風祭文庫・モラン変身の館






「モラン誕生」


原作・バオバブ(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-013





「夜のサバンナ体験?」

「そぅ、面白いと思うよ」

シャワーで濡れた髪を乾かしながら、あたしが聞き返すと、

ブロンドの髪を後ろで束ねながらキャッシーはニコニコ顔でそう答えた。

「あたしはいいわ…」

昼間の疲れもあって、いまスグにでも寝たいあたしはそう答えたが、

「まぁそんなこと言わないで、ミアもつきあってよ」

キャッシーはそう言ってやや強引にあたしに支度をさせるとロッジから連れ出した。

キャッシーとは留学先のアメリカの大学で出会い、

専攻科目が同じの上にお互いに惹かれるものを感じたのか、

よく誘い合って行動をするようになっていた。

いまあたしがこうしてアフリカにいるのも彼女の研究につき合ってのことだった。



こうしてあたしは、その夜キャッシーと共に再びマサイの村を訪れた。

村は電気がないせいか、随分と暗かったが、

小屋からそれぞれ漏れ出る焚き火のおかげか、

歩いていて蹴躓くことはなかった。

あたしたちは、到着するとスグに

案内役の村人に村の奥のブッシュへと案内された。

ブッシュの入り口では昼に会った長老が待ち構えていて、

「よくぞきてくれた」

と何やら喜んでくれたが、

乗り気でなかったあたしは、あまり気分がよくなかった。

すると長老はうれしそうにしているキャッシーと

苦笑いしているあたしを見比べながら、

「二人一度にはいけないから、一人一人で行きましょう」

というと、私の手をとった。

「えっ、あたしなの?」

あたしが、驚いてきくと、

「そうだ」

とニヤッと笑った。

「楽しんできてね、トモ」

あたしは、長老の笑みに嫌な予感がしたが、

にこやかに送り出すキャッシーに押されて

しぶしぶブッシュの中へと入っていった。

「うわっ」

しばらくブッシュを掻き分けながら進んでいくと、

急に広い空間に出た。

そこでは、数人のマサイ族が何かの祈祷をしていた。

あたしが一瞬見とれていると、

長老はあたしの手を放し、祭壇の方へと歩いていった。

どうやら見物していろということらしい

と悟ったあたしは、そこに座りこむと、

その祈祷の様子を見物することにした。

『…!!…!!』

それは聞いていると頭がぼう〜っとしてくるような祈祷だったが、

しばらくしてくると、さすがにおもしろくなくなってきて、

あたしは立ち上がろうとした。

「んしょ」

すると、あたしの動きに気付いた長老が、

「おまえはここに来い」

といって、祭壇の方を指差した。

でも、あたしは、もう帰るつもりだったので、

「いえ、帰ります」

といった。

そのときだった。

「!!」

何か頭の奥がチリチリするような痛みが走ると、

ドクンと大きく心臓が鼓動を打った。

「あ、何これっ!?」

まるで、電波が頭の中を掻き回しているようなだった。

「い、いや…」

一瞬、頭の中が真っ白になったあと、

あたしは自分の体が動かなくなっている事に気付いた。

あたしの状態を知っているのだろうか?

長老は不気味な笑いを浮かべると、

「ここにきて寝るんだといった」

(いや、やめて…)

あたしは必死に抵抗したが、体にビクンと電気が走ると、

あたしの体は操り人形のように動き出し、祭壇へと近づいていく。

これからあたしは何が起こるのかと恐怖におののいた。

そして、とうとうあたしは意志とは関係なく、長老のいうがままに

祭壇に横たわった。

そのときには既に体の自由は完全奪われていて顔はもちろん、

目すらも動かす事はできなかった。

すると呪術師があたしに向かってまた別の呪文を唱え始める。

まるであたしの体を芯から揺さぶるような呪文だった。

「はぁはぁはぁ…」

気が付くと次第に呼吸は早まり、体が火照りはじめた。

――熱い

まるで体が蕩けそうな熱さだった。

もう自分の体が溶けて別のものに変わってしまうような…

そうして、意識がぼぅ〜としはじめた頃、

あたしは急に体中の筋が…筋肉が蠢き始めたのを感じた。

ギシギシ…

あたしは身動きが取れないまま、肩を震わせ荒い息遣いをしながら、

自分の体に起きている変化に必死に耐えた。

「はぅ、はぁはぁ、はぅ…」

一体、何が起こっているのか

あたしは朦朧とする頭の中で探ろうとする。

そのとき、

ピシッ

ブラが急にきつくなってきた。

「え?うそ…」

ムリムリムリ…

そう思う間もなく、まるで体が膨らむように胸板が張り出し、

乳房が筋肉に乗り込まれていく感じした。

「いやっ!!」

ブチッ

次の瞬間、ブラは千切れ、更にブラウスが体に張り付く。

あたしは、ようやく自分の体に

とんでもない変化が起こりつつあるのを悟った。

「あ、ああ、あああ…」

ビキビキビキ…

その恐るべき事態を否定しようにも、

足に、手に筋肉が張り出し、長く伸びていく。

靴のサイズも合わなくなり、

靴下も指が突き破っていくのを感じた。

そして、ヒップが小さくなり、ジーンズに余裕ができてきたとき、

「やっ!?」

あたしは、戦慄した。

アソコが…

今度はアソコに変な感覚を覚えたのだ。

今までに経験したことのないような膨張感があたしのクリを襲う。

あたしは瞬時にソレの意味することを理解し、

そして泣き叫んだ。

だが、

ムリムリ…

あたしのクリはアソコから飛び出すと

敏感なままパンティに張り付いた。

「やぁん!!」

あたしは、自分のクリが別のものに変わっていくのを

嫌というほど快感を通して突きつけられる。

あたしの変化を覗き込んでいた長老は、

あたしの股間を覗き込むと喜んでいるようだった。

あたしは、恥ずかしくて嫌でたまらなかった。

ペリッ

「うっ!!」

そして、収縮自在なパンティの隙間を見つけ、

脇から飛び出したソレはジーンズにテント張った。

「駄目。やめて…やめて…」

あたしは必死にそれを押し戻そうとしたかったが、

手はまだピクリとも動かせなかった。

「はぁぁぁぅん…」

そして、

ピチュ

という音ともに、あたしのクリの先端で何かが起き、

あたしは気絶しそうなほどの快感を味わった。

一体何が起きているのか不安だったが、

いつしかあたしはその快感に悶えて始めていた。

「はぅはぅはぅ…」

敏感なソレはジーンズと擦れる事でたまらない快感を生んだ。

「そろそろ、おまえの本来の姿になるべきときだ」

そんなあたしを見つめていた長老は、

ヌギッ

いきなりジーンズを引き降ろした。

「いやぁっ。やめて〜」

あたしは恥ずかしさのあまり叫ぶ。

だが、あっけなくパンティーも脱がされ、

その上、破れかけたいたブラウスも引き裂かれ、

あたしはあっという間に裸体にされてしまった。

「いやぁぁぁ…」

あたしはもう擦れ声で抵抗するしかなかった。

そして、自分の体に起きた変化を肯定したくなかった。

すると、長老は

「さぁ、最後の仕上げをするんだ」

とあたしに言った。

最後の仕上げ?

あたしが、そう思ったとき、再びあたしの頭の中に電気が流れた。

チリチリチリ…

「ひゃうん!!」

ビクッ

体から金縛りが溶けたと思った瞬間、手が勝手動き出した。

「あ、あああ…」

あたしが呆気に取られて、

ようやく動かせるようになった目で動きを追っていると、

手はあたしの股間へと近づいていく。

そして、あたしはそれにつられて見たくはなかったものを見てしまった。

ソレは自分の股間から突き上げている肉棒だった。

「いや〜どうしてぇ〜!!」

なんとなく感づいていたものの、

面と向かって突きつけられて、

ソレを受け入れられるほどあたしの心は強くなかった。

ヒタッ

「あ、あああんっ!!」

その間にも、あたしの手はその肉棒を掴んでいた。

「はぁはぁはぁ…」

握られているという感覚と握っている感覚があたしの頭に流れて来る。

それは、その肉棒が自分のものであることを示していた。

「さぁ、男の精を吹き上げ、モランになるんだ」

ドクンッ

長老の言葉にあたしの心臓が反応する。

「男の精?」

あたしは、弱々しく尋ねた。

すると、

「そうだ。男の精を吹き上げれば、

 おまえはマサイの勇者・モランに生まれ変われる。

 男の精を出せば、もう元には戻れないのだ」

と言い、いやらしく笑った。

それは明らかにあたしの身の上に起きている事を

楽しんでいるような目だった。

――あたしが男になっていくのを娯楽のように思っているのではないか

とすら思った。

「誰かそんなことするもんですか!」

あたしは震える声で抗議した。

すると、長老はあたしの顔をグイッと掴み、

「そんなことはない。

 おまえは男に…勇者になれるのがうれしくはないのか?

 一度経験すれば、おまえも必ず満足するはずだ」

と憎たらしいほど優しく語り掛けた。

「そんなの経験したくなんてないわ。早くあたしの体を元に戻して!!」

とあたしは心の奥底で沸き上がる身の毛もよだつような欲求を

押し殺すようにしていった。

「ふん。まぁそれに耐えられたら、元に戻してやってもよかろう。

 だが、一度男の精を飛ばせば、おまえは二度と女には戻れないからな」

と言うと、長老はあたしから離れた。

すると、勝手に手が大きく太く変貌したあたしのクリを擦り出したのだ。

「ひいっ、はぁはぁはぁ…」

あまりにも鋭く一点に集中する快感があたしを襲う。

あたしは必死にソレに耐えようとしたが、耐えようとすればするほど

あたしの手は、どんどんクリを上下に擦る運動に勢いをつけるばかりだった。

シュッシュッシュッ

次第に、背筋がぞくぞくするような快感があたしの意識を飲み込み、

あたしの中に今までに経験したことのない欲求が湧き出す。

それは、そのクリの根元に溜まって来るものを外に吐き出したいという欲求だった。

「くぅぅぅぅぅぅ」

ピチュピチュ

興奮のしているせいか、愛液のようにベタベタしたものがソレの先から溢れ出し、

あたしの手に纏わり付く。

「いや…」

それのせいで、一瞬いやらしい気持ちが少し生じたのか、

とうとうあたしは、その欲求を押さえられなくなってしまった。

ビクッ

全身に雷のような快感が走って腰が震えた瞬間、

「ぐぅっ!!」

何かが股間の根元から一気に駆け上がり、

一気に生まれたばかり肉棒の中を通り抜けると、

ブシュシュッ

という放出音と共に外に吹き出していった。

「くはぁ〜」

そして、

ものすごい達成感と満足感があたしの中を埋め尽くす。

あたしは、もうソレが自分が男になってしまった証であるということも忘れ、

自分が射出した白濁した液を手に取り、

初めて体験した射精の余韻に浸っていた。

あたしは、気持ちよさのあまり、

自分が吐き出したソレが精液…

そう男の精であることも気が付かなかった。

「はぁはぁはぁ…」

ただ、あたしは、ぼぅ〜っとして、

自分の股間のペニスを眺め、充実感を味わっていた。

「…ようやく男になったようだな」

長老は満足しきった様子であたしに声を掛ける。

そしてその時になってあたしはようやく気が付いたのだ。

自分がしてしまったことに…

改めて自分の体を見回して見ると、

筋骨逞しい漆黒の裸体の男性そのものになっていた。

「うそ…」

あたしは、自分の行動を拘束していた力が消えうせていることにも気付かず、

すっかり低い声音に変わった自分の声であたしは泣き叫んでいた。



その頃、キャッシーはあたしとは別の呪術によりここでの記憶をすべて消されると、

一人でロッジへと戻って行き、

そして、あたしは忽然とロッジから姿を消したことにされてしまった。

あたしが漆黒の肌と筋骨逞しいマサイに変身してしまったことは誰も知らずに…

程なくして、このマサイの村にもあたしの捜索の手が回ったけど、

でも、漆黒の身体にされてしまったあたしは名乗り出る事も叶わず。

あたしはただ小屋の中ですすり泣くしかなかった。

そうして、あたしの身辺が一段落した頃、

あたしは村のある家族に養子として迎え入れられた。

そこで、唯一残っていた以前のあたしの面影を伝える長い髪を剃り落とされ、

そして割礼の儀式も受けたあたしに長老は、

「ベラウ」

と言う名を与えた。

そう、あたしはマサイになってしまったのだ、

そのときに長老はあたしに、

「さぁベラウよ、

 しっかりと村のために働き、立派なモランになるんだ。

 こうして頭を剃ると言う事は、

 無論、お前をマサイにする意味もあるが、

 おまえの場合はマサイの髪を生やすためでもある。

 今度髪を伸ばすときは、ちゃんとマサイの赤毛の固い髪が生え揃うだろう。

 そして、そのときにおまえも女と交わる事が許されるのだ。

 それまではしっかりと耐えるように」

と言う。

あたしは与えられた衣・シュカを抱きしめ、

悲しみを胸に秘めつつ長老の言葉を受け止めるしかなかった。



そして、あの忌まわしい事件から半年が過ぎていた。

夜――

あたしは小屋の近くの茂みに小便にいった帰りにそのままオナニーに耽っている。

実のところ、最近ではあたしは毎夜オナニーをして男の精を放っていた。

最初の頃は、

――こんな太くて長い男根が自分に生えているなんて

と目も向けられなかったが、

小便するたびに次第に慣れ、

今ではソレの存在が当たり前になってきていた。

カリの下を握り締めると、激しく手で扱き上げる。

シュコシュコシュコ…

はっきりいって気持ちいい。

こんなに一点に集中する快感なんて、女だったときは知らなかった。

長老は一度体験すれば、満足するはずだといっていたが、

あたしは確かに男になってしまった事に満足している自分がいることを

否定できなかった。

「くぅぅぅぅ〜っ…」

あたしは、男の快感に浸りながら自分の男根をぼぅ〜っと眺める。

もう何度、これで男の精を吹き上げたのだろうか?

なんとなく、男の精を出せば出すほど深みはまっていっているような気もする。

「ぐぅっ!!」

ブシュブシュッ

とうとう男としての絶頂を迎えたあたしの逞しい男根から男の精が吹き出した。

「はぁはぁはぁ…」

あたしの心の中は快感に浸され、満足感で潤う。

あたしは、すっかり長老の言った通り、

男の精を吹き上げるごとに男になっていっているようだ。

今では、男の精を出すのをあれほど嫌がっていた過去の自分が

ばからしく思えた。

「へへへ…」

いやらしい男の声が自分の喉から漏れる。

あともう一回くらいヌいといてもいいだろう。

ビクッビクッ

あたしのペニスはもう復活してきていて、

再び男の精を放つ準備を整えていた。

それを見ていると、あたしは自分のどす黒い男根の存在が誇らしかった。

多分、あたしの心も、呪術と男の精を毎夜放つことで徐々に、

でも確実にマサイの男になりつつあるのだろう。

最近では、自分の性欲が完全に男のものになってしまっていることに

自分でも気が付いていたから。

だって、昼間でもマサイの女性を見ていると、

あたしのペニスはシュカの中で密かに勃起しているのだ。

シュッシュッシュッ

そんなことを考えていると、また余計に欲情してきたようだ。

あたしは、再び一心に自分のペニスを扱く。

多分、半年前の自分が今の自分を見れば悲鳴を上げるだろうなと思いつつ、

「ぐぅぅっ!!」

ブシュブシュシュッ…

あたしは再び半年前に備わった逞しい男根から男の精を放出していた。



その頃からだろうか、

――もう自分はマサイとしてしか生きれなくなったんだ

という覚悟ができたのは…

そして、自分がナンだという自覚もできていったのだった。

多分、これも呪術のせいなのだろうか?

自分の体に違和感がなくなり、

女に戻りたい…智子と女の子に戻りたいと言う欲求は

次第にあたしの中から消え去って行き、

そして、一人の勇者・モランが誕生した。



おわり



この作品はバオバブさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。