風祭文庫・モラン変身の館






「赤い砂塵」
(最終輪:舞子の変身)


作・風祭玲

Vol.986





「ねぇ…舞ぃ、

 また焼けたんじゃない?」

不意に親友の咲があたしに声をかけたのは

3時間目の体育の授業に備えて更衣室で着替えているときだった。

「えっ?

 そっそうかなぁ」

その指摘にあたしは冷や汗を流しつつも大して気に止めない返事をしてみせると、

「うん、

 確かにこの間よりも黒くなっているよ」

と知美に続いて同じ親友の加奈がうなづきながら話しかけてくる。

あたしの名前は加悦舞子。

みんなからは”舞”って呼ばれている中学3年生。

先日、第一志望だった麗華女子高への合格を果たし、

めでたく15の春を満喫しようとしていたんだけど…



「なによ、なによ、なによ。

 冬にしては珍しい日焼けだなぁっと思っていたけど、

 あたし達に隠れてこっそりと日焼けサロンにでも通っているの?」

「へぇ、

 今度の彼氏って相当色黒の娘が好みなんだ」

その二人の声を聞きつけてワラワラと級友達があたしの周りに集まってくるなり、

一斉にはやし立ててきた。

「違うって、

 彼氏なんて居ないってぇ」

そんな彼女達に向かってあたしは懸命に否定をするものの、

「ねぇ正直に言いなさい。

 どこかで悪い遊びでもしているの?」

心配顔の咲は真面目半分に聞いてくる。

「咲ぃ

 違うってぇ」

それを否定するかのようにあたしは声を張り上げたが、

色白だったあたしの肌は確かに黒く染まっていたのであった。



ピィーッ!

体育の授業はバレーボール。

受験ですっかりなまった体を引き締める。とか言う理由で決まったそうだけど、

ハッキリ言って余計なお世話である。

そんなあたしの意など汲んでくれるわけもなく、

クラスの女子が6人づつのチームに分かれて勝ち抜き戦をすることになり、

あたしは知美と同じチームでコートに立っていた。

「いくよぉ、

 舞っ」

口から白い息を吐きながら咲はあたしに向かってトスを上げてみせると、

「ちょっとぉ、

 あたしにはそんなの無理だって」

そう言いながらネット前のあたしは上げられたボールを目で追いかけ、

グッ

と膝に力を入れた。

美術部のあたしにとって運動は大の苦手、

それを承知であたしにボールをトスしてきた咲を一瞬にらみ付けた後、

タンッ!

思いっきりジャンプをしてみせる。

ところが、

グーン!

「え?」

視界をさえぎっていたネットがあたしの眼下へと潜り込んでしまったのであった。

「うそっ」

突然のことにあたしは驚き、

そして、慌ててボールを叩こうとするが、

スカッ!

タイミングを外したあたしの手は空しく空を切り、

着地と同時にボールはコートの中を転がっていく。

「………」

言いようも無いバツの悪さ感じながらあたしは咲の方を見ると、

「舞ったらすごーぃ!」

と咲は目を輝かせながらあたしに言い寄ってきたのであった。

その途端、

「うわぁぁ、

 すごいよすごい」

「加悦さんってそんなにジャンプできるのなら、

 バレー部に入ればよかったのに」

と他のメンバーも興奮気味に話しかけながらあたしの周りを囲み、

「ねっ、

 ねっ

 もぅ一回飛んでみて」

とはやし立ててくる。

「いや、そうじゃなくて…」

その注文を断りながらあたしは咲を見ると、

「お願いっ、

 飛んでみて」

と目を輝かせていたのであった。



「はぁ…

 なんか散々だったな…」

体育の授業を終えたあたしはため息をつきながら教室に戻るのと同時にチャイムが鳴り、

ガタン!

あたしは自席に付つくが、

パラパラ…

それと同時に目の前の机の上に砂粒が数粒落ちて見せる。

「はぁ…

 もぅ」

最近ではすっかり慣れっこになっているとはいえども

文句を呟きつつあたしは手で砂を払って見せると、

パラパラ

パラパラ

っと続けて落ちてくる。

「何をしているの?」

あたしの様子を見た咲は話しかけてくると、

「砂が…ちょっとね…」

咲に向かって遠慮気味に説明をする。

すると、

「そういえば…

 最近、舞の席のあたりで砂がよく落ちているよね」

と咲は指摘してきたのであった。

「え?

 そっそぉ

 たちの悪い悪戯ね」

それを聞いたあたしは誤魔化すものの、

「そうかなぁ?」

咲は首を捻って見せた。

とその時、

「おーぃ、

 授業を始めるぞぉ、

 進路も決まったからといって、

 ここで手を抜くと高校で痛い目にあうんだからなぁ」

の声と共に数学の教師が声を張り上げて教室に入って来た。

あたしにとって数学は得意科目。

逆に大嫌いで欝そうにしている咲を横目にしながら

あたしはもうすぐお別れとなる教科書などを机に出しページを開くが、

「あれ?」

ふと目にとまった公式が全て意味不明な文字の列に見えてしまったのであった。

実を言うと受験が終わったころからこんなことがよく起きるようになっていた。

しかも教科書はもちろん、

雑誌などを読んでいても書かれていることが理解できなくなってくるのである。

「あれ?

 あれ?

 あたし…」

そう呟きながらあたしは小首を捻っていると、

「昨日の小テストを返すぞ」

と教師の声が響き、

出席番号順に名前が呼ばれはじめる。

そして、あたしの名前が呼ばれて答案を取りに行くと、

教師は一旦あたしを見つめ、

「加悦…

 これはワザとやっているのか?」

とため息をつきながら尋ねてきたのであった。

「え?

 どういう意味ですか?」

その言葉の意味が理解できなかったあたしはキョトンとして見せると、

「麗華女子に受かったからといって、

 手を抜くにも程がありすぎるぞ」

教師は小突く振りをして見せながらあたしに答案を返す。

と同時に

「うそ…」

あたしはその答案に記された点数を見るなり青ざめて見せたのであった。

「そんなに悪かったの?

 舞…」

席に戻ってきたあたしに咲は声をかけてくると覗き込んでくる。

「やっやめてよ、

 咲ぃ!」

それに気づいたあたしは慌てて答案を隠そうとするが、

「えぇ?

 これってどういうこと?

 だって、舞は数学得意じゃぁ」

とあたしの答案を見るなり咲は驚いて見せる。

「ちょちょっと、

 具合が悪かったの…

 だから」

答案用紙を慌てて隠しながらあたしはそう言い繕うが、

でも、あたしの学力は急降下で落ちていたのであった。



「あたし…

 バカになっているのかぁ…

 ひょっとして何かヘンな病気に罹っているのかなぁ」

自宅がある向日葵台行きのバスに揺られながら、

あたしは最近になって急に学力が落ちてきていることを呟いてみせると、

山を登っていく車窓を赤い霧のようなものが漂い始める。

「相変わらずかぁ…」

霧を見つめながらあたしはそう呟くと、

サラサラサラ

サラサラサラ

砂のようなものが窓を軽い音を立てて叩きはじめる。

そう、この赤い霧の正体は砂塵なのである。

そしてその砂によってか、

周囲の景色はすっかり赤茶け荒涼した景色へと変わっていた。

「なんか…別の国みたい…」

荒涼とした景色を眺めながらあたしはため息をつくと、

やがてバスは姿を見せてきたトンネルの中へと吸い込まれていく。

向日葵トンネル。

私が住む向日葵台に通じるルート上にあるトンネルで、

街へいくには必ずこのトンネルを抜けていかなくてはならないのである。

ウォォォン…

真新しいコンクリートの壁に音を響かせながらバスは進み、

フッ

道が下り坂に変わるとバスはトンネルを抜けたのであった。



「ふぅ…」

停車したバスから降りたあたしを待っていたのは、

地面を覆い尽くし舞い上がる赤茶けた砂であり、

その砂が吹き抜けていく街は静まり返っていたのであった。

「あらら…」

朝行く時よりも道路横に積もる砂の量が増えていることにあたしは驚いて見せるが、

しかし、こんな砂に覆われて来ていても誰も街を捨てなかったのであった。

「はぁ、それにしても暑いわねぇ…」

真冬の街とは違って、

ここ向日葵台はなぜか夏を思わせる猛暑であった。

あたしはすぐにコートを脱ぐとマフラーを外しながら家に向かって歩き始める。

「まるで真夏…」

呆れ半分にあたしは歩いていくと、

ポツリ

ポツリ

と行く手に人影が見えてくる。

「………」

道端で座り込んでいる人、

大声で意味不明の歌を歌っている人、

子供のようにはしゃぎまわっている人、

これらの人たちは皆向日葵台の住民でなんだけど、

どういうわけかこんな人たちが増えてきているのであった。

「みんなどうしっちゃったんだろう…」

そう思いながらあたしは歩いていくが、

それらの人たちにはある共通点があるのであった。

それは皆墨を塗ったかのように肌の色が黒くなっていること…

「なんか…気持ち悪い…」

黒く染まってきている自分の肌に不安を感じながらあたしは自宅の玄関のドアを開けると、

「ママ、

 ただいまぁ!」

と声を張り上げる。

ところが、

いつもならすぐに返って来るママからの返事はなく、

「ママ?

 居るの?」

と問いかけるようにしてあたしは靴を脱ぎ。

サラサラサラ…

朝、あれほど掃除をしたはずにどこから入ってきたのか赤い砂が吹き溜まる廊下を進んでいくと、

ダイニングへと入って行く。

すると、

ダイニングに置かれたテーブルに上半身を預けるようにしてママが突っ伏していたのであった。

「ママぁ!」

それを見てあたしは驚きながら声を上げると、

「……あら…舞ちゃん。

 おっお帰りなさい…」

あたしの声に気が付いたのかママは体を起こしあたしの方を向いてみせる。

ところが、

「!!っ」

ママの顔を見た途端、

あたしは思わず息を呑んでしまったのであった。

「どっどうしたの舞ちゃん。

 そっそんな驚いた顔をして」

あたしの表情を見たママは優しく話しかけてくるけど、

「ママの顔…」

と言いかけたところであたしはその言葉を飲み込み、

「ううん、

 なんでもないよ。

 ママ…疲れているんじゃない?

 ちょっと休んだら…」

ママに向かって話した後、

あたしは逃げるようにして自分の部屋へと階段を上っていく、

そして、部屋に入るや否やあたしは鏡に自分の顔を映し出してみたのであった。



「よかった…

 あたしは…まだ大丈夫…」

小麦色からやや黒味が増している程度の自分の顔を眺めながらあたしはホッとしてみせるが、

しかし、漆黒の肌に白い歯が浮かび上がって見せていたママの顔を思い出した途端、

ブンブン!

あたしは思いっきり顔を横に振って見せ、

そして、

「本当にどうしちゃったんだろう…」

と呟きながらあたしは部屋の隅で蹲る。

どれくらい蹲っていたのだろうか、

ンモー

ンモォー

あたしの耳にウシの啼き声が聞こえてくると、

『え?

 ウシ?』

その声に驚いたあたしは顔を上げ、

キョロキョロとしてみせる。

すると、

『うそっ』

あたしの周囲を赤い霧が取り囲み、

目の前の霧の奥で黒い影が蠢いていた。

『なにか…来る?』

蠢く影を見ながらあたしは思わず立ち上がってしまうと、

モォォォ!

さらに明瞭な声でウシの啼き声が響き、

トサッ

トサッ

重い足音と共にウシの群れがあたしの前を横ぎり始めたのであった。

『え?

 なんで?

 どうしてウシが…』

自分の部屋の中に居ると思っていたあたしは

大きな角を振りかざしゆっくりとした足取りで歩くウシの群れに驚いていると、

『とっても素敵な場所だね』

と言う男の子の声が後ろから響く。

『え?』

その声にあたしは驚きながら振り返ると、

ニコッ

あたしの後ろで男の子が白い歯を浮かび上がらせるようにして笑みを見せたもであった。

『だっ誰?

 っていうか、

 なんなのあなたは?

 どこから入ってきたの?

 出て行ってよ、

 ここはあたしの部屋よ』

布地のものは一切何も身につけない黒い裸体を晒し、

まさに土人と言ってもいい身なりの少年を指差しながらあたしは声を上げると、

『くくっ

 何を言っているんだいお姉さん、

 ここは僕の場所だよ』

と少年はあたしに言い、

『あの人が言ったとおりだ。

 ここは最適な場所だね』

と続ける。

『何を言っているの?』

少年をにらみ付けながらあたしは聞き返すと、

『約束したんだ。

 僕たちが住んでいた山と、

 こことを交換するって…

 だから僕達はここに来たのさ、

 みんなもここはとっても住みやすい場所だと言っている。

 くくっ、

 よろしくね』

と少年は答える。

『だっ誰、

 そんなことを言ったのは?』

少年の肩を掴みながらあたしは声を上げると、

『そんなこと、

 どうでもいいだろう。

 それよりもお姉さんの体、

 だいぶボディらしくなってきているね。

 うん、決めた。

 僕、お姉さんの体に住まわせてもらうよ』

あたしに向かって少年はそう告げると、

キラリ

と腰に巻かれている紐から蒼い光を輝かせて見せる。

『うっ』

その光にあたしの目が釘付けになってしまうと、

『ふふっ、

 よろしくね、

 お姉さん』

そう囁きながら少年はあたしに抱きつき、

ズズズッ

っと体の中に入り込んくる。

『いっいっいやぁぁぁぁぁぁ!!!』

自分の体に少年の体が潜り込んでくる感覚に鳥肌をたてながらあたしは悲鳴を上げるのと同時に、

ハッ!

あたしは目覚ましたのであった。

「ゆっ夢?」

どきどきする胸を押さえながら

あたしは朝日が差し込み赤い砂が舞う部屋の中を眺めていると、

「朝…

 やだ、あたし…あのまま寝ちゃったんだ…

 どうしよう…

 お風呂にも入っていないし、

 それにご飯も…」

空腹を感じながらあたしは起き上がるとダイニングへと降りていく、

しかし、ダイニングにはママの姿はなく、

ガランとした部屋があたしを迎えてみせる。

「ママ…は…

 そっとしておこう」

あたしよりも黒い肌に覆われたママの姿を見たくなかったのもあって、

あたしは一人で冷蔵庫を開けてみるものの…

「何も無い…」

開け放たれた冷蔵庫からは食べ物といえるものが何も無かったのであった。

「どうしよう…」

冷蔵庫の前であたしはペタンとへたり込んでいると、

チャラッ

あたしの首と腰に何かが巻かれていることに気づいた。

「え?

 なに?」

不思議に思いながらあたしは着ていた制服を引き上げて、

自分の体に腰に巻かれているものを見た途端、

「これは…

 あの紐…」

とあたしは愕然としながら言葉を失った。



キラリ

あたしの腰で蒼い光を放つもの…

それは、紛れもない夢で見たあの土人の少年が自分の腰に巻いていた蒼い紐と同じものであり、

それがあたしの腰に巻かれていることを見た途端、

「やだやだやだ」

あたしは声を上げながら引きちぎろうとした。

しかし、

よほど強い紐でくくられているのか、

紐はあたしが引っ張っただけでは切れることは無く、

しっかりと腰を飾ってみせる。

「そんなぁ…」

呆然としながらあたしは座り込んでいると、

ンモォ!

今度は庭先からウシの啼き声が響き渡る。

「まさか」

その声を聞いたあたしは急いで立ち上がり、

庭に出た途端、

ンモォ!!

庭に数頭の痩せたウシが立っていたのであった。

「ウシ…

 そんなぁ!?」

土人の少年と共に歩んでいたウシの姿を思い出しながら、

あたしは呆然と立ち尽くしていると、

グゥ…

忘れていた空腹感を覚える。

すると、まるで惹かれるようにしてあたしはウシの元へと向かい、

膝を折り、

その下腹部で垂れているウシの乳首を摘み上げると、

乳首に吸い付いてしまったのであった。

ングッ

ングッ

あたしは無我夢中でウシの乳首にしゃぶりつき、

必死になって吸ってみせるが、

しかし、痩せたウシからはミルクはわずかしか出ず、

程なくして出なくなってしまうと、

ズボッ!

あたしは躊躇いも無く片手をウシの膣の中へと押し込んで見せる。

何でこんなことをするのか判らない、

ただ、”こういうときは、そうすればいい”と言う知識が自然とあたしの頭の中に湧き上がり、

何も疑ずにそれを実行してしまっていたのだ。

すると、

ンモォ…

ウシの声が響くのと同時に、

ジワリ

口の中にミルクの味が広がってきた。

そのときだった、

シャァァァ…

突然ウシがオシッコを始めてしまうと、

「ああぁ」

あたしは急いで流れ落ちるオシッコの中に頭を突っ込み、

その中で顔や頭を洗い始める。

見る見る着ていた制服が尿を含んで重くなってくるのを感じていると、

「何をしているの…」

不意にその言葉が頭の中に響いたのであった。

その途端、

ハッ!

あたしは飛び上がるようにしてウシから離れると、

「あたしって何をしていたんだろう…」

と呟く。

あたしの体はウシのオシッコですっかりズブ濡れになっていて、

「やだぁ、

 オシッコまみれじゃない。

 どうしよう…」

言いながらバスルームへと駆け込んでみせる。

けど…

いくらシャワーのコックを捻っても水は出てはこなかった。

「えぇっ、水が出ないなんて…」

水の出ないシャワーの下であたしは困惑して見せるが、

ふと、

「……あれ?

 いま体を洗ったのに…

 なにあたしは困っているんだろう」

と思ってしまうと気に留めずに家を出たのであった。



バスはあたしを乗せて向日葵台を発ち、

赤い霧を掻き分け学校がある街へと下っていく、

そして、学校の校門をくぐろうとした時、

「舞?」

と咲の声が後ろから響いた。

「あっさっ咲っ

 おっおはよぉ」

彼女の声を聞いたあたしはいつものように挨拶をしようとするが、

しかし、なぜか声が思うように出ず、

声を詰まらせながら返事をしてみせると、

「いっ!」

咲は一瞬驚いたような顔をして見せた後、

「あなた…ほっ本当に舞なの?」

と聞き返した。

「なっなっ何をいっ言っているのっ

 あっあたしよ、

 まっ舞よ」

そんな咲に向かってあたしは声を詰まらせながらも返事をしてみせると、

「ちょちょっと来て」

そう言いながら咲はあたしの腕を掴み、

無理やり学校の女子トイレへと連れていくと、

バッ

トイレの鏡にあたしの顔を映し出させる。

「!!っ」

鏡に映る自分の顔を見た途端、

あたしは声を失ってしまうと、

「これは一体どうしたの?」

と咲は事情を尋ねて来た。

褐色を通り越して墨を塗ったような漆黒色へと変わり、

怖いくらいに黒光りしてみせる自分の顔を見ながら、

「そっそんな

 こっこっこれがあたし?

 いっいっ一体、

 どっどうしちゃったの」

と愕然としてみせると、

「はっ」

あたしはあわてて制服の袖をめくり上げ自分の腕を見るが、

しかし腕の色もすっかり黒くなってしまうと鈍い光を放って見せたのであった。

ペタン!

それを見たあたしは力が抜けたように座り込んでしまうと、

「うっ」

さっきまで心配そうな顔であたしを見ていた咲はいきなり鼻をつまんで見せる。

「…そっそんなににっ臭う…あたしが…」

咲のその姿を見てあたしは尋ねると、

「うっうん…

 なんていうか、

 そのオシッコの臭いが…とっても…」

咲はそう告げると気まずそうな顔をして見せ、

「それに舞っ、

 さっきから言葉がおかしいみたいだけど、

 本当にどうしたのよ」

と聞いてきた。

「そっそれは…」

彼女の問いかけにあたしは返事をしようとすると、

ムリッ

今度はあたしの股間で何かが膨らんだのであった。

「!!っ」

膨らんだだけではなく、

さらに伸び始めたそれの存在に気づくと、

バッ!

あたしはスカートを押さえるが、

ムリムリムリ…

その手の下でそれは確実に伸びているのが判った。

「さっ咲…」

髪の毛をハラハラと落としながらあたしは咲の名前を呼ぶと、

ブンッ

ブブッ

どこで臭いを嗅ぎつけたのか、

あたしの周りをハエが飛び回りはじめる。

そして、

「こっこれまであっありがとう…

 さっさようなら…」

何匹ものハエを集らせながらあたしはそう言うと、

ダッ

あたしは彼女の前から逃げるようにして駆け出したのであった。

もぅここには居られない、

あたしにはあの赤い砂塵が舞う場所こそが相応しいところ…

そう思いながらあたしは走り続け、

気がついたときにはあのトンネルの中を歩いていた。

「ハァハァ

 ハァハァ」

クッ!

と股間から伸びる肉の棒をスカートの上から握り締めながらあたしはトンネルの中を歩いていく、

そして、握り締めるその先端で、

グニッ

グニッ

っと皮が動き始めてくると、

『あぁ、これを思いっきり剥いてみたい』

と言う欲求と、

『だめよ、そんなことをしては』

と言う否定の心がぶつかり合いせめぎ合いながらあたしは歩き続け、

やっとの思いで自宅に戻った時には既に夕暮れになっていた。

『ただいまぁ…』

歩いたことが無かった長い距離を歩き抜き、

フラフラになってあたしが自宅にたどり着くと、

ンモォー

庭先でウシの啼き声が響くあたしの家は、

壁が土を塗りこめたような土壁となり中は砂であふれてていた。

『ママ…居るの?』

恐る恐る声を掛けながらあたしはママの姿を探すと、

『ハァハァ

 ハァハァ

 ウッ

 クゥゥゥゥ

 アァァァァ…』

と言う野太い男の声が奥の部屋から響いてくる。

『誰?』

その声にあたしは警戒しながら部屋に向かっていくと、

奥の部屋では黒い肌を光らせ、

足を投げ出しながら、

盛んに腕を動かしている者の姿が目に飛び込んできた。

『誰っ!

 誰なの?』

その者に向かってあたしは声を張り上げると、

『あっあっあっあら、

 まっ舞ちゃん。

 おっお帰りなさい』

と縮れ毛が覆う頭をあたしの方にむけ、

黒い肌を光らせる裸の男があたしを見るなりニヤっと笑って見せた。

『まっママなの、

 あなたママなの…』

男の股間から伸びる男のシンボルを見つめながらあたしは尋ねると、

『えぇ、そうよ…

 ほら見てぇ、

 ママにも男の人のイリガが生えたのよ、

 凄いでしょう』

と言いながら股間を開き、

クッ!

っと聳え立ち先端が剥けきった黒い肉の棒をあたしに見せつける。

『やめてぇぇぇ!』

それを見させられたあたしは目を塞ぎ声を上げるが、

『うふっ、

 舞ちゃんのお股にも生えているんでしょうイリガが…

 さぁ、ママに見せなさい』

と言うなりユラリと立ち上がると、

チャラ…

首と腰に巻いた紐から蒼い輝きを放ちながら、

背後からあたしに抱きつき、

股間に手を入れてくる。

『やめて、ママ!』

ギュっ

と肉の棒を握り締められながらあたしは声を上げるが、

『まぁ…

 とっても立派…

 いつの間にこんなに逞しいものを』

あたしの耳元でママはそう囁くと、

グィ

グィ

っと握り方に強弱を付けてくる。

『あぁぅ』

ママの手技に感じてしまったあたしはつい腰の力が抜けてしまうと、

そのままお尻を床につけてしまう。

『ふふっ、

 イリガを握られて感じているんでしょう』

そんなあたしを見透かすようにママはそういうと、

あたしの前に回りこみ、

グッ

と股を開いてみせると、

『さぁ、ママのイリガを握ってぇ』

そう囁きながらあたしの手を掴み聳え立つシンボルへと導いていく。

そして、無理やりあたしにシンボルを握らせると、

『あんっ、

 舞ちゃんがあたしのイリガを…

 あはっ、

 感じちゃう』

ママは体をよじりながらそう訴え、

『じゃぁ、ママも舞ちゃんのイリガを握ってあげるね、

 さぁ、足を開いて』

と言うなり、

ママはあたしの足を強引に開かせるとスカートを捲り上げ、

『まぁ』

関心するような声を上げながら、

ギュっ

っとあたしのシンボルを握ったのであった。

『あうっ!』

ママのオチンチンを握りながらあたしは声を漏らしてしまうと、

『ふふっ、

 まだ皮を被っているのね、

 でもこうするとね、

 もっと気持ちよくなれるのよ』

そう言いながら、

グッ!

っとママは手に力を込めると、

プリュッ!

まるで押し出されるかのようにして先端の皮が剥けてしまい。

ツルリとした肉の塊が飛び出したのであった。

『あうっ!』

剥けるのと同時に感じた快感にあたしは声を上げてしまうと、

シュッ

シュッ

っとママは握る手を上下に動かしはじめる。

ビクッ!

ビクビクビク!

『ああっ!』

オチンチン全体が痺れてくるような味わったことの無い快感にあたしは声を上げてしまうと、

『何をしているの、

 舞ちゃんの手が止まったままよ』

とママは注意する。

『うっうん…』

体を小刻みに震わせながらあたしはママのオチンチンを握る手を動かし始めると、

『あうんっ、

 んっ、

 んんっ』

ママは堪えるような顔をあたしに見せ、

そして、黒い肌を汗で光らせ始めた。

『まっママ…』

そんなママに向かってあたしは話しかけると、

『舞ちゃん。

 あたし達は何度出してもいいのよぉ

 だから、思う存分に出しなさい』

と言ってくる。

『出すって…

 何を…』

その言葉を聞いてあたしは聞き返すと、

『白いオシッコに決まっているでしょう、

 もぅママはいっぱい出したのよ、

 でも、まだ出るの』

と言いながらママはあごを上に上げると、

『あぁっ、

 でっ出る出る出る』

とうわ言のように呟いた後、

ウッ

一瞬、体を強張らせると、

シュッ

シュシュシュッ

あたしに向かって生暖かいものを吹き上げたのであった。

『うっ』

容赦なく降りかかってくるそれにあたしは顔を背けてしまうと、

ムワッ

とした青く生臭い臭いがあたしを包み込んでくる。

『うっ、

 臭い…』

言いようも無いその臭いを嗅がされたあたしは鼻をつまんで見せるが、

『さぁ、

 舞ちゃんも出すのよ、

 出しなさい。

 出さないと何度でも舞ちゃんに掛けるわ』

と言いながらママはあたしのオチンチンを握る手の動きを早めて見せる。

そして、

『うっ』

ビリッ!

ママの執拗な責めのせいか、

あたしの股間から奇妙な感覚が走ると、

ジワジワジワ…

っと熱いものが溜まり始め、

そして、それはオチンチンの中を暴れ始めたのであった。

『やめて、ママぁ

 それ以上オチンチンを扱かないで、

 じゃないと、

 あたしが、

 あたしがあたしでなくなっちゃう』

あごを上に上げてあたしはそう懇願するが、

『さぁ、

 出しなさい。

 思いっきり』

そう声を上げてママはあたしのオチンチンを握り締めた。

その途端。

『…何をためらっている。

 出すんだ。

 僕の精を思いっきり吹き上げるんだ。

 それが君の勇者の証』

と言う少年の声があたしの頭の中で響き、

同時に

『あっ』

あたしの中で何かがはじけてしまうと、

プッ!

ププッ

ビュッ!

シュシュシュシュッ!!

あたしは思いっきり白いオシッコを吹き上げてしまったのであった。



ンモー

モー

荒れ果てた道をウシの群れが進んでいくと、

シッ

シッシッ

あたしは手にした棒で巧みにウシを操っていく。

赤い霧はさらに酷くなり、

バスはもぅこなくなっていた。

あの日からどれくらい経ったのかは判らない。

なぜって、

今のあたしはまともに数を数えられなくなっているから、

だから、学校には行けず、

毎日こうしてウシを追っているのである。

既にあたしの肌は真っ黒に染まりきり、

それどころか筋肉が逞しく盛り上がっていた。

カラン

不意にあたしは手にしていた棒を手放すと岩陰に潜り込み、

シュッシュッ

っと伸びきったイリガを扱き始める。

『さっき出してからそんなに経ってないはずなのに…』

そう呟くものの、

あたしのイリガの根元には白いオシッコが溜まりきり、

早く出せを訴えてくるのである。

そして、

『はぁ…

 はぁ…

 お願い…

 パパぁ…早く帰ってきてぇ、

 じゃないと、

 舞子…

 どっ土人になっちゃよぉ』

海外出張で留守にしているパパを呼びながら、

あたしは勇者の証を立てたのであった。



おわり