風祭文庫・モランの館






「ディンガの首飾り」
(第2話:由希とムカジ)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-036





「はぁはぁはぁ…」

男の体で絶頂に達したムカジ(由希)は恍惚とした表情のまま、

うつろな瞳で自分のペニスを見下ろしていた。

「・・・・・」

すると呪術師が突如出てくると、満足したように由希(ムカジ)に話し掛ける。

「・・・・・」

由希(ムカジ)もまた部族の言葉で呪術師に返事していた。

「そんな…こんなことが…」

俺は由希があのいやらしい男の体でイったという事実に唖然としていた。

こんな信じられないことがあるのだろうか?

由希とあのディンガの男の体が入れ替えられて、

さらにあの男の体で射精するなんて…

「おい、お前。

 こいつの面倒でもみてやれ」

「お、俺?」

当然、由希(ムカジ)にそういわれた俺は、

呪術師が連れてきた別の男に引きづられるようにして

ムカジ(由希)と一緒に呪術師の隣の小屋にぶちこまれた。



「はぁはぁはぁ…」

さっきのことがよほどショックだったのか、

ムカジ(由希)はさっきから自分のペニスを眺めたままぼぅっとしている。

にしても、由希がこのディンガの男になってしまったなんて…

この男の体に由希がいるなんてどうしても信じられない。

俺は今のムカジ(由希)になんていっていいか分からず困惑していた。

「わたしの体…」

ぼそりとムカジ(由希)は突然呟いた。

「え?」

「わたしの体…」

ムカジ(由希)はペニスを見つめつつそう言うと

まだ精液で濡れているペニスを握った。

「女の液ついてるかな…」

ムカジ(由希)はいきなりいやらしい笑みを浮かべると

ペニスの枝についているはずの由希の蜜を手にとりペロリと舐めた。

「女の匂いだ。へへへ…」

ムカジ(由希)は変なことを呟くと、

左手で手についた愛液の匂いを嗅ぎながら右手でペニスを握り扱き始めた。

「ああ…こんな感じ…

 こんな感じだぜ。

 ああ、気持ちいい。

 思い出してきた、この感覚…

 あっ、あっ、ぐ」

ムカジ(由希)はうつろな眼で

シッュ

シュッ

と今の体に備わったペニスを扱く。

「お、おいっ。

 やめろよっ」

俺は慌てて起き上がると

ムカジ(由希)の漆黒の細長く逞しい手を止めようと飛び掛った。

「やめろっ」

ゲシッ

ムカジ(由希)は一撃で俺をなぎ払うと

ペニスを更に扱き上げていく。

「うっ、うっ、うっ…」

リズミカルに激しくオナニーをするムカジ(由希)。

俺は何が何だかわからなくなってきた。

そして、

「う、うぉ、うおーっ!」

ムカジ(由希)はそう唸ると

ブシュッ

ブシュッ

と再び射精をした。

小屋の中に栗の花のような匂いが充満する。

「はぁはぁはぁ…」

ムカジ(由希)は激しく呼吸しながら精液を手に取ると、

ツツー

粘液が糸を引いて伸びていく様子を眺めながら、

それをぺろりと舐めてしまった。

そして、

「これが俺の精の味か…」

と呟くとムカジ(由希)は再び興奮し始めたのか

ピクンッ

ムカジ(由希)の股間に備わった漆黒のペニスが勃起を再開した。

今度は、ムカジ(由希)は胸板を触りつつ自分の匂いを嗅ぐ

「ああ…これが今の俺の匂いなのか…

 変な気分だぜ。

 俺は女だったはずなのに、今はこんな立派な体をもっちまってるなんてよー」

ムカジ(由希)は味わうようにゆっくりと体の感触を確かめていく。

「いい。いいぜ。

 なんて逞しいんだ。

 この感触だ。この筋の堅さ。

 そして、この勇者の象徴。

 たまんねー」

ムカジ(由希)は手を最後に股に戻すと

ぶっといペニスを握り締めた。

「はぁ、はぁ。

 この象徴は俺んだ。

 俺のものなんだ。

 気持ちいいぜ。これから、俺は毎日この感覚を味わえるんだ」

ムカジ(由希)はペニスを握りつめたまま手を動かし始めた。

「あー、いい。この感じだ。

 自分が溶けていく感じ。

 まるで俺が中森 由希じゃなかったみたいだ。

 ああ、俺が溶けていく。

 この体の中に溶け込んでいくようだ」

ムカジ(由希)は訳のわからないことを呟きながらオナニーを続ける。

「ああっ、俺の記憶に俺が興奮してる。

 女だったときの記憶が…

 他人のようだ。

 ああ、あんな体してたんだ俺。

 いい、いいぜっ。

 それに今の俺は男の精をぶっかけてやりていんだ」

ムカジ(由希)は、興奮しておかしくなってしまったかのようだった。

「由希…」

「ああっ、俺が俺でなくなっていくぅ。

 俺は、由希だったのが信じられなくなってくるぜぇ。

 はぁはぁっ」

俺は呆然としつつ、漆黒の肌を持つ男のオナニーを呆然と眺めていた。

「くぅ、うぉ、ぅぉ」

ムカジ(由希)の声が入れ替わる直前の”男”の声と重なったとき

俺はようやくハっとして飛び上がった。

パシッ

俺は今のムカジ(由希)の横顔に一撃を入れる。

渾身の一撃だったからだろうか、

さすがのムカジ(由希)の肉体も吹っ飛んだ。

そして、ごろごろと転がると唖然とした表情で俺を見た。

「洋。

 わたし、いま何してた?…」

ムカジ(由希)はそう尋ねると自分の変わりように号泣した。



「元に戻して下さい」

翌日、

泣き腫らした目をしたムカジ(由希)はやってきた呪術師にそう懇願した。

昨日の今頃はまだムカジ(由希)は由希だったのだ。

ポニーテールの似合う普通に女の子だったんだ。

それが、今はこの漆黒の逞しい体の中に由希の心が囚われている。

「そうだ、早く戻せっ」

「・・・・・・・・・」

俺達二人の声に呪術師は何かいった。

「え…・・・」

俺には内容はわからなかったが、

ムカジ(由希)は突如現地語で返事をした。

「…由希?お前」

「あ、あれ…

 洋。わたし、呪術師のいってることわかるよ…」

ムカジ(由希)は呆然としつつ俺の方を向いた。

「・・・・・・・」

「・・っ!?」

再び呪術師がいう言葉にムカジ(由希)が答える。

(まさか…これがやつのいってた知恵の交換か!?)

俺はこの状況に昨日のやつの言葉を思い出した。

「じゃあ、由希の中でやつの知恵が目覚め始めてるということなのか?」

俺は背筋にひやっとしたものを感じ取り俺より逞しいムカジ(由希)を見上げた。

「そんなぁ…」

ようやくある程度話ができたらしいムカジ(由希)が日本語で喋った。

「どうした、由希?」

「…それが…今すぐ元に戻してっていったんだけど…

 魂が今の体に安定しないと”交換”は行えないんだって。

 だから、

 わたしとあの人の魂がこの体とわたしの体に安定しないと元に戻れないのよ。

 それに、”知恵の交換”もしてるから、相手の知恵を受け入れないと

 わたしたち元に戻れないんだって…」

ムカジ(由希)はふらふらとしながら頭を押さえた。

「どうしたら、早く安定して元に戻れるんだ?」

俺が心配していうと

「…早く相手になりきることだって…

 でも、それって…

 呪術師は、簡単だっていったけど…

 あの人と相談しなきゃいけないんだけど

 それはちょっと…」

確かに今の由希の体の持ち主の男は淫乱な気のある男らしい。

由希だって、元の自分の体を弄られているところを見たくはないだろうし

自分がそんな男になりきるなんて嫌だろう。

「・・・・・・」

肩を落とすムカジ(由希)を見て、呪術師はまた何かをいった。

「・・・・?」

「・・・・・・・・」

「・・・・・っ!?」

「そんなぁ…

 そ、そんなことできない。

 できないよぉ」

ムカジ(由希)は泣きそうになった。

「どうした?」

「一番手っ取り早いのは、元の自分の体と交わる…ことだって…

 呪術師が…」

「…何っ!?」

俺はそれを聞いて引っくり返りそうになった。



「わたし、まだ処女なのに…」

「そ、そうだったのか、由希?」

「うん…それを自分で犯すなんてできないよ」

俺は逞しいムカジ(由希)の体を見上げて尋ねた。

(俺、何意識してるんだ…

 由希は幼馴染じゃないかっ。

 でも、俺、由希のこと…

 ああ、なんでかしらないけど気になってる。

 もしかして…

 もしかして、俺、由希のこと…)

「あれ、どうしたの?洋」

「由希…」

「何?」

(ああ、俺何考えてんだ、こんなときに…)

「好きだ」

「え?」

「由希のこと、昔から気になってた」

「そ、そんな…」

ムカジ(由希)は、思わず俯くと縮れた毛の頭を撫でていた。

「こんなときにいわなくても…」

「分かってる。でも、俺は失いたくないんだ、由希を」

「そう…」

「由希、絶対に元に戻ってくれ。

 そうじゃないと俺」

「ありがとう…」

「え?」

由希はあの男の顔で恥らっていた。

「好きだよ、わたしも」

声は気持ち悪かったけど…

でも、ムカジ(由希)は確かにいまそう呟いた。

その言葉に俺はハッとすると、

「俺のこと?好いてくれてるのか?」

と聞き返すと、

「うん…」

ムカジ(由希)は素直にうなづいた。

「よかったぁ…拒否されたらどうしようかと思った」

「だって、幼馴染じゃない。

 嫌いなはずないでしょ?」

「ああ、そうだな」

体こそ違っていたが、ムカジ(由希)のその気持ちはうれしかった。

「じゃあ、わたしの大事なところは取っておこうね」

「ああ、俺も初めてだしな」

「そ、そうなんだ」

「…うん」

「わたしも初めてだから、初めて同士だね」

ムカジ(由希)は憎たらしいアイツの顔で微笑んだ。



「はぁはぁはぁ…」

「ぐぅっ」

あれから四日が経った。

最初は俺が手取り足取り教えてやったオナニーも様になっているというどころか

それが当たり前というかのようにムカジ(由希)は小屋の外でオナニーしていた。

どうやら本格的にアイツの知恵が目覚めたらしい。

「ふぅふぅ、気持ちいい…」

アイツの知恵のおかげでムカジ(由希)は急速に部族の生活習慣に馴染みつつあった。

獲物も仕留めてきて俺に食べさせてくれるし

薬草や、部族の道具の作り方まで知ってしまったらしい。

だが、アイツの知識はそれだけじゃなかった。

性的な知恵もムカジ(由希)は、アイツの知恵から得てしまったらしい。

三日前までは恥かしがって射精した後も恥かしさのあまり隠れていたのが、

今では普通のディンガ族の男と何ら変わらないぐらい激しいオナニーを外でしている。

「うぉ、うぉ、うぉぉぉぉ」

ムカジ(由希)は唸り声を上げると射精したらしい。

そして、暫くかさこそと音のした後、小屋に戻ってきた。

「ごめんね、すっかり目覚めちゃって…」

ムカジ(由希)は申し訳なさそうにいった。

「仕方ないよ。そんな逞しい体だからな、性欲も強いんだろ。

 特にアイツは、とっかえひっかえ女としていたらしいからなー」

「そうだよな。

 この体で俺、女ヤり捲ってたのか。

 くぅ〜、また勃ってきちまうぜ」

ムカジ(由希)は一度萎えた剥き出しのペニスを握り締めるとそう言った。

「あ、ごめん。下品だったね。

 アイツの知識で思い出しちゃって…

 俺、毎日二人ずつくらいは食ってたからなぁ」

ムカジ(由希)は謝りながらも、

ごく自然に六日前自分のものになったペニスを撫でていた。

「おいおい…

 あんまりアイツになりきらないでくれよ」

「はいはい。ごめんね」

ムカジ(由希)はそう言うと勃ち始めたペニスを隠そうともせず座り込んだ。

「お前なぁ、女の子としての恥じらいくらいないのかよ」

「…だって、恥かしくならなくなってきちゃったんだもん。

 ペニスの感覚にも慣れたし、精出すのも気に入っちゃったし」

「精出すのが気に入っただぁ?

 はぁ…由希、しっかりしてくれよー」

俺は溜息をつかざるをえなかった。

そりゃあ一度受け入れてしまわないと元に戻れないのだろうが、

アイツになりきられてしまっても困る。

「はぁ、初めてオナニー教えてやって時は気持ち悪いとかいってたくせに…

 ”アイツの精液出して、わたし喜んでるなんて最低”とかいってじゃないか?」

「アイツの精液かぁ。

 今はわたしの精液なのよねぇ。わたしの体なんだし…

 ようやく、男の悩みが分かったような気がするなぁ。

 それにアイツの気持ちも…

 こんなに悶々するものだとは思わなかった」

「おいおい…」

「元はといえば、洋がわたしにオナニー教えたんだよ」

「だがなー、お前自分で自分のやり方思い出したんだろ?」

そう…

この三日の間に、オナニーの味をしめたムカジ(由希)は、

とうとうアイツの知恵からオナニーの仕方を思い出してしまったのである。

アイツが長年この体を諌めてきたそのやり方を…

だから、すっかり男の体に馴染んでしまったわけだ。

「そうだけど…

 あ、そうだ。

 せっかくだから、俺のやり方、洋にも教えてやるよ」

と俺に向かってムカジ(由希)はそう言うと、

まだ物足りなさそうに半分勃起しているペニスを揺らしながら立ち上がった。

「おいっ!?」

「ほれー、見てろ。

 こうするんだぜ」

ムカジ(由希)は三日前まで初心者とは思えないほど、

手馴れた手つきで自分のペニスを握り締める。

シュッ

シュッ

「これだよ。このカリのところでギュッと握り締めてさ。

 女のアソコの中を思い返してやるんだ。

 いいぜー。

 ほら、実践だ。やってみろ」

ムカジ(由希)は俺の手の上に自分の手を重ねると自分のペニスへと導いた。

むわっ

ムカジ(由希)のディンガ族のきつい体臭が身近に感じられる。

そして、俺の手は熱くぶっといムカジ(由希)のペニスに触れた。

六日前まではアイツの持ち物だったのに、

今はムカジ(由希)のモノになっている逸物に…

この熱く火照っている硬い肉棒を感じているのが、

あのムカジ(由希)だなんてちょっと信じられない。

シュッ

シュッ

「こうやってな。

 ああ、いいっ。

 へへ、まさか洋に自分のペニス扱いてもらう日がくるとは思わなかったぜ」

(ハッ)

俺は、思わず何か寒いものを感じた。

『洋、な、何やって…

 い、いやっ、洋のバカーッ!!』

中学の頃、オナニーしてる最中に由希が入ってきて喧嘩になったときのことが

急に懐かしく、そして悲しく思い出された。

「お前、由希なんだよな」

「あん、あん…

 な、何いってんだ、洋。

 俺は俺に決まってるだろ」

そんなムカジ(由希)に俺はマジで寒気を感じた。

「こんなことして…

 こんな由希なんていやだっ」

俺は思わず手を弾いた。

ムカジ(由希)のペニスがブラリと垂れ下がる。

「ど、どうして、由希

 いつからそんなに男みたいになったんだよ、由希。

 お前はもっと潔癖な女の子だったじゃないか?

 今のお前は…俺の知ってる由希じゃない」

ムカジ(由希)はペニスを勃起させてまま項垂れた。

「そ…そんなこといったって…

 仕方ないじゃない。

 アイツの記憶が…アイツのやってきたことが

 何時の間にかわたしにも当たり前になってきてるんだもん。

 わたしだって、最初は嫌だった。

 でも、次第にごく普通に思えてきて…

 ……

 アイツの記憶に飲まれていくの感じて、

 ほんとは怖いのよ。

 当たり前のようにペニス握って射精して、

 気持ちよがってるわたし。

 由希は嫌がってのに、わたしは男なんだから当然だぜとか思っちゃうの。

 嫌がっていたはずなのに、
 
 気がついたらそれを受け入れてるわたしがいるんだもん。

 怖いのよ。

 でも、怖がってたらわたし、元に戻れない。

 中森 由希の体に戻れないじゃない。

 だから、我慢して受け入れてるのよ」

ムカジ(由希)は大きな鼻から荒く息を吐き出しながらそう言った。

「ごめん。

 勝手なこといって。

 そうだよな。一番辛いのは由希なんだもんな」

「ううん、いいの。

 たまにはそうしてもらわないと、

 わたしも由希であること忘れそうになるから」

ムカジ(由希)は寂しそうにそう言った。

「ちょっとオナニーしてくる」

「え?」

「こんなエッチなわたしは見たくないでしょ?

 ディンガ族の性欲に染まってるわたしなんて」

「そんな…」

「ごめんね、ヌいておかないとわたし、女の村に行きたくなっちゃうから」

その言葉に俺はムカジ(由希)が

アイツの性欲をいかに苦労して諌めているかを知るのだった。



「あ、くっ、くぅっ。

 たまらねー、思い出せば出すほどたまらねー。

 これこそ俺の象徴だぜ。

 気持ちいいぜ。

 由希だったときには知りもしなかった、この快感。

 ああ、いいぜ。

 女のアソコにコレを入れてよう。

 ああ、俺の象徴ってこうなってんだ。

 ここがこう…

 女のアソコに入っていって…

 ああ、たまんねー」

外でオナニーをするムカジ(由希)。

由希の中に流れ込むアイツの記憶に犯されていっているのが

小屋の中で聞いていても分かる。

由希は女である自分が男の性欲に染まっていくことに

倒錯的な興奮を覚えているようだ。

毎夜、ムカジ(由希)のオナニーを聞いているから分かる。

でも、俺の前でいるときは

できるだけ由希であり続けようとしているムカジ(由希)が切なげで

俺は由希のオナニーについて何もいえなかった。



「ああ、なんなんだ、この感じ…

 俺、興奮しまくってるぜ。

 俺、二週間前まで女だったのによぉ。

 女のアソコ見たくてたまらねー。

 そうだぜ、俺のココにはアレがあって、

 ああ、今ならこんなぶっといのが生えてるっていうのに

 俺のアソコは俺のものじゃねぇんだ。

 そうなんだよなぁ。

 俺はアイツのチンポもらっちまったんだからなぁ。

 そうだぜ、これは俺のチンポだぜ。

 ああ、信じられねぇのに、今は当たり前に感じてるんだ。

 俺が、アイツに溶けていく。

 ああっ、たまらねー。
 
 由希が由希でなくなっていくんだぁ。

 そうだよなー、十四日前は俺の体じゃなかったのに…

 今はこれが俺の体なんだぁ。

 そう思うと変だよなー。

 なんでか分からねーけど、興奮するんだよ。

 俺、二週間前、俺の隣でチンポおったててたアイツの体に入って、
 
 その俺が今あのチンポをおったててるんだ。

 すげーじゃねぇか。

 汚ねーとか思ってたくせに、
 
 今はそのチンポの快感にめろめろなんだぜー。

 この俺が…

 由希が、射精してるんだぁ。

 アイツの快感は俺のものなんだ。

 ああ、たまらねー。

 そして、このチンポで元の俺のアソコに入れたりしたらどんなだろうな?

 へへへへ…

 ああ、あのアソコにこのぶっといの突っ込んでやってよう」



二週間経った。

由希はアイツのスケベさ加減まで見事受け入れてしまった。

アイツってなんてやつだったんだろう?

俺は愕然としながらもムカジ(由希)の変わりように

不謹慎ながら興奮を覚えてしまっていた。

『エッチィ』といい、

あっかんべぇをしながらエロ本を破り捨てた昔の由希が嘘のようだ。

それにしても、

最近、由希は元の自分とセックスすることを妄想し始めているようだ。

本当に大丈夫なのだろうか?

そう思っていると

オナニーを済ませたムカジ(由希)が帰ってきた。

「あー、すっきりしたぜぇ」

「なあ…」

ふと、ムカジ(由希)の言葉が気になった。

「男言葉になっちまったのは仕方ないとしても…

 由希、日本語の喋り方おかしくなってきてないか?」

「喋り方がおかしい?」

「ああ、なんかイントネーションが狂い出してないか?」

「…そうか。

 俺もなんか頭の中がディンガ族っぽくなってきてたような気はしてんだ」

「なんだって?」

「考え事すっときよ。

 日本語で考えるか、
 
 ディンガで考えるかっていわれたら、

 俺、ディンガになってきてんだ」

「おい…」

俺の頬を冷や汗が流れる。

「大丈夫だって、多分魂が安定してきた証拠なんだろさ。

 もうすぐだ、もうすぐ由希の体を奪い返してやるぜ」

ムカジ(由希)はいやらしい笑みを浮かべてそう言った。

(ほんとに由希は元に戻れるんだろうか…

 知恵の交換って、元に戻るときどうなるんだ?)

俺は最近そんな不安を抱えていた。

「由希、元に戻ったらどうするんだ?」

「そりゃあ、お前。

 思う存分、漁らせてもらうさ。

 胸の感覚とかアソコの感覚とか…

 ああ、思い出すだけで勃ってきちまった」

ムカジ(由希)は当たり前だといわんばかりに、いやらしく笑った。

「おい、そんなんで大丈夫なのか?

 ちゃんと由希に戻って俺と付き合ってくれるっていったじゃないか?」

俺はたまらなくなって、ムカジ(由希)の肩を掴んでいた。

「んなこといってもよぉ。

 俺は俺なんだ。俺の体をどうしようと…

 あ…ごめん。洋。

 欲求不満募ってるせいで、
 
 余計にアイツらしくなってきちっゃたみたいだな。

 この頃、昼間だって狩の途中でオナニーとかしてるし…

 もうそろそろ限界かもしれねぇ。

 わたしがわたしでいるのって…

 …ああ

 わたしもアイツみたいに女とやりたい…

 この自分のものになったチンポ、ぶち込んでやりてぇんだ。

 何時までも心と体のギャップ誤魔化してるのも耐えられねぇんだ。

 だって、わたしの体はディンガの勇者だ。

 こんな立派なチンポ生やしてて、女とするなっていわれて我慢してられねぇ。

 だって、狩に行った帰りにあいつら女の村行って、一発やってんだ。

 俺は知ってんだ。

 見てたんだ。

 アイツ、わたしの体で俺の仲間と交わりあってたんだぜ」

「え?」

俺はぎょっとしてムカジ(由希)を見た。

「最初は許せねぇって思った。

 でも、わたしも…俺も分かるんだ、アイツの気持ち。

 俺もアイツとして、女と交わりてぇ。

 そうすりゃ、嫌なことだった忘れられる。

 アイツと一つなってしまえる。

 由希のままでいるのが辛いんだ。

 由希と交わって、俺は俺だっていいてぇんだ。

 由希と交われば、俺はアイツが全て俺に溶け込み、

 俺はアイツの体と一体になる。

 ああ、そうなりてぇ」

そう言うとムカジ(由希)はペニスを扱き始め、

「・・・〜っ!」

ディンガの言葉で喘いでいた。



その次の朝、

ムカジ(由希)は魘されていた。

そして、俺が起こそうとしたとき

ブシュッ

シュッ

シュッ

と夢精をしていた。

「おっおいっ!!」

俺は慌てて起こすと由希からアイツに入れ替わるときの夢を見ていたという。

「俺の魂がよぉ、

 由希の女の体から抜け出していくんだよ。

 いやぁ、リアルだった。

 女の体が名残惜しくって俺必死に戻ろうとしたんだけどよ。

 呪術師がゆるさねぇんだ。

 見ると、

 アイツの魂も体から離れていて俺の方に向かってきてた。

 『へへへ…なかなかよさそうな女の体じゃねぇか』

 っていいやがったんだ。

 『やめて、これはわたしの体よ』

 というと

 『もうお前の魂はその体とは切り離された。

  そこのディンガの勇者の体こそお前の魂に相応しい』

 って呪術師がいうんだ。

 『いや、いやよ…』

 俺は必死にいうんだけど、

 呪術師が呪術で俺の魂を由希の体から引き離したんだ。

 『ふふふ…さてとお前にはディンガになり切ってもらわないとな』

 そしたら近づいてきたアイツの魂が俺の魂に抱きついたんだ。

 『やめろ、変態っ』

 っていってやったら

 『何を言っている?お前の記憶をやろうというのに』

 っていうんだ。

 『わたしの記憶?』

 俺が答えると

 『お前の体は俺の体に決まった。俺の記憶はお前のもの。

  お前は俺の記憶を食らって俺になってしまえ』

 といって

 俺の魂のアソコにアイツの逸物を突っ込みやがった。

 『ああっ、やめろ』

 俺が叫ぶと

 俺の中から熱くなっていくんだ。

 『ディンガの記憶はお前にやる。

  俺はお前からお前の記憶をもらっていくぞ』

 やつはそう言うと激しく突いてきやがった。

 それがまたたまらねーんだよ。

 『あんあんあん』

 俺はそう喘いでよ。

 気がついたら、アソコの感覚が逆になっていくんだ。

 突かれるはずが、逆に俺の感覚が突いているような感じにな。

 『え?』

 と思ったら、俺は由希の姿をしたアイツの魂にチンポをぶち込んでた。

 どんどん熱くなっていって溶けると思ったとき

 弾けたんだ。

 そしたら、魂の形が入れ替わってたんだよ。

 『うむ、これで体に入れるぞ』

 呪術師がそう言うとまた呪文いいだしやがって

 俺の魂はアイツの男の体の中に入っていくんだ。

 『ああ、わたしが男になっちゃう!?』

 俺は必死に抵抗したけど、どんどん感覚が俺のものになっていく。

 『あああ〜ッ』

 全身がピリピリッてしたら

 俺の股間にはチンポがあって、その感覚が伝わってきてたんだよ。

 『い、いやっ、やめてっ』

 俺が叫ぶといつの間にアイツの入ったわたしがきてて

 俺のチンポを握って扱き出すんだ。

 『あん、あん…そんな…』

 扱かれている間に俺の心が徐々に変わっていく。

 どんどんディンガの記憶が…アイツの記憶が流れ込んでくるんだ。

 それがまた快感でよぉ。

 自分が変わっていくのに、俺喜んでるのさ。

 だって、由希が由希でなくなっていくのを自分で感じながら

 俺、昔の俺を客観的に見てたのさ。

 女の由希が男のムカジに変わっていく様がたまねーんだよ。

 俺はもうかなり変わっちまったからなぁ。

 それで興奮してあっという間に勇者の証をたてちまって

 気がついたら、ほんとに精を出してたってわけだ。

 へへへへへ…」

俺は次第に本物のムカジの記憶に飲み込まれつつある由希に

恐怖を感じながらも何もいえなかった。



つづく



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。