風祭文庫・モラン変身の館






「ボディの条件」
(第2話:ムンバの覚醒)


作・風祭玲

Vol.910





ボディ族の小屋に置かれた1枚の鏡に映るあたしの姿…

だけどその姿は黒い肌に蒼く輝く飾り紐を輝かせ、

ギョロリと白目を浮かせるボディ族の男と変わらない姿であり、

頭には長く延びたストレートの髪ではなく、

縮れた毛が盛り上がっています。

いまのあたしを見て誰が元の姿を思い起こせるでしょうか、

あたしはボディ族の男になってしまったのです。

そんな自分の姿を見せられたあたしは悲しい気持ちになりますが、

でも、

ジワジワジワ

急に股間が充血し始めてくると、

グッググググググ…

股間から男の性器がゆっくりと鎌首をもたげ上げはじめたのです。

そして、

トロ…

その先から透明な粘液を流し始めたとき。

あたしを犯していた男の手が伸び、

あたしの性器を握り締めたのです。

「(ひゃっ)」

自分の体から突き出しているものを握り締められるその感覚に

あたしは飛び上がりそうになりましたが、

シュッシュッ

シュッシュッ

男の手はお構い無しにあたしの性器を扱き始めました。

「(あんっ

  やだ、

  これって…

  あぁ、

  でも、気持ち…

  気持ちいい…)」

肛門を犯される激痛は既に消えているあたしは、

初めて感じる不思議な感覚に翻弄されます。

そして、

ピキッ!

またしても頭の中を刺激が駆け抜けて行ったとき、

ジワ…

股間の奥になんとも言いような力が暴れ始めたのです。

「(あぁ…

  なに、この感覚…)」

まるで硬く閉ざされた殻を破らんがごとく暴れる力を感じ取るのと同時に、

「はっはっはっ」

背後の鼻息が一際に荒くなると、

「ムンバぁ…

 イク時は俺と一緒だぜ」

というハッキリと判る男の声が響いたのです。

「え?」

思いがけないその声にあたしは驚きますと、

ピキッ!

また頭の中を何かが駆け抜ていきます。

と同時に、

ビクビクビク!!!

あたしの体が大きく痙攣をすると、

ビシーン!!!

強烈な快感が股間から頭に向けて抜け、

ビュッ!

シュシュシュッ!!

股間から熱い何かが一気に噴出してしまったのです。

立ち上ってくる青臭く生臭い匂いがあたしの鼻をくすぐる中、

「うっおぁぁぁ」

背後の男が大きな声を張り上げて身体に力が入ると、

ジワジワジワッ…

あたしの体の奥に熱いものが注がれていきます。

「あっあっああぁぁぁ…

 あぁぁぁぁ…」

思うように声が出なかったあたしの口に声が戻ると、

腕も足も動くようになって来ました。

それらを感じながらあたしは前に置かれた鏡を見ると、

鏡の中には黒い肌を汗で輝かせて重なるボディ族の男が二人の姿が映り、

大きく股を開いている男の股間には、

黒い男の手に握られた男性の性器があり、

ジュブジュブジュブ…

その性器から白濁した粘液がまるで溶岩の如く流れ出ていたのでした。



ンモー

静まり返っていた村に牛の啼き声が響き渡ると、

「うっ…」

あたしは目を覚ましました。

「ここは…」

寝ぼけ眼であたしは首を動かし周囲を眺めると、

どこかの小屋の中でしょうか、

大きく曲がった木の柱と、

何層にも塗り固められているであろう土の壁などが目に飛び込んできます。

「あれ?

 なんであたし…

 こんな所にいるんだろう…」

そんな壁を見ながらあたしは身体を起こそうとしたとき、

ヒヤッ…

外から吹き込んできた冷たい風はあたしの足の先から腿、股間、胸、首の順に抜け、

そして、最後に顔をやさしく撫でて行くと、

スゥ

と離れていきます。

しかし、その風の一挙一動があたしの肌を敏感に刺激し、

それらの刺激はあたしが裸であることを教えてくれると、

「え?

 あたし…

 裸なの?」

ようやくあたしは何も身に着けていない裸で居ることに気がついたのです。

そして、慌てて自分の腕を見ると、

せまい入り口から入ってくる光に照らし出されたあたしの腕は、

炎に焼き焦がしたかのような黒檀色で

赤茶けた埃が肌の上にこびりついていました。

「なっなにこれぇ?

 なんで、

 どうして…」

真っ黒にな自分の腕を見ながらあたしは困惑していると、

ズキッ!

今度は肛門が痛み始めました。

「うっ

 お尻が…痛い…」

強い痛みを一度発した後、

シクシクと痛み続けるその痛みを感じていると、

あたしの頭の中に昨夜のことが思い出され始め、

ハッ!

あることに気づいたあたしは周囲を見廻しました。

すると、

壁に置かれた一枚の古びれた大きな鏡があたしの姿を映し出していたのでした。

その鏡をジッと睨みつけながら、

あたしは這いずりながら鏡に寄っていくと、

鏡はいまのあたしの姿を映し出します。

「そ、そ、そ、そんなぁ…

 これがあたし…なの」

鏡に映る自分の姿を見た途端、

あたしは愕然としながら、

ペタン、

と座り込んでしまいました。

そう鏡にはチリチリに縮れてしまった髪の毛。

眼下が突き出し厚ぼったくなった唇。

筋肉で膨らんだ胸板。

田の字に刻まれた腹筋。

股間からは男の性器が伸び、

長い手足、

そしてそれらを包む漆黒の肌と、

その肌を彩る蒼い飾り紐…

鏡に映っているのは間違いなく、

この荒涼とした大地で裸の姿で生きるボディ族の男だったのです。

それと同時に股間から下がる男の性器からあたしは男としてイカされ、

あろうことか男の精までも噴出してしまったことを思い出すと、

「ひやぁぁぁ!!!」

思わず悲鳴を上げ、

「いやぁぁ!

 こんなのあたしじゃないっ

 違うっ

 戻して、

 元のあたしの姿に戻して!」

変わり果てた自分の姿から目をそらして泣き喚きだしたのです。

夢なら忘れてしまいたい。

早く目覚めていつもの生活をしたい。

そう思いながらあたしは近くにあった大振りの樹の枝を持ち上げると、

忌々しい自分の姿を映し出す鏡を割ろうとしましたが、

「やめろ、ムンバ!」

あたしの声に気がついたのでしょうか、

昨夜あたしのお尻を犯したあのボディ族の男が小屋に飛び込んでくるなり、

後ろからあたしを抱き止めたのです。

「ひっ!

 いやっ

 離して、

 離してよ!」

男の肌とあたしの肌が密着し彼の体温が直接感じながら

あたしは手足をばたつかせて抵抗をすると、

「やめるんだ、

 やめるんだ、

 ムンバ!」

と彼はあたしに言うのです。

「ムンバ?

 ムンバって誰よ、

 違う、

 あたしはそんな名前じゃない」

話しかけられた言葉にあたしは反論をしますと、

「お前、

 まだムンバではないのか、

 僕のこと、

 思い出せないのか?」

彼は困った顔をしながらあたしを見ます。

「なによっ、

 気安く話さないでよ、

 あたし、お前なんか知らない」

そんな男にあたしは言い返すと、

「なぁムンバ、

 思い出してくれよ、

 僕だよ、アカバだよ」

と男は言い、

まるで信じていた人から裏切られたような表情をしたのです。

「いやぁ、

 やめて、
 
 見ないで、

 そんな目であたしを見ないで」

男のその目を見た途端、

あたしは男を突き飛ばしてしまいますと、

その場に背中を丸くしながら伏せ、

「戻してよっ

 あたしの身体を戻してよっ」

と訴えました。

だけど、

「僕にそんなこといわれても…

 ムンバ…

 お願いだ、

 思い出してくれ、

 これまでのことを」

となおも話しかけてきます。

「思い出せって?

 何を言うの?

 第一、あたしはそんな名前では無いわ、

 あたしは麗…

 あれ、

 あたしはレ…

 あれ、

 何で名前を思い出せないの?」

なぜか咄嗟に自分の名前を思い出せなく、

幾度も名前を叫ぼうとして声を詰まらせてしまいます。

「うそぉ、

 なんで、名前を言えないのよ」

そんな自分にあたしは次第に苛立ってきたとき、

「麗華ぁ、身体の具合はどうだ?」

と小屋の外から祐二の声が響いたのです。

「はっ

 そうよ、

 麗華よ、

 あたしの名前は麗華よ」

祐二の声に助けられてあたしは男に向かって自分の名前を言い、

「祐二ぃ!」

彼の名前を呼びながら小屋の中から飛び出そうとしました。

ですが、

「!!!っ」

一歩足を出した途端あたしはあることに気づくと、

キュッ

身体は見る間に硬くなり

ガタガタと震えはじめだしのです。

そして、

「どっどうしよう…

 あたし、

 男に…

 ボディの男になっちゃった…

 こんな姿、

 祐二に見せられない…」

昨夜、小屋の前で別れて以降、

祐二はあたしを助けに来なかったことは考えずに、

あたしは自分が黒い肌を晒すボディ族の男になってしまったことを考えていると、

一歩も進み出ることは出来なく、

またしても座り込んでしまったのです。

すると、

「麗華、

 どうした?

 まだ体の具合が悪いのか」

と言いながら、

サクッ

人影が小屋の中に入ってきました。

「ひっ!

 いやぁ、

 みっ見ないでぇぇっ!」

その陰があたしの背後に立ったのを見た途端、

あたしは平たくなってしまった自分の胸を黒檀色の手で隠しながら悲鳴を上げたのです。

その途端、

「うわっ」

そんなあたしの姿を見てか祐二は驚いた声を上げて、

その場に立ち止まってしまいました。

「アッチ行ってぇ

 お願いだから、

 あたしを見ないで」

チリチリに縮れてしまった髪が覆う頭を祐二に向けて、

あたしは声を張り上げて請うと、

「ふっ、

 いまさら何を恥ずかしがって居るんだよ、

 このクロンボが」

と言う蔑んだような声が振ってきたのです。

「え?」

祐二の思いがけないその言葉にあたしは慌てて顔を上げると、

ピキッ!

何か電気のようなものが頭の中を流れ、

「!!っ」

その感覚にあたしは思わず目を伏せるが、

直ぐに見直すと、

ジッとあたしを見下ろしている祐二の姿がありました。

「ゆっ祐二…

 いまなんて…」

彼の口から出た言葉が信じられないあたしは聞き返すと、

「クロンボって言ったんだよ、

 それともドジンって言った方が良いかなぁ?」

口元を微かに歪ませて祐二はあたしに向かってそう言い、

そして、ゆっくりとあたしのそばに来ると、

ワシッ

縮れ毛が覆うあたしの頭を鷲づかみにしながら腰を下ろすと、

「まだ日本語がしゃべれるみたいだな」

とあたしに話しかけました。

「しゃっしゃべれるって、

 当たり前でしょう、
 
 だってあたしは…」

そんな祐二にそう言い返しかけたところで、

ピキッ!

またしてもあたしの頭の中を電気のようなものが流れると、

その感覚にあたしは一瞬顔をしかめます。

すると、

「28+13の答えを言ってみろ」

突然あたしに向かって意地悪そうに祐二は尋ねたのです。

「え?

 なによっ、

 そんなの簡単じゃない、

 28+13でしょう」

こんな小学生にでも判るような問題をなぜ祐二が言ってきた意味も考えずに

あたしは即答しようとしますが、

しかし、

「あ?

 あれ?
 
 えっと28+13…ってあれ?」

なぜかあたしはその答えを答えることが出来なく、

幾ら考えてみても2桁の計算をし始めたところで判らなくなってしまい、

数を数えることすら出来なくなっていたのです。

そしてついに、

「1・2・3…」

と指折り数えはじめますが、

どうしても10を越えると数の意味が判らなくなってしまい、

何度も何度も数を数え直すあたしを祐二は呆れた表情で見ながら、

「いいか、

 良く聞けクロンボ。

 お前には両手の指以上の数の概念がないんだよ、

 だからこう言うときには、

 たくさん。

 って答えるんだ。

 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10…たくさん。だ」

とあたしに告げたのです。

「たくさん…

 10から先はたくさん…」

祐二の言葉をあたしは復唱すると、

ピキッ!

あたしの頭の中で何かが弾けました。

「うっ!」

これまでよりも強く、

痛いと言うより、

痺れると言った方が近いその感覚にあたしは思わず頭を押さえると、

大事なモノを失ったような感覚に陥り。

そして、暫くして頭の中が落ち着いてくると、

「おいっ、

 クロンボ。
 
 まだ俺●言葉△□●か」

と言う祐二の声が響きました。

だけど、祐二が言った言葉のいくつかはその意味が判らず、

「祐二…

 いまなんていったの?」

と聞き返しますが、

「○××△□」

再び祐二の口が動き、

あたしに向かって話しかけた言葉をあたしは理解することは出来ませんでした。

「祐二、
 
 やめてよ、

 あたしをからかわないでよ」

そんな祐二にあたしは真顔で言い返しますが、

「●●×△△・・・・」

あたしに向かって話しかける祐二の言葉は

聞いたことがない外国の言葉のようで、

あたしには全く理解できませんでした。

「お願い、祐二、

 あたしに判る言葉で話して」

そんな祐二に向かってあたしは涙を流しながら懇願すると、

「ふぅ」

祐二は大きく溜息をつき、

「ムンバ、

 俺の言葉がわかるか」

と今度はあたしの判る言葉で話しかけてくれた。

だけど、その瞬間、

ピキッ!

またしてもあたしの頭の中を電気のようなものが駆け回りますが、

でも、頭の刺激に幾分馴れてきたあたしは気にせずに、

「判るわよっ、

 変なことを言って脅さないでよ」

と言い返し、

「それよりも祐二さん、

 あっあたし…
 
 こんな身体にされてしまったのよ」

いつの間にか恥ずかしさを感じ無くなってしまったのか、

漆黒の肌が覆い異様に長い手足と

股間には男性の性器・オチンチンが下がる身体を見せたのでした。

すると、

「へぇ、

 さすがはボディ族だな、

 身長は2mはあるな、
 
 それにチンコもデカイじゃないか」

とあたしの身体を見た祐二は冷やかします。

「ふざけないでよ、

 ねぇ、どうしよう、

 あたしこんな姿では帰れないよぉ」

そうあたしは訴えると、

「帰る?

 帰るってどこにだ?」

祐二はとぼけたのです。

「どこにって、

 決まっているでしょう」

そんな彼の姿にあたしはカチンとしながらも声を荒げると、

「何を言うんだお前はボディ族だ。

 そして、ここはボディ族の村。

 お前が帰る場所はこの村なんだよ」

と祐二は言います。

「そんな…

 あたしがボディ族だなんて…

 祐二、

 本気でそう思っているの、

 あたしは…麗…

 あれ?

 また、

 また思い出せない。

 あたしは…」

またしても名前を言えなくなってしまったあたしは縮れ毛の頭を掻き毟りながら、

必死になって名前を言おうとします。

しかし、いくら思い出そうとしても、

いくら切っ掛けを掴んでみても、

慣れ親しんだはずのあたしの名前は陽炎の如く逃げてしまい、

その代わりに記憶の中に浮かんでくるのが、

ムンバ…

ムガガ・ムンバという名前でした。

「違うっ

 違う」

口の中にまで出てくるその言葉を押し込めてあたしは首を横に振るが、

「素直になれよ、

 ムガガ・ムンバ、

 お前はボディ族の男なんだよ」

と祐二は囁きながらあたしの肩を叩きました。

「祐二…

 あなた、

 あたしがボディ族になってしまって構わないって言うの?」

そんな祐二に向かってあたしは聞き返すと、

スッ

祐二は腰を上げ、

「悪いが俺のことを下の名前で呼ぶようなクロンボの知り合いは居ないんだよ」

と言うと、

「祐二ぃ…」

それを聞いたあたしは驚いた目で見上げました。

すると、

「お前、気づいていないのか、

 いま俺達はボディ族の言葉で話しをしているんだよ、

 俺がお前に合わせているんだ。

 判ったか」

と突き放すように言ったのです。

「うそっ、

 この言葉がボディ族の言葉?」

彼に言われたその言葉にあたしは愕然とすると、

「さっき、そのアガバとお前は話をしていたじゃないか、

 アガバはボディ族の言葉しか話せないんだよ」

祐二はそう言いながらあたしの肛門を犯したあのボディ族の男を指さします。

「そんな・・・」

もぅ何もいえませんでした。

数を数えられなくなったあたし、

ボディ族の言葉しか話せなくなったあたし、

そして、黒い肌が覆う肉体のあたし、

もはやあたしがボディ族の男で無い証なんてどこにも無かったのです。

あたしはガックリと膝を着くと、

チャラッ

腰や首周りを飾る飾り紐が微かに音を立てます。

布の類は一切身に纏わず、

むき出しの性器を晒して生きる野生の部族…

その部族の男としてこれから生きなければならないことに、

あたしは言いようも無いショックを受けました。

「そんなぁ、

 どうして、

 どうしてこんな目に…」

差し込んできた日の光を浴び、

体が暖められてくると強烈な体臭が立ち上ってきます。

その臭いの中、

あたしは絶望に打ちひしがれていると、

「話は終わったか」

としわがれた声が響きました。

「あなたは…」

その声が響いたほうを見たあたしは、

そこにあのボディの老人が立っているのを見つけると、

「おっお願いです、

 あたしを、

 あたしを元の姿に戻してください」

泣き叫びながらその足元に縋りましたが、

「何を言い出すのだムンバよっ、

 わが秘術によって蘇ったばかりのお前が悲しいことを言うんじゃない」

と嗜めたのです。

「それってどういうことですか?」

あのボディ族の男も祐二もあたしのことをムンバと呼び、

そして、あたしの頭の中にまで浮かぶ名前告げた老人に意味を尋ねると、

「ふむ、

 まだ思い出せないのか、

 お前はこのボディの村で育ち、

 そしてボディであることを誇りにしていた勇者なのだ。

 だが、病に倒れ、

 アカバに看取られて息を引き取ったところを、

 このワシが秘術にてお前の魂をボディの誇りであるお前のイリガに繋ぎとめ、

 そして昨日、お前の魂を宿したイリガと

 異国の者がよこした贄、

 さらにアガバの精を用いて復活の秘術を執り行ったのだ」

とあたしの知らないところで取り交わされた事情を話したのです。

「…異国の者がよこした贄…

 ってあたしのこと?」

それを聞いたあたしはスグに祐二を見ると、

「まぁそういうことだ、

 ムンバ」

悪びれることなく祐二はあたしに言いました。

「そんな…

 あたしを贄って…

 じゃぁ、あたしはどうなるの?

 ムンバとか言うボディ族にされたあたしは!」

祐二に向かってあたしは食って掛かりますと、

「煩いなぁ、

 俺に寄るんじゃないよ」

そう言いながら祐二はあたしを突き飛ばすと、

「あぁっ」

あたしは転げてしまいました。

「酷い…

 何て酷いことをあたしにするの?

 祐二はこんな酷いことをしてなんとも思わないの?

 心が痛まないの」

這い蹲りながらあたしはそう訴えますが、

「なぁ、

 ムンバっ

 なんでお前のようなクロンボにここまで言われるのか、

 理由がわからないんだけど」

ととぼけてみせます。

「あっあたしはムンバなんかじゃないっ」

祐二に向かってあたしが怒鳴り返すが、

しかし、あたしの口からムンバという言葉が出た途端、

ピキーン!

またしてもあたしの頭の中に電気が走ると、

頭の中にある光景が浮かんだのです。

それは…

裸のあたしがそこに居るアカバと共に村のウシの世話をしている光景だったのです。

「アカバ…」

頭の中に浮かぶその光景を見ながらわたしはそう呟くと、

「ムンバ?」

とこれまで様子を見ていたアカバがわたしに声をかけてきました。

「アカバ…

 アカバ…

 あたし…ムンバ…

 ムンバがおっ俺?」

アカバと自分を交互に指差しながら、

わたしは混乱してきた記憶を整理し始めます。

だけど、

まるで湧き上がってくる湧き水の如く、

次々とわたしの頭の中にこのボディの村で体験してきた記憶が蘇ってきます。

旱魃に苦しみはるか遠くの泉まで水汲みに行った事、

任されたウシの一頭が居なくなり、

アカバと共に何日もかけて探し回ったこと、

夜、アカバと抱き合い、

そして互いに愛し合ったことなど…

ムンバの記憶が次々わたしの頭の中で展開して行くのです。

そして、わたしはムンバなのか、

それとも違う者のかが判らなくなってきたとき、

ムク

ムクムクムク!

これまでダランと垂れていた性器が急に起きだし、

そして硬く伸びてきたのです。

「はは…

 何だムンバ、

 真っ黒なチンポを勃たてて、

 なにかエッチなことでも考えたのか」

そんなわたしの姿を見て祐二は笑いますが、

「あぁぁあ…」

わたしは声にならない声を上げながら、

右手を硬く伸びているそれに向けると、

ギュッと掴み、

シュシュ

シュシュ

と扱き始めました。

判りません。

何でこんなことをするのか、

ただ、

ただ、これからわたしがすることをこの者に見てもらいたい。

その思いがこの行為に走られていることは確かでした。

シュッシュッ

シュッシュッ

「あぁぁぁ

 うぅう」

唸り声を上げながら、

わたしは右手は性器を、

左手は小さくなってしまった乳首を弄ります。

そして、その行為を続けていくうちに、

ピキッ

ピキッ

ピキピキ

頭の中で幾度も電気が走り、

その度にわたしはムンバへとなって行きます。

目の前でわたしを見ながら笑顔を見せている人の名前も、

その人とわたしがどんな関係だったのかも消えていき、

わたしはただ震え立つ性器・イリガを扱いているのです。

すると、

「ムンバ!」

様子を見ていたアカバがわたしの前に来ると、

向かい合わせになって腰を落とし、

そして、同じようにイリガを扱き始めました。

男同士の愛の表現、

思い出します。

アカバとわたし、

二人だけのときは決まってこうしてイリガを見せ合い、

そして、扱きあうのです。

アカバの手がわたしのイリガを握ります。

すると、それを合図にわたしも自分のイリガから手を離し、

アカバのイリガを握り締めます。

シュッシュッ

シュッシュッ

お互いにお互いのイリガを扱きあい。

わたしとアカバは絆を確かめ合うと、

そっと唇とあわせました。

何もかも思い出しました。

わたしとアカバは結婚していたのです。

ボディ族では男と女は別々の村に住んでいるのですが、

時にはあたしたちのような男と男の婚姻もあるのです。

そう牛飼いのムンバとアカバの二人は男同士の夫婦だったのです。

「どうやら、全てを思い出したみたいだな、

 まっこれで麗華が消えて無くなれば、

 俺にとっては万々歳だ、

 あばよっ

 達者でな…」

イリガを扱き逢うわたし達に男はそう話しかけますが、

でも、その言葉はあたしの耳には入らず、

さらに激しく扱きはじめました。

そして、

「あぁぁぁ」

「うぅぅぅ」

わたしとアカバは共に一際高く声を上げると、

ビュッ!

シュシュシュ!

それぞれの胸に向けて熱い精液を吹き上げてしまったのです。

ボディ族の男として…



ンモー

大きな角が特徴的なセブウシがゆっくりとボディ族の村から出てくると、

黒い肌に覆われた裸体を誇らしげにして、

わたしとアカバはそのウシの後をついていきます。

裸の身体に身に着けているものは、

青く輝く石を繋いで作った飾り紐を腰と胸元、

手首に巻いているだけです。

無論、これらはわたしたちが二人で作ったものです。

二人の絆を身体に記してわたしたちが村を後にすると、

一台のクルマもまた村から離れていきました。

あの人は一体どこに行くのか判りません。

ただ、あたしは砂塵をあげて去っていくクルマをアカバと共に見送っていたのでした。



後日。

わたしが目覚めてからどれくらいの日が過ぎたのでしょうか、

ある日、ウシを連れて村に戻ると、

男と女の異邦人が村を訪れていました。

木の棒を杖代わりに持つ女ははじめてみる顔ですが、

でも、男の方はどこかであったような気がします。

すると、男は女の肩に手を添え、

あたしの方を指差して何かを言っています。

時々笑い声が聞こえるので何か楽しい事を言っているのでしょうか、

そんな二人にあたしは笑顔を見せ、

さらに誇らしげに自分の体を見せつけると、

「きゃっ」

白い肌の女は小さく悲鳴をあげました。

「何を騒いでいるんだか」

そんな二人を横目にわたしは小さく笑うと、

「きっと僕たちの姿が珍しいんだろう」

と呆れた表情でアカバは返事をします。

「珍しい?
 
 ボディのこの姿がか?」

その言葉にわたしは不愉快になりながらも、

「ふんっ、

 ボディの男はこれで十分だ」

と言いながら逞しい裸体の身体を見下ろしたのでした。



おわり