風祭文庫・モラン変身の館






「野生勇者・ムオラルンガ」
(第3話:勇者不合格)


作・風祭玲

Vol.970





時はUC(宇宙世紀)

旧世紀末、大国の意地の張り合いから始まった世界大戦は

産業革命以降、人類の活動によって傷つけられていた地球環境に壊滅的な打撃を与え、

それによって発生した大災害・南極大溶融より

人類は経済・産業の拠点としていた平地のほとんどを失ってしまったのであった。

さらに陸地の消失に伴って大気の大循環活動が弱まってしまうと、

残った陸地も砂漠化・サバンナ化が急速に進行。

そのため戦後樹立された地球連邦政府は人類の地球での居住を諦め、

宇宙空間に建設したコロニー群への移住を決定したのであった。

しかし、コロニーという閉鎖的な空間は居住する者達の精神を圧迫し、

それによる社会不安によって数々の凶悪犯罪が多発したために、

地球連邦政府・平和維持省は見せしめ効果による治安維持を目的として、

満18歳を迎えた男女から無作為に【選ばれし者】を選び出し、

ナノマシンを用いた肉体並びに精神の改造手術と併せて女性は男性への性転換手術を行うことで、

全員を原始的な野生戦士に仕立て上げたのである。

そして荒廃した地球上に設置されたカメラの前で野生戦士達は槍や弓、石斧を振り上げ

永遠に続く戦いを行うのである。

すべては人類の平和のために…



それは不意のことだった。

ハッ!

まるで切れていたスイッチが入ったかのうにあたしは目を覚ますと、

視界の中に個室の天井が見えてくる。

「知らない天井………」

大昔のアニメで言われた台詞をふと口走りながら、

しばらくの間、ぼんやりと天井を眺めていた。

そして眺めながら徐々に記憶が呼び起こされていくと、

「!!っ」

あたしは手術のことを思い出すのと同時に、

ビンッ!!

股間から力を込めて突っ張っていく感覚を感じたのであった。

「ん?

 なに?」

これまでまったく感じたことが無かったその感覚に

あたしは戸惑いながらも体を起こさずに両手を動かし股間へと指先を動かしていく

そして、

ツンッ

指先が股間の真ん中から硬く伸びている棒のようなモノに触れた途端、

「!!っ

 なにこれ?」

あたしはハッキリと目が覚め、

その棒を確認するようにして指先を棒に沿って動かして行く。

「これって、

 まさかオチンチン?」

指先から伝わってくる感覚にそう思いながら、

ススッ

スススッ

あたしは棒に触れている指を1本、

また一本と増やし、

胸をどきどきさせながら棒の様子を確かめていくと、

棒の付け根にはその後ろ側に弛んだ皮が袋状になって伸びていて、

さらに皺まみれの袋を辿っていくと、

袋の中にはコロンと二つの玉が入っていたのであった。

一方、棒の先へと指先を動かしていくと、

その先にはエラを張った肉の塊があり、

その塊の先端に縦に開く溝と、

溝の奥に穴が開いていたのである。

「間違い無い、

 これオチンチンだ」

子供の頃、

お風呂の中で見たパパのオチンチンと同じものがあたしの股間にあることを確信するが、

しかし、パパのオチンチンと比べると、

あたしのオチンチンはとても長く、

また太さも上回っているように感じられた。

「うわぁぁ…

 パパよりも大きなオチンチンなんて…

 どうしよう。

 こんなのパパに見せられないよう…」

パパよりも大きくて太いオチンチンを触りながらあたしは困惑するが、

しかし次第に

シュッシュッ

シュッシュッ

あたしは股間から伸びるオチンチンをさすっているうちに、

胸の奥からムラムラとした欲求が沸き起ってきた。

「うんっ、

 なにかしら、

 なんか…我慢できない…」

シュルリ、

そう呟きながらベッドの中であたしは体を横向きにすると、

ギュッ!

触っていたオチンチンを握りしめ、

シュッ

シュッ

と力強くしごき始める。

そして、

ハァハァ

ハァハァ

口を開け荒い息を吐きながら扱き続けていくうちに、

ジワッ

オチンチンの付け根あたりに熱いものが溜まり始ていく。

「はぁっ

 はぁっ

 はぁぁぁんっ」

丸めていた背中に力を入れて大きくのけぞって見せると、

あたしは顎を突き上げながら小さく声をあげてオチンチンを扱き続け、

やがてオチンチンの根元に溜まってきていた熱いものは力となり、

表に出ようとオチンチンの中を押し始めた。

「あぁ…

 うんっ、

 くふっ、

 はぁぁん」

まさに綱引きだった。

表に出ようと体の中から押し出してくる力と、

それを押しとどめようとする力。

あたしの股間でその二つの力は綱を引き合っているうちに

次第にオチンチンの感覚が消えていき、

ピリピリとした痺れに似た感覚がし始めてくる。

もはや限界であった。

そして、

「あっ

 あっ

 あっ

 あぁぁぁっ

 あぁぁぁっ」

パッ!

あたしに中を稲妻のような快感が走るのと同時に、

ビュッ!

ついに力の均衡が破れてしまうと、

扱いていたオチンチンの中を熱いものが一気に駆けぬけ、

ビシャッ!

ドロドロドロドロ!!!

扱いていたオチンチンの先から熱く粘性を持った体液が

止め処も無く吐きだされてしまったのであった。

「あっあぁぁぁ!!」

止めたくてもとまらない体液の噴出にあたしは驚き慌てて体を起こすと、

掛けてあった掛け物をはぎ取ってみせる。

そして、着せられていた簡易服から伸びる黒い足を見た途端、

「ひっ!」

あたしは悲鳴をあげてしまったのであった。

「なっなに…

 真っ黒、

 あたしの足が真っ黒…」

まさに黒光している足の姿を見てあたしは混乱しながら、

自分の両手を見ると、

腕の肌も同じように漆黒色に染まり、

粘液を滴らせる掌の肌ときれいなコントラストを描いていた。

「うそっ

 腕も真っ黒!!

 え?

 え?

 えぇ?」

困惑するあたしは粘液のことなど忘れて頭を抱えようとするが、

その頭から長く伸ばしていたはずの髪の毛は消え失せていて、

代わりに短く縮れている髪が這いつくばるように生えていることに気づく。

そして、

「髪も…無い…

 それになに?

 この髪は…」

指を動かすごとに

ジャリジャリ

と音を立てる髪にあたしは驚きながらベッドから立ちあがるが、

「!!っ

 うそっ!」

ベッドから起きあがったあたしを待っていたのは、

以前とはとても考えられない視線の高さだった。

「なにこれ?」

以前より頭一つ、

いや二つ分以上高くなった視界を見てあたしは気を失いかけるが、

しかし、

「だめっ、

 気を失っては!」

あたしは踏ん張って意識を立て直すと、

とりあえず全身を見ることが出来る姿見へと向かって行った。

そして、鏡に自分の姿を映し出した途端。

「ひぃっ!」

またたく間に足の力が抜け、

ドスンッ

とあたしは尻餅をついてしまう。

そう、鏡に映る自分の姿は痩身ながらもたくましい肉体を漆黒の肌で包み込み、

白い簡易服を窮屈に身につける男の姿であった。

「あわぁぁぁぁぁ…」

突き出した眼窩から目を覗かせ、

わずかに開いた厚い唇から白い歯を覗かせている自分の姿に

あたしは恐れ戦いていると、

チャッ!

閉じられていたドアが開き、

医療アドバイザーの柴田さんが姿を見せる。

そして、

「お目覚めになったようですね。

 ご覧の通り、

 手術は大成功です」

とあたしに手を差し出しながら話しかけてくると、

「あっ…」

その途端、脳裏にアスメック族になるための手術を受けたことが思い出され、

それと同時に急速に落ち着いてくると、

あたしは改めて自分の体を眺め始める。

「大丈夫ですよ、

 目がさめたら体がすっかり変わっていたんですから、

 どんな人でも皆混乱してしまいます。

 でも、それさせ乗り越えてしまえば、

 すぐに落ち着くんですよ」

と柴田さんはアドバイスする。

「そっか、

 あたし、

 アスメック族になったんだ」

それを聞いてようやくあたしは自分がアスメック族に変身してしまったことを理解するが、

同時に自分の口から出てきた野太い声に驚いてしまうと、

「大丈夫です。

 ちゃんと男性の声になっています。

 地球ではその声を思いっきり張り上げて、

 戦いの雄叫びを上げてください」

と柴田さんは言う。

ところが、

「うーん、臭いっ、

 臭いわぁ

 なにも教えられてもいないのに”勇者の証”を早速立ててしまうだなんて、

 純情そうに見えていたけど、

 結構スケベだったみたいね」

の声とともに、

生活アドバイザーの正井さんが部屋に入ってきた。

ムッ!

「スケベってどう言うことですか」

いつものスカートスーツ姿に、

緑掛かった髪を巻き上げてみせるどこか知的で、

どこか淫乱的な彼女のその言葉を不愉快に感じたあたしは怒鳴り返すと、

「あら、

 真っ黒なオチンチンから臭い精液を垂らして文句を言っても

 全然説得力は無いわね」

と正井さんは軽蔑した眼差しで言う。

「精液って」

彼女のその言葉を聞いてあたしは言葉を詰まらせると、

「うーん?

 よく理解していないみたいだから言うけど、

 お前は教えられもせずに男のオナニーをして、

 その真っ黒なオチンチンから臭い精液を飛ばしたんだよ。

 そう精通ってやつだ。

 お前は立派な男になったのさ、

 さて、ここまで確認できれば肉体改造はこれで無事終了。

 これからはあたしがお前にアスメック族として生きていくための、

 ノウハウを叩き込んでやるから覚悟すんだね」

とあの進路指導室の時に見せていた知的なイメージとは打って変わった口調で言う。

すると、

「彼女はこれまでも多くの男性化した女性たちに

 野生部族として生きるノウハウを教えてきたから大丈夫、

 彼女の指導についていくが良いよ」

正井さんの豹変振りに驚くあたしに向かって

柴田さんはやさしく言うと、

「さぁ、

 いつまでオチンチンから臭い精液を垂らしているんだい?

 地球でいつまでもそんな生臭い臭いを振りまいていると、

 臭いを嗅ぎ付けて用の無い猛獣が寄ってくるんだよ」

と正井さんは指摘する。

「あっ」

彼女のその指摘にあたしは慌てて部屋の隅においてあるティッシュを取ろうとすると、

「何をしようとしている」

と正井さんの声が飛んだ。

「あのっ

 ティッシュを…

野太い声であたしはそう返事をしてみせると、

「へぇ、お前が行こうとしているところにティッシュなんてものがあるのかい?」

と指摘する。

「うっ」

その言葉にあたしは声を詰まらせ、

「じゃぁ、

 じゃぁ

 何で拭けって言うんですか?]

と言い返すと、

「まったく…

 そんなときは小便をすれば良いんだよ、

 小便をして精液を流してしまえばいいんだよ」

あたしの股間を指差し正井さんは指摘する。

「わっ判りました」

その指示にあたしはトイレに掛けこもうとするが、

「おいっ

 お前の行くところにトイレなんてあるのかい?」

とまたしても正井さんは注意をしてきた。

「とっトイレぐらいあるでしょう」

その言葉にあたしは反論すると、

「ククッ」

正井さんは小さく笑い、

「いいか、

 よく聞け、

 アスメック族には決められたトイレで大小便をするなんて感覚は無いんだよ。

 したくなればその場でする。

 それがアスメック族なんだよ。

 ちょうど良い、

 お前ここで小便をしてみろ、

 ちゃんとあたしが見てあげるから」

と正井さんはあたしに命令してきたのであった。

「こっここで、オシッコをするのですか?」

彼女からの思いがけないその言葉にあたしは驚くと、

「目が覚めてからまだトイレには行っていないんだろう?

 じゃぁ、お前の膀胱の中は小便がマンタンのはずだ。

 お前をその体に改造し用済みになったナノマシンとともにな」

と正井さんはそう言うと、

ブルっ

確かにあたしの膀胱はパンパンに膨れていて、

今すぐにでもトイレに駆け込みたかったのである。

「うっ」

簡単にトイレに行かしてもらえない以上、

あたしに残された選択はここでオシッコするしかない。

「わかりました」

正井さんに向かってあたしはそう返事をすると、

覚悟を決め簡易服の裾を上げる。

その途端、

ぶるんっ

まるで小さな子供の腕のような黒光りした太くて長い肉の棒が飛び出し、

あたしの視界に飛び込んできた。

それはあたしにとって初めて見る自分自身のオチンチンだった。

「うっ」

股間から飛び出す真っ黒なオチンチンの姿を見て

またしても気を失いそうになったけど、

何とか踏ん張つつ、

萎えても血管を浮き出たせるオチンチンをじっと眺めた。

「おいっ、

 何をしているんだ」

そんなあたしを急かすように正井さんは声を上げると、

「判ってます」

あたしはそう言いながらそっと手で包むように触れ、

「あたし…本当に男の子になっちゃんたんだ」

と一言呟く、

そして、意気込んだあたしはオチンチンをつかんで見せると、

「うっ」

シャァァァァァァ

ついに部屋の中で放尿してしまったのであった。

「あぁぁぁ…」

膀胱が縮んでいく感覚を感じるのとともに、

オチンチンの中をオシッコが通り、

そしてその先から線となってフローリング敷きの床に水溜りを作っていく。

その様子を見ているうちにあたしの感覚は次第に麻痺していったのであった。

「ふんっ、

 盛大にやったものだな、

 どうだ立ち小便をした気持ちは」

放尿後、正井さんは感想を尋ねてくると、

「………」

あたしは何も言えず押し黙ってしまう。

すると、

「くくっ

 人前であっても憚らずに小便をしてしまう。

 お前は一歩、アスメック族になったわけだ」

とそう指摘しながら彼女は笑って見せたのであった。

「!!っ」

正井さんのその指摘と、

臭いを放ちながらフローリングの床に広がっていく水溜まりの姿に

あたしは声を失ってしまうと、

「どうかしら、

 追加試験として立小便をさせてみたけど、

 肉体的には完全な男性になったと思うわ」

と正井さんは尋ねながら後ろに立つ柴田さんを見た。

「そうですね。

 諸機能は大丈夫の様ですから、

 僕の仕事は完全にここでお仕舞いです」

彼女に向かって柴田さんはそう返事をすると、

「じゃぁ、後はよろしくお願いします」

と言い残して柴田さんは部屋から出ていったのであった。



柴田さんが部屋から出ていき、

あたしと正井さんの二人が残ると、

「さて」

と正井さんはあたしを見ながら呟き、

そして、

「うふっ、

 これからお前を徹底的に教育してあげるわ、

 さっき柴田が言っていたでしょう。

 どんな女の子でもあたしの手にかかれば立派な裸族勇者になれるわ、

 もっとも、かかる時間はお前に素質次第、

 素質が無ければ時間はかかるけどね」

と舌なめずりしつつ意味深な微笑みを浮かばせて見せる。

「よっよろしく…

 お願いします」

彼女から沸き立つオーラに気押されながらあたしは返事をすると、

「お前が立ち小便が出来る男になったのはいま確認したわ。

 でもいくら黒い肌を光らせ、

 たくましい肉体を持っているとは言っても、

 まだ、アスメック族の男ではない。

 何が足りないか判るよね」

一つ一つ確かめるようにして正井さんは尋ねる。

「それって…」

彼女の質問を聞いて

あたしは写真に写されていたアスメック族の戦士となった自分の姿を思い浮かべると、

「うっウルカですか?」

と返答をした。

その途端、

「ピンポーン、

 そうウルカ。

 アスメック族の男は股間にウルカをつけなければならいんだよ。

 それと、これからお前はオチンチンのことをイリガと呼ばなければならない。

 判る?

 イ・リ・ガだ」

正井さんはあたしにオチンチンを言いかえるように命令をすると、

あたしにウルカを手渡したのであった。

「ウルカ…」

あの進路指導室で見たとき以来、

久しぶりに見るウルカは前見たときよりも小さく感じられ、

”こんなものでいいのか?”

と思わず不安になってくる。

すると、

「さっ、

 いつまでもそんな似合わないものを着てないで、

 さっさとウルカをつけなさい」

じっとウルカを見つめ固まっているあたしに向かって正井さんは急かすと、

「わっ判っています」

そう言い返しながら、

あたしは着ていた簡易服を脱ぎ捨て、

漆黒の裸体を彼女の前にさらして見せる。

「うわっ、

 臭い。

 男の…いえ雄の臭いね、

 地球に下りていった連中もみんな雄の臭いを振りまいて、

 永遠の戦いをしているんだよ。

 それにしてもお前は格別に濃い臭いを振りまいているな。

 鼻が曲がりそう」

簡易服を脱ぐのと同時に部屋中に漂い始めた匂いを嗅ぐや否や、

正井さんはそう訴えながら手で鼻を抑えてみせる。

「それって失礼じゃないですか?」

彼女のその姿を見たあたしは不機嫌そうに言うと、

「何を言っている?

 これは誉め言葉よ」

と正井さんは言ってのける。

「………」

彼女に馬鹿にされたようにしか思えないあたしは不機嫌そうにウルカを取るが、

しかし何回かクルクルと回しつつそのつけ方を探る。

すると、

「さっきから何をしているだ?」

正井さんがあたしがしている行為について尋ねて来た。

「あの…

 ウルカのつけ方が…

 これって、これにオチンチンを入れるだけでいいんですか?

 でもそれだと落ちてしまうんじゃ」

とあたしは聞き返す。

その途端、

「ウルカをよく見てみなさい。

 何のために紐がつけてあるの?

 その紐で腰に縛るのよ、

 それと、オチンチンではなくて、

 イリガよ間違えないの」

と正井さんは説明と言葉を指摘する。

「すみません」

その指摘にあたしは頭を下げ、

そして、オチンチン…

ううん、イリガをポッカリと開いているウルカの口に差込み、

ズズズズ

っと中に押しこんだ。

「あふんっ」

ウルカの壁にイリガがこすれて行く快感を感じながら、

あたしはつい息を漏らしてしまうと、

「ウルカごときで何を感じているんだ、

 このバカ!」

と言う怒鳴り声とともに、

ビシッ!

棒のようなものであたしの肩が叩かれた。

「痛い!」

まるで熱湯を浴びせられたような痛みに値は悲鳴をあげると、

「痛かったかい?

 これはねぇ

 アスメック族の戦士や長たちが持つルングと言う棒だよ、

 アスメック族はこの棒を使って牛を叩き、

 言うことを聞かせるんだ。

 無論、牛だけではない。

 言うことを聞かない人間も容赦無くこれで叩くんだよ」

と正井さんは言う。

「だからって!」

彼女に向かってあたしは反論しようとすると、

「無駄口を叩かない!」

の声とともにルングが大きく振りかぶられ、

その次の瞬間、

ビシッ!

今度はあたしの脇腹が叩かれた。

「あぐっ

 痛い!」

痛む脇腹を抑えながらあたしは蹲ってしまうと

「ほらっ、

 どうした?

 アスメック族の戦士ともあろうものがこの程度の痛みでギブアップか?

 ほらほら、

 ただ蹲っているだけでは誰も助けに来ないよ。

 アスメック族の戦士は何事も自分で解決するっ」

ルングで幾度も叩きながら正井さんはそう叫び、

そして、最後にあたしの剥きだしのお尻が蹴り上げられた。

ドサッ!

「アグッ」

蹴り上げられた拍子にあたしは倒れこんでしまうと、

「ひっくひっく、

 酷い、

 あんまりです」

泣き顔になりながらあたしは彼女の仕打ちを訴える。

すると、

グイッ

ルングの枝先があたしの顔に押し当てられ、

「なによ、

 その不細工な顔は、

 以前なら泣けば許されただろうけど、

 いま、お前はアスメック族の男なんだよ、

 土人なんだよ、

 真っ黒い顔でいくら泣き顔を作ってみても、

 気味が悪いだけなんだよ」

と正井さんは言う。

「そんなぁ」

彼女の心無い言葉にあたしは心底傷ついてしまうが、

「まったく世話の焼ける。

 ほら、立ちな」

ルングの先をあたしのあご下につけ、

それを上に向けて押し上げながら正井さんはそう言うと、

「うっうぅ」

あたしはまるで釣られた魚のように立ちあがって行く、

そして、

「ほらっ、

 さっさと紐でウルカを固定しないか」

と正井さんは命令すると、

倒れた際に外れてしまったウルカを再度オチンチンに被せ、

そして伸びる紐を腰に巻きつけるようにして結んでみせる。

「ふんっ

 さっさとそうすればいいんだよ。

 で、気分はどうだい?」

あたしを睨み付けながら彼女は質問をすると、

「気分って…

 べっ別に…

 ただ、オチンチ…イリガがウルカに擦れて痛いです」

とあたしは体を動かすごとにウルカの中でオチンチンが擦れて痛むことを告げた。

「ん…なんだって?

 頭は痛くならないのか?

 イリガはどうだ?

 勃起しているかい?」

それを聞いた正井さんは眉間に眉を寄せてそう尋ねると、

フルフル

あたしは首を横に振ってみせる。

「なに?」

その途端、正井さんの手が伸び、

そしてあたしの股間のウルカを引き抜いた途端、

「なんだ、

 フニャチンじゃないかっ」

と彼女の声が響いた。

「わっ悪いですか!」

その言葉にあたしは思わず言い返すと、

「何ともないのか?

 気分が高揚してきたとか、

 暴れてみたくなったとか、

 無性にあたしを押し倒したくなったりはしないか?」

あたしの返事を聞いて正井さんは目を丸くして聞き返すと、

「べっ別に…

 そう感じなければいけないんですか?」

と今度はあたしが聞き返してみせる。

「おかしいな…

 普通ウルカをつけた時点で記憶展開のスイッチが入るものだけど、

 どういう事だ?

 なぜ勃起しない?

 なぜ苦しまない?

 チッ柴田のやつ

 手を抜いて脳みその改造を適当にやったな。

 さぁて、どうするか。

 柴田に文句言って返品するか、

 それともあたしの手で徹底的に仕込むか」

ブツブツと正井さんは呟きながら

チラリとあたしを見ると、

「まったく手のかかる奴にしてくれたものだ。

 こうなったらお前は戦士ではなくて、

 牛飼いにした方が良いかもしれないね」

とあたしを軽蔑した視線で見つめながら言う、

「あの…牛飼いって…」

彼女が言った言葉についてあたしは尋ねると、

「牛の面倒を見るのが専門の男のことだよ。

 アスメック族では全員が牛の面倒を見るのを経験し、

 そして戦士への第一歩を踏み出していく、

 しかし、どうしても戦士になれない奴が出てくる。

 そういった奴は牛飼いとして一生を送ることになるんだよ。

 文句を言うなら柴田に言いな。

 奴が手を抜いたためにお前は戦士への道を絶たれたんだからな。

 もっとも、お前にはちょうど良いかもしれない。

 さてそうと決まれば早速訓練室に行くぞ、

 ほら、あたしと一緒に来るんだよ」

そう言いながら正井さんはルングの枝先であたしを小突いてみせると、

一人だけさっさと部屋の外へと出て行き、

「ほらっ、

 グズグズするなっ」

と怒鳴る彼女の声が廊下から響き渡った。



つづく