風祭文庫・モランの館






「ジュワニ」
(第2話:ジュワニの肉体)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-069





「これって……あたしの…顔なの?」

ドクン

ドクン

鏡に映る自分の顔に明菜の心臓が高鳴った。

体の感覚や下半身こそ、じっくりと観察はしていた明菜だったが

しかし、今の自分の顔ことなどすっかり失念していた。

けど、いまこうして鏡の中で自分の顔を確かめることができる。

明菜は半分困惑しつつ、半分興奮していた。

鏡に映る自分の顔。

それはアヤニ族のジュワニの顔。

他人だったはずのジュワニの顔だった。

それは、彫りが深いアフリカ系の特徴的な顔付きだった。

一瞬明菜は眩暈を覚える。

しかし、明菜のペニスはビクッと反応していた。

(これが……今のあたしの顔……)

ジュワニの顔に釘付けになる明菜。

縮れた髪の毛

広い額

薄い眉毛

二重瞼の眼

なだらかに横に広がった大きな鼻

分厚い唇

何もかもが明菜のもっている平均的なイメージを覆す。

もちろんそれは明菜が日本人の顔つきしか普段見ていないことに起因するのだろう。

しかし、明菜にはその衝撃は大きかった。

何しろ気が付かないうちに三日前の自分とは似ても似つかぬ顔かたちになっていたのだから。

(あたし、本当にジュワニに…アヤニ族になっちゃってるんだ……)

ドクンドクン

何か止められない興奮の衝動が明菜を襲っていた。

他人に生まれ変わってしまったような衝撃が快感に変わっていく。

「はぁはぁはぁ…」

それがいつしか性的興奮に変わるまで時間はかからなかった。

明菜のペニスは勃起し激しく脈打つ心臓に合わせるように揺れていたのだから。

「ジュワニ……」

明菜の口から今の自分の名前がついて出る。

明菜は自分でもよく分からなかったが

今の自分の姿に興奮していた。

彫像についた鏡を動かし

ひたすら今の自分の顔を観察する。

少しばかり充血した目に動く瞳孔は自分の姿を映し出している。

大きく横に開いた鼻の穴は収縮を繰り返し荒い息を吐き出している。

口をあけてみれば自分のものとは違う歯並びの口が見えていた。

明菜は自分の肉体が完全にジュワニになってしまったことに感じてしまっていた。

「あっあたし……

 はぁはぁ…
 
 あたし、本当にジュワニになっちゃったんだ」

明菜は妙な気分になりながら、両腕でギュッと自分の体を抱きしめる。

お風呂にも入っていない汗と垢、

そして土まみれの体になってしまったことに興奮してしまっていた。

全身からムワッと男の汗が噴き出していく。

その匂いは明菜本来のものではなく、強烈な匂いで明菜をくらくらさせる。

自分の肉体が他人のものと交換されてしまったことを改めて感じてしまう。

「はぁはぁはぁ…

 どうして……
 
 あたし……
 
 ああ、駄目」

こんなの変態みたいだと自分でその気持ちを否定しようとしつつも

鏡を見ているとどうしても止められない明菜。

スッ

導かれるように明菜の手が動くと

鏡の中を自分を眺めながら勃起していたペニスを握ってしまった。

「んっ!」

敏感なジュワニのペニスが明菜の精神に今の自分の肉体の感覚を刻みつける。

ペニスの存在を感じ取り明菜は更に興奮していた。

「ああ……

 やめ……
 
 んんっ、
 
 はぁはぁはぁ」

シュッ

シュッ

そういいつつも明菜はペニスを扱き始める。

明菜の脳裏には、この三日の記憶が鮮明に蘇っていた。

就寝中に襲ってきた気持ちの悪さ…

無論、それは呪術師による入れ替えの術のせいなのだが、

しかし、その時の明菜は体が興奮してアソコを濡らしてしまったのであった。

そして、目覚めたとき明菜はジュワニというアヤニ族の少年になり、

明菜と体を交換したジュワニに縛られたまま責められ射精を体験させられてしまったこと。

その後、一人小屋の中でジュワニの体でオナニーを初めてしてしまったこと。

それを思い返していると更に明菜は気持ちよくなっていくのだった。

「ああ、気持ちいい……」

今まで思っていても口に出さなかった本音が初めて口をついた。

明菜はジュワニの肉体の気持ちよさに酔いしれていた。

本来ありえないはずの自体を楽しみ始めていたのかもしれない。

裸族のアヤニ族のジュワニという男の子になってしまった自分。

嫌がっていたはずなのに

明菜はいつしかこのシチュエーションに興奮を覚えてしまっていたのだ。

シュッ

シュッ

明菜は鏡の中の見慣れぬ自分の姿を眺めつつオナニーしていた。

普通なら異常な光景だろう。

しかし、明菜は何かに憑り付かれたかのように

『自分』を味わっていた。

(なんで……こんなに興奮しちゃうの?……おかしいよ……)

おかしいと思いつつも鏡の中のジュワニの姿を見ているとやめられない。

「はぁはぁはぁ……」

明菜はただペニスを扱き、その気持ちよさを味わう。

もう慣れてきた男の絶頂は間違いなく明菜に近づいていた。

ジワ…

根元に精液が発射態勢に集まってくるのを感じる。

今にも溢れ出しそうなその感じ。

女の子だった明菜が感じられるはずもない感覚。

それにたまらない興奮を覚え、明菜は射精に至ろうとしていた。

「ふぁっ、

 だ、駄目ぇ〜、
 
 んっくぅ!!」

押さえ込もうにも止められない。

一度堰を破ると止められない射精。

ブチュッ

ブビュッ

ビュッ

ビュッ

覚えてしまったオナニーの三回目。

明菜はジュワニの肉体の絶頂を再び魂で感じ取る。

そして、鏡はそれを全て映し明菜の魂に刻み付けた。

キラリ

その彫像こそが最後の儀式。

明菜のジュワニへの生まれ変わりの儀式だった。



「はぁはぁはぁ…」

気持ちのいい射精の余韻に明菜は浸っていた。

鏡を見ながらのオナニーは最高だった。

女の子としての羞恥心がまるでどこかに消え去ったかのようにさっぱりしていた。

(あたし……ジュワニになっちゃった…)

明菜は心の中で完了形で呟くと妙な満足感を覚えていた。

何か周りの違和感がなくなり、全てが自分の中に溶け込んでいような

そんな感覚を明菜は感じていた。

「はぁ…はぁ…はぁ」

(なんだろう、この気持ち……なんかおかしくなっちゃいそう…)

明菜はオナニーの痕跡…自分の精液を手に取る。

その匂いが嫌でたまらなかったのに今は爽快でたまらない。

(射精がこんなに気持ちいいなんて…)

明菜の感覚は確かに変化していた。



その夜、呪術師は夕飯を明菜に持ってきた。

最初はまずくてろくに喉を通らなかったアヤニの食べ物が不思議と普通に感じられた。

何より、呪術師が話すアヤニの言葉がおぼろげにわかるような気がしてくる明菜だった。

まるでアヤニの言葉の一つ一つが自分に染み込んでいくかのように感じた。

『○○○○』

呪術師は明菜に話し掛けたり、歌を歌ったりして明菜にアヤニの言葉を聞かせる。

その度に明菜は頭痛に苛まれた。

生まれ変わりの儀式の呪術が明菜の魂をその構造から作り変えている最中だったのかもしれない。

オナニーやアヤニの言葉に聞き疲れた明菜は呪術師が立ち去るとすぐに寝てしまった。

その後、呪術師が耳元でアヤニの呪術の朗詠をし始めるのも気が付かずに…



翌朝、明菜はかなり早くに目を覚ました。

気分が妙にだるい。

寝ている間に運動か勉強でもしていたかのようだ。

明菜はふと朝立ちしているペニスに気付きそれを押さえた。

(呪術師の小屋でもあったけど…こんなの……ヤダ)

女の子の意識が蘇り、

恥かしくなって大きく勃起するペニスを押さえた。

しかし、違和感はまだ自由でなかった昨日よりもなくなったような気がする。

明菜は立ち小便をしながら生まれ変わった自分の体をマジマジと見つめていた。

小便を切って、小屋に戻る。

すがすがしい朝だが、いつまでもこんな生活をしているわれにもいかない。

自由になったことだし、元の自分の体を見つけて元に戻らなくては…

そんな思いが明菜の中を巡っていた。

(あれ……これ、こんなとこに置いてたっけ?)

ふと昨日寝ていた自分の傍に置いてある彫像に気付き明菜はそれを手に取る。

普段の明菜のように鏡で自分の顔を映し

改めてジュワニになってしまった自分の肉体を確かめてしまった。

「はぁ……」

それなのに、あまり衝撃がない。

何か当たり前のような気が一瞬してしまった明菜。

そんな自分にきょとんとして、じっくりと自分を見つめる。

そこにはジュワニになった自分しかいない。

オナニーしながら眺めていた自分の姿…

(ヤダ、何考えてるんだろ…あたし)

恥かしくなりながらも、明菜は興奮に火をつけてしまっていた。

小屋の中ということもあり、

明菜はそっとペニスを握り締める。

「んっ、くっ!」

(これが……ジュワニの体…)

そう思うだけでペニスは一気に硬く勃起し、手の中で膨張していた。

(駄目……何してるのよ、あたし…)

しかし、

呪術の掛かった彫像の鏡に自分を映してしまった明菜は既に術中にいた。

生まれ変わりの儀式は未だ続き、今も明菜の魂を徐々に蝕もうとしているのだ。

「はぁはぁはぁ…」

(どうして……でも、止められない……気持ちいい)

明菜は訳がわからなくなりつつもただひたすらオナニーをし続ける。

ジュワニの肉体を感じ、明菜自身の魂をそれに重ね合わせていく。

『ふふ、気持ちいいか?ジュワニ』

呪術師の声が響いた。

理解不能だったはずのアヤニの言葉の響きは意味を持って明菜の頭に受け入れられていた。

『な、何?』

明菜は自ら呟いた言葉の響きに驚いた。

それもまたアヤニの言葉だったからだ。

『ふふ、呪術はちゃんと掛かったようだな。

 お前は既にアヤニに生まれ変わりつつある、
 
 その体に相応しい魂へと己の魂を変えるのだ』

『何をいってるんだ?』

明菜の言葉は、アヤニの男の子に相応しいものだった。

『分かっているのだろう、ワシの言葉も。

 ちゃんとおぬしはアヤニの言葉を話しておるぞ』

『え!?

 オ、オレ…』

明菜は愕然として、頭を押さえた。

『どうして、なんでオレがアヤニの言葉を分かるんだ!?』

『ふふ、その彫像に掛けた呪術のせいだ。

 それは己の姿を魂に移し込むもの。

 おぬしはアヤニのジュワニとしての自分を鏡から己の魂に流し込んでいたのだ』

『そんな…馬鹿な…』

明菜は叫んだ。

『そして、アヤニの言葉は昨夜しっかりとおぬしの魂に刻みつけた。

 おぬしの寝ている間にな。

 これで普段の会話で困ることはなかろう』

呪術師はニヤニヤしながらそういうと明菜のペニスを握る手を見つめた。

『そんな…オレ、一体どうなって……』

『何を取り乱している?

 お前はアヤニの勇者になる男ジュワニなのだぞ』

『な、なんで、オレがジュワニならなくちゃいけないんだ!?』

明菜はいった。

『何を言う。

 おぬしの肉体はアヤニのジュワニ。

 ジュワニに相応しい魂をもつのは当然のことだ』

『じゃあ、なんで体を交換したんだ?

 オレは別にジュワニになりたかったわけじゃない』

明菜は反発する。

『ふっ、なぜかと聞かれるといいにくいが…

 アヤニの呪術とアヤニの民のためだ。

 五年に一度呪術を守るためこの儀式は行われる。

 そして、儀式では新たなアヤニの勇者を生み出さねばならない。

 そのためにお前はジュワニと体を交換し、新たな勇者になったのだ』

『なんだそりゃ?』

明菜はまるで人が変わったように怒鳴った。

『アヤニの魂の系列に新たな魂を迎え入れる。

 それがこの儀式の根本にある。

 まあ、おぬしには分からぬかもしれんが

 おぬしは迎え入れられた新たな魂。

 しっかりとアヤニのジュワニとして生まれ変わらねばならんということだ』

『何勝手なこといってるんだ?

 オレの魂がどうとかこうとか…そんな話理解できるか!?』

『ふ、まあ分からなくてもよい。

 いずれにしても、おぬしの魂はアヤニに変化していっておる。

 今こうしてアヤニの言葉を使っているの間もおぬしは変わっていっておるのだ。

 そして、おぬしは勇者の証をたてる度に

 己の魂をジュワニの肉体に更に強く結び付けていっておる』

『勇者の証?』

『男の精を出すことだよ』

その途端、女の子の声が混じった。

呪術師の背後から乱れた格好の明菜自身が現れる。

『何?一体どうして?』

『まあ、あんたの体になっちまった以上、仕方なくてな。

 面白そうだったから、呪術師の手伝いしてるってことさ』

『オ、オレの体返せよ!』

明菜は思わず叫んだ。

元の自分の姿を見たことで苛立ちが募る。

『まあ、そうもいかないんだ。

 儀式に選ばれた以上、アヤニの掟でオレも女にならなきゃならねぇ。

 というか、お前、しっかり男になってるぞ』

『そ、そんなこといっても……

 アヤニの振る舞いと言葉ってこれしか知らないんだよ』

『は〜ん、さすがはアヤニの呪術。

 ちゃんと他の部族の女でも男になってるじゃん』

『う、五月蝿いっ!!』

明菜は男になってるといわれたことが悔しくて怒鳴った。

『おっと、あぶね…

 それより、お前、勇者の証たててた最中だったんだろ?

 手伝ってやろうか?』

掴みかかる明菜を器用によけるとジュワニはそういって明菜の背後に回り込む。

『な、何を…!?』

ジュワニは明菜のペニスを握っていた。

明菜は思わず交換の儀式直後の射精を思い出す。

『ふふ、やりたいんだろう?

 手伝ってやるって』

ジュワニはそういうと扱き始めた。

『あっ』

明菜は座り込むとそのままジュワニに身を委ねてしまう。

シュッ

シュッ

明菜の目の前には二人を映し出す彫像の鏡。

明菜は元の自分に愛撫される自分を見つめて更にペニスを硬くした。

(あたし……何やってるのよ!?こんなの…こんなの)

気持ちは焦っているのに体はいうことをきかない。

ジュワニの体で明菜の体がもたらすその快感を味わうだけだ。



『ふふふ、さあ勇者の証をたてろ。

 そうすれば、また一段とおぬしの魂はジュワニの体との糸が太くなり

 ジュワニと一体になれるのだ』

(そんな…そんな…あたし、元に戻れなくなっちゃうの!?)

明菜は必死に首を振って、射精を拒んだ。

しかし、明菜になったジュワニのもたらすテクニックは

射精経験の乏しい明菜をさらに射精へと導いていく。

(ヤダヤダ、やめて……あたし、男になんかなりたくない!!)

『やめろぉ〜〜!!』

明菜は最後に全てを振り絞って雄叫びを上げる。

だが、男の本能は虚しくも止められないところまできていた。

明菜の射精は臨界に入り

今にも精液が体から飛び出そうとしていたのだ。

キュッ

最後の一絞りとばかりに先端を握り締められ明菜の抵抗はぽきりと折れた。

(で、出ちゃう……出ちゃう!!)

「くっはぁっ!!」

そう情けない一息を漏らしたとき明菜のペニスを白濁した粘液は駆け上っていた。

ブシュゥッ

ジョッ

ジョッ

ジョッ

ビクンビクンとペニスを震わし、明菜は射精していた。

ジュワニの肉体で射精していた。

それを静かに彫像の鏡は明菜に映し返していた。



あれから一月が経っていた。

明菜は元に戻れないまま、ジュワニの小屋で暮らしていた。

アヤニの生活習慣や言葉は彫像の呪術のせいかもう慣れ生活には困らない。

だが、明菜の心が消えたわけではなかった。

生まれ変わったジュワニは、あくまで元に戻る気でいるのだから。

しかし、いつまでもそういっていられるかは本人も不安だった。

次第に馴染んでいく肉体と裸族としての生活。

忘れ薄れていくかつての自分の記憶。

ジュワニは元の自分の生活を夢に見ながら生活していた。

(あたし……いつになったら元に戻れるんだろう)

呪術師には明菜の魂は完全にジュワニの肉体に馴染んでしまったといわれている。

それは今のジュワニも否定できない。

今、こうしてジュワニの肉体で当然のごとくオナニーしているのだから。

シュッ

シュッ

硬くなった股間のペニス。

それは今のジュワニには当たり前の存在になっていた。

射精経験はもはやジュワニ本人も数え切れなくなっている。

ジュワニは、毎日のようにジュワニのペニスの射精しているのだから、

強いアヤニの男の性欲は明菜だったジュワニの心をも溶かしていた。

あれほど嫌だったのに、今では扱いていても平気になってしまっている。

そんな自分の変化にも興奮してしまうジュワニの自分。

明菜だったジュワニは、激しくペニスを扱いていた。

シュッ

シュッ

シュッ

「はぁはぁはぁ、うっ!!」

ブチュウ

ジュッ

ジュッ

ジュッ

(ああ、あたし、また……勇者の証立てちゃった……)

そんな欲情に流される自分に落胆しつつも、止められないオナニー。

元明菜だったジュワニは、元のジュワニと同じようにオナニーしているのだ。

明菜はジュワニに染まっていく自分さえにも興奮してしまっていた。

最近では、自分の魂がジュワニの肉体に溶け込んでしまったような錯覚を覚えてしまう。

元に戻れる可能性が低くなっていくのに気付きながらも

ジュワニは、三日に一度彫像で自分を眺めながオナニーしてしまう。

彫像の呪術の恐ろしさを知りつつも

彫像なしのオナニーでは得られないものを知ってしまったからだ。

彫像の鏡は、生まれ変わった魂のフィットする今の体を映し出す。

それは、ジュワニを倒錯した快楽にはまり込ませていた。

「あたし、だんだん変わっていっちゃってるのかな…」

もはや普段話すことのなくなった日本語でジュワニは呟いた。

アヤニの言葉と振る舞いでいるとさらに自分のジュワニ化が進んでしまう。

そんな危機感をもっているにも関わらず

ジュワニは鏡に一月前交換して受け取ってしまった新しい自分の肉体を

確かめながらオナニーをしていた。



つづく



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。