風祭文庫・モランの館






「魂の行方」
(最終話:肉体の行方)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-055





あれから数日が過ぎ、

ウェツィとなってしまった千沙は、ウェツィ本人の記憶を取り戻し

そして、完全にダレッサ族のウェツィとして振舞っていた。

それまでの千沙としての仕草など一片たりとも残っていなかった。

話は通じない。

見た目も

振る舞いも

まさにダレッサ族そのものだった。



「もう駄目だ…

 千沙はもう元に戻れない…

 このまま連れ帰ることもできないし

 もうここで生きる方がいいのかもしれない」

そう、俺が諦めかけた日のことだった。

帰宅の予定日はとっくに過ぎ、

俺も観光ビザで来ている以上あまり長居はできない。

明日、

明日までに結論を出そう。

そう思って荷物を整理していたときだった。



「ゆ う や…

 *********」

狩りから帰ったのかウェツィになった千沙が小屋の入り口から声をかけた。

相変わらず何を言っているか分からない。

一応、挨拶ぐらいのダレッサの言葉はなんとか覚えたが、

けど、日常会話はまったくをもってついて行くことが出来ない。

「ああ、千沙。

 帰ったのか?」

俺は、寂しげに苦笑いしながら答えた。

「ゆ う や、****」

完全に日本語のアクセントすら狂ってしまい

発音もダレッサのものになった千沙が

何か舌をもつれさせそうにしながらもゆっくり発音する。

「ん?」

何かを云いたそうにそうにしている。

そう感じた俺は立ち上がると小屋の入り口へ向かった。

すると、千沙は俺を見下ろしながら

「*、*、*、*」

と一音ずつ区切って言葉を言う。

何を伝えたいのだろう。

俺は必死に千沙の口元を見ていた。

ダレッサの言葉しか話せないように呪術を掛けられて以来

千沙とは会話らしい会話をしたことがなかった。

だから、こうして千沙のダレッサの言葉を聴くのは

辛い…

「*、*、*、*」

しかし

千沙が繰り返し云おうとするその声音に日本語に近いものを感じて

俺は一瞬ドキッとした。

そう

千沙は日本語をしゃべろうとしている。

俺は直感でそれが分かったのだ。

「た、だ、い、ま」

そうだ。

千沙は「だたいま」といおうとしている。

発声そのものがかなり違うダレッサの言葉に引き摺れてはいるが

確かに日本語を話そうとしているのだ。

「千沙、お前。

 今、『ただいま』って言おうとしたんだよな?」

興奮した俺は自分よりも高い位置にある千沙の肩を揺さぶった。

すると、千沙は俺の声を聞いて

「た、だ、い、ま」

と言い直した。

そうだ。

より日本語っぽくなった。

ほとんどダレッサの言葉のように聞こえるが

日本語の発音を必死にしようとしている。

それが伝わってきて俺は歓喜にむせび泣いた。



それから帰国を延期した俺は

ずっとダレッサ族の村にいる。

そして、仕事の合間をぬって千沙と日本語の特訓をしていた。

千沙は日本語を覚えているみたいだ。

でも、発音がまだダレッサ族の発音から無理やり発声しているようだ。

文法もダレッサ族のもののようだし

単語とか、断片的に日本語を思い出しているらしい。



「はぁ…

 しかし、よく日本語を覚えてたなぁ。

 俺、てっきりもう忘れてしまったのかと思ったのに」

「あたし、ない、忘れる、日本語」

千沙は身振りを交えて必死に日本語で答えようとしてくれる。

ダレッサ訛りというのか

かなり癖のある言葉にいつも苦笑いしてしまうのだが

忘れてなくて本当によかった。

あの祈祷師の術も大したことなかったということか…

いや、

ここまで生まれつき日本人の千沙に

日本語を話せないようにしたのだから恐ろしいのかもしれない。

「あたし、だった、怖い、忘れる、日本語、話す。

 今も、言葉、変?

 あたし、怖い」

「大丈夫だよ。

 少しずつ話せるようになるさ

 ゆっくり話し合って元に戻るための策を練ろうよ」

そう言いながら俺は大柄なウェツィの背中を励ますように叩いた。

千沙が…

低いウェツィの声で外人のように日本語を話すのを聞いていると時折すごくゾクっとしてくる。

彼女の中で記憶はどうなっているのだろう?

文法も発音もダレッサということは、

これはウェツィの記憶が強いということなのだろうか?

ここまで人を変えてしまうダレッサの禁呪。

普通に日本語で会話を交わしていた数日前の千沙が今まるで別人のようになってしまっているのだ。

そんな禁呪使いの祈祷師に対して俺たちはなすすべあるのだろうか?



「なぁ、千沙。

 あのとき…

 あのときさ。

 ウェツィの記憶はどうなったんだ?」

その夜。

俺は焚き火を見つめながら千沙に尋ねた。

「あたし…

 ウェツィ。

 あのとき、記憶、取り戻した。

 でも、千沙、だった、嫌。

 な、んとか、

 あたし、守った、千沙。

 でも、あたし、自分、気がする、ウェツィ、みたい。

 よく、分か、んない」

千沙は首を振りながら辛そうに話した。

「あたし、の、中、に、

 ウェツィ、気がした、生まれた。

 あたし、怖い。

 でも、いい。

 あたし、ある、ダレッサ、記憶。

 すべて、分かる、ウェツィ、お、お、生い立ち。

 あたし、ウェツィ、みたい」

「千紗…」

そのまま俯いてしまった千紗を見ると、

その股間では千沙の…ウェツィのペニスは勃起していた。

「ああ、あたし…

 だ、め、駄目。

 しちゃう、興奮」

千沙はそういいながら自分のペニスを握り締め、慰め出した。

「はぁはぁはぁ…」

千沙の中にはウェツィと千沙が同居しているのだろうか?

千沙は、ウェツィの生い立ちも分かるといっていた。

千沙は二人分の記憶があることになる。

どっちが自我を保っているのだろう?

それを確かめるのは怖い。

ウェツィとして、千沙の記憶に興奮しているのか…

千沙として、ウェツィの記憶に興奮しているのか…

「はぁっ、はぁっ!!」

千沙のペニスの先端から透明な液体が糸を引きながら垂れ落ち始めた。

淫らな雰囲気が小屋の中に広がる。

千沙の顔にも汗が浮かびウェツィの体臭が俺の鼻にもついた。

「あたし、ウェツィ。

 あたし、ウェツィ。

 ああっ、いい〜」

千沙は激しくペニスを扱いていく。

ウェツィのペニスは赤ちゃんの腕のように大きく勃起し、

キノコのようにカリを大きく張り出していた。

そして、それを…千沙が感じている。

「ああっ、うっ、うくぅ!!」

千沙が腰を振るわせた。

ビクッ

ビクッ

脈動が始まる。

ブチュブチュ

漆黒の体から吐き出される白濁した粘液。

焚き火に照らし出されながらも

空中を舞い小屋の地面にべちゃりと飛び散った。

栗の花のような精液の匂いが漂う。

すると、

「あたし、いる、覚える…あ、初めて、勇者の証した。

 分かる、何でも、ウェツィのこと。

 割礼した、痛かった。

 覚えてる、初めての狩り、初めての蜂蜜取り。

 思い出す、怖かった。

 でも、思い出したら、なかった、なんとも。

 あたし、ウェツィ。

 千沙…

 生活、千沙だった、夢みたい…」

「はぁはぁ」と荒く息を吐きながら余韻に浸りながら千沙がそう呟くと

「そんな…千沙の記憶は夢だったって思ってるのか?」

その言葉に俺は心配になって思わず尋ねた。

「大丈夫。

 まだ、じ、じか、自覚、

 千沙、としての、残てる。

 でも、ウェツィの体、いる。

 ここの生活、してる、と

 忘れそう、千沙」

「そうか…

 元に戻りたいんだよな、千沙?」

「あ、う、うん」

そう俺が諭すとウェツィの姿で千沙が頷いた。

「そうか…」

そんな千沙の姿を見つつ俺は思った。

千沙は元の自分を取り戻そうとしている。

しかし、

元に戻ってもすぐに日本に戻って、元の生活に馴染めるのだろうか?

今は言葉すら危うい。

それに記憶があるといっても

今の千沙は、普通のダレッサ族と大して変わらないのではないか?

そんな考えすら俺の中に芽生えていた。



それから、さらに十日。

俺すらも慣れてきたダレッサの生活。

その中で千沙のリハビリは続いていた。

ようやく千沙は日本語っぽく話せるようになってきた。

文法も俺が指摘して、なんとか日本語の語順で話せるようになってきたのだ。

「おはよう、裕也」

「おはよう、千沙」

ダレッサの訛りは消えないが

千沙は今までのように挨拶してくれる。

それがうれしかった。

ウェツィの黒い肌の奥に、本来の千沙の表情を重ね合わせ

俺は今の千沙を見ていた。



しかし、その翌日

ざわざわざわ

周りに影響されて早起きになった俺だったが

小便に外へ出て村の様子がおかしいことに気づいた。

どこか騒がしい。

いつもと違う。

そう思った。

そして朝食を終えたとき

『ウェツィ…』

村の長が普段では見せないような表情を浮かべてやってきたのだった。

あの厳格な顔が嘘のように崩れ

にやにやしている。

ものすごく寒気がしたが

俺は連れ去られる千沙を追ってこっそりと後をつけた。



すると、表に連れ出された千沙は長の小屋に入っていく。

まさに連行されたような雰囲気だった。

そして千沙は小屋の中の椅子に縛り付けられると

キッと長を睨み付けた。

あの人のよさそうな長の変貌…

千沙も何かを感じ取っていたのだろう。

『*******!!

 ********?』

千沙はダレッサの言葉で長に非難するような口調でいう。

その途端、

『ふふふ…別にダレッサの言葉で話さんでもよいぞ、ウェツィ。

 術をなんとか破ったようじゃないか?』

長はあのときの祈祷師のような口調でしゃべりだした。

まさか…

俺の中で嫌な予感が走る。

『…まさか、あなた。

 あのときの…祈祷師なの?』

口調を変えて千沙が問う。

『そうだ、

 わしはお前さんをウェツィに生まれ変わらせてやった、ムウェじゃ』

長は恐れていた通りの返答をした。

そう…

長が、あの追放された祈祷師に乗っ取られたのだ。

『ふふ…

 今まで勘のよかったあやつも

 観光客を装っただけで簡単に落ちたわ。

 お前さんの体は大活躍じゃな。

 ふぉーほっほ』

長はそう不気味な笑い声を上げる。

そうかっ!!

千沙の本当の体のことは、長はまだ見ていなかったのだ。

だって、その前に既に千沙の体は、祈祷師に乗っ取られていたのだから。

だから、今まで警戒していた長もあっさりと祈祷師にしてやられたわけか…

『そんな…

 じゃあ、これが、あなた、の、復讐、というわけ、なのね?』

『だいぶ、言葉を取り戻したようじゃないか?

 せっかくダレッサに染め上げてやったのに…

 そんなにダレッサが嫌だったのか?』

『嫌とか、そういう、ことじゃない、でしょ。

 あたしの、体、返してっ!!』

千沙は怒ったようにそう叫んだ。

『ふむ…

 まあ、復讐も済んで、村もわしのものになったことだし返してやらんことはない。

 とはいえ、お前さんの魂はウェツィだ。

 禁呪をとかん限りお前さんは一生ウェツィの体のままじゃな。

 何せ、お前さんの魂は既にウェツィの体に染み付いてしまっておる。

 ウェツィの記憶も取り戻し

 これ以上、何を望むというのだ?』

『そんなこと、聞きたい、んじゃない。

 あたしの体、返してっ!!』

『ふははは…

 まだ、うまく喋れないようじゃないか。

 やはり、『ん』が詰まるようじゃな。

 わしもお前さんから言葉を得たときはそうじゃったが…

 まさか、自分の言葉をしゃべれなくなるとは思わんかったじゃろ?

 ぶわっはっはっは』

『いい加減にしてっ!!』

千沙の…ウェツィの彫りの深い顔は、すごい形相になった。

『まあいい。

 じゃあ、わしの出す試練に打ち勝てば禁呪を解いてやらんでもないぞ。

 さあ、連れて行ってやろう』

そう言い放つと

長…いや、祈祷師は椅子ごと千沙を引き摺って隣の小屋へ連れて行った。

そして、俺もその後を追いかけて隣の小屋の隙間を見つけて中を覗く。

けど、小屋の中で見たものはショッキングなものだった。

それは…千沙の、本当の体だった。

それが素っ裸のまま、眠ったように横たわっている。

「千沙…の体」

俺はごくりと唾を飲んだ。

もしかして、千沙が元に戻れるチャンスではないかと思ったからだ。

中から二人の声が聞こえる。

俺はドキドキしながら、二人の会話に耳を傾けた。



『あたし、の体…』

千沙は、呆然とその、本来の自分の裸体を見詰めている。

そして、祈祷師はそれをにやにやと見つめていた。

『お前さんの魂からいえば、そうじゃ。

 だが、ウェツィとなったお前さんには他人の体じゃよ。

 お前さんがこの体の持ち主というのなら

 今から見るもので興奮しないことじゃ。

 決して勇者の象徴を大きくしてはいかん。

 それができれば元に戻してやるぞ』

祈祷師はそういって、

千沙を、千沙の体がもっとも見やすい場所に座らせた。

とはいっても、元々縛り付けられているのだが…

そして、何を思ったか

祈祷師はナイフを取り出すと

千沙の片方の手を自由にする。

『どういうつもり?』

困惑する千沙に、祈祷師は何も答えず、ただ不気味な笑みを返した。

祈祷師は、千沙の本来の体に近づく。

『何…をするの?』

そんな心配そうにする千沙の前で祈祷師は本来の千沙の体の足を握った。

日焼けはしているが

ウェツィに比べれば比較にならないほど白く細く柔らかそうな足。

それをゆっくりと持ち上げ

祈祷師は露になった女の子の大事なとこを眺め回す。

『い、嫌っ!!

 やめてっ!!』

そういう千沙に祈祷師は”体”を引っ張ると、千沙にソレを見せ付けた。

『っ…!?』

千沙がウェツィ…男になって既に三週間以上経つ。

そのせいなのか

千沙は…ウェツィは、”千沙”のアソコを凝視したまま固まった。

じっと見据えたまま動かない。

いや、ウェツィの大きく張り出した鼻の穴がいつもより大きく収縮を始めている。

「千沙…」

俺は、そんなに千沙に興奮していた。

なぜかは分からない。

千沙の本来の女の子の体と今の千沙の体であるウェツィが並んでいる。

そして、ウェツィの体の千沙が自分の体に釘付けになっている。

『はぁはぁ…』

ピクッ

ウェツィのペニスが小さく震えた。

勃起が始まる…俺の中の絶望が弾ける。

だが、祈祷師はそんな千沙の前で

”千沙”のアソコに長の手を当てたのだ。

『っ!!』

ビクン

千沙のペニスはまさに跳ね上がった。

今の肉体にとっては性欲の対象。

しかし、魂のとっては元の器。

なのに、千沙は元の器に興奮している…

そう思った。

クニッ

クニッ

宛がっていた手が動き出し指が個別に愛撫の動きを見せ始める。

次第に激しくなるそれに眠ったままの”千沙”の体は反応していた。

クチュ

粘液の音がする。

愛液だ。

”千沙”のアソコから愛液が出てきたのだ。

『はぁはぁ…』

千沙は間違いなく興奮していた。

元の自分に…

元の自分の肉体に…

ウェツィとして。

男として。

ビクン

ビクンッ

千沙のペニスは起き上がると

漆黒の肌に血管を浮かび上がらせながら勃起していく。

千沙の頭の中に男の欲望が渦巻いていく。

元の肉体に性欲を感じている。

おかしい…おかしいよ。

そう思うが、しかし俺はそんな千沙に興奮していた。

『ふふっ』

祈祷師は空いていたもう片方の手でふくよかな胸のふくらみを愛撫する。

プリンのように魅惑的な形を変化させる乳房。

千沙は、たまらんというようにペニスに手を伸ばした。

『はぁはぁはぁ…』

まさにそのときだった。

『そこまでじゃ!!』

祈祷師は叫んだ。

ビクッ

千沙の体が震える。

ペニスを握り締めたまま、千沙は震えていた。

『ふふふ…

 勃起するなといったのに。

 もうこんなか…

 お前さん、ウェツィになりきっているではないか?』

『ち、違う。

 あたし、は、そんな…』

『じゃ、代わりにいってやろう。

 ウェツィからしてみれば初めて生で見るこの体じゃ。

 白くて綺麗でいい匂いで今まで抱いたどの女よりいい。

 そう感じたはずじゃ。

 そして、お前さんとしては自分の体と言い張っとるくせに抱きたいと思ったな?

 どうじゃ、お前さんは、もはやこの体には戻れまい。

 お前さんにとっては、ただの欲望の対象じゃないのか?』

『そんなの…』

『じゃ、その手はなんじゃ?

 男の精をせめてぶっかけたいと思っていたのではないか?』

祈祷師は言葉をまったく緩めない。

千沙はウェツィの体のままうな垂れた。

『ふははは…

 面白かったぞ。

 女を男の体に入れる。

 そして、勇者の肉体を味わわせて元の自分に興奮させる。

 なんという醍醐味か。

 この禁呪は面白いのぉ。

 お前さんが元の体に戻るのを諦めるのであれば長として交わることを許すぞ。

 どうじゃ?』

『い、いやぁ〜っ!!

 もう、やめてぇ〜』

そう叫びながら千沙は首をぶんぶん振った。

なのに、ペニスはブルンブルンっと震えている。

『ふむ…

 じゃあ、こうしようかの。

 お前さんを動けなくして、

 お前さんが自分のものだと言い張るその体と抱かせてやろう。

 但し、中には入れんぞ。

 それで、お前さんが勇者の証をたててしまったなら

 お前さんはウェツィになる。

 それでどうじゃ?』

『いやっ、いやっ!!

 もう許してぇ』

千沙の悲鳴にも似た声が響く。

だが

次の瞬間、長は呪文を唱えていた。

『***********』

長く重く静かな呪文が続き

『あ…』

千沙の…ウェツィの細く筋の張り詰めた腕がだらりと垂れる。

動けなくなったのだろうか?

そうしていると長は千沙を縛っていた紐を切った。



『ああ…ああっ!!』

今…

目の前で信じられない光景が広がっていた。

体を動かせないウェツィの千沙は本来の自分の体と抱き合っていた。

時折、祈祷師がポーズを変えさせる。

祈祷師が人形のように千沙の体を動かし

”千沙”の体に恥ずかしい格好をさせていた。

『いい匂いじゃろ?

 それがその女の匂いじゃ。

 白くて柔らかい肌に勇者として興奮するじゃろ、ウェツィ?

 女も汗をかいてきておるな。

 お前さんがべったり抱きついておるからじゃぞ』

祈祷師は脇から言葉攻めにする。

『やめて、聞きたくないッ!!

 早く、早く、離してよぉ』

千沙が低くどもった男の声で悲鳴を上げる。

だが、表情はどこか陶酔しているような雰囲気があった。

『ほれ、目の前に女の乳房があるのぉ。

 どうじゃ、舐めたいじゃろ?

 しゃぶりたいじゃろ?

 ウェツィ、お前、初めての相手のときのこと覚えておるか?』

『っ!!』

千沙が妙な反応を見せる。

まさか…ウェツィとして初めての相手ということなのだろうか?

千沙はウェツィ本人がした情事も覚えているというのだろうか?

『ウェツィ、お前はこういう形のいい乳房好きよのぉ。

 触りたいじゃろぉ?』

『あ、うっ!!』

祈祷師が確かめるように千沙の下半身を起こさせると

”千沙”の両足の間に隠れていたペニスは破裂寸前なほどに勃起していた。

千沙がそこまで男として興奮している。

いや、ウェツィとして興奮しているのだろうか?

『なんじゃ、もうこんなになっとるのか?

 お前さん、やはりウェツィじゃな。

 もはや、この女ではないわ』

『ち、違うっ!!

 あ、あたしは、あたしが千沙なのよっ!!

 こ、これは、あたしの体

 あたしの体なのよぉ』

千沙の顔が羞恥に染まる。

男の…ウェツィのそんな表情を見てもうれしくないはずなのに俺は興奮している。

『そうか。

 じゃ、次に、女の秘所を見せてやろうぞ。

 こっちを向け、ウェツィ。

 今までのどんな女よりも綺麗じゃぞ』

長はそういうとウェツィの肉体を回転させ、

”千沙”とは逆向きにして股間に顔を埋めさせた。

『ああ、うっ。

 うくっ!!』

”千沙”の…千沙の本来の肉体の顔に今の千沙の肉体のペニスが突きつけられている。

何ていうシチュエーションなのだろう。

狂ってる、何か狂ってる。

そう思うのだが、それもその狂気に取り付かれた一人なのか…

『ほれ、綺麗な色じゃろ?

 ウェツィ、お前さんの抱いた女にこんな秘所のやつはおらんなんだなぁ?』

『し、知らないっ!!

 あたし、そんなの…』

千沙はそういうものの、まさに目を離せない状態だった。

ウェツィの鼻は大きく開いたり、縮んだり

息が激しくなっているのを示している。

鼻の下が伸び、女を見る男の顔だ。

目つきもどこか嫌らしい。

これが今の千沙なのだ。

ウェツィの人生を味わった千沙は、女の経験も豊富なのだ。

千沙自身がしたわけてはないが、したのと同じだ。

なぜなら、リアルのウェツィの記憶をもっているのだから…

その記憶の中でセックスした女の情景が千沙の中に蘇っているはずだ。

女の子として生まれ育った千沙が

アフリカのウェツィとしての人生をミツバチのように吸い上げて

それに酔いしれつつあるのだ。

『あああ…う、うっ!!』

『女の匂いを嗅いでたまらなくなってきたのだろう、ウェツィ。

 いいぞ、出してしまえ。

 この女を征服したいのだろう。

 こやつの顔に勇者の精をぶちまけろ』

『ああ、嫌ぁ〜っ!!

 そんなこと…そんなことしたら』

『この秘所にそれを入れたくてしょうがいよな、ウェツィ。

 綺麗なここに。

 いい匂いのするここに』

『だ、駄目っ!!

 が、我慢が…でき…

 あ、うっ』

千沙のペニスはまさに爆発寸前だった。

ウェツィとしての男の経験が千沙を侵し男の興奮を植え付けている。

男の興奮を知ってしまった千沙。

男の欲望に染まっていく千沙。

この女の子の体にいた頃の千沙とは別人になりつつある千沙。

千沙の変貌。

それを祈祷師は楽しんでいる。

そして、この俺も…

『さぁ、そろそろウェツィに戻れ。

 ダレッサの勇者の威厳を取り戻すのだ。

 ダレッサの勇者としてなら交わらせてやる。

 この眠りこけた女とやりたくてたまらんのだろう、ウェツィ』

悪魔のささやきをする祈祷師。

それに千沙は体を振るわせた。

『あ、ああああ…』

『お前は、ウェツィに染まっていくのに興奮している。

 喜びを感じている。

 ウェツィの記憶に犯されていくのが快感なのじゃ。

 そして、魂を犯されたお前は勇者として元の自分を犯す。

 それは、お前の魂がその肉体との契りを断つことじゃ。

 そうすれば

 もはや禁呪を解いてもお前はその肉体に入ることはない。

 安心してウェツィとして生きれるのじゃ』

『そんな…そんな…』

『ウェツィの快楽を得て

 捨てた肉体を汚すのじゃ。

 どうじゃ、興奮するじゃろ?

 死んだウェツィの魂の代わりにお前はウェツィの魂として生まれ変わる。

 今のウェツィの体と共にな』

『ああ、駄目ェ〜!!

 出てきちゃう。

 出てきちゃうよぉ〜っ!!』

『さぁ、ウェツィの肉体を感じ

 捨てた肉体を汚せっ!!』

『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』

ウェツィが…千沙がうなり声を上げた。

術が解けたのか腰を突き上げ

ビクンビクンっ

と体が激しく揺れた。

ブチュチュチュ

嫌らしい音と共にウェツィの肉体からその生殖器から精液がぶちまけられ

”千沙”の顔が白いクリームでいっぱいになった。

『はぁはぁはぁはぁ…』

千沙が暴走したように目の前の”千沙”のオマンコに被りつく。

目が血走っている。

ウェツィの性欲に憑り付かれ、自暴自棄になっているのか…?

その様子はダレッサの男が”千沙”を襲っている以外の何ものでもなかった。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。