風祭文庫・モランの館






「亜紀」


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-060





雄一は呪術師から体の動きと声を封じる呪術を掛けられたあと、

ブッシュに隠れるように座らされていた。

顔も体も動かせない中、

雄一は唯一動かすことのできる目で辺りを伺うと、

(これから…何が始まるんだ?)

タラリ…

雄一はこれから起きることへの不安からか頬を寒い汗が流れ落ちていった。

そして、

ギラッ

ほぼ真上から悪魔のような太陽が灼熱の大地を照らし続けている。



あれからどのくらい経っただろうか?

雄一のいる場所の向こう側から一人の男がやってきた。

堀の深いこっちの…ディンガ族の男の中でも目覚えのある顔…

それは二日前ヌッンガという青年の魂を入れられ

ディンガの勇者に…ヌッンガという青年の体に変身してしまった亜紀だった。

(亜紀……!?)

雄一は呆然としてヌッンガに変身した亜紀を眺めていたが

こちらがブッシュの中にいるせいか、

亜紀はこちらに気付いた様子はなかった。

細長い頭部に、長い首、

張り出した胸板に首に掛けた青い首飾りをぶら下げ

腕や腰にも青い飾り紐をし、

股間には見たことのないような太く長い男性器、

細長い腕や足はすられとして筋が目に見えるように張っていた。

「あ…駄目……んっ、もう我慢できないっ」

そんな変身してしまった亜紀の姿を改めて確認してしまった雄一だったが

次の瞬間、おかまのような声で亜紀の漏らした言葉に

雄一は思わずギョッとした。

そう…

亜紀の股間から伸びる男性器…そうディンガのペニスが力強く勃起していたのだ。

(そんな……亜紀が…)

呆然とする雄一の前で亜紀はそっとペニスを握る。

「ああっ……やだ、こんな…」

困惑をしつつも、

ペニスという肉棒が存在していることを味わうように握り締める亜紀。

「か、硬い……

 ヌッンガのオチンチンってこんな…なんだ。

 オチンチンがこんなになっちゃうものだなんて………

 あ、んっ!

 股間に突っ張った感じが……

 や、やだ…あたし、女の子なのに…」

股間で勃起しているペニスに困惑しているような素振りを亜紀が見せたとき、

『ふふふ…感じているようだな、

 自分自身のイリガを……

 さぁ勇者の証をたてるのだ。

 お前自身を変えてしまうために』

雄一の頭の中に呪術師の言葉が鳴り響いた。

そして、その声は亜紀にも聞こえているようで、

声が鳴り響いた瞬間、

亜紀も周囲を見渡し始めた。

テレパシーなのか異質な言語のはずなのに、

その意味は雄一にも亜紀にも伝わっていた。

「い、いやっ!?

 だ、誰?」

亜紀は驚いたようにペニスから手を離すと周りを見回す。

だが、雄一はもちろん、声の主の居場所ですら

亜紀には分からなかった。

『ふふふ、わしだよ。

 分からぬか?』

「あ、あの呪術師!?」

『そうだ。

 お前をヌッンガの肉体に作り変えてやったこのわしを忘れてもらっては困るな』

「くっ、は、早く元に戻してよ。

 このままじゃ、あたし…家に帰れないじゃない」

亜紀は見えない相手に向かって叫んだ。

『そういいつつ、お前は何をしていた?

 ディンガの勇者の肉体を味わおうとしていたのではないか?』

「ち、違うわよっ!」

亜紀は恥かしそうに言い返した。

『ふ、隠さなくてもよい。

 そこまでイリガを勃たせておきながら、何をいうか?

 さぁ、勇者の証をたてろ!

 そして、ヌッンガの魂を自分の魂に塗り込めていくのだ』

「あ、やだ……何よ、これ……

 あ、駄目……

 こ、興奮しちゃう!」

亜紀は息を次第に乱しながら

そっとまたペニスを握り直していた。

そして、

シュッ

シュッ

と少しずつペニスを扱き始める。

「あ、か、感じちゃう……

 んっ、くぅ…

 ぅっ、ぅっ、うんっ!」

亜紀は更に硬くなり

股間に反り上がっていくペニスの感覚に酔いしれていた。

「駄目……はぁはぁはぁ

 と、止められないよぉ。

 き、気持ちいい……これが男の感覚ぅ」

亜紀は徐々にペースを上げながら

ペニスの扱きのピッチを早くしていった。

(亜紀…何てことやってんだ!?)

雄一は必死に心の中で叫んでいた。

今すぐにでも飛び出してあの手を止めさせたいと願っていた。

しかし、呪術は強力で声すら上げられないまま

雄一は亜紀の痴態を眺めているしか出来なかった。

『ははは…もう止められんだろ?

 さぁ、勇者の証をたてろ!

 そして、たっぷりと自分の魂にヌッンガの魂を突っ込んでやるがいい』

「そ、そんな……あぁぁぁ

 こ、これが……男の……んんっ、くぅっ

 駄目、漏れ…漏れちゃいそう……

 で、出ちゃう!」

亜紀は必死になって自分の体を止めようとしていたが

手だけは激しくペニスを上下に擦っている。

亜紀の胸には、汗が浮かび

ディンガ族の男性特有の体臭が沸きあがり

その臭いは雄一の鼻にも届いていた。

(あ、亜紀……亜紀が……そんな)

呆然とする雄一の前で

亜紀の手はラストスパートとばかりに動いた。

「つっ、くぅっ!!」

亜紀の顎が跳ねるように上がり

ペニスが痙攣したように蠢く

そして、次の瞬間

ピ!!

ブチュチュチュ!

二日前亜紀に出来上がった器官より

精液という白濁した液体が飛び出して行くと

最初の飛沫が雄一にも少しかかった。

(う、うわ!?…)

熱い……粘液が雄一の頬を一滴ゆっくり流れ落ちていく。

そして、その栗の花を思わせる匂いに

雄一は亜紀が男性の機能を完全にもってしまっていることを知ったのだった。

(あ、亜紀が……射精するなんて……)

放心状態の雄一の前で

亜紀は雄一に一部始終を見られたことも気付かないまま

ペニスから最後の滴を搾り取っていた。

「くぅぅぅぅぅぅ」

そのとき

亜紀の頭の中を熱い何かが一気に駆け抜けていった。

一陣の熱風が頭に巻き起こったようなそんな感覚が亜紀を襲う。

「ああ、何……

 か、感覚が……

 い、いや……

 あたしが、
 
 あっあたしが変わっていくぅ!!!」

ピュル!

ピュル!

射精と同時に自分の心にヌッンガが現れると、

亜紀としての心を…

記憶を次々と食べていく…

そのなんともいえない感覚に

亜紀は再び射精をするとさっきと比べて勢いを無くした

精液をペニスの先から滴り落とさせた。

そのとたん、

フッ

雄一を束縛していた呪術が解けると、

「ばっ!!」

雄一は立ち上がり、

「亜紀!!」

と声を上げた。

「!!!」

いきなり姿を見せた雄一の姿に亜紀はハッ!とすると、

「○○○!!!」

と悲鳴を上げる。

しかし、

「亜紀…お前…いま何ていった?」

亜紀の口から出た言葉がまさしくディンガ族の言葉であることに雄一は驚き指差した。

「!!」

雄一が放った言葉の意味が理解できないことに亜紀は驚くと、

再び話しかけて見るが、

しかし、ディンガ語しか理解できなくなってしまった亜紀と雄一は

お互いの意思を疎通させることが出来なくなっていた。

「亜紀…お前…」

『雄一さんの言葉がわからない…』

言葉が通じなくなってしまったことに亜紀はショックを受けていると、

「ふふ…」

あの呪術師の声が響き渡った。

『あっあたしの言葉を元に戻してよ!!』

泣き叫ぶように亜紀は声を上げると、

「ふふ、

 言葉が話せなくなったか、
 
 さぁ今度はお前の記憶をヌッンガにしてやろう、
 
 肉体を変え、

 言葉を変え、
 
 記憶を変えられたお前はディンガ族の勇者・ヌッンガだ!!
 
 さぁ、証を立てるのだ」

『いっいやぁぁぁ!!』

亜紀は悲鳴を上げて抵抗をするが、

しかし、その手は勃起していたペニスを握り締めしごき始めていた。

そして、その様子を雄一は呆然と眺めていたのであった。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。