風祭文庫・モラン変身の館






「ボディの条件」
(第1話:連れていかれた村)


作・風祭玲

Vol.909





「うわぁぁ…

 本当に地平線まで見えるのね」

結婚3年目となるその記念の日、

あたしはアフリカの大地に立っていました。

「どうだ?

 凄いだろうこの雄大な景色…

 こんなところで悠々と暮らせたらいいとは思わないか」

そんなあたしに誇るかのように夫・祐二は腕を大きく広げ、

広大なサバンナの光景をバックにて声を張り上げて見せると、

「ちょっとぉ、

 そんな大声を出さないでよ」

思いがけないその大声にあたしは周囲を気にしながら嗜めますが、

「ばーか、

 何を言っているんだよ、

 こんなところで声を張り上げても

 聞いているのは野生の動物と、

 ほら、あそこを歩いているマサイぐらいなもんだよ」

祐二は悪びれることなく笑い、

そして、遠くの木立からこっちを見ている草食獣と、

朱染めの衣を纏い槍を担いで歩く数人のマサイ族の人たちを指差します。

「そっそれはそうだけど」

その指摘にあたしは少し恥ずかしく感じながら言い返しますと、

「さて、この場所も飽きたしクルマに戻ろうか」

祐二はあたしの肩に手をかけ、

後ろに止めてあるサファリカーへと導いてくれました。



事の発端は夫である祐二からの

「なぁ、麗華、

 これまで結婚記念日に出かけたことは無かったよな、

 今度の結婚記念日は思い切ってどこか旅行に行かないか?」

と言う言葉でした。

それを聞いたときあたしはてっきり国内の温泉旅行だと思って頷きましたが、

でも、彼が連れ出したのは国内の温泉どころか、

外国の…しかも遠く離れたアフリカの大地だったのです。

「おいっ見えるか、

 ほらっ、あそこに象が居るぞ、

 TVで見るようにうじゃうじゃ居るわけじゃないけど、

 でも、こうやってクルマを飛ばせば、

 そこかしこに居るじゃないか」

ハンドルを握る祐二はそう言いながら

野生動物を見つけるたびにあたしに説明をしますが、

「そっ、そうね」

そんな彼の言葉にあたしは頷いて見せるだけです。

確かに結婚して以降、

祐二は仕事仕事であたしを余り構ってくれませんでした。

それ故にいまだ子供が授からず、

帰省をしますと両親からは矢のような催促が…

無論、判っています。

顔立ちはともかく、

胸のラインや腰のラインなど、

女としてそれらが余りにも貧弱であること、

そんなあたしの姿を見ては

殿方は己を奮い立たせることなど無理に決まっています。

あたしを祐二は旅行に誘ってくれた。

それだけでもあたしは嬉しいのです。

そう思いながらあたしは隣の祐二を見ていました。



アフリカに来て迎えた3日目の朝のことです。

「え?

 ボディ族の村…ですか?」

「あぁそうだ、

 ちょっと離れているけど、

 この辺に住んでいるマサイなんかよりもっと原始的な生活をしている部族だよ、

 面白そうだから行って見よう」

朝食を食べているあたしに

祐二はボディ族という野生部族が住む村に行くことを告げると、

「8時には出るぞ」

と言い残してさっさと席を立って行ってしまったのです。

「もぅ、

 自分勝手なんだから」

そんな彼の後姿を見ながらあたしはふくれっ面をして見せますが、

でも、こうして誘ってくれるのは彼が常にあたしを気にかけている証拠でもあり、

そして、あたしに甘えている姿でもありました。

あたしと祐二が出会ったのは4年前、

お見合いの席でした。

父の会社の若手社員ということで、

どんな人なのだろうかと少々不安にも思いましたが、

でも、実際に会って見ますと、

とても気配りの上手な方で、

話し方も気さく、

そして、なによりやる気満々の方でした。

ただ”女性に手が早い”と悪い評判もあることを後に母から聞きましたが、

でも、父の強い勧めもあり、

”この人ならやっていけそうだ”

と感じたあたしは彼との結婚を承諾したのでした。

それから1年ほどは

あたしたちは幸せな日々を過ごしたのですが、

でも、1年目の結婚記念の日は祐二の浮気が発覚し、

険悪な雰囲気の中で迎えてしまったのです。



「すみません」

見かねた会社の方からの通報でコトの詳細を知ったあたしの前で、

祐二は床に頭をつけてひたすら許しを請いました。

無論そのはずです、

もし、このことがきっかけとなって離婚となってしまったら、

祐二は会社には居られませんし、

これまで彼が築いてきたものが一気に瓦解してしまいます。

そんな祐二の姿を見ているうちになんだか可愛そうになり、

浮気相手とは完全に縁を切ることを条件にあたしは彼を許したのです。

でも…

祐二の浮気癖は中々直らず、

あたしも何度か離婚を考えました。

しかし、母からの忠告を半ば無視して結婚した手前、

おいそれと離婚するわけにも行かず、

こうして3年目の記念日を迎えたのです。



ガタン!

大きな音を立ててサファリカーが揺れると、

「きゃっ!」

椅子の上を大きくバウンドしながらあたしは小さな悲鳴を上げました。

すると、

「しっかりとしがみつけよ、

 ここの道は荒れているからな」

ハンドルを握る祐二はそうあたしに注意をしますが、

「ちょっと…

 スピード…

 スピードを落としてよ」

泣きべそをかきながらあたしは祐二に速度を落とすように頼むものの、

「なぁに言っているんだ。

 トロトロ走っていちゃぁ、

 日が暮れてしまうぞ」

相変わらず自分のペースで祐二は言い放ち、

さらにアクセルを踏み続けます。

こうして一体どれくらい走ったのでしょうか、

ようやくクルマが止まったとき、

あたしはすっかりヘトヘトになってしまっていて、

いま自分がどこに居るのか、

全く判らない状態になっていたのです。



「どこまで来たの?」

フラフラになりながら

サファリカーから降りたあたしは自分が居る場所を尋ねると、

「ん?

 サバンナの端っこだよ。

 ここはもぅボディ族たちの縄張りだよ」

と彼は答えます。

「ここが、

 ボディ族って言う人たちのところ?」

それを聞いたあたしは改めて周囲を見回しますが、

しかし、あたりの景色はサバンナよりもはるかに荒涼としていて、

こんな所に人間が住んでいること自体、

にわかには信じられませんでした。

すると、

「さて、ここからは歩きだ」

と言う祐二の言葉に

「へ?」

あたしは驚いた顔をしますと、

「うーん、

 今から歩いたんじゃぁ、

 向こうに着くのは夜になっちゃうな」

彼は西に傾いている太陽を指差し、

少し困った顔をします。

「夜って、

 まさか泊りがけで行くの?

 そのボディ族とか言う村に泊まるところがあるの?」

そんな祐二にあたしはそう尋ねると、

「あはは、

 大丈夫、

 心配するなって」

と彼は涼しい顔であたしに答えます。

「そんなぁ…」

思いがけないその言葉にあたしは泣き顔になりますが、

「ほらっ、

 行くぞ!」

の声と共に何時の間に用意していたのか、

クルマの中から取り出したリュックを背負い、

祐二は先を歩き出してしまいました。

彼がそこまで用意していたことにあたしは驚きました。

遅くても夕方までには戻るだろう…

そう思っていたあたしは宿泊に必要な物は持って来てなく、

かといってここから戻ることも出来ないために、

仕方なく手ぶらに近い状態で祐二の後について行きました。



幸い、目的地だったボディ族の村はクルマを降りた場所からほど近く

また祐二の言葉とは違って、

日暮れる前に村に到着することができました。

ところが村に入った途端、

独特の臭いがあたしの鼻をついてきたのです。

人の汗と現地人特有の体臭。

そして土と獣の臭いが混じったような強烈で独特の臭いに

「臭…」

あたしは思わず手で鼻を覆ってしまいますと、

「麗華、その手をどけるんだ」

あたしの行為に気がついたのか、

すかさず祐二が注意をしてきました。

「でも…」

手をどかさずにあたしは言い返そうとしますと、

「失礼だろう」

と嗜めます。

「うっうん」

その言葉にあたしは渋々鼻から手をどけますと、

「□△△◎●・・・」

突然、野太い男の声が響き渡ると同時に、

村中のそこかしこからい人の姿をした黒い塊が飛び出し

たちまちあたしたちを取り囲んでしまったのです。

「なっなにこれぇ!」

いきなりのことにあたしは祐二の後ろに隠れて怯えますと、

「そんなに怖がることは無い、

 これがボディ族だ」

取り囲まれても祐二は平然と構えていました。

「そっそう?」

そんな祐二の後ろに隠れながら

恐る恐る周りを取り囲む者の姿を良く見ますと、

あたし達を取り囲んでいます人たちは

皆、男の人で、

墨のように黒い肌と、

祐二よりもはるかに高い身長、

とても長く伸びた手と足、

どれをとってもサバンナで見てきたマサイの人たちとは違っていて、

同じ人間なのにこんなにも違うの。と思ってしまいます。

そして、視線を下に向けたとき、

ブラン

ブラン

と彼らの股間で揺れるものの姿が目に付きました。

それを見た途端、

「きゃっ!」

小さな悲鳴を上げてあたしは視線を伏せてしまいました。

「どうした?」

目を伏せるあたしに祐二は理由を尋ねてきますと、

「だって、

 この人たち…みんな、何も着ていないよ」

とあたしは取り囲んでいるボディ族の人たちが

全裸と言い切っても構わない裸体であることを指摘します。

ところが、

「はは、

 ボディ族はそういう暮らしをしているんだよ」

あたしの指摘に祐二は笑って答えますが、

「でも…」

あたしは何かを言おうとしたとき、

ヌッ!

一人の男があたしに迫ってきました。

「いやっ」

その姿を見たあたしは声を上げますが、

でも、彼の黒檀色の体全体に施された白と黄色と赤のボディペインティングが、

野生動物の如く逞しい肉体美をいっそう引き立たせ、

その姿は美しくも見えたのです。

「これが…

 ボディ族って人達なの?」

そんな彼らの姿を見ながらあたしはそう思っていますと、

「ん?

 なんだ、麗華っ、

 まだ恥ずかしがっているのか、

 いい加減に慣れろよ」

興味津々に寄ってくるボディ族の男達をかき分けつつ、

祐二は話しかけてきますと、

「だってぇ」

あたしは言い返します。

その途端、

「そうか、

 じゃぁほらよっ」

いきなり祐二はあたしの腕を掴みますと、

あたしとの位置を入れ替え、

ズンッ!

っと背中を押しはじめたのです。

そして

「いやっ、

 やめて」

と叫ぶあたしをまるでお披露目の如く

裸の男ばかりが集まってくる中を引き回され、

土で出来た粗末な小屋の前へと連れて行かれました。

小屋の高さは2mほどで、

あたしが入るには十分な高さがあるみたいですが、

でも、背の高いボディ族の人たちにはちょっと苦しそうです。

そして、奥行きは判りませんが、

横幅は6mほどある大きなつくりで、

村に立つ他の小屋と比べると明らかに格が上のように思えました。

「酋長さんが住んでいるのかな?」

そう思いながら小屋を見ていると、

「○△△◆・・・」

突然祐二はボディ族の言葉でしょうか、

あたしには判らない言葉で小屋の外から話しかけたのです。

「え?」

祐二の口から出た言葉にあたしは驚きますと、

「◎□△△・・・」

その言葉に返事をする声がこんどは小屋から響き、

ヌッ

しばらくして全身皺まみれの一見して老人とわかる裸の男性が姿を見せてきました。

「出たぁ!」

その老人の姿を見た途端、

あたしは慌てて祐二の後ろに隠れるようとしますが、

グッ

祐二はそんなあたしの腕を掴みますと、

老人の前にわざと立たせます。

「ちょちょっと、

 祐二さんっ」

そんな祐二の行為にあたしは慌てて声を上げますと、

「黙って立っていろ」

となぜか祐二は命令長の口調であたしに命令をしたのです。

「なんで?」

その声にあたしは思わず驚きますと、

ヌッ

老人はあたしに顔を近づけ、

そして、前後左右、

あたまからつま先まで舐めるように見た後、

「●◎□△△・・・・」

とあたしを指差し祐二に向かって話しかけたのです

「何を言っているのこの人…」

老人の言葉が終わった後、

あたしは割り込むようにして言葉の意味を尋ねますが、

「□□◎△▼・・・」

そんなあたしの質問に祐二は答えずに、

老人と話を進めていきます。

「なんなのよっ

 もぅ」

完全に無視された状態になってしまったあたしは腕を組み膨れて見せますが、

祐二と老人の会話はなおも続いています。

ふと気がつけば、周りを取り囲んでいた裸の男達は姿を消し、

黄昏時を迎えたこの村で表に居るのはあたしと祐二、

そして、この皺だらけの老人の3人だけになっていたのです。

「あれ?

 みんなは?」

人影が消え、

ガランとした村を横目に見ていると、

「▼△◎●□・・・」

ようやく話が纏まったのでしょうか、

老人は祐二と別れて小屋へと戻ってしまいました。

「ねぇ

 何を話していたのよ?」

老人が姿を消した後、

あたしは不機嫌そうに会話のこと尋ねますと、

「ん?

 いろんなことだ」

と祐二ははぐらかしながら返事をします。

「いろいろって、

 知っている人なの?」

そんな祐二にあたしは老人と面識があるのか尋ねますと、

「まぁな…」

とまたしても祐二ははぐらかす様に答えました。

その時です、

「□□△●△・・・」

小屋の中からあの老人の声が響き渡りますと、

チラリ、

祐二はあたしを見るなり、

「麗華、

 お前が先に入れ」

とあたしに言ったのです。

「え?」

その言葉にあたしは驚きますと、

「ほらっ、

 麗華が先に入るんだ」

ポン

あたしのお尻を叩いて祐二は指示をします。

「うっうん」

なんでこの小屋に入れたがるのか判らないまま

あたしはその指示に従い、

「ついてきてくれるんでしょう?」

と尋ねながらあたしは腰をかがめ、

老人の小屋へと入って行きました。



小屋の中は小さいながらも明かりが灯されていて、

暗くなってきた外から入るととても明るく感じました。

そして、2・3歩進んだとき、

ムワッ

あたしの鼻に悪臭とも芳香とも判断がつかない匂いが漂ってきたのでした。

「うっ

 なにこの臭い…」

反射的にあたしは手で鼻を覆うとしますが、

だけど、なぜかあたしの手は動かず、

さらに体中から力が抜けてしまいますと、

ガックリとその場に両膝をつき、

ついに

バタン…

あたしは前のめりになって倒れてしまったのです。

「(なに?

  どうしたの?

  一体何がおきたの?

  祐二さん助けて…)」

意識はハッキリとするものの、

しかし、指一本たりとも動かせられない状態になってしまったあたしは

表に居るであろう祐二に向かって必死に助けを呼びますが、

でも、口は動きません。

そしてその場に倒れたままの状態で居ると、

ヌッ

あたしの目の前に影が降り、

「●●□△・・」

とあの老人の落ち着いた声が響いてきたのです。

そして、

ピタ

ピタ

っとまるであたしが動けないことを確認するかのように体の至る所を触った後、

「◎◎っ!」

と誰かに向けて声を上げたのです。

すると、

「○△△…」

別の男の声がそれに応えるように響くと、

スッ

あたしを覆っていた影が動き、

その陰の後ろから黒い肌に白目がギョロリと動く別の男の姿が飛び込んできたのです。

「(だれ?)」

思いがけない男の登場にあたしは驚きますが、

何とか動かせる目を動かしてその男を見ますと、

男の体には張りがあり、

膨らんだ筋肉と、

何かのおまじないでしょうか、

その黒い肌に描かれた文様もハッキリとしていて、

明らかに若い男であることが判ります。

「(まさか…)」

その男の股間にだらりと力無く垂れ下がる性器の姿を見た途端、

あたしの脳裏にこれから起こるであろうシナリオが沸き起こると、

「(祐二ぃぃ!!

  助けてぇ!!)」

と思いっきり声を張り上げますが、

でも、情けなく半開きになているあたしの口から出てきたのは、

声とは言えない唸り声でした。

「(助けてぇ)」

「(誰かぁ)」

出せない声を振り絞ってあたしは叫び続けますが、

でもその声を聞きつけて駆けつけてくる者は無く、

また後から小屋に入ってくる筈の祐二も一向に姿を見せません。

「(祐二ぃ

  助けてぇ)」

あたしが声になら無い声をあげ続けていると、

ドズッ

突然、あたしの目の前に古びれた欧風の鏡が置かれたのです。

「(鏡?

  こんなボディ族の村になんでこんな大きな鏡があるの?)」

全裸で暮らすボディ族の村には不釣合いな鏡の登場に

あたしは不思議に思っていると、

ヌッ!

あのギョロ目の男がゆっくりと立ち上がり、

あたしの傍に立ちました。

本来なら見えない位置に男は立っているのですが、

でも、前に置かれた鏡のお陰で

男の一挙一動を窺い知る事が出来ます。

すると、

「◎◎□△×・・・」

あたしを見下ろしながら男は何かを口走りますと、

ゆっくりと腰を下ろし、

そして倒れたままのあたしの両肩に手を添える仕草をします。

と同時にあたしの両肩に掴まれた感覚が走りますと、

グイッ!

あたしは抱き起こされ、

鏡の前に横すわりにさせられました。

力が入らずだらりとしている自分の顔がとても情けなく鏡に映ります。

すると、男が前に回り、

同時に男の黒い顔があたしの目の前に迫ってきました。

「(ひぃ!)」

腕さえ動かせられれば今すぐにでもこの男を突き飛ばして、

表に居るであろう祐二の下に駆け込みたいのですが、

でも、指一つ動かせないあたしは男を見つめることしか出来なかったのです。

すると、男の顔がゆっくりとあたしに迫り、

言いようもない男の体臭があたしの鼻を覆ってきました。

そして、

ヌルッ

あたしの唇と男の唇が合わされてしまうと、

男の舌があたしの唇を割って口の中へと入ってきたのです。

ザラリ…

これまで何を食べてきたのか判らない男の舌があたしの舌と重ねあわされ、

さらに絡み合うと、

「(!!っ

  いやぁぁぁぁ!!!)」

祐二以外の男にキスされたことにあたしは悲鳴を上げますが、

でも、動けないあたしはただ男になされるがままでした。

長いキスが終わり、

男の顔があたしの目の前から離れて行きますと、

今度は着ていたシャツの裾に手がかけられ、

一枚あたしの体から服が脱がされてしまったのです。

もはやあたしの運命は決まったようなものでした。

ここであたしはこの男に犯されるのです。

気がつけば男の股間から性器がいきり立っていて、

男の体が動くたびにその性器の先端があたしの身体を突付いてきます。

ジワリ…

あたしの目から涙が零れ落ち、

そして、それが頬を伝っていきますと、

あたしの上半身は全て脱がされ、

貧弱ながらもプルンと震える乳房が男の前に姿を見せていました。

だけど男は性器こそは硬く伸ばしているものの、

その目はどこか冷静で、

心の底から欲情している様子は微塵も感じられなかったのです。

「(なに?

  この男?

  完全に興奮しているわけじゃないんだ…

  変な奴)」

祐二との初夜の時、

彼の手は細かく振るえ、

さらに鼻息も荒かったことを思い出したあたしは、

その違いに違和感を感じると、

「(ボディ族の男って…

  こんなに醒めてセックスをしているのかしら…

  そういえばこの村…

  女性の姿が見えなかったけど)」

とまさに絶体絶命な状況の中であるにもかかわらず、

あたしの心は女性の姿が見えなかったこの村の奇妙さを気にかけていたのです。

スルリ…

ズボンが脱がされ、

股間を覆っていた下着も剥ぎ取られてしまいますと、

あたしはその白い裸体を鏡にさらけ出します。

するとなぜか男はあたしの髪を手に持ち、

興味津々そうに髪の手触りを確かめると、

なんと匂いを嗅ぎ始めたのです。

フンフン

フンフン

「(やだぁ、

  これって髪フェチって奴?

  ボディ族にも居るんだ)」

鼻息を立ててあたしの髪を嗅ぐ仕草をする名前も知らないボディ族の男を

あたしは軽蔑の眼差しで見ようとしますが、

その前に、

「◎□△△・・・」

じっと様子を見ていたあの老人が男に声をかけますと、

フンッ!

鼻息を一つ立てて男は髪から鼻を離し、

「□□◎・・・」

と老人に言い返しました。

すると、

「◎×△◆」

命令長で老人は男に告げながら、

木の器に入っている黒い物体と、

チャラ…

蒼く輝く石を繋いで作った紐のようなものを掲げて見せると、

紐の方を半ば強引に男に握らせたのです。

紐を握らされた男は一瞬困った顔をしますが、

あたしをチラリと見ると、

なぜか諦めた顔をして見せ、

その紐を引き伸して、

あたしの腰の周りを2周させて縛ったのです。

「(何の意味があるのかしら…

  おまじないなの?)」

鏡に映る腰紐の意味をあたしは考えてますと、

さらに、

腕の付け根、

手首、

そして首元にも紐が巻かれ、

あたしの身体を飾ります。



キラリ…

鏡に映るあたしの身体を蒼い石が飾り立てると、

男は軽々とあたしを背後から抱きかかえ、

そして、鏡に向かい合うように胡坐を掻きながら座りました。

ヌラリ…

男の性器が祐二のそれとは桁外れの大きさを示すと、

黒く艶かしい色を見せながら、

その切っ先を上へと向けます。

「(これが、

  あたしの中に…)」

まさに凶器といっても過言ではない性器の姿に、

あたしは恐怖してしまいますと、

「◆◎△〜っ♪」

何かの歌でしょうか、

それを合図にして老人が声を張り上げました。

すると、男はあたしの股間に手を割り込ませて、

あたしの股を大きく開かせると、

鏡には股を開いたあたしの姿が映し出されます。

「(来るっ)」

前戯も無く、

いきなりの”行為”が来るとあたしは心の中で身構えました。

そして、こんな遠いアフリカの地であたしはこの男の女にされる…

そう覚悟したとき、

抱えられていたあたしの身体はゆっくりと降ろされていきます。

そして、

メリッ!

あたしに向かってきた男の性器はなぜかあたしの性器ではなく肛門を押し始めたのです。

「(え?

  そっそこっ違う)」

硬く閉じたものを無理やりこじ開けてくる感覚に、

あたしは

キュッ!

と肛門を閉じながら抵抗をしますが、

だけど、

メリッ

メリッ

男の性器は排泄しか知らないあたしの肛門も強引にこじ開けていくと、

ついいにはありえない大きさにまでそこを押し広げ、

激痛と共に腸の中へと侵入してきたのです。

「(ぎゃぁぁ

  痛ぁーぃ!

  やめて!

  それを抜いて!

  痛ぁーぃ!)」

凶器のような男の性器を半分以上飲み込まされたあたしは悲鳴をあげますが、

だけど、相変わらず体は動かすことは叶わず、

ズズッ

ズズズズッ

男の性器は無慈悲にあたしの奥へ奥へと潜り込んできます。

そして、全てを飲み込んでしまったとき、

「(うぐぐぐぐぐ…)」

内臓を巨大な性器で貫かれてしまったあたしは、

老人があげる歌声の中、

ただ小さな炎の明かりが揺らめく天井を見詰めているだけに過ぎなかったのです。



あたしと男が一つに繋がってどれくらい経ったでしょうか、

「♪〜っ」

老人の声が一際高らかに響き渡りますと、

老人は男に肛門を貫かれているあたしの前に立ち、

あたしの口に手を添えて口を開かせるのと同時に、

あの器を掲げて見せました。

そして、

「◎△◆◎◎」

と呪文のような言葉を発すると、

その器を傾かせ、

ズルリ

それに載っていたものをあたしの口の中へと入れたのです。

「(うっ)」

腐臭に似た味が口の中に広がり、

あたしは慌てて吐き出そうとしますが、

でも、

グッ

老人の手があたしの顎を上に向けしまいますと、

ゴクリ…

あたしはそれを飲み込んでしまったのです。

すると、

ユサッ

今度は男が腰を動かし始めました。

「(あぐっ)」

腰の動きと共に下半身の激痛は形を変えてあたしを襲い始めると、

「(あぐっ

  あぐぅ

  うごぉ)」

あたしは繰り返し襲ってくる激痛に翻弄され、

そして、激痛に翻弄されていくうちに、

ジワッ

ジワジワ…

体の中から少しずつ熱くなってきたのです。

「(なに?

  なんなの?

  この熱さは…)」

はじめは燻るように、

そして、次第に燃え盛る炎のように

あたしは体の中が火照ってきますと、

あれだけ自分を翻弄してきた激痛が次第に感じなくなり、

それどころか普通のセックスとは比べ物にならないような快感へと変わってきたのです。

「(あはっ

  なによっ

  全然気持ちいいじゃないのっ)」

黒い肌の男に抱かれ、

白い肌を黒く焦がしてしまうような快感にあたしは身を委ねてしまうと、

ピキッ!

頭の中を電気のようなものが駆け抜けて行きました。

「(うっ、

  なに?

  いまの?)」

痛いと表現するには届かないその感覚にあたしは

鏡に映る自分の姿を見ると、

ジワ…

何かの見間違えだろうか、

白い肌が日に焼けたように黒く染まり始めていたのです。

「(え?

  肌が黒くなっている)」

肛門を貫かれ、

ユサユサと揺れ動く視界のなかであたしは自分の姿を見ていますと、

メリッ!

今度は体のどこかで何かが伸びようとする感覚が走りました。

そして、

メリッ

メリメリメリ!

それは男の一突きごとに徐々に強くなっていくと、

鏡に映るあたしの姿に異変が起き始めたのです。

男に抱かれているあたしの手足が徐々に長くなり、

そして、肌もハッキリとわかるくらいに黒く染まっていきます。

さらに筋肉も膨れていくと、

ツルリとしていたお腹に腹筋の凸凹が姿を見せてきました。

「(なにっ

  これぇ!)」

見慣れた自分の姿が崩れていく様子にあたしは目を剥きますと、

ズンズンズン!

肛門を突く男の動きが早くなってきたのです。

「(いやっ、

  止めて!

  腰を止めて、

  これ以上突かないで、

  あたしが、

  あたしじゃなくなっちゃう)」

ハッハッハッ

パンパンパン

男は前のめりになりながら狂ったように腰を打ちつけ、

その一方であたしの身体は坂道を転がり落ちるように、

その姿を変えていきます。

ミシミシミシ!!

変化してゆく身体は激痛を生み、

肌の色はさらに黒々と変わってきます。

その中であたしの股間がムズムズしてきますと、

プリッ!

クリストスが割れ目から顔を出し、

まるでキノコのように伸びはじめました。

力が入らない手足はさらに伸び、

それに合わせて体中の筋肉がまるで鎧のように硬く引き締まっていきます。

小さかった胸のふくらみは

盛り上がってくる筋肉に飲み込まれるようにして消えてしまいますと、

乳輪は萎縮し、

乳首もまた黒く染まりながら胸板の陰に小さく着くだけの存在へとなっていきます。

「あぁぁぁぁ

 うぐぐぐぐぅぅぅ」

喉仏が盛り上がり、

唇が厚く膨れてくると、

あたしの目の上には眼下が突き出し、

さらに頬骨が出てきました。

半開きのあたしの口から男を思わせる野太い声が漏れてくると、
 
ピキピキピキ!!!

すっかり長く太く伸びてしまったクリストスの先で

丸い肉の頂が盛り上がってきます。

そして、

ピッ

その先端が縦に裂けて、

鈴を思わせる口が開きますと、

ブラン…

その後ろに皺まみれの袋が下がっていきます。

こうしてあたしの股間で見事な男の性器が出来上がっていったのです。



つづく