風祭文庫・モラン変身の館






「箱の腕輪」


原作・nao(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-268





「健一郎、この箱には何が入っているんだ?」

「さぁ、珍しいものを贈ったって聞いたけど、

 開けたことが無いから判らないよ」

「じゃ、開けてみようぜ」

「あっおいっ

 勝手に開けるなって」

「ちょっとだけだよ、

 ちょっとだけ見るだけだよ…」

高校1年生の白山健一郎と木戸隆は、

健一郎の7歳年上の姉である美香の影響からか大の考古学好きであり、

特に隆はさまざまな資料がある健一郎の家を度々訪れていたのであった。

さて、今日もこうして遊びに来ていた隆だったが、

学術調査のため夫の幸弘とともにアフリカへ向かった美香より贈られて来た箱を見つけてくると、

止めようとする健一郎を押しのけてその箱を開けたのである。

すると箱の中には赤い石と青い石が織り込まれた腕輪が一つずつ入っていたのであった。

「何だこれは?」

「姉さんの手紙によると、

 とある部族が儀式に使用したものらしいよ」

「儀式って?」

「さぁ?

 たぶん結婚式みたいなものじゃないかな」

「ふーん、そうか」

健一郎に腕輪の謂れを聞いた隆は箱の中より赤い石が織り込まれた腕輪を取り出すと、

少し眺めた後にその腕輪を自分の右腕に着けてみせる。

「おっ、おいっ

 見るだけって言っただろう」

「良いじゃないかよ、

 こういうものって着けてみてこそ、

 その存在理由が判るってものだ」

「全くぅ」

「なぁ俺がこれを着けて、

 お前がこの青い腕輪を着ければ俺達結婚ができるわけか」

「はぁ?

 冗談はやめろよ、

 それに隆が着けているのは儀式で女性が身に着ける腕輪だよ」

隆が自分の腕に着けた腕輪が女性用のものである事を指摘した後、

健一郎もまた青い石が織り込まれた腕輪を拾い上げると自分の腕に着けてみせる。

「女性が身に着ける腕輪?」

「そう、僕が着けたのが儀式で男性が身に着ける腕輪」

「そうか」

「こうやって腕輪と腕輪を交差させて儀式は終わるらしいね」

そう言いながら二人が面白半分に腕輪を着けた腕を交差させたとき、

突然、腕輪が光り出し、

その光が見る見る膨らみ始めると、

瞬く間に二人を飲み込んでしまったのであった。

しかし、それは一瞬のことだった。

「な、何だ今のは?」

「それよりも早く外そう」

「そうだな、あ、あれ?」

「どうした」

「鏡に変な奴が…」

「お前、また目が悪くなったのって…おぉっ!?」

光が消えた後、

腕輪を外そうとした二人がふと壁に掛けられている鏡を見ると

そこに映っていたのは黒々とした肌を晒し、

ほとんど何も身につけていない裸の男女が立っていたのであった。

しかも、その二人の腕には健一郎と隆が身に着けている腕輪をしてる事に気づくと、

「まさか…」

急いで自分の体を見るが、

しかし、目に映る自分の体は何も変わってはいなかったのであった。

「こ、これはま、幻だよ」

「そ、そうだな」

と鏡を指差しながら一旦は安堵する二人だったが、

けど腕輪を外そうとしたが何故か外れない。

「まるで体の一部になったみたいだ」

「本当だ、全然外れない」

悪戦苦闘をした後、

ついに二人は腕輪を外す事をあきらめてしまうが、

その翌日、健一郎が目を覚ますと眼鏡を掛けていないのにも関わらず

物がよく見えるようになっていて、

「おかしいな」

そう思って眼鏡を着けたり外したりを繰り返したが眼鏡を外した方がはっきり見えたのである。

そして、

「あれ?」

健一郎がパジャマを脱ぐと華奢である筈の健一郎の体が大きく変化し、

胸板が盛り上がり、

腹筋が割れ、

腕を曲げると力瘤が盛り上がり、

さらにペニスがいつもよりも大きくなっていたのであった。

健一郎は自分の体に起きた変化に対し戸惑いを隠せなかったが、

勃起するペニスを扱き始めると、

今までにない快感を感じたのである。

健一郎が結局、眼鏡を着けないで学校へ登校すると隆が、

「お前、眼鏡がなくてよく見えるな」

「それが目が覚めたらよく見えるようになってさ」

そんな話をしている二人にクラスメートの横山佳織が近づき、

「二人とも随分日焼けしたわね」

と笑いながら指摘する。

「まさか」

「本当よ」

そういって佳織が手鏡を取り出し、

二人に見せるとそこには日焼けしたかのように変色した二人の顔が映し出されていた。

「これって…」

鏡を見つめながら二人はそう呟くと、

「なに、深刻な顔をしているのよ、

 二人とも逞しい感じがしていいじゃない」

と佳織は笑いながら去っていった。



だが、3時限目の体育の授業を終えて着替えをしていると、

突然、隆が胸に違和感を感じ、

「乳首の辺りがヒリヒリする」

と言いながら胸を押さえてみせる。

「大丈夫か?」

「ちょっと脱いでみろよ」

「って何だよその胸は?」

隆が上半身裸になると乳首が大きくなって、

わずかながら胸が膨らんでいるではないか。

クラスメートが胸をジロジロ見るので着替えを済ますとすぐに教室を後にした。

健一郎は教室を出て行ったきり戻ってこない隆を心配して学校中を探していたが、

「隆、どこ行ったんだ?」

突然、腕輪が光り、それに伴い健一郎の体を激痛が襲った。

すると、健一郎の肌がより黒味を増していくと頭髪が縮れ、

さらに背が急激に伸びると、

体の急激な変化に耐え切れずに制服がボロボロに破れ腕輪も千切れてしまった。

体中の筋肉が発達して6つにくっきりと割れた腹筋を晒しながら、

「あぁっ、

 力がみなぎっていくぅ…」

と声を上げた後、

我に返ると、

「うわっ、

 腕輪は何とか取れたけど、

 こんなのを誰かに見られたら大変だ」

健一郎はそう言うと勃起するペニスを手で隠しながら逃げるように走って行ったのであった。

一方、旧校舎の空き教室では、

「どうしよう、オチンチンが小さくなっちゃう」

隆が胸を触りながら委縮していくペニスを扱いていると、

突然、腕輪が光り、

その光を浴びながら、

「だんだん俺が俺でなくなっていく気がする」

隆の心には自分が全く違うものに変わっていく恐怖が芽生えている半面、

その変化を受け入れようとする感情が生まれていた。

そして、いつの間にか腕輪が千切れてしまうと赤い石が散乱し、

同時に制服はビリビリに破れてしまうと隆の肌はより黒味を増していく。

変化はさらに続き、

髪は縮れ、

胸は膨らみを増し、

腰は蜂の様に細くくびれ、

大臀部は丸みを帯びていくと、

隆の体は女性的な魅力と逞しさを併せ持った体へと変化していた。

そこへ健一郎がやって来るなり、

「健一郎なの?」

「隆なのか?」

すっかり姿が変わったにもかかわらず、

互いにすぐに判ったのは二人が腕輪に織り込まれていた石を手に持っていたからだ。

途方に暮れる二人の前にいきなり二人と同じような姿をした男女が現れると、

「誰だよアンタ達は?」

健一郎は殴りかかろうとしたが

男は片手で健一郎の拳を受け止め、

逆に打ち負かしてしまうと、

「この野郎」

「確かにこんな姿だと私が美香だとは分からないよね」

「ね、姉さん?」

「じゃあ、隣にいる女性は…」

「幸弘だよ」

美香の隣にいる幸弘が健一郎と隆に紐状のものを手渡すと、

「幸弘さん、これは?」

「こんな形だけどれきっとした服なの」

「エー、これが服なの」

健一郎と隆が腰に紐状のものを腰に身に着けると、

美香と幸弘は健一郎と隆にとある部族に助けられてから呪いでこんな姿になった経緯を話す。

「美香さん達は呪いでこんな姿に」

「そうなのよ」

「幸弘さん、そんな口調で話さないでくださいよ」

「そう言われても」

「幸弘は呪いで心まで女性化してしまったから仕方がないよ」

「じゃあ、私達がこんな姿になったのも呪いのせい?」

「違うよ健一郎達の場合は勇者として選ばれたからだよ」

「勇者だって」

「そう、勇者の力が必要とされている状況にあるの」

「だから、部族の呪術師が誰が勇者の力を受け継ぐにふさわしい者かを占った結果、

 あなた達が選ばれた」

「それであなた達に呪術師によって勇者の力が込められたマジパイを贈ったのよ」

「あれはマジパイって言うのか、

 あれ?

 私の口調がコロコロ変わっている気がするわ」

隆の指摘に美香は、

「たぶん隆君が着けていた腕輪に女勇者の力が込められていたせいかも」

「どうしよう」

「それより健一郎があなたをジロジロ見ているよ」

「もう健一郎ったら」

そう言って隆が健一郎の耳を引っ張ると、

「痛いよ、隆」

「人の体をジロジロ見るからだよ」

「喧嘩はそのくらいにしてセックスをしてみない?」

「セックス?」

健一郎と隆が声を揃えて驚いたが、

「セックスはお互いの信頼を高める神聖なものとして位置づけられているのさ」

「だから、誰とでも見境なくセックスしてはいけない掟があるの」

「説明は良いから早くやろうぜ」

健一郎は隆をいきなり押し倒すと、

「何をするのよ」

「気分がムラムラしてどうにもならないんだ」

「もうしょうがないわね」

健一郎は隆の割れ目にペニスを挿入し、

その様子を見ていた美香と幸弘は、

「二人とも早くしないと置いて行くぞ」

と声をかける。

「美香が余計な事を言うから」

「そう怒るなよ」

「長老に二人を連れて来るよう頼まれたのに」

「二人ともそんな恰好でいると警察に捕まるぞ」

美香がそう叫ぶと、

二人は動揺し、

「どうしよう」

「ぬ、抜けない」

健一郎が前の倍ほどの大きさになったペニスを割れ目から抜こうとすると、

精液が一気に放出され、

「おい、早く行くぞ」

「ちょっと待ってよ」

美香と幸弘が巨大な穴へ入ると、

健一郎と隆も穴へと入っていく。

4人が消えた後、

穴は次第に小さくなって消えてしまったのであった。



おわり



この作品はnaoさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。