風祭文庫・モランの館






「ディンガの首飾り」
(最終話:図られた選択)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-037





そして迎えた、二十日目の夜

俺達の小屋に、なんと由希(ムカジ)がやってきた。

しかも、汚れたあのときのままの衣服纏ってやってきていたのだ。

小屋の外から二十日ぶりに見る由希(ムカジ)は

すっかり日に焼けてはいたが体は健康そうだった。



小便から帰ってきた俺がそのまま二人を眺めていると

ムカジ(由希)は尋ねてきた由希をいきなり押し倒した。

「へぇ、すっかり男に目覚めたようじゃない?」

ムカジ(由希)を見つめながら由希(ムカジ)がそう言うと

「五月蝿いぞ、てめぇ。

 てめぇと知恵の交換やっちまったせいでこうなっちまったんだからな」

とムカジ(由希)が声を荒げる。

すると、

スッ

由希(ムカジ)はムカジ(由希)の頬を撫でながら、

「すっかり雄の顔ね。

 お前が元の中森 由希とは思えねぇぜ」

と呟いた。

「へへへ…

 それもこれもお前のせいだろ」

「ふふふ…そうこうなるのを待っていたのよ、兄弟」

「兄弟?

 ああ、確かにな。

 今の俺ならお前の考えてたことも考えてることも分かるからな。

 全くディンガの女にあきたらず、由希の体になりたがるなんて…

 お前もすごい勇者だぜ」

「でも、あんたも今は由希の体を欲してるじゃない?

 結局あんたも俺も同じだったのさ」

「そうかもな。

 その体に戻れるんなら戻ってみてぇぜ。

 女の感覚が懐かしくてよ。

 でも女の感覚思い出すと、俺、男として興奮しちまうんだな」

「ははは…分かってるじゃねぇか、兄弟」

「だったら、剥かせてくれるよな?」

「ああ…」

「ああ、いい匂いだぜ。

 これが由希の匂いか。たまらねー。

 チンポから精が出ちまいそうだ」

「入れ替わる前、俺がお前の前に座ったときの気持ち分かるだろ?」

「分かる分かる。

 今の俺も由希の体に興奮しまくってるぜ。

 お前の体は最高だぜ。ディンガの女じゃ味わえねぇ。

 それにしても、元の自分にこんな性欲感じるとわなぁ」

「見込んだとおり、お前は俺になってくれたぜ」

「ああ、由希なら俺の意識の中に取り込めるってことだろ。

 まあ認めざるを得ないな。

 俺、お前になりきってるし…

 気持ちよかったぜ。

 全くこんなチンポもってりゃお前が女とヤリまくりたがるのも分かるぜ。

 女だった俺でさえ夢中になっちまった」

「それだけじゃないんだぜ」

「え?どういうことだよ?」

「お前よ、俺になろうと、交換した俺の知恵を必死で受け入れただろ?」

きょとんとするムカジ(由希)に由希(ムカジ)はいじわる気にいった。

「それはそうだけどよ…」

「で、お前自分の知恵を残そうと頑張ったか?

 どうだ、自分の知恵と俺の知恵、どっちを残そうとした?」

「残す?

 残すとか関係ねーだろ、お前の知恵さえ受け入れればそれでいいんだろ?」

「ちげーよ。俺らは知恵を交換したんだ。

 最初は本来の自分の知恵も残ってんだけどよ、
 
 その自分の知恵を残そうとしねーと消えていっちまうんだよ」

その言葉にさすがのムカジ(由希)も顔色が変わった。

「んじゃ、まさか…俺の中の由希は…その…なんだ消えちまってきてるっことなのか?」

「そういうことになるだろな。

 お前、洋と話してたから日本語は忘れなかったみてぇだが、

 ”由希の知恵”はかなり失ってるんじゃないか?」

(え…)

小屋の中の信じられない光景に固まっていた俺も思わず衝撃を受けた。

「そうか…

 それで俺、こんなにムカジになっていくことに興奮してたのかぁ」

ムカジ(由希)はなんともいえない顔をして、顔を掻いていた。

「そうだろ。

 ”知恵の交換”で己の知恵を失い、
 
 その代わりに相手の知恵を受け入れるのって快感らしいからなぁ」

「そうだぜ。

 自分でなくなっていく感覚だろ?

 そうなんだよなー、俺もそれがたまんなくてさー。

 あのチンポも見られなかった由希がだぜ、
 
 今やいつも女のアソコのこと考えるようになってんだ。

 俺、どれだけムカジに変わっちまったんだろー。へへへ…」

その話を聞いて俺は頭から血が引いていくのを感じた。

そう…なのだ。

今の由希は、元に戻ろうとするどころか、

アイツに変わっていくことにエクスタシーを感じて喜んでいるのだ。

(じゃあ、まさか由希のやつ、戻る気がなくなってきてるんじゃ…)

俺はマジで貧血になりそうだった。

「それよりよー、俺の元の体味わわせてくれよぉ。

 今まで何日我慢してきたと思ってんだ。

 もうこの体のこと思い出しながら、どれだけヌイたことか」

そう言いながらムカジ(由希)は勇者の逞しい腕で、

由希(ムカジ)の胸をブラウスの上から撫でていた。

「お前さ、自分と交わって俺の知恵、完璧に受け入れたらどうするんだ?

 元に戻るのか?」

「そりゃ、そうだろぅ?

 元はといえば俺様の体だぜぇ。

 さっさと返してもらって俺もお前みたいに女の感じってやつを味わって見たいのよ」

「ははぁ、でも男の感覚が懐かしくなるかもしれねーぞ」

「そうかもなぁ、俺もムカジの体気に入ってるしよー。

 よかったら、また飽きた頃に入れ替わらねぇ?」

「はははっ。そりゃいいかもなー。

 俺も今は男に戻って女とまたヤりまくりたい気分なんだよな」

「俺は早く女に戻って、グチュグチュしてねてぇぜ」

ムカジ(由希)はそういうと

ブラウスのボタンを弾き飛ばしながら、由希(ムカジ)をひん剥いていた。

そしてムカジ(由希)はまるで動物の雄のように

由希(ムカジ)の匂いを服の上から嗅いでいる。

「あぁ…たまらない…」

ビンッ!!

ムカジ(由希)はそう言いながら勃起したペニスを扱き始めた。

「ふふ…」

すると、由希(ムカジ)の手がその手の上に重ね合わされると、

「さぁ、いつでも来いよ

 俺の準備は既に終わっているぜ」

と言いながら愛液が溢れる秘所を大開にした。

「うへへ…」

ムカジ(由希)はいやらしい笑いをさせながら、

ゆっくりと股間に顔を埋めていく、

そして、

ピチャピチャ

っと由希(ムカジ)のアソコに舌を這わせるとそれを舐め始めだした。

「あぁ…いいよ

 いい…
 
 俺が…
 
 俺が俺のオマンコを舐めてやがる、
 
 はは…こりゃぁいい…あぁん」

由希(ムカジ)は喘ぎながら自分の身体が自分を汚していることに悦んでいた。

「はぁはぁ」

そして顔を上げたムカジ(由希)は恍惚とした表情で、

「なぁ、いいもぅいいかい?

 おっ俺、爆発しそうなんだよ」

と限界にまで怒張しているペニスを手で慰めながら由希(ムカジ)に懇願した。

「ははは…

 気が早いな…
 
 もぅ少し俺を焦らせろよ
 
 すぐに入れては勿体ないだろう?」

意地悪そうに由希(ムカジ)がそう言うが、

しかし、

「あぁ…

 だめだ…俺もぅ…」

ムカジ(由希)が訴えた途端、

ブシュッ!!

シュッシュッシュッ

っとその極太の真っ黒なペニスから白濁した精液を吹き上げてしまった。

「なんだよう、

 もぅ出しちまったのか?

 お前それでも勇者・ムカジの身体を持つ者か?」

由希(ムカジ)は呆れたような台詞を言うと、

「まぁ、すぐに溜まるから良いけどな

 ほらっ俺が立たしてやる」

そう言いながら由希(ムカジ)は射精して萎えてしまったムカジのペニスを

クチュッ

っとその小さい口に含んだ。

「おっ…

 あぁ…
 
 俺が…由希があたしのチンポを…」

ムカジ(由希)も自分の体が自分のペニスを銜えている姿を見て興奮しだした。

すると、

ムクムクムク

萎えていたムカジ(由希)のペニスが見る見る復活をしていった。

プハァ!!

「へへ、さすがに俺の身体だあっという間に復活しやがった」

大きく膨れたペニスを吐き出した由希(ムカジ)はそれを吐き出すと、

ビンッ

と勃起したムカジ(由希)のペニスを弄ぶ、

そして、

「ほらっ、俺をもっと焦らしてくれよ」

と言いながらムカジ(由希)の前で大の字になる。

「はぁはぁ」

目が血走りあら息をするムカジ(由希)はまるで野獣の如く自分の身体に襲いかかった。

「おっおっおっ

 そうだ、
 
 いぃ…
 
 いぃぜ…
 
 あはは…無茶苦茶感じるじゃないか」

貪るように由希(ムカジ)の身体をなめ回すムカジ(由希)を抱きしめながら

由希(ムカジ)は喘いだ。

そして、

グルリ

とムカジ(由希)は由希(ムカジ)の身体を回転させ、

グッ

っと由希(ムカジ)に尻を突き上げさせると、

ヒタッ

露わになっている由希(ムカジ)のアソコに自分のペニスをあてがった。

「はぁはぁ…いっ行くぜ兄弟」

確認するようにムカジ(由希)が由希(ムカジ)にそう言うと、

「おうっいっいいぜ、早く…入れてくれ」

由希(ムカジ)は大陰唇の両脇に手を添えると大きく開かせた。

「あぁ…

 俺の…
 
 あたしのオマンコ…」

大粒の汗を流しながらムカジ(由希)は愛おしそうにそう呟くと、

グッ

と越しに力を入れた。

メリッ

メリメリ!!

由希(ムカジ)の膣の中にムカジ(由希)のペニスが押し込まれていく、

「あっあぁ

 凄い!!

 太いし、大きい!!」

ムカジ(由希)のペニスをくわえ込みながら由希(ムカジ)は喘ぎ声を上げる。

その一方で、

「うわぁぁ…

 これがあたしの味…
 
 うおぉぉぉぉぉ
 
 締めるぅ締め付けてくる…
 
 凄いよ、凄いよ」

自分のペニスを絡みつくように締め付ける膣の味に酔いしれていた。

そして、腰を動かし始めると、

ヌポ

ヌポ

っと由希のアソコはいやらしい音をたて始める。

「くぅぅぅ」

「あぁぁん」

「ずげぇよ」

「あぁ…最高だぜ」

二人はそう囁き合いながら腰を動かし続けた。

そして、

「うぉぉぉぉっ」

と雄叫びを上げながらついに絶頂を迎えると二人同時に果ててしまった。



そして、入れ替わってから二十五日目。

ついに待ちに待った二人の”交換の儀式”が執り行われた。

しかし、二人の現状は入れ替わったときとは大きくかけ離れていた。

ビクン

ビクンッ

「ん、くぁ…ん、あん…」

由希は、二十五日目にしてムカジというディンガ族の男の肉体から

本来自分の中森 由希の肉体に戻ってきたわけだが…

「おおっ、女の体だぜ。

 胸がある。胸がやわらけぇーぜ」

由希はまるで男が女に憑り付いているかのように

女の体を物珍しげに触りまくっていた。

そう…

中身なのだ。

由希は元の自分と交わりムカジの知恵を自分のモノとして受け入れてしまった。

しかも、ムカジの体ですっかりディンガの男に目覚めてしまっていたのだった。

「・・・・・・・」

「・・・・っ、へへ…

 これで一応俺の知恵も取り戻したわけか。

 全然わかんねーけど、これで取れあえず中森 由希の復活だなぁ。

 あん…んん、気持ちいいぜ、この体。

 やっぱ、ムカジになったかいがあったってもんだぜ。

 入れ替わってみなけりゃ、女の体のよさなんて知りえなかったからなー」

由希は呪術師の説明を聞いて、すっかり舞い上がっている。

だが、”ムカジの知恵”をすっかり受け入れた上、

ムカジの体に魂を安定させてしまった由希は

再び儀式で”由希の知恵”を交換したものの、

お互いにかなり知恵が混ざり切ってしまったため、

元々純粋な”由希の知恵”はなくなってしまっていたわけだ。

だからムカジ(由希)が交換の儀式で元の由希の体に戻ったからといって

”元の”由希に戻れるとは限らない。

しかも由希は儀式の直後で”ムカジの知恵”がそのまま残っているせいか

ムカジの体にいたときと全く雰囲気が変わっていなかったのだ。



「あ…ん、あんあんあんっ」

結局、元の体に戻れた由希だが

俺達は未だ呪術師の隣の小屋に住んでいた。

というか、由希がこの状態では戻れるわけがない。

それに由希自身、戻ろうとは一言もいわなかった。

「ああっ、もうグチュグチュだぜ。

 なんて女の感覚が新鮮なんだ。

 これで男に戻ってもネタがつきんなぁ」

由希は細い女の指を自分のアソコに入れながら悶えていた。

「おい、いい加減にしてくれよっ!」

「あんあんっ…ん…

 て、なんだぁ、洋」

「お前、由希っ。

 いい加減目を覚ませよ。

 お前は、自分の体を勝手に乗っ取られた上に

 ディンガ族の男の体に閉じ込められてたんだぞ。

 それで、何男に戻るようなこといってんだっ!

 元に戻って早く帰るっていってたじゃないか?」

「あん…ん。

 そんなこといってもよぉ、俺は由希だけど、由希じゃないんだ。

 あのときのままの由希なんてもういねぇよ。

 だって、由希はディンガのムカジという自分も受け入れたんだ。

 あの射精したり、女と交わることも覚えちまったし

 このまま戻っても普通の女にゃ戻れねーだろ。

 それに正直いって、俺はまたムカジの体に戻りたいんだよ。

 もうあの体は俺の一部だ。

 またあの感覚を取り戻したいんだ。

 へへ…一月前入れ替わったときの由希なら、こんなこと考えなかったろうな。

 ああ、あのチンポまた味わいたいぜ。

 この体を堪能してあきてきたら、またムカジと体を取り替えて

 この俺の体とセックスしてみてぇな」

由希は右手で女のアソコを愛撫しながら妄想に耽っているようだった。

俺はとうとう我慢ならなくなって

「由希っ」

と叫ぶと由希を押し倒し、その唇を奪っていた。

「んぷっ」

『好きだよ、わたしも』

『だって、幼馴染じゃない。

 嫌いなわけないでしょ?』

あのときの由希の言葉が俺の頭の中で反復される。

あの、懐かしい由希がこんな男女になってしまうなんて…

あのとき、

あのとき、首飾りを買うのをやめさせていれば。

俺は由希の好きという感情と、あのときへの後悔の念でいっぱいになっていた。

「ぷぁっ」

「ちょっと、何しやがる、洋っ」

「由希。

 俺はお前が好きなんだ。

 だから頼む、元のお前に戻ってくれ。

 こんなままじゃあ、俺は耐えられないんだ。

 そりゃあ、お前がその体に戻るために苦労してムカジを受け入れたことは知ってる。

 その結果、こうなったのは分かってるけど、けどさ

 俺はお前に元に戻って欲しいんだ。

 俺がエッチなことしてたら貶してくれてもいい。

 いつもみたいにビンタ食らわしてくれてもいい。

 でも、今のまま由希を見てるのは我慢できないんだ」

俺は由希の両肩を押さえながら必死に俺の気持ちを訴えた。

「洋…お前」

「お前だって、最初はさっさと由希に戻りたいっていってたろ。

 そして、元に戻ったら

 俺と正式に付き合ってくれるとって約束してくれたじゃないかっ?」

そのとき、俺の言葉にようやく由希の顔に変化が現れてくれた。

「洋…

 ああ、確かにそんな約束、俺してたよな。

 …

 でも、俺はもう半分ディンガのムカジだ。

 女とエッチがするのが大好きで、

 かっこつけと思われてるムカジなんだぞ。

 そんな俺でもいいのか、洋?

 そりゃ、俺は一月前は中森 由希だったことは間違いねぇけどよ。

 それでも、もう完璧な由希に戻れねぇぞ、俺」

由希は戸惑うようにそういった。

「構わない。

 由希が自分が由希だっていう自信を取り戻してくれて

 由希っぽく振舞ってくれるだけでもいいんだ。

 だって、由希が由希だったことは間違いない事実じゃないか?

 俺と由希は一緒にここにきたんだぜ。

 そんなの俺だって分かってるさ。

 ただ俺に嫌われようとしてわざとムカジっぽく振舞って欲しくなんてない。

 無理に由希の気持ちを押し隠して欲しくないんだ」

由希は久しぶりに女の子ような仕草で恥らっていた。

「そうか…

 そこまで分かってくれてるなんて思わなかった。

 確かにわたし、演技してたことはあったけど…

 でも、スケベなムカジな自分もあるのはほんとだから

 それだけは許してよね。

 スケベになったのは事実だから…」

由希はそういうと、

俺の手を取ってじっと俺の瞳を覗き込んだ。

「ああ、それも今の由希なら構わないさ」

「じゃあ、元の…

 あ、日本に戻る前に一つだけわたしの願い聞いてくれる?」

なんだかすっかりいい雰囲気に俺もようやく由希に安堵していた。

「ああ、なんだ?」

「わたし、もう一回だけムカジになってみたい…」

「え゛……」



そう…

由希はもう一度ムカジの肉体になってみたいと願った。

それには、一週間の由希が由希の肉体に安定するまでの期間と

更に由希がムカジの肉体に安定するまでの期間が最低必要ということだ。

今回は前の二回と違って知恵の交換は行わないから比較的早く安定するらしい。

それはともかくとして、

由希がそんなに男の体に馴染んでいたとは…

俺は呪術師に相談する由希のハキハキした表情見つつ、

由希の性癖がどうなることかと内心心配していた。

それでも、由希が自らディンガの男になることを望むなんて夢にも思わなかった。



一週間後

再び交換の儀式が行われた。

むろん、由希とムカジのだ。

ムカジは当然簡単に了承した。

というか、ほとんど由希といるときは兄弟でいるような気分らしい。

由希もムカジとは最近もっぱらディンガの言葉で会話するので、

何をいってるのかわからないが

話している間は男っぽく、確かにムカジと兄弟のような雰囲気だった。

「はぁ…んん」

由希は一週間ちょっとぷりのムカジの肉体で目を覚ます。

そして、

首飾りと腰や腕周りに紐があるだけの漆黒の肉体を見回して満足そうにしていた。

「ああ…一週間ぶりのムカジの体だ。

 チンポのある感覚が懐かしい…」

ムカジ(由希)は早速自分のペニスを確認するかのように手でなで上げていた。

「やっぱ、由希の体はいいなぁ。

 日焼けしたといってもこの白っぽさ。

 この体つきがたまらねぇ」

由希(ムカジ)も薄汚れた由希の服の上から撫でまわしている。

「それにしても、また急だったなぁ。

 そんなに早く俺の体に戻りたかったのか?」

由希(ムカジ)の質問にムカジ(由希)は

「ああ、洋と日本に戻るという約束をしたからな。

 その前にムカジの肉体を堪能しておこうかと思って」

「まさか、お前から先に戻りたいなんていうとは思わなかったぜ」

「そうかもな」

二人はそんな会話をして俺の方を向いた。

「さて、洋。

 行こうか?どうせ一週間はこのままなんだ。

 ちょっとこんな格好で悪いけど付き合ってよね」

ムカジ(由希)は、由希らしさを取り戻しつつも

ディンガの肉体で俺の手を取って走り出した。

「しこたまヌいてこいよぉ。

 ディンガで最高の勇者の体を堪能してこいよぉ」

後ろで由希(ムカジ)の声が聞こえた。



ムカジ(由希)は、

昼間は俺に狩の腕前やディンガの集落周辺を案内して回ってくれた。

確かに俺は由希が以前ムカジになっていたときも

ディンガ族の男の村から出ることはなかったのだ。

初めて見るものたちに驚きながら

俺はまるで生まれついてのディンガにガイドされているような気分に陥りつつ

ムカジ(由希)の説明を聞いていた。



そして、俺達は再び呪術師の隣の小屋へと戻ってきた。

さすがに馴染んだこの場所だが

また由希のディンガ族の姿をした拝むことになるとはな。

俺は溜息を吐きながら、食事の準備をするムカジ(由希)を眺めていた。

「はい、できたよー」

「ああ」

「どう?おいしい?」

「ん、ああ。

 味が薄いのは相変わらずだけどなぁ」

「そうかなぁ。

 わたしは普通だと思うけど…

 あは、やっぱディンガの味覚は違うよね」

ムカジ(由希)は一気に男らしく喉に流し込むと大胆に寝そべった。

「はぁ、やれやれ。

 やっぱり、由希はムカジでいる方が楽そうだなぁ」

「へへ…

 やっぱ、男は雑で大胆でいられるからいいんだよ。

 女の子に比べて気が楽なのは確かだよね」

由希は腕に力こぶしを何気に作りながら、自分の逞しい腕を眺めていた。

「そういや、一週間で元に戻るんだろ?

 それまでに…そのやっぱ、自分と、その…またセックスするのか?」

「するつもりだよ。

 というか、したいしさ。

 わたし、ムカジの知恵もらったせいかもしれないけど、

 男の感じが自分に合ってるような気がするんだ。

 それに、自分とセックスするのがまたたまらないの。

 自分が自分でないという事実と、
 
 自分が男で、元の自分が女という事実がたまらなくってね」

「…お前、やっぱ危なくなったな」

「へへへ…

 そりゃそうもなるよ。

 最初は嫌だったのに、それでも自分の肉体の性欲を抑えきれなかったとき

 ああ…自分も所詮はディンガの男…男なんだと思ったの。

 女である自分が射精してるってことに興奮を覚えたのもその頃だわ。

 次第に由希だった自分が客観化されて、
 
 自分が由希を射精に導いているような気がしてきたときには

 勇者の証を立てることにハマッてた」

ムカジ(由希)はそんなことをいいつつ、早速ペニスを扱き出していた。

「あっ、ああ…いい。

 わたし、またムカジの…わたしのチンポ感じてるんだ。

 この股間の力強い感じがたまんないっ」

「おいおい…」

俺は、ディンガの青年の体でオナニーに耽るムカジ(由希)に

一種の諦めに似た気持ちを感じていた。

「はぁはぁ…

 この感じ、たまんないっ。

 どうせならチンポだけでも日本に持って帰りたい気分だわ」

ムカジ(由希)はペニスをシコシコ扱きながら呟いた。

「何いってるんだよ、まさかムカジの姿のまま帰る気じゃないだろうな?」

「あはは…そのつもりだったりして…

 ま、冗談だけどね。

 はぁはぁ…

 ねぇ、洋。またわたしのチンポ、扱いてくれない?」

ムカジ(由希)は懇願するようにそういった。

「えー?

 そのムカジのチンポを俺が扱かなきゃいけないのかよ?」

「今はわたしの…由希のチンポなんだよ?

 いいでしょ?」

「はぁ、まさか由希にチンポを扱くことを手伝わされるなんて信じられないよ」

俺は大きく溜息を吐くと

俺よりも大きなムカジ(由希)の横に座った。

漆黒で赤ちゃんの腕のようなペニスが股間の間から聳え立っている。

カリの開き方も俺のとまるで比べ物にならなかった。

そういえば、こんな風にムカジのペニスを見たのも初めてかもしれない。

「ねぇ、早くぅ」

ムカジ(由希)にせかされて、俺はためらいがちにムカジ(由希)のペニスを握った。

熱く硬い…そして我慢汁でどろどろになっている肉棒が俺の手に触れる。

「あ、あん…んんっ

 他人に握ってもらえるって、やっぱ最高っ」

ムカジ(由希)は満足そうに自らのペニスの感覚に酔いしれていた。

「これで…由希はオナニーしたり、エッチしたりしてきたのか?」

俺はそう思いつつ、

ムカジ(由希)に対しては愛しさを

ぺニスに対しては並々ならぬ嫌悪感を感じていた。

そう…このペニスのせいでムカジ(由希)が

男の性欲の泥沼に嵌ってしまったことを考えれば当然かもしれない。

そのせいか、俺は何時の間にか荒々しくムカジ(由希)のペニスを扱いていたのだった。

「あっ、あっ!

 激しいぜっ、洋っ。

 たまんねぇっ!」

ムカジ(由希)は何時の間にか男言葉に戻りつつ、

涎をたらして久しぶり男の性快感に喘いでいた。

「これっ、これだっ。

 このチンポの根元にくる感覚ぅ。

 この感じ、由希じゃぜってぇに味わえねー」

由希は腰を浮かしつつ俺の扱きとは逆に腰を震わせ、

更なる快感を求めていく。

「あ、ああっ、イクーッ。

 出る出ちゃうっ。

 あんっっ”

 漏れちゃう」

ムカジ(由希)は口をパクパクさせて興奮しながら

目を大きく見開いた。

ジュッ

ジュッジュッ

ムカジ(由希)の巨棒から激しく白濁液が飛び出すと

ムカジ(由希)は俺の手をどかせて

シュッ

シュッ

と残りの精液を渋り出していた。

「ぁぁぁぁぁぁぁ…」

ムカジ(由希)は満足そうに自分の精液を眺め、射精後の余韻に浸っていた。

「やっぱ、ディンガの男は違うぜ。

 この感覚がやめられねぇ」

ムカジ(由希)は、手についた自分の精液をクンクンと匂いを嗅いでいた。

「お、おいっ」

「いいじゃねぇか。

 自分の精液だぜ。ああ、また俺、男の精を出せたんだ。

 勇者の証、さいこーだぜ」

『や、やだ…

 わたし、こんなの出しちゃったの…

 や、ねばねばしてて気持ち悪い』

初めて男のオナニーを教えてあげて、

ムカジ(由希)が射精してしまったとき

ムカジ(由希)は手についた精液に戸惑いと嫌悪を覚えていた。

それが今は精液を出して喜んでいるムカジ(由希)が目の前にいる…

そのギャップに俺は頭の中がこんがらがった。

「ははは…どうだ、俺の体は最高に気持ちいいだろ?

 由希」

そのとき突然、由希の声が聞こえた。

つまり、由希(ムカジ)だ。

小屋の入り口を見ると、由希(ムカジ)と呪術師が面白げに見ていた。

「ムカジ、それに呪術師のじいさんもっ!?」

「な、何だよ、突然?」

オナニーを見られていたことに少し機嫌を損ねたのか

ムカジ(由希)も威嚇するように低い声を出す。

「ふふふ、はっはっは。

 由希よ。お前、とうとうやっちまったな。

 これでお前はもう元には戻れねー。

 一生ムカジとして暮らすんだ」

「な、何っ!?」

それでなくても頭の中が混乱していた俺は、更にわけが分からなくなった。

「そうなんだよ。

 魂が何度も肉体の間を行き来していいはずがない。

 魂の方も何度も相手の肉体にうまく安定しつづけるはずもない。

 そう…だから三度目の交換の儀式では、魂が相手の体に馴染んだ場合

 二度と肉体と魂が分離しないように呪文が吹き込まれるんだ。

 それで今呪術師にお前の魂のムカジの肉体に馴染んでしまったことを確認してもらった。

 そう…

 お前の魂は今ムカジの魂と化したのだ。

 たとえ、儀式をもう一度しても、お前の魂は肉体から離れるのを拒絶するんだ。

 お前はもうムカジ、魂もムカジになったのだ」

由希(ムカジ)は可笑しそうに笑い転げていた。

「そんな…俺、わ、わたし…

 二度と戻れないの…」

ムカジ(由希)も自分の決めたプランの落とし穴に呆然していた。

「そうだ。お前の魂は今ムカジの魂として生まれ変わった。

 二度と由希の肉体に戻ることは叶わないだろうって、呪術師もいってるぜ」

「じゃ、じゃあお前、まさか…

 まさか由希が自ら元に戻れなくなるような選択させるためにこんなことをしたのか?」

俺はようやく我を取り戻しながら怒鳴った。

「はぁ?どっちにしても決めたのは由希だ。

 おっと、もうムカジって呼んでやらないと可哀想だな。

 魂までムカジの肉体に馴染んでしまったのだから」

「わ、わたしがムカジのまま…」

さすがのムカジ(由希)も震え始める。

「ははは…

 お前も感じ取ってはいただろ?

 さっきのオナニーでお前は自らムカジの肉体と一体になったんだ。

 どうだ、最高の快感だったろ?

 魂が完全にディンガの勇者に溶け込んでしまった感覚は」

「そ、それであんなに…わたし…」

ムカジ(由希)は震える手で顔を押さえた。

ビクンビクンッ

そして、なぜだか

ムカジ(由希)のペニスは再び勃起し始めていた。

「ははは…由希。

 俺になれたのがうれしくて興奮してるのか?

 勃起してるぞ、お前」

「な、なんで…

 そんなつもりじゃなかったのに…」

「おいっ、やめろっ」

「そうだろー。

 自分が自分でなくなっていくことにお前は快感を覚えてしまった。

 そして、今ムカジになってしまったという事実にお前は興奮してるんだ。

 ははははは…」

由希(ムカジ)は狂ったように笑いつづける。

「やめろーっ!!」

俺はこの狂った事実に困惑しながら

それを否定しようと必死に叫び声を上げていた。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。