風祭文庫・モランの館






「ティルバの魂」
(後編)


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-046





「はぁはぁはぁ…ああっ、んっ」

弥生は似つかわしくないペニスを絞りながら、

尿道に残った精液を垂れさせていく。

その恍惚した表情に、俺はとんでもないことになってきてるような気がした。

「弥生っ」

「ああ、気持ちい〜」

「弥生っ」

「あ、拓也?」

「お前…何してたのか、わかってるのか?」

「あ、やっ!?」

弥生はようやく正気に戻ったのか、

真っ黒なペニスを見下ろすと、

「あたし、また…しちゃった…

 これもあたしがしちやったんだね」

弥生は、呆然としながら自分の暴れた後を眺める。

大事にしていた花瓶も割れ、本も引きちぎっていた。

精液がフローリングに飛び散り、

今まで整理整頓され綺麗に掃除されていた弥生の部屋がうそのようだ。

「お前、最近性格変わってきてるよな?」

「あ、そうだね。

 最近なんか短気になってきちゃったんだ。

 突然、このやろ〜とか思っちゃって…

 それに体を動かせないのが、たまらなく嫌なの。

 今までだったら本を読んでいるだけでもよかったのに…

 じっと本も読めない…

 というかね。

 あたし、変なの。

 数学の本に書いていることがさっぱりわかんないのよ。

 数が10を超えると数えられなくなっちゃうの」

「おい、それって…」

「うん、多分頭の中が変わってきているみたいなの…

 まるで、頭の中だけ他人になってきてるみたいで、

 そう、頭の中身が掻き回されてるっていうか、

 頭そのものが変わってきてるのよ」

「そんな…まさか」

「ほんとよ。

 今もこんなの冷静に考えようとするといらいらしてくるの。

 こんなのじっとして考えてるくらいなら外で暴れたいみたいな…

 ああっ、もう、いやっ!!」

弥生は頭を抱え込むとうめいた。

「弥生っ」

「あたし、暴れたい暴れたいっ。

 暴れたいのよっ」

弥生は、急にペンの束を掴むとドアに向かって投げつける。

すると、ボールペンの数本がドアの板に…

しかも張ってあったカレンダーのど真ん中に綺麗に突き刺さった。

「こんなことって…」

俺はただ信じられない光景に言葉を失ってしまっていた。



『ふふふ、いよいよだな。

 お前の体はもうお前には合わなくなってきたのだろう?

 お前はそのイガリを得たときから少しずつ勇者の魂へと置き換わりだしたのだ。

 そろそろその体には馴染めなくなってきているはずだ。

 さあ、いい加減に勇者の体を取り戻してはどうだ?』

そのときだった、あの”声”が再び弥生の部屋に響き渡った。

「あ、あんたはっ。

 これって、あんたのせいなのねっ。

 あたしがこんなになっちゃったのはっ」

弥生は見えない敵に対して怒鳴りたてる。

「返してよ、おかしくなる前のあたしに戻してよっ」

”声”に向かって弥生はそう怒鳴ると、

『ふははは…

 残念だが、お前は頭の中身までボディ族の勇者になってきてるのだ。

 一度失ったものを取り返せはしない。

 そして、お前が得てしまったものもな』

「そんな…」

そんな”声”に、弥生は膝をついて俯いた。

『さぁ、変わってしまうがいい。

 身も心もボディのものになっ』

「あ、はぁっ、な、何?」

『もう引き返せないところまできているのは分かっているのだろう?

 ティルバよ。

 さあ、ティルバを大人しく自分を受け入れるがいい』

”声”がそういった途端

弥生の体がビクビクッと震えると、

突然ムクッ

とみるみる弥生の股間のペニスが勃起していく、

「お、おい…」

「あ、あんっ、んくっ」

弥生は見る間に何かに耐える顔つきになるが、

「あ、駄目だ。

 我慢できね〜」

と言うとあっさりとペニスを握り締めた。

『ふふ…もう中身はすっかり変わってしまったようだな。

 お前はもうティルバなのだ。

 ははは…』

「おい、弥生。

 何やってんだ。そんなのに負けてどうするっ」

俺は慌てて弥生に怒鳴るが、

「うるせーっ」

弥生は顔を上げ俺を睨み付けるとすごい剣幕で怒鳴り返した。

『無駄だ。

 この女の頭の中は既にボディの勇者・ティルバになっているのだ、

 気質も心根もな。

 もはや、勇者・ティルバの魂がこやつの魂にすっかり根を下ろしている。

 それを抜くことは不可能だ』

「な、なんだとぉ」

”声”に向かって俺は怒鳴っていた。

すると、

『こやつに勇者・ティルバのイガリが根付いてもう月が一回りしておる。

 それだけの間に勇者・ディルバの魂はしっかりとこやつの心に根を降ろし、

 こやつは知らず知らずの内に勇者・ティルバへと変わって行っているのだ』

「なんだって、そんなことしたんだっ、貴様」

『無礼ものめ。

 少しは口を慎め。

 まあこの女に免じて許してやるが、ここがボディの地であらば殺しているぞ。

 ふふ、この女が勇者・ティルバに生まれ変わる様を見てせいぜい楽しむがいい』

そういうと”声”はどこかに引き下がっていくかのように消えていった。

「ああ、あんっ、んんっ。

 駄目〜、漏れる。精が…

 精がっ

 ああ、あたしが変わっちゃう〜」

気がつくと弥生はあまりにも生々しい我慢汁でてかてか光る漆黒のペニスを

激しく扱き上げていた。

当に亀の頭のような亀頭。

張り出すボツボツのカリ。

太く硬く勃起し絡みつくような血管の浮き出た肉棒。

そこに我慢汁がぬらぬらと上下する白い弥生の手によって塗りたくられている。

「弥生っ、やめろっ」

俺ははっとして弥生に駆け寄ろうとした。

するとそのとき、

「あはぁっ、んくっ、んふぅっ、駄目ぇぇぇぇ」

という弥生の絶叫と共に

ブチュッ

ブチュッ

ブチュッ

今までにないほど粘りっこくて白濁した精液が弥生のペニスから大量に噴出した。

「んくっ、んくっ」

ブチッュ

ブチュッ

弥生は、痙攣するように吹き上げるペニスの脈動に合わせながら

喘ぎ、射精を続ける。

「んくぅぅぅぅぅぅ」

そして、射精が徐々に収まっていくと、

弥生は余韻に浸りながらも…なぜか腰を突き出しながら体を震わせ、

背筋を伸ばしていく。

「んふぁふぁふぁ〜」

『よくやった、お前の精は間違いなく勇者・ティルバの精だ。

 そのイガリはいまお前のものとなった。

 そして、お前は勇者・ティルバに生まれ変わったのだ』

今までどこから聞こえていたのか分からなかった”声”が

朦朧としている弥生の傍から響いた。

「な、どういうことだっ!?」

『間もなく、こやつはティルバの体を取り戻すであろう…

 ティルバがイガリを残して死んでから無数の年を数えた。

 今こそ復活のときだ』

「ああ、やめてぇ…

 あんっ、あぁぁぁぁ」

”声”がそう言うと弥生は急に苦しみ出し、

体がビクビクと震え始めた。

「弥生っしっかりしろっ」

俺は弥生の元に駆け寄って彼女の身体を抱き起こしたが、

しかし、

「いやぁぁぁぁ!!

 いやぁぁぁ!!」

弥生は頭を押さえながら暴れ回り始めた。

「弥生っ」

俺は暴れる弥生を抱きしめて宥めるが、

ムワッ

弥生の体中から異様な体臭が立ちこめ始めだすと、

俺は思わず顔を背けた。

「うっ弥生…」

男の臭いを思わせるその臭いに咽せびながら俺がそう叫ぶと、

ベキベキベキ

弥生の体中から異様な音が響き渡り始めた。

「え?」

「くはぁ…

 うぐぅぅぅぅぅぅぅ」

弥生は何かを堪えるかのように大きく息を吸い込むと力む、

すると、

メキメキメキ!!

弥生の肩がゆっくりと広がっていくと腕と脚が伸びて始めた。

「やっ弥生…」

「あっあっあっ」

次第に長くなっていく腕を目を丸くしながら弥生が声を上げるが、

しかし、

俺は何も言えなかった。

メキメキメキ

バキバキバキ

弥生の変身はそれだけではなく、

身長がグングンと伸びていくと、

あれだけ太っていた身体が見る見る痩せていった。

ゴリッ

凹んでいく腹部に田の形をした溝が刻まれると、

険しい表情をした腹筋が盛り上がり、

また、シャツの下の小振りだったバストが消えていくと、

代わりに分厚い胸板が盛り上げていく、

「うぉうぉうぉ」

変形していく身体が激痛を発するのか、

弥生は苦しい表情をしながら身体を激しく痙攣をさせていた。

その一方で弥生の身体はその姿を徐々に変え、

色白の肌が黒光りをするくらいに黒く染まり、

女の子から、荒野を裸体で闊歩するボディ族の肉体へと変化していった。

「こっこれは…

 あっ」

変身していく弥生の姿に俺は先日見た冒険家の著書に載っていた、

ボディ族の勇者・ティルバの挿し絵を思い出した。

「そう言えば…”声”もティルバを言っていた…

 まさか、弥生はあのティルバに変身しようとしているのか」

俺はそう思っていると、

「うぉぉぉぉぉぉ」

喉に喉仏を盛り上げて雄叫びを上げる弥生の顔は既に弥生ではなくなり、

縮れ毛の髪に唇が厚く、眼窩が盛り上がった勇者・ティルバの顔つきへと変化していた。

「弥生…お前…」

「はぁはぁはぁ…」

汗がたくさん光り、

独特の体臭が匂う中、

漆黒の肌を持つ逞しいボディ族の男性、勇者・ティルバが俺の前に横たわると、

シュッシュッ

っとペニスを扱きつつげる。

そして、

「んあぁぁぁ…

 あぁぁぁぁ!!」

弥生が悲鳴を上げると、

プチュッ

シュシュシュッ

弥生の変身を祝うかのように再び激しくペニスが射精をすると

亀頭からは湯気が立ち上がり、

とっぷりと白濁した粘液が糸を引いて垂れ下がっていた。

「こんなことが…

 な、なんで…」

俺は信じられない光景にただ息を呑み一種の恐怖に体をガタガタと震わせていた。

無理もない、幼馴染の弥生が十五分と経たない間に

筋骨逞しいボディ族の勇者へと目の前で変身してしまったからだ。

こんな状況で落ち着いていられる方が逆にどうかしている。

「くはぁ

 はぁはぁはぁ…

 あぁ…」

射精後の余韻に浸っているのか、

荒く息をしている勇者・ティルバとなった弥生の口からでる声は男の声音になっており、

かつてと息の音も違っていた。

『素晴らしい…

 ティルバのイガリは見事、

 こやつをティルバへと換身させた。

 あとは、魂だけか…』

「くそ…くそぉ」

弥生のボディ族への変身を称えるかのように”声”が響き渡ると俺は思わず唇を噛んだ。

しかし、俺の体はこの非現実的に状況に金縛りにあったかのように固まりつき

そしてブルブルと震えるだけで手足を動かすのもままならなかった。

もしこの光景を弥生の両親が見ていたら間違いなく卒倒していただろうと思うくらいだ。

『ティルバよ、

 よい体であろう?

 これがお前の体だ。

 お前はイガリだけでなく、
 
 体を取り戻したのだぞ』

「はぁはぁ…

 そ、そんな…こんなことって…」

自我は取り戻したのか弥生は呆然としたまま自分の真っ黒な肢体を眺めていた。

「あたし…が、ボディのティルバ…

 いやっ、やめて…

 あたしを返してっ」

『もう遅いわ。

 まだティルバのイガリが生えたばかりのときならまだしも、

 お前の魂にボディの勇者の魂は根付き、

 体も換身してしまった。

 もはやお前はティルバとして生きるしかあるまい。

 ふっはっはっはっは』

弥生の傍で”声”は語りかけていた。

『隠さなくてもよい…

 お前とて、喜んでいるのだろう?

 今とて変わっていく自分に気持ちを高ぶらせておるではないか?

 素直にティルバを受け入れるのだ。

 それがお前にとっても幸せだろう。

 この逞しいティルバの肉体を手に入れたのだ。

 しかも体の年は死んだティルバより若い。

 お前には、ボディの将来がかかっておるでの』

「やめてっ、黙ってっ」

弥生はそう叫ぶと耳を塞いだ。

しかし、弥生の股間では精液まみれのペニスがまた勃起し

ビクンビクンッ

と揺れている。

『ふふ、感じておるようじゃな。

 勇者の魂がお前の魂の中に根を入り込ませ、

 お前の魂を少しずつ変えていくのにお前は興奮しているのじゃろ?

 お前は自分が変わっていくのに喜びを見出しているのじゃ』

その時になって”声”は徐々にしわがれていく。

「やめて、いわないで。

 これ以上あたしをおかしくしないでっ」

頭を振りながら弥生は必死に訴えるが、

『お前の魂に根ざした勇者・ティルバの魂から

 ジワジワと染み込んでいくのが見えるぞ。

 ほれ、今もお主の魂は勇者・ティルバに染まっていっておる。

 さぁ、受け入れるがいい。

 ティルバよ』

「いや、いやっ」

ボディ族となった弥生は、その大きな肉体で頭を振って否定していた。

その度に弥生の体から汗が空気に散っていく。

『これでわしもようやく眠れる。

 孫のティルバの復活こそ、わしの願いじゃったからな。

 あとは、お主が自らをティルバと認めてくれさえすればいい。

 それで呪術は完成じゃ。

 さぁ、ティルバに目覚めるがいい。』

「やめてぇ〜、あたしは、高山 弥生なのよっ。

 あたしは認めない、そんなのっ。

 あたしはあたしのままでいたいのっ」

『違うじゃろう、自分の姿をよく見るのじゃ。

 お主の姿は誰じゃ?』

「てぃ…違う〜、あたし、やよ、弥生なのっ」

『お主はティルバじゃ』

「違うっ、あたしはた、たか、やよ、なのっ」

『お主はティルバじゃ』

「ちが、あたしはた、あれ…いや…

 何なのっ、これっ」

『お主はティルバじゃ』

「あたしは…あたしは、やよ、弥生よっ。

 あたしは、た、た……

 いやぁ、なんで?

 なんで出てこないのっ?

 あ、頭が痛い〜」

『お主はティルバじゃ』

目の前で当に洗脳とでもいうのだろうか…

弥生の記憶が書き換えられていくのを俺は見ていた。

その苦しみ悶えるボディ族となった弥生の姿に

俺はただ呆然と震えていることしかできなかった。

「あたしは、てぃ…や、弥生よっ。

 そうよ、弥生なのよっ。

 ティルバなんかじゃない。

 あたし、ティルバよっ」

そのとき…弥生は、唯一のアイデンティティーとなった名前を初めていい間違った。

『ふははは…

 そうじゃ、お主はティルバじゃ』

「あたしはっ、あたしは、ティルバ?

 てぃ、いや、違うはずなのに…

 な、なんでぇぇぇ?」

『のお、お主はティルバというたではないか?』

「そ、そう…

 や、やめてぇぇ、あたしはティルバ…じゃない。

 や、やよ、て、ティルバよっ。

 あ、あたし、の名前…」

『そうじゃ、お主はティルバじゃ…』

「あたしはティルバ…」

『そうじゃ、お主はティルバじゃ…』

「あたしは…ティルバ…」

『お主は…ティルバ…じゃ』

「あたし…ティルバ…」

ティルバと名乗りだした弥生に、あの”声”はどんどん弱々しくなっていくと

フェードするように消えていく。

それにつれて弥生の目の色も光を失い、

呆然と自分の漆黒の肢体を見詰めていた。



「弥生っ、弥生っ」

ようやく落ち着きを取り戻した俺は、

ボディ族に完全に変身してしまった弥生を揺り動かす。

「…誰…あんた?

 あたし…ティルバ…wfameegk@qa」

弥生は朦朧としたまま、俺に向かって変な言葉を口走った。

「おい、弥生っ」

「あたし、誰?

 弥生、何?

 あ、卓也?」

弥生は変な言葉遣いのままだったが、ようやく俺に気付いたようだ。

「おい、大丈夫か?

 気がついたのか?

 あの”声”ならどっかに消えちまったぞ。

 さあ、もう安心だろ?」

俺は必死に弥生に訴えるが、

しかし、

「あたし…頭、痛い…

 頭、ぐちゃぐちゃ…

 あたし、変?」

弥生の口調がまるで日本語になっていなかった。

そうまるで外国人が無理に日本語を話そうとしているかのようだ。

「弥生っ、弥生っ、しっかりしろっ」

「あたし…分からない…

 あたし、変身して…

 名前、分かんなくなって…

 あたし、ティルバ、あってる?」

「おい、お前は弥生だろ?

 高山 弥生だっ」

「あたし、高山 弥生?

 聞いたことない名前…

 あ、いやっ…頭、痛い…

 あたし、ティルバ、そう…ティルバなの」

「おい、弥生」

「あたし、弥生違うっ。

 違う、あたし、ティルバ」

洗脳が相当奥深くまで浸透してしまっているのだろうか?

弥生は自分を弥生と思おうとすると頭が痛くなるようだ。

「くそっ、あのじじーめ」

弥生のその姿に俺は唇を思わずかみ締めた。

「お前は、高山 弥生だったんだ。

 負けるんじゃない。絶対元に戻るんだ、弥生」

「いや、やめて…

 頭、ガンガンする。

 弥生、いわないで…

 そりゃ、あたし、元に戻りたいけど…

 あ、あたし、ティルバになりたい」

「お前、何いってるんだ?」

「ああ、あたしの中で何かが…が

 ぐ…あっ!?」

弥生は胸元を押さえて苦しみだした。

まるで”弥生”という言葉に時限爆弾でも仕掛けられていたかのように

弥生の様子はどんどんおかしくなっていく。

「弥生っ、弥生っ?」

「いや…あたし、やよ…

 くぅぅぅsavndolbmrblz!!

 sdnvnapzzz!!」

弥生は顎を突き上げるようにして苦しむ。

そして、理解できない言葉を叫び暴れ始めた。

まるで内なるもう一人の自分が突き破ってくるかのように…



3日後…

「大丈夫なのか、もう?」

「うん…でも、あたし、おかしくなってるのはどうしようもないけどね。

 これ以上は無理みたい…」

弥生はボディ族の勇者・ティルバになりきってしまうかに見えたが、

しかし自我の格闘の末、ギリギリの線で踏みとどまっていた。

だが…名前だけは、『高山 弥生』という名前は思い出せない…

思い込めない…いや、意識しても記憶できないようだった。

「ティルバじゃないのは分かるんだけど…

 本当の自分の名前を思い出すとあたし、多分壊れちゃうね。

 だから、忘れたままでいさせて…

 ティルバっていう名前は嫌いなんだけど仕方ないもんね」

弥生はボディ族となった黒光りする逞しい肉体を晒しながら、

低い男の”声”でそう答える。

この男の肉体にまだ弥生の魂が宿っているということに俺は違和感を隠せないが、

だが、弥生が消えてしまうよりかはずっとマシだった。

「あたし、いっぱい無くしちゃった…

 ボディには10より大きい数はないの、

 手の指より多い数は”たくさん”で表現するから、

 あたしの算数のレベルってたぶん小学生以下だよ…

 英語って、さっぱり分からないし…

 こうして日本語で話してるのも頭痛いの」

教科書を捲る弥生は辛そうにそう訴える。

「あたし、元通りの生活に戻りたいな。

 でも…ティルバの体になぜか満足しちゃってて…」

弥生はそう言うとそっと丸見えのペニスを握りしめた。

そして、

「最初、これついたとき、すごくいやだったのに…

 ティルバになってからとっても当たり前みたいに感じちゃう…

 まさか、体も頭もボディ族になっちゃうなんて…

 あぁ…女の子に戻りたい…

 ティルバじゃないあたしに戻りたい…

 でも、昔のあたしのこと考えると…あたし…」

弥生がそういった途端、

握られていた逞しいペニスが突如として首をもたげ始めた。

その途端、

「ああ、男の精を出したい…

 いやなのに、男の精を出したい。

 これをぶち込みたいの、女のアソコに…」

勃起したペニスを握りながら弥生がそう訴えると、

「おい、危ないぞ、や…ティルバ」

俺は弥生と言いかけてすぐに言い直した。

「ほら、見て。

 女だったはずのあたしがチンポを生やしてるんだよ。

 あのときあたしの手の中で干からびてたチンポを
 
 あたし…いま自分のモノとして感じてるのっ。

 ああ、気持ちいいんだよ。

 いやのに、感じちゃう。

 あたしの体から、男の精が出ちゃうんだよ。

 あは、あははは…」

弥生はどこか壊れた人形のように乾いた笑いを浮かべると、

シュッ

シュッ

っとペニスを扱き始めた。

「あたしにくっついただけのチンポが

 あたしの体をティルバに…

 そして、あたしの頭ん中まで入ってきたん…だ。

 はぁっ、ふぅ…

 ああ、女の子のはずなのに…

 あたしが射精しちゃうっ!!」

シュッ

シュッ!!

弥生はボディ族の勇者・ティルバとなった自分の体を

味わうように射精をすると恍惚とした表情を浮かべていた。

そして、

「あぁぁ、あたしがまた変わっちゃう…

 勇者の魂があたしを……

 sddsasadjfwqwrf!!」

と言いかけ、再び意味不明の言葉を譫言のように繰り返し始めた。

「ティルバっ

 しっかりしろ!!」

その光景に俺は思わず弥生の頬を叩くと、

「あっ

 あぁ……あっ
 
 あたし…
 
 またしちゃったんだ…」

弥生は手に付いている精液を眺めるとガックリと肩を落とした。

「大丈夫だっティルバ、

 俺が付いている。

 だから心配をするなっ」

俺は俺よりも大柄になった弥生の身体を抱きしめながらそう言うと、

「ダメよ、

 だって、あたしはボディ族の勇者・ティルバよ。

 こんな黒い肌に、

 そしてこんなにぶっといチンポを持った土人なのよ。

 卓也はこんなあたしを傍にいてくれるの?」

と目に涙を為ながら訴えた。

「あぁ、居てやるとも

 お前は俺にとって大事な人だからなぁ

 ずっと傍に居てやるっ」

弥生の不安をうち消すように俺はそう言うと、

「うそ…」

弥生はそう呟いた。

すると、俺は弥生の肩を握りしめると、

「うそなもんかっ

 あのなやよ…じゃなかったティルバ!!
 
 俺はお前のことが好きだ。

 だから、ティルバの魂なんかに負けるんじゃない」

と言い切った。

「え?」

俺のその言葉を聞いた弥生は思わず顔を上げると、

「いま…なんて言ったの?」

と聞き返してくると、

「あぁ、何度でも言ってやる。

 俺はお前が好きなんだよ!!」

俺はそう怒鳴ると、

ギュッ

と弥生を抱きしめた。

「嬉しい…」

俺の言葉に弥生はそう呟くと俺を抱きしめ返す。

「いいか、ディルバ…

 負けるんじゃないぞ、

 俺がお前を元に戻す方法を見つけだすからな」

「無理よ

 あたし…元の姿になんか戻れないよ」

「無理なもんか、

 もぅ一度変身をすればいいんだ、
 
 元のお前にな…」
 
「でっでも…」

「それで、戻れなければ、

 俺がボディ族の女になる」

「え?」

「あぁ、お前がボディ族の勇者・ティルバになったのなら、

 俺は女になってティルバの妻になれば済む話だ」

驚く弥生に俺はそう決意を告げると、

そっと弥生の口に口づけをした。

「(弥生)…」

弥生の名を口には出せずに心の中で俺はそう呟いていると、

「ありがとう…」

弥生は俺の耳元でそう囁いた。



とそのとき、

『そうか、ボディになりたいか

 お前のその願い、叶えてやろう…ふふふ』

と弥生をボディの勇者にしてしまった”声”が響き渡ると、

トクン…

俺の体の中で何かが燃え始めた。

「え?」

それに驚く間もなく、

「あっ」

俺の手は弥生の股間に伸びると勃起し始めたペニスを扱き始めていた。

「なんで…」

「うんっあぁ…」

驚く俺に対して弥生は眉間に皺を寄せる。

シュッシュッ

シュッシュッ

次第に俺の手が早くなっていくと、

ジワッ

弥生の鈴口から我慢汁が溢れ始めた。

そして、それを見ているウチに

ドクン…

「なっ」

俺は身体を屈めるとキツイ匂いを放つ漆黒色の弥生のペニスを口に含んだ。

「いやっいやだ…

 なんで、男の俺が男のチンポを銜えなければ…」

ヌポ

ヌポ

俺は嫌がったが、

しかし、そんな俺の体の中では男の体液を求めているもぅ一人の俺がいた。

『さぁ…

 勇者の精を受けるんだ。
 
 そうすれば、お前は…』

もぅ一人の俺はそう言い続ける。

「くっ

 なっなんで…

 あぁ…身体が身体がうずく」

いつの間にか俺の胸の乳首は痛いくらいに感じるようになり、

股間のぺニスも破れるくらいに勃起していた。

とその時、

サワッ

弥生の手が動くと俺の胸を軽く撫でた。

ビリッ

「あうっ!!」

まるで電気ショックを受けたような衝撃を受けると俺は身体を跳ねさせた。

すると、

ムギュッ

弥生は俺の胸に手を入れ、

「卓也…

 卓也の胸にオッパイが膨らんでいる…」

と呟くと、

バリッ!!

俺の服を引き裂いた。

その途端、

プルンっ

乳輪が厚く膨らみ親指大に膨らんだ乳首を頂に持った乳房が俺の胸から飛び出してきた。

「これは…」

プルンと乳房を振るわせながら俺が驚いていると、

チュッ

弥生は俺の乳房に吸い付くと乳首を舌で転がしながら

「きっと、卓也の願いを聞き届けてくれたのね、

 卓也…一緒にボディになろう…

 そして、ボディの地であたしと一緒に暮らそう」

と言うと、

俺を押し倒してその上にのし掛かってきた。

「あっあっ」

次第に小さくなっていく自分のペニスを感じながら、

俺は弥生の身体の下で悶えていた。

そして、いつの間にか俺の股間にオマンコが口を開けてしまったのか

「卓也…のココ…いくよ」

弥生がそう呟いた途端。

ズンッ

弥生のペニスが俺の体内に入ってくると、

ヌチャヌチャヌチャ

っと激しく動きはじめた。

「あっあっあっ」

俺はただ荒波に揉まれる小舟のように犯され続ける。

「ふぅふぅふぅ」

弥生の鼻息を聞きながら

「あっあぁ

 いいっ
 
 いっちゃう」

俺はただひたすらそう言い続けていた。



天井が霞み、

壁が消えていく

ザザザザザ…

気が付くと俺と弥生はいつの間にか熱風が吹き抜けるボディの地に居た。

「あっあっあぁデルゥ!!」

「いっイクゥゥゥゥゥ」

土まみれになりながら俺と弥生はついに果てると、

「こっここは…」

いつの間にかすっかり風景が変わってしまったことに弥生が気が付くと、

「ここはボディの地よ、ティルバ…
 
 さぁ行きましょう」

俺は牛皮を纏いながら起きあがると困惑している弥生の手を取った。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。