風祭文庫・モラン変身の館






「ディンガの罠」


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-156





優美がディンガ族の村を訪れたのは高校入試を終え、

中学を卒業した春休みのアフリカ旅行のことだった。

念願の女子高が受かり

そのご褒美にと家族で海外旅行にいくことになったのだ。

そして、小学生から中学生にかけて

アメリカやヨーロッパ諸国を周っていた優美は

まだ訪れたことのないアフリカ旅行をリクエストしたのだった。

こうしてサバンナをツアーのジープで周っていた一行は

ディンガ族の村を訪れ通訳に翻訳してもらいながら

ディンガの暮らしを説明してもらっていた。



「もう、話ばっかりしてても面白くないのに…」

もっと生のアフリカを見たいと思っていた優美はひとりそう思うと、

ツアー客から抜け出し、勝手に村の中を歩き始めた。

すると、スグにガイドのひとりが慌てて追ってくると、

「優美さん、危ないですよ」

と優美に警告をする。

「大丈夫ですよ。

 ちょっと村の中を周るだけですから」

「そ…それでも、危険もある…ですよ」

「じゃあ、ボディーガードがてら、

 ちょっとだけ通訳お願いできます?」

「あー、まあ仕方ないです、ね」

優美の提案にガイドは渋い顔をしながら頷くと、

二人はは集落の小屋の立て込んだ辺りに入り込んでいった。

すると、若い男の子たちが物珍しそうに二人を見つめ

何かをはやし立てはじめる。

「何て言っているんですか?」

「あー、はい。

 白い女がきてるって騒いでる…みたいです」

「ああ、そっか。

 ここって男の人の村なんでしたよね?」

「そうですね。

 今回は特別に入れてもらってます…ので、
 
 あまり歩く、回らない方がいいと思います」

「そ、そうかもしれませんね」

優美もさすがに同年代の男の子たちのほぼ裸の格好を見て

急に意識してしまったらしく、

恥ずかしさを感じずにはいられなかった。

「では、戻りますか?」

「少しだけ、話してもいいですか?」

「はい、いいです」

それでも持ち前の好奇心だけはあって、

優美は興味深げに近いづいてきた同じ背丈くらいの少年を見て

最後に話をしてみようと思ったのだった。

しかし、優美が話しかけるよりも前に少年の方が何かを話しかけてきた。

「え?

 な、何ていってるんですか?」

「・・・・・・」

ガイドは話しかけてきた少年と少し言葉を交わすと

「あなたは大きな建物のある街からやってきたのか?

 と聞いてます」

「え、あ、うん。そうですね」

「・・・・」

たいした返事ではなかったのだが、

逐一ガイドは通訳してくれる。

「あなたの住んでいるところでは、

 鉄の塊がたくさん走っているのですか?

 鉄の道の上を走る、
 
 とても速い乗り物というのは本当にあるのですか?

 と聞いています」

「うん、あるよ。

 あたしもそれに乗って学校に通ってるの」

「・・・・・・・・・」

それを聞いた少年は大喜びをしている。

そんな少年を見て、優美は彼らの純粋さを強く感じた。

「・・・」

また少年が何かを聞いてくる。

「あなたは空を飛ぶ乗り物に乗って帰るのか?

 と聞いています」

「うん。

 飛行機…air planeで帰るのよ」

「・・・・air plane・・・・」

少年はとても興奮しているらしく、手を叩いて喜んでいた。



それから暫く会話した後、

人伝えに聞いた話を本当の話だと確認できた少年は

満足した表情で何かを言い、

優美の手を引き始めた。

そして、

「少しでもお礼がしたいから、

 来て欲しいといっています。

 どうしますか?」

少年の言葉をガイドは伝えると、

「うん、行ってもいいよ。

 せっかくディンガ族の村に来たんだしね」

「・・・・・・

 いいとは伝えました、

 ですが、私も行った方がいいですか?」

「いいえ、大丈夫です。

 少しだけっていうことですし」

「そうですか、分かりました。

 私もそろそろ、出発の準備、

 しないといけません、から。

 ただ、食べ物は食べないで下さいね」

そういうと優美はガイドと別れ

少年に連れられてとある小屋に向かった。

簡単な土壁に、植物の茎などを盛った三角屋根。

本当に簡素な小屋だったが、優美にはとても興味深かった。

そして、小屋の中に入り、

おかしな彫像を見捉えた直後、優美は意識を失った。



「あ、いたたたた…」

あれから、どれくらいの時間が経っただろうか。

急に肌寒くなったのを感じて優美は目を覚ましていた。

まるで鈍器で頭を殴られたような痛みが走りとても気分が悪い。

ただ、それよりも肌に衣類の感触がないことが優美の意識を覚醒させていた。

「な、何……服が」

何ともいえない不安に飛び起きた優美はまず声の違和感を感じた。

まるで声が低くなったような…

ボイスチェンジゃーで男の子の声に変換したような声だったのだ。

「え、何なの、この声……」

慌てて、手で喉を押さえ、その肌の感触にぞくっとする。

今朝シャワーを浴びたすべすべの肌ではなく、

汗でべたついた、しかも土か何かがこびりついた感触が走る。

「うそっ」

驚きながらばっと覗き込んだ下半身。

そこには、漆黒の肌と男性器が剥き出しになった肉体があった。

「えっ……」

一瞬、瞳孔を見開き、優美はその場に凍りつく、

そして十秒ほどの間凝視した後、ばっと胸と股間を触った。

「う、嘘………ある……ないっ」

口の中が乾いていくのが分かる。

優美は今自分の体に何が起きているのかようやく理解していた。

自分の体がディンガ族の男の子になっているのだ。

「な、なんでっ」

股間を触れた右手にねちゃっとした感触を感じ、

反射的に手を引っ込めると優美は顔を強張らせる。

もはや、泣くとか喚くとかいう状態ではなかった。

ただ、とんでもない事態が起きていることに

どう対応していいのか優美自身分からなかったのだ。

「・・・・・・っ」

そのとき、

どこか聞き覚えのある少女の声を聞いたとき

優美は飛びつくようにそちらを向いていた。

そこにあったのは紛れもない「優美」の顔であり、

「優美」の体だった。

そして、その体からディンガ族の言葉が発せられていたのだ。



「これって……どういうことなの………」

優美は驚きながら「優美」を見ていると、

あの少年と同世代の男の子が数人現れると、

にやにやと笑みを浮かべながら「優美」の本当の体と一緒に

今の自分を見つめている。

それどころかその「優美」の本当の体は、

ディンガ族の言葉を話し他のディンガの少年と戯れあっているのであった。

それは…つまり、

優美はディンガ族の少年と肉体が入れ替わってしまっているということだった。

「あたし、なんで……」

「・・・・・」

優美が言葉を詰まらせたとき、

「優美」の本当の体が近づき、手鏡を渡した。

きっと優美は本当の自分をにらみつける。

そして、

「これって、あの子!?」

鏡の中を見たとき、

優美はさっき話しかけてきたディンガ族の少年の顔をそこに見ていた。

「あたし、あの子になっちゃったのっ!?

 じゃあ、あなたはっ?」

優美は思わず本当の自分自身を指差すと、

本当の「優美」の体は自分と今の優美の体を交互に指差しながら笑った。

「そ、そんな……どうして?」

「・・・・・・」

何かを本当の「優美」は喋っていたが、

しかし、今の優美には理解できなかった。

「お願い、あたしに分かるように喋ってよ!」

動揺と困惑を隠せない優美は、必死におかまような口調で訴える。

するとそんな優美に向かって「優美」が近づくと

「ひっ」

いきなりディンガ族の少年の肉体になった優美を押し倒したのだ。

「優美」が優美の手を握り

「優美」が優美の体を抱きしめる。

薄いブラウスとブラジャー越しに乳房が押し付けられるのを感じた。

甘い、自分でも今まで嗅いだことのなかった匂いが優美の鼻に入り込む。

ドクンッ

優美の中で今までに感じたことのない衝動が吹き上がった。

力強く、とても理性だけでは制御しきれないような情動。

優美は生まれて初めて、男の子の性欲を実感する。

(な、何……)

一方的に体を抱きしめてくる「優美」に

優美もまたその肉体と密接に接したいと感じていた。

股間が熱くなり

その股間に生えた肉棒が充血し、勃起していく。

「や、やだっ」

優美は初めての勃起に頬が火照るのを覚えた。

それなのに羞恥心だけでは、肉棒が直立していくのを止めていられない。

ただ、甘い匂いと柔らかい自分の肉体に

こうして接していることに優美は興奮していた。

(あ、あたし、自分の体に抱きつかれてるんだ……)

「んふっ」

自分の吐息が、自分にかかる。

その声音に心臓がドクンと跳ねる。

(駄目……こんなことしてちゃ)

必死に目を瞑って抵抗するものの、

股間の肉棒だけはいうことを聞かなかった。

意識に反して、ただ硬く張り詰めていくのが自分の体の感覚として伝わってくる。

「い、いやっ」

「・・・・・・・」

必死に抵抗している優美に「優美」が何かを言い、

そして、周りの少年らにも何かを面白げに喋っている。

(あ、あたし、どうなっちゃうの!?)

困惑のあまり目に涙を浮かべる優美を指さし、

「優美」も周りの少年も笑った。

そして「優美」はいきなり優美から離れると

優美の股間に生えた肉棒を掴んだ。

「ひぃっ」

悲鳴を上げる優美の後ろに「優美」が回り、

そして、まるで自分のペニスをオナニーするかのように体勢で、

優美のペニスを扱き出した。

「いぃっ、やだっ!!」

優美にとっては、あまりに残酷な仕打ちだった。

勃起してしまったことだけでも恥ずかしいのに

自分自身にそのペニスを扱かれているのだ。

「やめ、やめてぇ、お願い」

優美は必死にディンガの少年の声で訴える。

しかし、そんな中も優美の中に芽生えた男の性欲は止まらなかった。

硬く充血しきった肉棒からの快感が優美を惑わし始める。

それは幻惑的な甘さを持って優美を支配し始めていた。

(ああ、何……これ……

 おちんちんが………ぐぅっ、何かが……)

股間に突起した肉棒からびりびりと伝わってくる快感と衝動。

それは次第に何かを吐き出したいという欲求へと変わっていく。

おしっこのような生理的なものとも少し違う。

激しく止められないもの。

「あ、あ、ああっ!!」

ディンガ族の少年になりたてだった優美が射精をするまで

ほとんど時間はかからなかった。

ビュッビュッ!!

少女だった優美には、ディンガの少年の性欲はあまりに激しすぎたからだ。

我慢することすら知らない優美は

そのディンガの少年、ヌッンガの射精の快感を満喫していたのだった。



あの日から五日が過ぎた。

日本語を喋れない「優美」はツアー客の中に戻り、

あのままジープで村を発っていたのだ。

おそらく今頃はだいぶ騒ぎになっていることだろう。

何しろ、「優美」は日本語での受け答えがまるでできないのだから。

しかし、本物の優美がいまここで

ディンガ族のヌッンガの肉体になってしまっていることは

誰にも想像が付かないということだけは分かっていた。

「あたし、どうなっちゃうのかな……」

目の前に置かれた手鏡。

そこに映るのは、

五日前、初めて会話をしたディンガ族の少年ヌッンガのものだった。

赤茶けた縮れた短い毛が頭に僅かに載り、

くぼんだ目元に白い目が浮いて見える。

低い鼻に鼻孔が横に広がり

唇が突き出している。

「優美」とはまるで似ても似つかぬ顔がそこにあった。

「あたしがディンガ族になっちゃうなんて……」

泣き疲れた優美は、やつれた声でつぶやいた。

「こんなの、あたし、やだよぉ」

お風呂にも入れず、トイレすら屋外で野ション。

服もなく、飾り紐だけの格好。

日本の生活に慣れた優美にはあまりにも過酷だった。

「お風呂入りたいなぁ……

 せめて、シャワーぐらい浴びたいのに」

今の優美には飲み水すら貴重だった。

(はあ、あの子の気持ち、こうしてるとよく分かるなあ……

 あたしって、あんなに恵まれてたんだ)

今になって普段の生活がどれほど恵まれていたかを実感する優美だった。

ただ、今の現状では、元に戻ることは不可能だった。

なぜなら、「優美」自身がいないのだから。

「あたし、このままヌッンガの体でいなきゃならないの……」

これからのことを考えると優美はまた泣きそうになった。



「や、やだ……また大きくなってきちゃった……」

あの日以来、優美は排尿などの生理的な場合以外、

ペニスに触れるのは極力避けていた。

しかし、今日は妙にムラムラし、

ペニスが大きくなってまま止められなかった。

「はあ、はあ、はあ」

(どうしよう……)

ペニスを見ているとあのときの悪夢が蘇る。

自分自身に扱かれ、射精してしまったときの記憶が…

だから、決して触れたくないと思っていたのに。

「駄目、触っちゃ駄目……」

優美は頭を振って、射精したときの快感と解放感を忘れようとする。

しかし、次の瞬間、優美はペニスを握ってしまっていた。

「あ……」

敏感な肉棒の肌。

不気味に照り輝く漆黒の肉棒はその姿に似合わずとても敏感で

触れるだけでじんじんと痛みとも快感ともつかぬものが優美を支配した。

シュッ

次の瞬間、手を動かし肉棒を擦りはじめると、

「あんっ!!」

それはとてつもなく気持ちがよかった。

(駄目……こんなことしちゃ……)

そう思いつつも、手が止められない。

それは男の本能だったのだ。

優美はディンガの少年の性欲を直接感じていたのだ。

ヌッンガがかつてそうであったように、

少女だった優美も男の性欲に突き動かされていた。



「今って……何月なのかなあ」

夜空を見つめながら、ヌッンガは呟いていた。

あれから三ヶ月。

少しずつ言葉を覚えだした優美は、

ディンガの少年として一から仕事を覚えさせられていた。

さすがになまっていたとはいえ、

元々ディンガの肉体だったヌッンガの体はしっかり動き、

優美も肉体的には周りの少年に見劣りすることは決してなかった。

ただ、精神的にディンガの少年として振る舞うことは

優美とってとても辛いものであったことはいうまでもない。

「はあ〜、やっぱり……もう元には戻れないのかな」

そんなことをいいつつも優美はオナニーを繰り返していた。

生まれつきのディンガのペニスを自分で扱きながら

たまらない快感に浸っているのだ。

「はあ、はあ、はあ……」

虚ろな顔つきで、男のオナニーをしている優美。

しかし、抵抗がないというわけではない、

ただ、肉体の性欲には勝てないということが分かってからは

割り切ってオナニーすることにしたのだ。

(やっぱり、男の子って性欲激しいんだな……

 けど、ディンガ族だからっていうこともあるのかなぁ)

そんなことを考えながら、

優美はまるでディンガの少年のようにペニスを激しく擦り始める。

ペニスが痙攣し何度も射精しそうになるが、

何度も堪え、快感を持続させていた。

これは本当に気持ちいいのだ。

女の子だった優美には、

ディンガ族の生活は受け入れられないものであったが

これだけは一度覚えると手放せなかった。

まるで自分がディンガに同化してしまいそうになるような快感。

自分がヌッンガと同じ快感を体感しているということ。

全てが甘く切なかった。



ピュッ

ピュッ

ピュッ

目を瞑り、射精の快感に耐える。

余韻が暫く残り、優美はヌッンガの肉体で呆けていた。

「はあ、はあ……」

手にはべたつく精液がこびり付いているが、

今の優美には自分の体液でしかなかった。

それよりもヌッンガとの一体感に、精液の匂いを嗅いでいる。

(最初はこの匂い、嫌だったんだけどな……

 今じゃ普通になってきちゃった……)

優美自身、

ヌッンガの肉体を楽しんでいる自分がいることを否定できなくなってきていた。

早くもとの体に戻りたいはずなのに…

ヌッンガの肉体でいることがとても興奮してきてしまうのだ。

ディンガへの同化を喜んでいる自分がいるのかもしれないと、

優美は思い始めていた。



ある晩、優美は夢を見ていた。

自分の目の前に優美だった頃の自分がいる。

左右に結った綺麗な黒髪。

見慣れた髪留めも見える。

それは、間違いなく、入れ替わったあの日の自分だった。

「あたしがいる……」

優美はそう呟いた途端違和感を感じた。

その声は優美のものではなかったからだ。

その声はディンガの少年、ヌッンガのものだった。

「あ、ヤ、ヤダ……う、ウソ!?」

優美は慌てて喉元を押さえ、喉仏の存在を感じると

下半身を見下ろした。

そこにあったのは、漆黒の肌をてからせた少年の体だった。

首と腰にある飾り紐以外は何もない。

ほぼ全裸のアフリカの少年の姿に優美はなっていた。

「こんなっ……」

股間からペニスが突き出しているのを見て、優美は言葉を詰まらせると

顔が熱くなっていくのを感じた。

股の間にペニスがぶらぶらする違和感を覚える。

「なんで、あたしが……

 あ、あなたは誰なの?」

「オレは遠藤優美。

 そして、お前はヌッンガだ」

「あたしが……ヌッンガ?」

「ふふっ、そうだ。お前はディンガの男になったんだ」

「なんで……か、返してよ、あたしの体!」

「嫌だね。

 オレは世界を見たいんだ。

 話に聞いていた、こことは違う世界を」

「世界を見に行くくらい、あなたの体でもできるでしょ?」

「ふっ、そんなに簡単にいくわけないだろ?

 オレたちは金も持ってない、外の世界に行くだけの知恵もない。

 どうやって、外に行けるんだ?

 てっとりばやいのは、外の世界の人間の体を奪うことさ」

「そんな……」

「それに女の体にも興味あったしな……

 お前の体、すごく美人で綺麗だぜ」

「や、やめて、いわないでっ!」

「ふふっ、お前はもうディンガ族でしかない。

 ディンガ族の男として暮らすがいい」

優美の姿のヌッンガはそういうと笑った。

「イヤよっ、返して、あたしの体!」

「お前の体はそこにあるじゃないか?

 逞しいヌッンガの肉体がな。それに不満があるというのか?」

「あたし、ディンガ族に興味はあっても、なりたいわけじゃないのよ。

 このままでいたいわけないじゃない!」

優美は自分の喉から出るヌッンガの声の違和感を感じながらも

必死に言い張った。

「でもな、オレはこの体を返すつもりはない。

 それにお前が外の世界の女がオレのディンガの体をどう感じるか興味あるんだ。

 お前もスウムくらいはしてるんだろう?」

「ス、スウム!?」

その言葉に優美は反応してしまっていた。

目の前にある元の肉体を見てしまったときから

必死に抑えてきたものが開放されていく。

優美に生えたヌッンガのペニスはビクンビクンと勃起始めていた。

「い、イヤッ!?」

「ははっ、もうお前は男だ。

 一度勇者の証を立てたお前は、もう逃れることは出来ない。

 魂にもヌッンガのイリガを生やしてしまったお前は、

 ヌッンガとして一生を送るんだ」

「そ、そんな……」

ビクッ

ビクッ

優美の股間でヌッンガのペニスが激しく痙攣した。

「さあ、もっと感じろ。

 オレのイリガを!

 どうだ、気持ちいいだろ?

 それがお前のイリガだ」

「あ、や、やあ、はぁっ」

優美の手に掴まれ、息を荒らげるヌッンガの肉体の優美。

シュッ

シュッ

「あ、ああ、ああっ」

優美は自分の股間に生えたペニスの感覚を全て感じ取っていた。

硬く痛いくらいに充血し勃起した肉棒の感覚。

手がその張り詰めた表面を撫でる快感。

そして、精液が射精の準備に入り我慢汁が滲み出していく感覚。

今にも発射しそうになる、ぎりぎりの男の感覚。

ヌッンガの姿の優美は目を白黒させて射精を耐えていた。

「ふふっ、随分慣れてるじゃないか?

 もうだいぶスウムしてるようだな」

「い、いやぁっ、あ、あああっ!?」

その言葉に動揺した優美は射精を抑えきれなくなっていた。



ビクッ!

小屋の中で寝ていたヌッンガの股間で勃起したペニスが痙攣する。

「あ、あ、あ」

ビクビクッ

寝言と一緒に激しく脈打つと、途端白濁した精液が射精された。

生まれて十三のディンガの少年の肉体。

その肉体の性欲と性感は、その肉体に宿った優美の魂に一気に流れ込んだ。

暫く精液を間欠泉のように吐き出した後

漆黒のペニスはふにゃっと曲がり横を向くが、

しかし、逞しい太腿にかかった精液の気持ち悪さにヌッンガが目を覚ます。

「あ……はあ、はあ、はあ、はあ……」

(やっぱり、スムラシしちゃってたんだ……)

ヌッンガは困ったような表情をした後

太腿に掛かった白濁した体液を指に絡めた。

「すぅ、はぁ……」

(すごい匂い……これが……ヌッンガのムガなんだ。

 ……違う。

 今はあたしのムガなんだ。

 あたしの体からムガが出るようになっちゃってるんだ。

 信じられないなあ……あたしがヌガなんて触ってるなんて……

 最初は気持ち悪くて水とか砂で必死に落としてたのに

 最近なんか平気になっちゃってる。

 やっぱり……自分の体から出てるものなんだもんね。

 仕方ないか。

 はあ……あたし、ちょっと前まで普通の女の子だったのに。

 今はディンガ族の男の子なんだ)

ヌッンガは精液を絡めた指を鼻に擦り付けて呆けていた。

ムクッ

ムクッ

優美のヌッンガの肉体に対する興奮で、

ヌッンガはペニスを再び勃起させ始める。

漆黒の肌に覆われ

血管の浮き出た太くて硬いペニス。

かつてヌッンガ本人が感じていたペニスを

今は優美という日本人の少女の魂が感じていた。

「ああ、またスウムしたくなってきちゃった……

 いけないのに……

 こんなことしちゃいけないのに…

 なんか……もうどうでもよくなってきちゃった。

 あたし、

 女の子としての羞恥心がなくなっちゃったみたい…

 はあ…

 あたし、

 ディンガの…ヌッンガの性欲に憑り付かれてるんだ。

 憑り付かれちゃったんだ…

 あたし、

 ヌッンガになっちゃう…

 ディンガの男になっちゃうよ…

 身も心も

 きっとディンガ族に染まっちゃうんだ。

 そうよっ。

 最近、あたし、セックスしたいの。

 したくてたまらないの。

 それもディンガの女の子と…

 あたし、

 おかしくなっちゃった。

 きっと頭の中がディンガになってきちゃってるのよ!

 こんなことばっかりやって

 なのに、すっごく興奮してるんだもん」

優美自身、自分が変態チックになってきていると感じていた。

自分…ヌッンガの肉体を味わうことに快感を感じるのだ。

興奮してしまうのだ。

自分の精液の匂いを嗅ぎ、

汗の匂いを嗅ぎ、

自分の肌を撫で張り詰める筋肉に誇りを感じながら、

ヌッンガは射精してしまうのだ。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

ヌッンガは激しくペニスを扱いている。

それはディンガの少年がオナニーをしているに過ぎない。

逞しい肉体に込められた性欲を開放するためにオナニーしているのに過ぎない。

しかし、それを覗き見るディンガの少年たちは優越感と征服感に興奮を覚えていた。

「すげえなあの異郷の女、

 すっかりヌッンガの体に馴染んでやがる」

「へへっ、あいつもオレたちと同じなるんだ。

 同じにしてやるんだ。

 もっともっとディンガの男に染めてやる。

 そして、新しいヌッンガに生まれ変わらせてやるんだ」

最初はまるで別世界の人間に見えた優美が

ヌッンガの肉体に入れられ

男の性欲に突き動かされ

勇者の証を立てている姿は

所詮優美のような異世界の女でも

結局は肉体に支配される脆弱な魂の持ち主に過ぎないのだと感じさせ、

ディンガの少年たちに嗜虐的な新しい刺激をもたらしていたのだった。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。