風祭文庫・モランの館






「千里」


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-027





カチ・カチ・カチ…

「………」

壁に掛けられた時計が奏でる無機質な音が響く中、

俺と千里は深夜の資料室の中で灯りもつけずに

じっとその時を待っていた。

ふと時計を見ると時刻は午前1時を指そうとしている。

「…」

思わず俺は隣にいる千里に何かを言おうとしたそのとき、

ポゥ…

突然、目の前の壁に小さく青白い光の点が現れると、

みるみるそれは大きくなり、

やがて光で出来た門が現れた。

「きっきたっ」

それを見た千里はちょっとおどおどした表情で俺に向かって言うと、

「うっうん」

俺は目の前に現れた門を見つめながら頷いた。

そして程なくすると

ギギギギ…

門の扉がゆっくりと開くと、

その中から南方系と思われる鮮やかな朱と黄に塗られた肌と

ギョロッとした目、

耳元まで裂けきった口を持ち、

そして、まるで墨のように黒い肌と、

股間に一本の角を生やした人物が姿を現した。

ゴクリ

それを見た俺は思わず生唾を飲み込む。

…モニの神様…

その人物の名はそう聞いていた。

『ふむ…

 今夜もきたのか、おぬしらよ』

モニの神様は俺たちを見るなりそうつぶやいた。

すると、千里は一歩前にでると、

「はい」

怖がりながらもそう返事をした。

そして、

「あの…

 今夜こそは呪いを解いてもらえませんか?」

千里は上目遣いで神様に向かってそう告げると

両手を履いているスカートの端をつかむなり

バッ

っとスカートを捲り上げた。

すると、

モリッ!!

スカートの中にあるショーツは盛り上がり

そこに女のモノではない膨らみが見えた。

そう、それは間違いなく男の逸物・ペニスによる膨らみだった。

千里は視線を神様から外すと、

「あっあたし…

 もう耐えられません。

 こんな体じゃ、体育とかトイレも…

 いつバレてしまうかと心配で…」

と泣きそうになりながらも必死になって訴えた。

『そうなのかもしれんが

 しかし、おぬしに勇者の象徴が生えたのは他でもない

 おぬしのせいなのだぞ。

 それよりも、モニの勇者としてお目通りするつもりならば

 まずはわしに勇者の証を見せよ』

と神様は千里に言い放った。

「で、でも…

 それは…」

神様の言葉に千里は戸惑う仕草をする。

けど、前回モニの神様を呼んだしたときも、

千里はその”勇者の証”とやらをたてられなかったために

すぐに神様が消えてしまったのだった。

俺は千里がどうするのかと心配そうに見守った。

「ほ、ほんとに

 勇者の証をたてても

 呪いが悪くなったりすることはないんですか?」

千里は震えた声で神様に尋ねた。


思えば十日前、

資料室に荷物を運んできた千里がたまたま落ちていたコテカを

踏み潰してしまったために呪いがかかってしまったのだ。

呪いは少しずつ効いてくるものか

すぐには現れなかったが、

しかhし、今も千里を蝕んでいっているのは間違いなかった。

最初の兆候は次の朝に起きた。

千里が寝覚めたときに股間に違和感を感じ、

慌てて、寝巻きのズボンを脱いで股間を見たとき、

千里のショーツにはポツンと小さな突起物が姿を現していた。

それがペニス化が始まった千里のクリトリスだった。

俺は二日目に思い悩んだ千里から相談されたのだが

そのときには千里のクリトリスは既に親指サイズになり、

また、縮れた先端の皮に隠れた真中の穴からはおしっこまで出るようになり、

女の子の尿道口は使い物にならなくなっていた。

そして、三日目には

小学生男児のペニスと変わらないサイズになり

ショーツを履いているとはっきりと分かるほどになっていた。

「どうしよう…

 これって呪いなのかな?」

ようやく千里が踏み潰したコテカとの関係を見出したとき

千里のペニスは十センチほどになり、

そらにペニスの表面が黒く染まり始めていた。

俺たちは大急ぎで資料室にあったコテカとセットだったらしい文献を頼りに

モニの神様の存在を知り、

そして、一か八かで召喚してみたのだった。

『…それは分からん。

 ある意味でいうとお前次第ともいえる。

 勇者としての自分に目覚め、

 勇者の魂に飲み込まれるようなことがあれば

 呪いが悪化することは避けられんだろうがな』

「千里、お前本当に大丈夫なのか?」

神様の言葉を聞いて心細くなった俺は思わず千里に尋ねた。

「分かんないよ。

 だって、あたし、

 自分のオチンチン触るのなんてトイレとお風呂くらいだもん」

千里がそう訴えると、

『ふむ…

 では、お前さんはまだ”精”を出したことがないのだな?

 なるほど』

それを聞いていた神様は納得したような台詞を言った。

「え?どういうことだ?」

『簡単じゃ。

 こやつの勇者の象徴はまだその役目を果たしたことがない。

 だから元々女であるお前さんは、

 まだ勇者の象徴をもったことにはならんのだ。

 だから呪いの進行も遅いのだろう。

 もし呪いの効果が強く、

 勇者の証をすぐ立ててしまっていたなら

 お前さんは既にモニの勇者へと生まれ変わっているはずじゃ』

「そんな…」

「千里がモニの勇者にだなんて…

 そんなのウソだろ?」

俺は神様に突っかかっていった。

『小僧、少しは口を慎まんか。

 わしがわざわざ手を貸してやっておるのだぞ』

「あ…

 す、すいません」

神様のご機嫌を損ねてまた帰られても困るので俺は素直に謝った。

「そ、それより、千里。

 さっきの話って、お前、また精通してないってことなのか?」

俺が千里に訊ねると、千里は顔を真っ赤にして

「当たり前じゃない!

 そんな気持ち悪いことできないもん。

 自分の股間にこんな真っ黒なオチンチンが生えていることすら嫌なのにっ」

と怒りながら言った。

「ご、ごめん。

 でも、神様は取りあえず”証”を見せろっていってるんだろう?

 一度はやるしかないんじゃないのか?

 相談に乗ってもらうためにも」

俺は自分の幼馴染兼彼女にそんなことをさせるのはもちろん不本意だったが

でも彼女のためを思ってそうアドバイスをした。

どちらにしても頼れるのは、このモニの神様以外にいないのだから。

「勇者の証かぁ。

 やだなぁ、気持ち悪いよ」

「でも、お前のチンチンだろう?」

「やめて!

 そんな言い方。

 呪いで生えてきただけであたしのオチンチンなんかじゃないわっ」

「とにかく、

 今はお前に付いてるものなんだから仕方ないだろ?

 また神様に帰られたら

 余計に呪いが進んじまうかもしれないんだぞ」

神様を横目で見ながら俺はそういうと、

「それは…そうだけど」

千里はショーツの中でもっこりしている自分のペニスを眺めていた。

「まあ、お前は嫌かもしれんが

 射精するのって結構気持ちいいんだぞ。

 俺達だってやってるんだし」

踏ん切りがつかなそうな千里の背中を押す気持で俺がそういった途端、

ペチンッ

千里の平手打ちが炸裂した。

打たれた頬を押さえながら俺が千里を見ると、

彼女は顔を真っ赤にして、

「あたしはスケベな男の子とは違いますっ!

 一緒にしないでよ」

と叫ぶんだ。

「いってぇ〜…

 俺は気持ちいいからそんなに気を張り詰めるなといいたかったのに…」

俺は小声で文句を言っていると、

『さぁ、証を立てるのか?

 立てないのか?

 さっさと決めんか?

 おぬしらの願いを叶えるにもまずはモニの勇者の証を見せてもらえねば

 できんのだぞ』

神様はじれったそうにそう言った。

どうやらそろそろタイムリミットのようだ。

「あ、あの…

 あたしの証って…その、モニの勇者の証になるんですか?」

神様の言葉に千里は訊いた。

『何を言っておるのだ。

 おぬしの象徴、見るからに分かると思うが

 モニの勇者のモノじゃ。

 だから、体はモニの勇者になっていなくとも

 話を聞いてやろうという、この寛大なわしの気持ちがわからんのか?』

「ご、ごめんなさいっ!」

千里は神様に慌てて謝った。

『さて、どうするんじゃ?

 もうこれで最後じゃぞ』

「あ、あたし…」

千里は一旦俯いたが

「やりますっ!

 だ、だから待ってください」

と顔をぱっと上げて言い切った。

「千里。

 ようやくする気になったのか…」

と彼女を見ながら俺はそう思った。

「でも、その前に…

 あたし、勇者の証が立てるのが怖いんです。

 あの…

 なんとかできないでしょうか?」

千里はスカートを捲り上げたまま震えた声でいう。

どうやら心の準備は万全ではないらしい。

『ほう?

 それはわしに手伝えというのか?

 まあ、それは面白いの。

 モニ以外の部族の女に勇者の呪いが掛かったのを見るのも

 初めてじゃし。

 では、手伝ってやろう』

「おっ、おい。

 いいのか?」

俺はうれしそうな神様の声に心配になり千里に声をかけたが、

しかし千里は俺の声も聞かず、神様に一歩また一歩と近づいて行った。

すると

『よしじゃぁ…ほれ…』

神様はそう言うなり、

千里に向かって差し出した手の先に小さな光の粒が現れると、

それが千里の体へと向かって飛んでいく。

そして、

それは千里の体に当たった途端、

まるで溶け込むように消えて行った。

その数秒後、千里に異変が始まった。

「あ…

 あはっ…

 な、何これっ」

千里はスカートを捲り上げたまま

その場に崩れるようにして座り込むと、

まるで上気したような目つきになった。

すると、ショーツの中のもっこりとしていたペニスが勃起を始めたのか、

ショーツの布地がビクンビクンとそれに合わせて震えだすのが見えた。

「あ…オチンチンが大きくなってく!?…」

千里はまだ朝立ちしか経験していなかったので、

性的に勃起する感覚に驚いているのだろう。

「や、やだっ!

 何でっ。あんっ!

 きついっ、ショーツがきついよぉ…」

元のサイズでさえ十センチを超えていた千里のペニスが勃起したため、

ショーツはパンパンに膨れ上がっていた。

それは元は女の子というのにものすごく変態っぽくてエッチな光景だった。

まるで、千里が女の体形をしたおかまみたいに見える。

「千里…」

だが、

本来の女の子である千里はショーツをまだ下ろす気にはなれないらしく、

必死に我慢している。

「なんで?

 あんっ、
 
 なんで、こんなに敏感でおっきくなってくるの?

 オチンチンって…」

千里はただならぬ様子で自分のペニスから伝わってくる感覚に慌てていた。

「あ、

 ああ…」

千里は恐らく無意識なのだろうが自然に右手が下りていくと、

ショーツの上からもっこりと股間を這うように生えているペニスを、

布地の上から摩りだした。

「んー

 んー…

 んんーっ!」

歯を食いしばるようにして千里は必死に耐える。

するとムクムクと更に千里のペニスは勃起し、

ついにはショーツの布地を突き上げ始めた。

「ああっ。

 痛いっ!

 痛いよっ!」

元々ペニスがあることを想定していないショーツは、

薄い布地の股間前部上方を突付かれ精一杯伸びていくだけだった。

そして、千里が自ら与える刺激ゆえか神様の手助けのせいか、

オチンチンの先端からの先走り液がこぼれ始めると、

ショーツの突っ張った部分の頂上から湿らせて行き、

濡れて染みがシューツの上に描き始めだした。

「やんっ!

 なんか冷たい…

 なんか出てきてるみたいっ!

 ど、どうなってるの?」

千里は我慢汁でショーツを濡らしていく自分に気がついたのか

俺に驚愕の表情で訊いてきた。

「が、我慢汁だよ。

 射精する前になると精子を酸性のおしっこで殺さないようにって

 アルカリの液体が漏れてくるんだよ。

 男にしかないカウパー氏腺という器官から出てくるんだったと思うけど…」

「はぁはぁはぁ…

 そ、そうなんだ…」

千里はそんな自分に呆然としつつ、

自分の肉体の変化を改めて実感しているようだ。

でも、

俺としても我慢汁を出すような体に変化している千里に驚きを隠せなかった。

まさか十日でここまでモニの勇者への変身が進んでいるなんて…


そして、女の子の部分でない場所で

ショーツを濡らしていく千里の光景は傍から見ていても異様だった。

「駄目っ!

 オチンチンが痛いっ」

千里はついにショーツの圧迫に耐えられなくなったらしく

ショーツを一気に引きおろすと股間を露にした。

「はぁはぁはぁ…

 やだぁ、何よこれ…」

そこには

包茎だったはずの千里のペニスの皮が捲れ、

亀頭とカリを剥き出しにしたキノコ状の姿をしたペニスが聳え立っていた。

ビクン

ビクン

脈を打つペニスを眺めながら俺は、

「こ、こんなに大きかったのか、千里のチンチン…」

と驚いた口調で言うと、

「し、知らないよ。

 だって勝手に大きくなってきたんだもん」

千里は荒く息を吐きながら、

自分の股間に似つかわしくない漆黒のモニのペニスに唖然としている。

『さあ、準備は整ったぞ。

 モニの勇者の証を立てよ』

神様がそういうと

ヒクヒク

千里の色白い腕が痙攣するように勝手に動き出すと

対照的な漆黒の巨大なペニスを包み込んだ。

「あんっ!

 んんんっ!

 す、すごく敏感になってるぅ」

千里は初めての勃起したペニスの感覚に翻弄されていた。

『さぁ、もうおぬしは精を出せるはずだぞ。

 出してみろ』

神様がそういうと、千里は手は上下運動を始めた。

シュ

シュ

シュッ

シュッ

千里の手は次第に勢いを上げて行く。

その様子はまるで誰かモニの勇者が千里の股間の間から自分のペニスを差込み、

千里に愛撫させているようにも見えた。

なぜなら

千里の股間から生えている漆黒のペニスがあまりにも浮いた存在だったからだ。

しかし、

千里は間違いなくその漆黒のペニスの快感を自ら味わい酔っていた。

目がとろ〜んとし始め、初めて体験する男の感覚に朦朧としているようだ。

「お、おい…

 千里」

「駄目ぇ…

 なんかすごすぎるぅ。

 やなのに…

 いやなのに…

 が、我慢できないっ!」

千里はもはや操られているのか

自らの意思でペニスを扱いているのか分からないほど

白熱していた。

「はぁはぁはぁはぁはぁ…」

『どうじゃ?

 女よ、モニの勇者の象徴は』

「き、気持ちよすぎるよ。

 あ、

 あたし、頭がおかしくなりそうっ!」

千里は髪を振り乱しながら

我慢汁でベタベタになった手で

更なる快感を求めてモニの勇者の象徴を刺激していく。

俺はいくら”目通りするため”とはいえ、

ちょっとやり過ぎではないかと心配になってきた。

『ふふふ…

 もはやおぬしに女は不要じゃ。

 さっさと証を立ててみぃ』

「そ、それってどういう意味だっ?」

慌てる俺に

『証を立てれば

 こやつは女ではなくなるということだ。

 そして、モニの仲間入りを果たす。

 だから、お目通りさせてやれるというわけじゃぞ』

神様は気楽そうに俺にそう告げた。

「そ、そんな…

 あんっ!

 あ、あああっ!

 ねぇ、弘樹。

 なんかジンジンしてきたよ。

 オチンチンの根っこ辺りが変っ!

 変っ!」

「駄目だ。

 出すんじゃない、千里。

 出したら本当に男になっちまうんだぞ」

俺は冷や汗を掻きながら千里に言うが、

「そんなこといったって…

 んんんっ!

 もう何か漏れてきちゃうよっ」

千里は必死なってそう訴えた。

「だったら、

 さっさと手を止めろっ」

「でも…

 はぁはぁ…

 止めたりしたら余計に出ちゃいそう…

 こ、これが射精なのっ?」

「そうだっ!

 だから出すなよ、千里」

「ああっ、

 なんかおしっこが漏れるみたい…

 ん、んんんっ、

 つ、くっ!」

千里は突然歯を食いしばると

いきなり襲う男の衝動に折れたのか

急に気張っていたはずの顔を緩んだ。

「くぅっ!!」

千里はミゾソプラノの声でそう叫ぶと

腰を

グンッ

と前へ突き出し、

体に似合わない漆黒のモニ族の男のペニスから、

ジュッ

ジュッ

ジュッ

ジュ…

と白濁した粘液を空中へと放出した。

それはどこかのオカルト映画のようで俺はただ自分の目を疑った。

青春真っ盛りの女子高生の千里の股間から吐き出されていく男の欲望の証

そして

狂喜するような顔をして快楽に身を任せて朦朧とする千里。

「はぁはぁはぁはぁ…」

「千里…」

呆然とする俺の前で千里はそうすることが当然というかのように

シュッ

シュッ

と残る精液をペニスから搾り取り勇者の証の余韻に耽っていた。

「あぁぁぁぁ…

 いい〜…」

『これはめでたいの。

 この女はとうとうモニの勇者へと生まれ変わったのじゃ!

 いや、もう女ではないの。

 モニの勇者よ。

 ”精”を出すことができてよかったの!」

「ああ、なんてこった…

 千里が精通しちまうなんて…」

俺は愕然としていた。

「う、うぁんっ!」

すると突然千里の体がビクビクッと震えだした。

そして、千里の体から大量の汗が噴出し始めた。

「はぁはぁはぁはぁ…

 な、何なの?」

依然意識が朦朧とする彼女は事態が掴めていないようだが、

その異変はただならぬものだった。

「おい、千里っ」

なんと千里の体から大量に噴出した汗は、

千里自身を洗い流すかのように

色白い肌を黒く、漆黒へと染め上げていき

サラサラだった髪の毛も

アイロンのかかったブラウスも

透けて見えるようになってきたブラジャーも

見る見るその汗でベトベトになり

千里の全身が黒く染まっていくのが手に取るように分かった。

そして、

「ああ、ああ〜っ!」

時折千里は体をぶるぶるっと震わせては変身という禁断のエクスタシーに酔っていた。

「おい、千里。

 お前の肌が…」

そう言いながら俺が近寄ろうとすると

ムワッ

千里から今まで嗅いだことのないような強い体臭が俺の鼻を突いた。

「うっ、なんだ…

 この匂い、千里のなのか?」

『ふふふ…

 いよいよじゃ。

 こやつのモニへの変身が始まったのじゃ!

 さあ、お主もモニ族以外では初めての女から

 モニの勇者への変身を楽しむがよい』

神様は俺達をあざけ笑うようにそういった。

「そ、そんな…

 俺達を騙したのかよっ!?」

「あ、あはぁん…

 んーんんんっ!」

『騙したわけではない。

 どちらしてもいずれはモニの勇者へと変身してしまう呪いじゃったのだ。

 わしはそれを一気に進めてやったにすぎん』

「そんな…

 俺はせめて呪いの進行を止めて欲しくて呼んだっていうのに…」

『ふむ?

 こやつは変身を喜んでおるのにか?

 こやつは自分がモニの勇者へ生まれ変わるのを喜んでおるのだぞ。

 お前にそれを止める理由はあるまいて』

「熱い…

 体が熱いよぉ」

千里はベトベトになったブラウスを脱ぐと

ブラシャーと足に掛かったショーツだけの姿へとなる。

だが

真っ白いブラウスの中から現れたのは真っ黒な胸部だった。

それも

ミシミシ

と音を立てながら変化の真っ最中だった。

「熱い…

 熱いっ!

 体が焼けるぅ」

千里はそう叫ぶと体中を掻きだした。

ムワッ

更に千里の汗の量が増え、さらに

ビシッビキビキ!!

と言う音を立てながら筋があちこちで蠢き出し始めた。

「う、うぁぁぁぁんっ!

まるで泣き叫ぶようにして千里が声を張り上げると、

メリメリメリ!!

分厚い胸板が一気に盛り上がると千里の胸を覆いつくし、

さらに、腹部や手足のいたるところで筋肉が盛り上がって出来た瘤が

体に濃い陰影を刻みながら姿をあらわした。

ミシミシミシ…

苦しみに歪んでいる千里のマスクも徐々に変わり、

勇者の精悍なマスクへと変化していく、

そして、長い髪がハラハラと抜け落ちると、

その後には短く縮れた新しい髪が残っていた。

『うむっ、

 これぞモニの勇者ぞ』

神様は変身して行く千里の姿を満足そうに眺めながら、

『しかし、まだそれではワシに対して無礼であろう、

 勇者なら勇者らしくしなければな…』

と言うなり、

手を千里に向かって差し出すと大きく円を描いた。

すると、

ヌゥゥゥ…

っと一本のコテカが千里の体の上に姿を現した。

「あっ」

そのコテカを見た俺は思わず声を上げる。

間違いない…

いま千里の上に浮かんでいるコテカは彼女が踏み潰してしまったものだ。

「こっコレは」

思わず声を上げて俺は神様に尋ねたが、

しかし、神様は俺の質問には何も答えず、

『さぁ、勇者よ、

 そのコテカを身に着けるのだ』

と千里に命令をすると、

体を硬直させて苦しんでいた千里の体の緊張が一気に緩むと、

「うぅ…」

千里は固く閉じていた目をうっすらと開け、

そして、目の前に浮かんでいるコテカをじっと据えた。

「千里…」

俺は千里の名を呼んだが、

しかし、千里は俺の声には反応せずに、しばらくコテカを眺めたのち、

スッ

っと腕を上げると、その浮かんでいるコテカを手にとってしまった。

「おっおいっ、千里、何をする気だ!!」

予想外の彼女の行動に俺は思わず叫んだ。

すると、

千里は俺の方をチラリと見ると、

「…ってる…判っているの…

 でも、どうしようもないの…

 あたし(はぁ)、これをつけないと…

 あぁ…だめっ、抑えられない」

と呟くようにして言うと、

手に取ったコテカをゆっくりと勃起しているペニスにかぶせ始めた。

ず…ず…ずずずず…

コテカは小さい音を立てながら千里のペニスを飲み込んでいく、

「あぁ…

 いぃ…

 あっあたしの中で何かが変わっていくぅ」

コテカを被せながら千里がそう訴えると、

『そうかそうか、

 ようし…

 あとは…ほれ』

その様子を満足そうにそう神様がうなづくと、再び腕をまわした。

すると、千里の体に次々とモニの勇者としての装飾が施されて始めた。

そしてすっかり装飾が施されると、

千里の姿かたちは裸族・モニ族の勇者に変身してしまった。

『さぁ目覚めよ、モニの勇者よ…』

神様はそんな千里に声を掛けた途端、

パチ

千里の目が開いた。

「ちっ千里!!」

それを見た俺は思わず声を上げた。

しかし、

起き上がった千里は俺に目もくれず目の前にいる神様のところに向かっていくと、

そのまま跪いてしまった。

『うんうん…』

その様子を満足げに神様がうなづくと、

『さぁ、モニの勇者よ、

 ワシと共に行こうぞ!!』

とひとこと言うと、

パァァァァ!!

再びあの光の門が部屋の中に姿を現した。

スゥゥゥゥ…

門の扉が開くとすぐに神様がその中に入っていく、

そして、そのあとに続くようにして千里が門へと向かっていった。

「いっ行くなっ千里!!」

俺は腕ずくで千里を引きとめようとしたが、

しかし、不思議なことに俺の体の筋肉はまるで石のように硬くなり、

一歩も前に進むことが出来なかった。

「くっ、なんだ?、

 おいっ、俺に何をした!!」

俺は門の中にいるだろう神様に向かって声を張り上げたが、

しかし、何の返事も返ってはこなかった。

そうこうするうちに千里は門に手を掛けた。

「千里、だめだ、行ったらだめだ」

俺はは思いっきり声を張り上げると、

クルっ

千里は振り向くなり、

「これまでありがとう…

 でも…あた…おっオレ…

 もぅここにはいられない。

 オレはモニ族の勇者…ダ…

 ダカラ…サヨ………」

千里の声は野太い言葉は、

見る見るたどたどしくなっていくと、

最後にはモニ族の言葉になってしまっていた。

こうして俺に向かって別れの言葉を告げた千里は

再び前を向くと神様と共に扉の中へと姿を消してしまっていった。

「そんな…」

フッ!!

門が消え、俺以外誰もいなくなった資料室の中で俺はただ呆然と立ち尽くしていた。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。