風祭文庫・モランの館






「忘れられた部屋」
(第1話:隠れ家)


作・風祭玲

Vol.093





「ちょっちょっといいの?

  勝手に入っちゃってぇ」

俺の後からついてくるる由美が心配そうな声を上げると、

「あぁ…大丈夫だ、誰もいないよ」

彼女を心配させないように部屋の様子を伺った俺はそう答えた。

北校舎の奥の奥、そこにその部屋あった。

なんでも、無類の旅行好きだった先代の校長が、

世界の至る所の土産物を生徒の教材にと、

学校に寄贈して作らせた部屋なのだが、

しかし、あまりにものの気味の悪さに近づく生徒はおらず、

そのために校長が代わった後、

この部屋は忘れられた存在になっていた。

しかし、

近付く者がいないと言うことは…

イコール、格好の隠れ場所…

と言うことで…

まっ俺たちの様な不埒者が入り浸る部屋になっていた。



「よっこいしょ」

開けてある窓から先に俺が部屋に入ると、

「うんしょ」

同じように後から入ってくる由美の手助けをしてやった。

「いつ見ても…スゴイ部屋だねぇ…」

由美はすっかり埃を被っている展示品を眺めながら言うと、

「あはは…

 気味の悪さじゃぁ、

 そこいら辺のミステリースポットよりは上は確実だね」

と俺も展示品を眺めながらそう言う。

すると、

「じゃ…」

「あっ…」

俺はいきなり由美を抱き寄せると軽く彼女の口にキスをした。

「…んっんん〜っ」

由美は渾身の力を込めて俺の唇を離すと、

パァァァァン!!

俺の頬を思いっきりひっぱたき、

部屋の中に叩かれた音がこだました。

「なにするんだよぉ〜」

頬を押さえながら俺が怒鳴ると、

「いきなりするなんて、イヤよ!!」

プッと膨れて由美がそっぽを向いて見せる。

「ごめんごめん」

「もぅ…」

”いきなり”はちょっとまずかったか…

一応謝った後、頬を撫でながら俺が先に床に座ると、

彼女もその横に腰を下ろした。

「デリカシーの無い人は嫌い!!」

「だから、悪かったってぇ…」

プイっ

と横を向く彼女の機嫌を何とか取っているとき、

コトン…コロコロコロ

上の方から何かが転がってくると

コツン!!

っと由美のアタマに当たった。

「痛っ

 なにこれ?」

由美がそれを手に取ってみると、

それは細長く片方が尖った筒状のモノだった。

「どれ見せてみ?」

俺は由美からそれを受けとるとシゲシゲと眺めていると、

「あっそれ、

 あそこから落ちてきた見たい」

と由美は壁を指さす。

すると、そこには同じような筒が3本下がっていて、

その3本の左側に一本分の空間が開いていた。

「ふぅーん

 あそこから落ちてきたのか」

壁を見ながら俺はそう言うと、

「ん?、何かが入っている…」

手にしている筒の中に何か黒い塊のような物体があることに気づいた。

そして、それを上下に振ったとたん、

ポトっ!!

筒の中からそれが飛び出てくる。

「なんだこりゃぁ?」

それを手にとった俺はシゲシゲと見てみると、

なんとそれは真っ黒に干からびた男のペニスだった。

「うわっ、なんじゃぁこりゃぁ…」

そう叫びながら俺はを放り投げてしまうと、

「なぁに?」

起きあがった由美がそれを拾いじっくりと眺めた。

「おっおい、そんな気味の悪いのさっさと棄ててしまえよ!!」

由美に向かって俺はそう叫ぶが、

しかし、

チラリ

由美は俺の顔を見るなり、

「あはは…」

と一笑すると、

「雄一、これ、作り物よ」

と言って俺に見せた。

「作りモノぉ?」

「へぇ…こんなのに驚くなんて以外と肝っ玉が小さいのね」

と由美が軽く笑うと、

「うるせー」

彼女の言葉に俺はちょっとムカっとくると、

由美からそれをひったくるなり再度それを眺めた。

「確かに作り物のように見えるが…」

そう思ったそのとき、

ピクッ

それが微かに動いた。

「!」

声を出す間もなく俺は再びそれを放り投げた。

「なに、驚いてんのよ…」

その様子を見た由美が情けなさそうに言いながら、

それを拾い上げると、

「それにしても、良くできているわねぇ」

と言いながら由美がしばらく眺めていると、

「あっ」

小さな声を上げた後に急に彼女の目付きが変った。

「どうした?」

突然の由美の変化に俺は思わず彼女の肩を揺すると、

「へへへへ…」

由美はそう呟きながら

なんとそれをペロリと舐め始めだした。

「おっおい、

 何をするんだ!!

 そんなもん舐めて、汚いぞ」

由美の行為に慌てた俺は思わず諭すが、

しかし、

由美は

チュバチュバ

と俺の言葉には耳を貸さずにそれを舐め続ける。

「おっおい、由美…」

困惑しながらも俺が声を掛けると、

いつの間にか彼女の目は欲情した状態の目つきへと変わり、

「あ…ん…」

と呻きながら空いている左手で自分の股間をいさめ始めた。

「なっ何やってんだお前…」

その光景に居ても溜まらず俺が止めさせようとすると、

「触らないで!!」

由美の怒鳴り声と共に俺の身体は思いっきり突き飛ばされてしまった。

ドシッ!!

「痛ってぇーなっ!!」

弾みで床に尻餅をついてしまった俺は怒鳴ったが、

しかし、由美は俺の事には関心を寄せずに、

ただひたすら”それ”を舐め続けていた。

そして、ほどなくして、

「ぷはぁ〜」

と言う声と共に由美は”それ”を口から吐き出すと、

「え?」

彼女の唾液に濡れている”それ”は、

さっきよりもリアリティーが増し、

それどころか大きく膨張して、

まるで本物のペニスと見違えないくらいに変化していた。

「まさか…」

俺は驚きながら由美の手の中で、

プルン!

プルン!

と震えるそれを眺めていると、

くはぁはぁはぁ…

由美は荒れた呼吸をしながら

口から出した”それ”をゆっくりと自分の股間へと移動させ始めた。

その途端、

由美の表情が苦しむような表情に変わると、

「あっ

 だめ…

 やめて…」

と声を上げだした。

「やめて…

 やめて…
 
 たっ助けて!!
 
 いやぁ
 
 あたしの手を止めて!!」

首を振りながら由美はそう叫ぶと、

股間にある自分の合わせ目に沿って”それ”這わせはじめる。

しかし、その時の俺は、

由美を助けるようなことをせずに、

「…………」

ただ唖然と彼女の様子を眺めているだけだった。

「やめて…!!」

由美は思いっきりそう叫ぶと、

股間を包み込んでいた下着を下にずらすと、

グニュッ

手にしていた”それ”の根本の方から自分の中へ押し込み始めた。

「(はっ)おっオイ、由美…」

その時になってようやく俺は手を伸ばしたが、

しかし、時は遅く

「うぐぅぅぅぅっ」

由美は”それ”を自分の局部に押し込むことをはじめだした。

「あっあっあぁ!!」

顎を高く上げ、

頭を激しく振りながら由美が声を上げていると、

ズブズブズブ…

由美が押し当てていた”それ”が独りでに

彼女の体の中にゆっくりと入っていくと、

ついにはカリの部分が割れ目より顔を出すだけの状態になってしまった。

「あぁ…

 いぃ…イッちゃう!!」

由美はうめき声を上げながら今度はその覗かせている首の部分を、

シュ…シュ…

っとまるで男のオナニーの様に扱き始めた。

そして、

「あ〜んっ」

感じるのか由美が喘ぎ声を出し始めると

彼女の手のなかの”それ”はまるでキノコが成長するごとく徐々に大きく成長をし始め、

それに合わせて彼女の手の動きも幅が大きくなってきた。

「由美…お前…」

俺は直感的に由美の行為にある種の危険を感じると、

少しずつ由美から遠ざかり始めた。

そして信じられない光景を見た、

「はぁ、あたしが…あたしでなくなる…」

そう叫び声をあげると、

「うぉうぉうぉ〜っ」

と言う彼女の呻き声と共に、

シュッシュッ!!

”それ”の先から白い液体が勢いよく噴き出した。

「ばかな……

 こんなコトが…」

俺は目の前で起きていることが信じられなかった。

はぁはぁはぁ…

目がトロンとして由美は自分の股間を眺める。

「おぃ、由美…」

俺が彼女に近付くと

「俺に近付くなっ」

っと彼女はまるで男のような声を出した。

「え?」

「ふふふ…やっと俺は自分の身体を手に入れたぞ」

由美は男の声でしゃべり出すと

自分が着ている制服を眺め、

「ふんっ、俺にこんなモノはいらん!!」

と言いながら、

ビリビリビリ

着ている制服を引き裂きだした、

「なっ」

程なくして、彼女は身につけていたモノをすべて捨てると

一糸まとわない全裸になった。

女の身体と股間にそびえ立つペニスがアンバランスな印象を与える。

すると、

ふんっ

自分の姿を眺めながら由美が全身に渾身の力を込めたとたん、

ググググググググ…

と彼女の体中の筋肉が盛り上がりはじめると、

グキグキグキ

それに続いて身体の骨格も変わりはじめた。

白かった肌が徐々に黒く染まって行く…

「…………」

俺は何も言えず彼女の変身を眺めていた。

やがて由美は黒光りした肌を持つ、

筋肉が逞しく盛り上がった男になってしまった。

そして、さっきの筒を手に取ると自分のペニスにゆっくりと被せると、

「ようし…………」

そう言いながら、俺をジロリと見るなり、

「俺を復活させてくれてありがとうよ」

とひとこと言って、傍に置いてあった槍を手にとると、

バッ

「………」

槍を構えた。

そして何か呪文のような言葉を発すると、

すぅ…

裸族の男になった由美は俺の目の前から、

まるで霧が晴れるようにしてその姿を消した。

そしてその一方で、

「………………」

俺は唖然としながら、彼女が消えた跡を眺めていたのだった。



おわり