮を示すかのように最大限膨らみきっていた。

 『ハァハァハァ……いい匂いだ』

 ”明菜”は顔をかつての自分の股間に擦りつけようとしつつ
 
 そう言うと思わずハッとした。

 (駄目……何やってるの!?あたし……)

 そういいながら慌ててフワッと自分の肉体から離れる。
 
 そして、

 「ハァハァハァ……」

 二人の上に浮かび出て性的興奮に包まれる当時のジュワニと明菜を見つめる。

 下にいるジュワニも意識を失いつつ

 曝け出されたペニスを勃起させていた。

 今の自分と同じようにビクンビクンとペニスを脈打たせている。

 (あたしが……もうすぐジュワニと体を交換されちゃうんだ)

 そう思うと”明菜”は背筋がゾクゾクとする。

 『○○○○○』

 呪術師の詠唱が更に熱を帯びる。

 二人の喘ぎ声が高まり、

 二人の汗の匂いが交錯した。

 「ハァハァハァ……」

 『ふぅっふぅっふぅっ……』

 ”明菜”は宙に浮かびながら、

 そのときが間もなく訪れるのを感じていた。

 突然、呪術師の眉間の皺が現れると

 『○○○○!!!』

 と叫び出した。

 「アァッ、アッ、アッ、アッ」

 『ウォッ、ウォ、ウォ、ウォ』

 あのときのジュワニと明菜がたまりかねたような声をそろえて叫ぶ。

 (ああ、体が取り替えられちゃう……)

 宙でその様子を眺めていた”明菜”はなんともいえない興奮に包まれ

 必死に一月半前手に入れた体のペニスを扱いていた。

 「ァッァッァァァァァァ、アア〜ッ!!!」

 『ゥォゥォォォォォォォ、ウォォ〜ッ!!!』

 突然二人の声が全身の痙攣と共に震えだしたかに思われたその直後、

 ジュワニと明菜は絶叫を上げた。

 まるで肉体から引き剥がされる魂の痛みを訴えるかのように叫び声を上げた後、

 二人は嘘のようにガックリと全身から力が抜けた。

 (これが……交換の儀式!!……)

 様子を眺める”明菜”は射精しそうになるペニスを引き千切れんばかりに握り締める。

 死んだかに思われた二人の息の音が徐々に静かになっていくと

 二人の頭の辺りから白い煙のようなものが立ち上りだした。

 (あれが…あたしの魂……)

 ”明菜”はじっと自分の肉体から湧き離れていく魂を見つめる。

 それを眺める明菜の興奮は当に最高潮に近づきつつあった。

 (ああ…

  もうすぐあたしの魂がジュワニの体に入っちゃうんだ……

  そして…

  ジュワニの体があたしのになっちゃうんだ……

  んぁっ、あたし…あたし……)

 そして、その傍でも、

 本物のジュワニの魂がジュワニの肉体から立ち上っていき

 ひゅるひゅると人魂(ひとだま)になって

 横たわるジュワニの肉体の上で漂っている。

 (ああっ、駄目……

  もうすぐ…

  あたしが……

  あたしがっ

  ジュワニになっちゃう!)

 そう思う間もなく

 二人の魂は、何かが絡み合う彫像に引き寄せられるように近づき

 ひゅるっと

 彫像に交互に刻まれた螺旋の模様に乗って一回転すると

 二人の魂は既に二人の間を跨ぎ
 
 何時の間にか相手の頭上に浮かんでいた。

 『儀式の最後だ……』

 呪術師が呟いた。

 ふと呪術師を振り向いていた間に二人の魂は相手の体に向かって下降し始める。

 (あたしの魂が…ジュワニの体に入っちゃう!!)

 宙の”明菜”は興奮の最高潮に達しながらその光景を眺めていた。

 シューゥゥゥゥゥゥゥ

 まるで魂を失った肉体が魂を吸い寄せているかのように

 明菜の魂はジュワニの肉体に吸い込まれていく。

 それは逃げようとする魂を肉体が吸い込んでいるかのようだった。

 (あたしの魂が……

  あたしの魂が…

  ジュワニの体に!!)

 シュポンッ

 逃げ切れなかった明菜の魂は完全にジュワニの頭部に吸い込まれ

 人魂の煙は綺麗さっぱり消え去っていた。

 「あたしが……ジュワニの体に入っちゃった……」

 かつての自分の魂の行方を確かめて

 ”明菜”は自分の魂がジュワニの肉体に取り込まれてしまった事実を
 
 知ってしまったのだった。

 魂を得た肉体は再び魂とのリンクを回復し動き出す。

 明菜の魂が入ったジュワニは

 「ふぅ、ふぅ、ふぅっ、ふぅっ!」

 と息を吹き返したように息を荒らげる。

 (とうとう…あたしがジュワニになっちゃった……)

 宙にいる”明菜”は必死に塞き止めていた男の精が噴き出すのを感じた。



それは現実のジュワニの肉体も同じで

呪術師の目の前でジュワニは夢精していた。

自分でペニスを握り締めながら

ブチュゥ

ジュッ

ジュッ

ジュワニは射精していたのだ。



 明菜の魂を得た夢の中の…

 そう過去のジュワニの体もまた

 明菜の魂が今まで繋がったことのない感覚と繋がったせいだろうか

 ペニスを勃起させ始めていた。

 明菜の魂がジュワニという肉体に根を下ろし始めたのだ。

 ジュワニの肉体の感覚が全て明菜の魂に直結されていく。

 さっきまでジュワニがいた場所に明菜の魂は存在し、

 いま当にジュワニの肉体の魂として魂の糸を繋いだのだった。

 『ハァハァハァ……』

 『どうやらちゃんと女の魂がジュワニの肉体に入ったようだな』

 その様子に呪術師は満足げに苦しそうに息をするジュワニを見つめる。

 アヤニに新たな魂を迎え入れることがこの呪術の意味であるから

 明菜の肉体に入ったジュワニの魂のことはあまり気にしていないようだ。

 その光景に”明菜”は

 (あたし……ジュワニにされるべくしてなったんだ……)

 と射精の余韻に浸りながら気付いたのだった。



 バッ!!

 すると、次の瞬間

 ”明菜”は別の空間に飛ばされていた。

 いや

 夢の中なのでシーンが変わっていたのだ。

 それは日本の明菜の部屋だった。

 一月半前まで、自分が住んでいた懐かしい部屋だった。

 (あたしの部屋!?)

 ”明菜”は訝しげに部屋を見回す。

 そして、次の瞬間明菜はベッドに横たわる自分を見つけた。

 正確には明菜の肉体がそこにあった。

 「あたし!?」

 思わず声を上げる”明菜”に

 明菜は艶めかしく微笑みながら振り返った。

 明菜は裸体だった。

 しかもムンムンするような女の匂いが部屋に満ちていた。

 咽返るようなその匂いに”明菜”は鼻を鳴らす。

 (あたしの匂い……)

 ”明菜”は先ほどの儀式同様

 元の自分の肉体の匂いに欲情を再開していた。

 ドクン

 ドクン

 気が付かない内にも”明菜”のペニスは勃起始める。

 射精して間もないというのに

 一方、明菜も股間を濡らし、女として欲情していた。

 「なんで……」

 ”明菜”がそう呟いたとき

 『どうだ、いい女だろ?』

 明菜はアヤニの言葉でそう告げた。

 「え……あ!?」

 その言葉に驚く”明菜”に

 『オレ、お前が欲しいんだ。

  さあ、こいよ、ジュワニ』

 明菜はアヤニの言葉で誘うように言う。

 『お前……誰だ?』

 ”明菜”もアヤニの言葉で返す。

 それがジュワニの心を蝕むためとも知らずに。

 アヤニの言葉で喋っている以上

 ”明菜”の個性は明菜ではなくジュワニのものに切り替わりつつあった。

 『誰だ?

  オレは、アキナだろ?』

 『違う、オレがアキナだ。

  てめぇ、オレの体を返せ!!』

 先ほど体の交換を見せ付けられていたせいだろうか

 ”明菜”は興奮気味だった。

 『返せ?

  お前にはお前の体があるだろうが、
 
  ジュワニという立派な体が。

  それとも、こんなな軟弱な女になりたいのか、お前?』

 『何ぃ?』

 なぜだか分からなかったが、

 そのときの”明菜”は無性に腹立たしくなった。

 『そんなにオレに欲情しながら何が体を返せだ。

  お前のイリガ、パンパンじゃないか?』

 『そ、それは……

  仕方ないだろ、男なんだから』

 ”明菜”も必死に抵抗する。

 『ふん、男っていってるじゃないか?

  じゃあ、お前はアキナじゃない。

  アヤニのジュワニだ』

 『ち、違う……』

 明菜に鼻で笑われ、”明菜”は悔しそうに叫ぶ。

 『それより、お前、男として興奮してるんだろ?

  好きにしていいんだぜ。

  オレは、お前に抱かれたいんだ。

  ジュワニ、オレを抱けよ』

 『なんで……なんで自分を抱かなきゃいけないんだ?』

 ”明菜”は困惑と興奮が混ざり合ったような口調で怒鳴る。

 『いいんだぜ、オレは。

  お前さえ、自分がジュワニと認めればいいんだ。

  簡単なことだ。

  そうすりゃオレを抱けるんだ』

 『そんな……イヤだ。

  オレの体にそんなことするなんて』

 『オレの体……お前、オレを自分の女にしたいのか?

  いいぜ、オレはジュワニに抱かれたいんだ』

 『ヤメロ。

  オレは……オレは…』

 ”明菜”は女の匂いにペニスを勃起させ混乱しながら頭を抱えた。

 (何やってんのよ…あたし……

  でも、たまんない……

  あ、駄目…我慢できねぇ)

 『こいよ、それともオレから抱いてやろうか?』

 必死に自分の中で生まれた雄性を押さえ込む”明菜”に

 明菜は近づくと裸のまま”明菜”の頭を胸で抱いた。

 『はぁん、胸に当たる息がくすぐってぇ』

 明菜はそんなことをいうが

 『ハァハァハァ……』

 ”明菜”は猛獣のように暴れ出す男の性欲に突き動かされつつあった。

 元は女の子だった魂は当にオスに染まっていた。

 (いい匂い……柔らけぇ…

  これがオレの胸……

  な、舐めてぇ)

 明菜だった魂が次第にジュワニへと変化して始めた。

 ジュワニの性癖が明菜だった魂に染み込んでいく

 当に自分の中で反発していた油が自分という水に溶け込んでいく、

 そんな快楽を”明菜”は感じていた。

 そして、次の瞬間、

 ”明菜”の手は動いていた

 明菜の乳房を掴みその柔らかさを感じていた。

 『ああ、なんて柔らけぇんだ。

  これがアキナの胸』

 『ふふ……いい感じだぜ、ジュワニ』

 『な、ナメテェ……

  これが乳首かよ…』

 (あ…あたし……

  オレ…何やってんだ……)

 ”明菜”は心が溶けていきそうな興奮に包まれながら朦朧としていた。

 『舐めていいぜ。ジュワニ』

 その言葉に無意識に”明菜”は動くと明菜の乳首をその薄黒い唇に含んでいた。

 唇と舌越しにかつての自分の肉体の一部を感じる。

 だが、
 
 今の”明菜”には元の自分というよりも他人の女を感じているという方が正しかった。

 『ハァハァハァ……チュバチュバ』

 『いい様じゃねぇか。

  ジュワニ。すっかり男になったな』

 (これが……アキナの胸……

  自分の胸だったなんて信じられねぇ)

 『元に戻りたいか?

  それとも、このまま男としてヤリたいか?』

 『ヤリてぇ……』

 (オレ……イ、イヤ!

  な、何いってるのよ……あたし!?)

 ”明菜”はすっかり混乱していた。

 ジュワニとして男として興奮する自分。

 かつての自分を性欲の対象にしていることに嫌悪する自分。

 それなのに、自分を止める術はなかった。

 『いい匂い、たまんねぇ。

  女の匂いだ』

 『女を味わうのは初めてかよ、ジュワニ』

 『ああ……

  こんな上玉とできるなんて最高だぜ』

 そう言いながら”明菜”は明菜の綺麗な肌を舐め

 浮かんでくる汗の味と匂いに更に男として興奮していた。

 (何してるの……あたし…

  ああ、でも…

  たまんない……

  女ってこんなだったんだ…

  あたしって…

  こんな……

  ああ、ヤリてぇ)

 『ヤリてぇだろ、ジュワニ。

  そろそろいいぜ、下も舐めてくれよ』

 『いいのか?ハァハァ……』

 『やりたくてたまらない癖に』

 『じゃあ、いくぜ』

 ”明菜”はそういいながらかつての自分の股間に顔を埋めた。

 一月半見慣れてしまった男の股間ではなく

 性的対象となる女の股間だった。

 女の汁は既に股間をテカラせ”明菜”の性欲は更に激しくなった。

 『ああ、これが……』

 (ああ、これがオレの……

  イ、イヤ…

  駄目…

  でも、見たい……

  どんなのか知りたい…

  たまんねぇ)

 ”明菜”は女の股間をじっくり舐めまわすように見つめる。

 一月半前、自分についていたものなのに

 今は見ているだけでとてつもなくたまらない衝動が襲ってくるのだった。

 『ハァハァハァ……』

 (オレが……男になっていくみたいだ…

  もう止められねぇよ…

  駄目なのに……

  ああっ、イリガが…)

 ”明菜”はかつての自分の股間をじっくり見つめ自らのペニスを扱いていた。

 『ふふ、何我慢してるんだよ。

  お前はアヤニの勇者だ。

  ここに入れたいんだろ?

  なぁ?』

 『ああっ、やめろぉ。

  オレ、本気でヤリたくなってきたじゃねぇか』

 (オレ……あたし…何いってるの!?

  ああ……

  でも…

  たまんねぇ)

 ”明菜”は女のアソコの匂いにクラクラして思わずそこを舐め始めていた。

 (あたしが……あたしのアソコを…

  こ、こんな味がするんだ……

  ああ…

  イリガが燃え上がっちゃいそう…)

 (交換の儀式までオレが感じて濡らしてたアソコが……

  今は他人のものなんてなぁ

  ああ…この舌触りたまんねぇ)

呪文を唱える呪術師の前でいままさに”明菜”の魂は

ジュワニへと変身を始めだしたところだった。



つづく



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。