風祭文庫・モランの館






「翔子」
第2話:智也の決断

作・風祭玲

Vol.028





1年前のあの日”門”が開いた公園で僕はその時を待っていた。

そして、公園から人の姿が消えた夕刻、

パァァァァァ!!

突如、公園内に光の柱が立ち上がるとあの”ディンガの門”が姿をあらわした。

「来た!!」

ゴクリ…

光り輝く門を目の前にして僕は思わず生唾を飲み込んだ。

そうだ、あの中から僕の翔子が帰ってくる。

そのときの僕の胸の中は嬉しさと緊張とでいっぱいだった。

「翔子…無事に帰ってきてくれたのか…」

この1年間、僕はディンガの村に置いてきた翔子のことが気が気でなかった。

しかし、どんなに彼女のことを想っても僕の力ではその村に行くことは叶わず、

門が開くまでじっと待っていたのだ。

そして、その門がようやく開くときが来た。



ミシミシミシ!!!

軋むような音を上げながら”門”の扉がゆっくりと開くと、

ヒタッ

門の向こう側から一人の人間が姿を見せるとゆっくりとこっちに向かって歩いてきた。

「んん?」

まばゆい光のなかでその人物の様相はよく見えなかったが、

僕の心は

「翔子が帰ってきた」

と言う思いで一杯だった。

ヒタッ

ヒタッ

一歩、一歩、

その人物は僕に向かって近づいてくる。

すると、

シュンッ

まばゆい光に包まれていた門から光が消えていくと

フッ

それに合わせる様にして、”門”が消えてしまった。

「門が…消えた」

文字通り、かき消すように門が消えてしまったことに僕が驚いていると、

ヒタッ

僕の前に門の中から出てきた人物が静かに立つ。

「翔子?」

そう呟きながら僕がその人物に視線を合わせた途端、

「なっ」

思わず声が詰まる。

そう、”門”の中から出てきたのは、

あの全裸に首と腰の飾りひものみのディンガ族の男だったのだ。

「翔子じゃないっ

 なっなんで、ディンガの男がここに来たんだ

 おいっ翔子はどうしたんだ!!」

ディンガの男に向かって僕がそう叫ぶと、

『◆○△…』

男はディンガの言葉で何かを喋ったのち、

「あっあたしの…名前は

 あぁ…思い出せない…
 
 でも、タ…
 
 タ…
 
 タン
 
 タンバ…
 
 そう、タンバ…よ
 
 なっ名前は…
 
 シ…
 
 ショウ…

 ショウ…こ」

男は必死になり頭を抱えながら何度もそう呟くと、

「シ・シ・シ…ショウコ…言うの?

 あたし…」
 
と自分を指差しながら片言で僕に尋ねてきた。

「え?」

彼のその台詞に僕は思わず驚いた。

「ショウコ…

 あたし…名前…ショウコ…」

 タンバショウコ…
 
 それでいい?
 
 いいの?
 
 いいんだね…
 
 あっ…あなたは…」

男は今度は僕を指差しながら

「ト…

 ト…

 と…と…

 と…もや…
 
 そう、トモヤ…よ」

と僕の名前を言うと、

突然、ハッとした表情をすると僕を見つめた。

「なっなに?」

僕をじっと見つめるディンガの男に俺はそう返事をすると、

男は自分を指差しながら、

「あっ…と…智也クン……

 あたし……丹羽翔子……

 こっこんな身体…だけど…しっ翔子…なのよ」

と必死になって訴えた。

「翔子?

 翔子って、

 お前…まさか

 本当にあの翔子なのか?」

僕には目の前に立つ裸体の男が翔子であることを信じられなかったが、

「そっそう、

 あっあたし…翔子なのよ」

ディンガは必死になって僕にそう訴えると、

「本当に本当に、君は、し、翔子なのか?」


彼を指差しながら尋ねると、

コクリ

と彼は頷き、

「そう…

 おっ思い出した。

 智也クン…試験は受かったの?」

と僕に尋ねてきた。

「あっあぁ…

 なんとか入試には受かったけど」

彼の問いに僕がそう答えると、

「智也クン、やったじゃない、おめでとう」

彼はそう言いながら喜びそして僕の肩を叩いてくれた。

「あっありがとう」

ディンガ族に祝福されることに僕が戸惑いながら返事をすると、

急に彼は真面目な顔になり、

「実は…智也…あたし…お別れを…言いに来たの」

と僕に向かってそう言った。

「なに?」

その言葉に僕は驚くと、

すると彼は自分のいまの身体を僕に見せるようにクルリとその場を回り、

「ほら…見て…

 あたしの身体…

 あたし…こんな体になっちゃったの。

 どこから見てもディンガの男でしょう…

 あたし…ディンガになっちゃったのよ、

 ううん、見た目だけじゃないわ、
 
 頭の中もほとんどディンガになって来ているのよ

 ウシの世話や狩の仕方…
 
 それにディンガとしてもっとも神聖なレスリングの戦い方は知っているけど、
 
 でも、それ以外のことはみんな忘れてしまったの。

 智也君の顔を見てあたし…何とか思い出すことが出来たけど、
 
 でも、その記憶もそう長くは続かないと思う…

 長のンピがあたしに言った言葉の意味、判った。
 
 あたし…もぅディンガになっているのね」

翔子はそう言うとゆっくりと周囲に景色を眺めた。

「だから…あの時、僕が残れば…」

そんな翔子の姿を見ながら僕が後悔すると、

「違うわ…

 わたし…ディンガになって良かったって思ってる」

と翔子は僕を宥めた。

「ほっ本当にそう思っているのか!」

思わずそう聞き返すと、

「仕方がなかったの…

 病気になって死にそうだったあたしを心配したンピが
 
 あたしをディンガ族にする秘術を使って助けてくれたの、

 だからあたしは翔子ではなくてンピの息子アピ…
 
 ディンガ族のアピなのよ」

翔子は訴えるようにして僕に説明した。

しかし、それを聞いた僕は

「そんな…翔子…

 この1年、僕は君が帰ってくることを希望にして頑張ってきたんだ、

 キミが僕のそばにいなければこんなの何の意味はないよ」

とこみ上げてきた思いを思いっきり叫んだ。

「え?」

僕の言葉に翔子は驚き、

「智也君、いまなんて言ったの?」

と聞き返すと、

僕は俯き頬を赤くしながら、

「だから…キミにずっとそばにいて欲しかった…

 …ずっと…

 だからこそ、頑張ってきたのに…

 それをいきなり”さよなら”なんて…」

そう呟くとこの悔しさをぶつける相手を捜すかのように横を向いた。

「ごめんなさい…

 智也クンが…私のことをそんなに考えていたなんて、

 知らなかったから…」

翔子はそう言いながら謝った。

そして、

「けど、あたしは…」

と翔子が言おうとすると、

「でも、行くな!!

 行くな…

 ずっと僕のそばにいろ、例えどんな姿であっても…」

その言葉をさえぎるように僕は翔子の身体を抱きしめながらそう叫んだ。

抱きしめた翔子の身体からは土や獣の匂いが混ざったディンガの香りが漂ってくる。

しかし、翔子は

「智也クン…うれしい…

 でも…戻らなくちゃいけないのあたし…

 ンピがあたしを待っている」

と僕に告げると僕を包み込むようにして抱き締めると、

すぐに手を離し、

「ねぇ智也クン…

 あたしの最後のお願い聞いてくれる?

 このオチンチンを扱いて欲しいの」

翔子はそう言いながら、股間に垂れ下がっている長く伸びたペニスに手を伸ばし、

そしてそれに両手を添えると

シュッシュッ

っと扱き始めた。

すると、

ムクムク!!

見る見る黒い棍棒のようなペニスは膨らんでいくと僕の目の前で勃起をした。

「翔子…なにを…」

翔子の行動に僕が戸惑うと、

「ねぇ(はぁ)…智也君

 約束覚えている?」

ペニスをしごきながら翔子が尋ねる。

「約束?」

「そう、ホラ…

 智也クンが合格したらあたしが一番大事なモノを上げるって話」

と翔子が言うと、

「あっ」

”僕が合格したら翔子の一番大事なモノをくれ”

と無理矢理約束していたことを思い出した。

「思い出した?」

僕の表情を見ながら翔子がそう言うと、

「だから…いまのあたしが一番大事にしているモノをあげる」

と言いながら勃起したペニスを持ちながら僕の目の前に立ち

「ねぇ、コレ握って…」

翔子は僕の右手を掴むとソッとペニスへと導いていった。

ドクン

ドクン

灰や砂にまみれた翔子の太いペニスは固く脈を打っていた。

「すごく…あつい…」

ペニスの感触に僕はそう呟くと、

シュッ

シュッ

っとそのペニスをゆっくりと扱き始めた。

「(うっ)そっそう…よ、

 もっと…もっときつく扱いて…」

僕にペニスをしごかせる翔子は荒い息をしながら腰を前に突き出し、

「智也クン…あたしね…

 ディンガの男になってからも、

 完全にディンガ族にならないように頑張ってきたの、

 でも、それも…もぅダメ…

 いいわ…だから…智也クンにはあたしの心をあげる。

 そして、あたしをディンガ族の勇者に変身させて」

と僕に懇願した。

僕は無言でそんな翔子のペニスを扱き続けていると、

ムワッ

翔子の体から立ち上り始めた汗と土の臭いが僕の鼻腔を刺激し始めた。

シュッシュッ

僕は無我夢中で翔子のペニスを扱く、

すると、

「あっあぁ…

 いぃ…

 智也クンがあたしのオチンチンを…

 あぁ!!」

翔子は顎を上に上げて譫言のようにして声を上げた。

そして、

「あぁ、

 オチンチンが痺れ…

 あぁ…ダメ…

 出る…

 出る

 出るぅぅぅ…」

翔子のその絶叫と共に、

シュシュッ!!!

翔子のペニスの先より白い帯が空高く放たれた。

ハァハァ…

僕は射精し終わった翔子のペニスから手を離すと、

ドサッ

っとその場に座り込んでしまった。

すると、

「智也…ありがとう、

 智也のおかげであたしはディンガの勇者になれるわ
 
 もぅすく、向こうでは部族の戦い、
 
 そう、ディンガのレスリングが開かれるの
 
 これで心おきなく相手を倒せられるわ」

翔子はそう言うとポンと僕の頭を軽く叩いた。

そして、

「あたし…行くね…

 もしも、再び会えるコトがあったとしても

 でも、その時のあたしは翔子であったことは忘れて

 ディンガ族のアピになりきっている思う…

 だから…」

と翔子は言うと僕の前から去っていこうとする。

「翔子…」

それを見た僕は起き上がって彼女の名を叫ぶや、

大急ぎでポケットから小さな包みを取り出すと、

それを翔子に向かって放り投げる。

そして、投げられたものを反射的に受け取った翔子はそれを見ると、

「翔子!!!、

 好きだ!!」

僕はそう叫び彼女に背を向ける。

「…ありがとう………」

翔子は僕にそう言うと

彼女の黒い身体は門の中に吸い込まれていった。

「さよなら…智也」

そのとき僕の耳には翔子の声がそのように聞こえたような気がした。



あれから3年の月日が流れた…

無事に学校を卒業した僕は親のコネで就職することが出来たが、

3年前、翔子が僕の元を去ってから、

色々な女性と付き合い、

必死になって彼女のことを忘れようと努力したものの、

しかし、どうしても忘れ去ることは出きず、

そればかりか逆に彼女への思いは募るばかりだった。

「どうしたのよ、黙っちゃって」

僕の様子を見ていたいまの彼女が僕をのぞき込みながらそういうと、

「ん?、あぁ…」

僕は素っ気ない返事をした。

それを聞いた彼女はムッとした顔になると、

「ねぇ…翔子って誰のこと?」

と僕に尋ねた。

「え?」

ドキッ

彼女の指摘に僕の心臓は大きく高鳴ると、

「あぁ…何のことだ?」

ととぼけた台詞を言う。

「しらばっくれないでよ

 夕べあたしと”した”とき

 翔子・翔子…
 
 って言ってたじゃないの」

「そっそうかなぁ…」

彼女の指摘に僕は頭を掻きながら答えると、

「まさか、あたし以外に女が居るんじゃないの?」

と彼女は疑い深く探りを入れてくる。

「お前以外に居るわけがないだろう」

そう彼女の髪をかき分けながら僕がそう言うと

「じゃ誰なのよ!!」

と語尾強く彼女が尋問をした。

僕は視線を遠くに向けると、

「……昔つき合っていた人…」

と呟いた。

「判った、じゃぁよりを戻そうとしているのね」

「違うよ」

「違うって…?」

「もぅ、この世には居ない人だよ」

そう僕が言うと

「え?」

途端に彼女の顔色が変わった。

「死んじゃったの?」

恐る恐る聞いてくる彼女に、

「まぁそう言うところだな」

そう返事をする僕の脳裏には門へと向かう

筋骨逞しい黒い身体の翔子の後ろ姿がよみがえっていた。

「ふぅ〜ん…そうなんだ」

妙に神妙な彼女の様子に

「そんなに気にするなよ」

と僕が言うとリモコンでTVをつけると、

ちょうどレポータがなにかを喋っている場面が映し出された。

『…港を出て半日、

 もぅまもなくディンガ族の村へと到着します』

そうレポートするレポータの言葉に、

「ディンガ族?」

僕はそう呟くとTV画面に目が釘付けになった。

「どうしたの?」

僕の様子に彼女が訊ねると、

「シッ」

僕は人差し指を口の前に立てた。

「?」

そして、TV画面に映し出されたのは3年前僕と翔子が飛ばされ、

ディンガ族となった翔子が帰っていったあの村だった。

『うわぁぁ…』

とレポータが声を上げる村の様子は僕が行ったときと何も変わらない佇まいと

そして、裸体に青いトンボ球で出来た腰紐を巻いただけのディンガ族の男達の姿だった。

やがて、レポータ達は村の中をズンズンと移動していく、

「そう…その右側にはあれがあって…

 そうそう、そこそこ」

画面を見ながら僕がそう呟いていると、

「ねぇ…ココに行ったことがあるの?」

っと彼女が聞いてきた。

「え?」

慌てて僕が振り向くと、

「智也ってまだ海外旅行したことがないんでしょう?

 その割には随分とここ知っているじゃない?」

そう彼女が訊ねると、

「あっ、いや、

 昔のTV番組で見たことがあるから…」

と言い訳をすると、

『すごいです、この”男の村”にTVカメラが入ったのは我々が初めてです』

と言うレポータの声が僕の言い訳をうち崩してしまった。

ジトッ

彼女が疑いの目で僕を見る、

「えっと…」

なんて言い訳をしようかとしたとき、

『あれはなんでしょうか』

レポータが一人の赤土をあげながら複数の男達が組み合いを演じている場面を見つけると、

すかさずカメラはそれを映し出した。

「うわっ

 すごい、血だらけよ」

戦いの激しさからか、額より血を流しているディンガ族の男の姿をみた彼女は

ショックからか口を手で覆った。

そして画面は戦いに勝ち残ったディンガ族の男に近づいていくとインタビューを始める。

「!!っ」

彼の姿を見て僕の身体は硬直した。

「翔子…」

TV画面の中で困惑した素振りでレポータからの質問に答えている

灰と砂と血でまみれた彼の姿を見てそう直感した。

そして、彼の胸元でキラリと光る物を見たとき、

彼が翔子であることを確信した。

「うわぁぁぁ…

 凄い、あの人、裸だよ…

 しかも血だらけ…

 良くなんともないのね」

彼女はディンガ族と化した翔子の姿を感心しながらそう言う。

やがて画面はあの呪術師を映しだし、

そして、男の村から翔子を伴うと、

僕が知らなかった”女の村”へと進んでいった。

そこでは翔子の花嫁候補だと言うディンガ族の女性が紹介された。

そのスタイルを見た彼女は、

「いいなぁ…あんなにスタイルが良くて…」

と羨望のまなざしでディンガ族のカップルを眺めていた。

その時、僕の胸の奥にモヤモヤとしたモノを感じた。

「翔子に女が居る…」

その事実が妙に許せない気がしてきた。

「どうしたの?」

彼女が僕の顔を覗きこみながら聞くと、

「ん?、いや…」

と返事をしながら、

「そうだ、翔子はあの翔子ではなくてディンガ族のアピになったんだ。

 ディンガ族のアピに花嫁が来ても何もおかしくはない。

 それに僕にも彼女がいるじゃないか」

と自分に向かって言い聞かせたが、

しかし、心のモヤモヤは晴れることはなかった。

やがて、画面は女の村にいる呪術師が映し出されると、

花嫁候補のディンガ族の女性は、

この呪術師には不思議な力がある。

ってレポータに紹介していた。

すると画面を遮るようにして、

「ねぇ、今日もウチ泊まっていくの?」

と彼女はそう言いながら僕に抱きついてきた。

「ん?、あぁ悪い…

 急いで片づけなくっちゃならない仕事を思い出した…」

僕はそう言って身なりを整えると、

「ちぇっ」

彼女は残念そうな彼女の言葉を背にしてに外にでていった。



「翔子……」

僕は星空を眺めながらTV画面の中の二人の姿を思い返していた。

しかし、何度も翔子はディンガ族になったと自分に言い聞かせても、

胸のモヤモヤは晴れることなく、

逆にそれは日を追うごとに強くなっていった。

そしてついに、

僕は夢の中で翔子とあの女性とのセックスシーンを見てしまった。

「くっそう!!」

飛び起きた僕は振り上げた拳を布団の上に叩きつけた。

「なんでだ、なんで、こんなに気になるんだ!!」

行き場のない思いを宥めるかのように僕は部屋の中をぐるぐると回った。

とその時、

女の村で紹介された呪術師のコトを思い出した。

「そう言えば、翔子は男の村の呪術師によってディンガ族の男にされた。

 って言っていたよな…

 ってことは、女の村の呪術師に頼めば僕をディンガ族の女にしてくれることも」

と考えたところで僕は頭を振ると、

「いやいや、なんで僕が女にならなくてはいけないんだ」

とその考えを否定した。



「え゛〜!!!

 海外旅行に行くのぉ」

それから数日後、

デートの最中に僕から旅行のことを告げられた彼女は声を上げた。

「いやぁ…

 たまには息抜きもと思ってね」

謝りながら僕がそう言うと、

「何であたしを誘ってくれないのよ」

彼女はプッと膨れると僕に背を向けた。

「まぁ、たまには一人で行きたくなってね」

と言う僕に、

「あ〜ぁ、もぅ最悪…」

彼女は呆れたポーズを取ると、

「えーぇ、何処へでも行ってらっしゃい」

と言うとサッサと帰ってしまった。

「こりゃぁ振られたかな?

 でも、まっ、コレでいいかも知れない」

彼女の後ろ姿を見ながら僕はそう呟くと、

翌日、日本を飛び立っていった。

2度と帰ってくるつもりはなかった。



ドドドドド…

ザザザザ…

それから数日後僕はあのレポータ達が乗っていた船で河を遡っていた。

目的地はそうこの上流にあるディンガ族の集落。

船は乾期のために水位が下がった河の流れに苦労しながら進み、

昼過ぎ頃…

ようやく河の行く手に数本の煙が立ち昇っているのが見えてきた、

目的のディンガ族の集落である。

岸に接岸すると早速僕は集落に足を踏み入れた。

あの”門”を通って飛ばされたとき以来の訪問である。

突然の異邦人の訪問に集落の人たちは驚き、

そして僕の周りに集まってきた。

集まってきた人たちはやはり男性ばかりで女性の姿は見えない、

そう僕はTVで紹介された”男の村”に降り立ったのだ。

一方、”女の村”はココから少し離れたところにある。

「懐かしいなぁ…」

と思いながら僕は

ディンガ族の男達をかき分けながら、

翔子がインタビューを受けていた場所へと向かっていった。

途中すれ違う男達の身なりは以前と全然変わらず、

首にトンボ球で出来た数本の首飾りと腰に同じ飾り紐を巻いているだけのペニスを露にした全裸、

僕はそんな男たちの身なりを見て、

「そういえば翔子もこんな格好をしていたっけなぁ…」

と思いながら、人々をかき分け彼女の姿を探すがなかなか見つからない。

「まさか、死んだのでは?」

との思いが脳裏を駆け抜けるがスグに否定した。

方々から立ち昇る煙に噎せながら翔子の姿を探して集落のはずれに来ると、

そこはウシの放牧地だった。



TVでディンガ族の衣食住のことを紹介されたことを思い出した。

ディンガ族の「衣」は既に見たとおり

男性は簡単な飾り物を身につけるだけの全裸。

一方、「食」は集落単位で大量に飼っているウシの乳を加工した物と

川で捕れる魚類のみ。

そして「住」は川の水位に合わせて居住地を移動するために

きちんとした住居は作らないが、

いつでも移動できるように潅木などで小屋を建てるか、

そのまま野宿をすると紹介されていた。

だから、ンピや呪術師の小屋の作りがあんなに簡単だったことに納得がいった。

「居ないのかなぁ…」

結局翔子に会えず、

僕は引き返して集落に戻ると、再び河に出た。

しばらく河伝いに歩いてみると、身体を洗っている数人の男性に出会った。

あの激しいレスリングの戦いのあとなのか、

血と白い灰まみれだった彼らの身体は、

河の水でみるみる洗われ

黒光りした肌が日差しでキラキラ輝いていた。



そのとき、

キラリ

一人の男性の胸元に光を放つ物の存在に気づいた。

「あれは…」

僕はまるでそれに惹かれるようにその男性へと近づいて行く、

そして、彼の傍に来たとき、

彼は僕の気配に気づくと顔を上げて僕を見た。

彼の髪の毛から河の水が頬から顎へと流れてゆき足下にポタポタと垂れていた。

「翔子…」

僕はハッとした。

と同時に彼も手で口を塞いでと驚きの声を上げた。

「?」

彼の声を聞いて他の男達が次々顔を上げていく。

「………」

彼は何も言わず首を横に振りながら後ずさすると僕から離れはじめた、

「待てっ、アピ」

僕は咄嗟に翔子のここでの名前を叫ぶと、

ダッ!!

するとそれが引き金になったかのように翔子は走り出そうとしたが、

「待て…」

しかし、間一髪、僕は逃げようとする翔子の腕を掴むと僕と向かい合わせにした。

「なんでここに来たの?」

翔子は僕を睨み付けると強い調子で怒鳴ったが、

逆に僕はディンガ族のアピとなった翔子が

未だ僕のことを覚えてくれていたことがうれしく、

「良かった…僕のことを覚えてくれていたんだね。

 TVを見ていたら翔子に会いたくなって…だから来た。」

と告げた。

「あっ、あれを見たの…

 でも、あのとき言ったでしょ、

 あたしのことは忘れてって」

翔子はそう僕に言うとその場に崩れるようにして座り込むと泣き出してしまった。

バツの悪い雰囲気が僕を包み込む。

すると一緒にいた男達が不審そうな顔をしながら僕に近寄って来たので、

「アピ…ちょっとつき合って…」

と僕はそう言うと、

翔子をの大きな体を抱き起こすなりその場を離れて行った。

そして、それから少し離れた適当なところで僕は腰を下ろすと、

翔子もその場に腰を落とした。

「………」

無言の時間が過ぎていく、

最初に口を開いたのは僕の方だった。

「…あれから色々考えた、

 けど、

 僕にはやっぱり君しかいないんだ。

 君がどんな姿になっても君への想いは変わらない。」

と言うと、彼は黙ったまま下を向いてしまった。

翔子の身体を濡らしていた河の水は既に乾き、

身体に白い模様を描いていく。

「……でも…」

ようやく翔子が口を開くと、

僕は翔子を抱き寄せた。

翔子は僕の行動に一瞬驚いたが、

しかし、スグに自分の身を僕に預けてきた。

そんな翔子の肩を僕は抱き寄せるとじっと身体を眺めて、

ひとこと、

「すっかりディンガの戦士になったんだね…」

と呟いた。

「うん…」

と翔子は短く答え、

「あたし…逞しいでしょう

 ディンガのレスリング…ずっと負け無しなのよ」

と言うと僕の前でムンと力んで見せ、肩・胸板・腹筋の筋肉のつき具合を見せた。

翔子の筋肉を見ているうちにふと彼と別れたときのことを思い出した。



そう僕が古本屋買ってきた本から現れた”門”によって、

この集落に僕と翔子が飛ばれれたときのこと、

そこで出会ったディンガの長老ンピから再び”門”を開く方法を教えて貰ったが、

しかし、一人しか戻ることは出来ず、

結果翔子がココに残って、僕一人が帰ったこと。

そして、病気になった翔子がココで生きていくためにディンガ族の男になったこと。

それから1年後、

再び”門”が開いたがしかしディンガ族の男になってしまった翔子は

僕に別れを言いに来たこと…



コレまでいきさつをぼんやり考えている僕を見て翔子が

「どうしたの?」

と言う顔で僕を見ていた。

「翔子……ココの暮らしはどうだ?…」

と僕が訊ねると、

「うん、大丈夫よ、ココではみんな裸だし、

 思いっきり暴れられるし、

 いまのあたしにとってはこの方が楽」

と言うと微笑み、そして

「食べ物は相変わらず不味いけどね…」

とつけ加えた。

「そうか…」

僕は彼女が元気に暮らしていることに少しは安心した。

やがて、日が沈んだ頃翔子は腰を上げて、

「このままココにいては危ないから村に帰りましょう」

と言って僕の手を引きディンガの集落へと向かった。

日が暮れるとあたりは瞬く間に暗くなり、

また翔子の黒い肌も闇にとけ込んでしまって

僕には何処を歩いているのか判らなくなったが、

翔子には景色が見えるのか暗闇の中を僕に手を引いて歩き、

程なくして集落に着いた。

彼女の住処は集落の外れにある小さな小屋だった。

「長老ンピはどうしてる?」

と僕が聞くと

「死んだわ、いまは別の人が長をしている」

と翔子は短く答えた。

「そうか…」

僕はそう言うとそれ以上は言わなかった。

小屋に着くと翔子は乾いた牛の糞を集め、

それに火をつけると僕を小屋の中へと招いた。

翔子は火がついたのを確認すると、

木切れをそこに放り込むと火勢が強くなり、

小屋の中の様子がぼんやりと映し出した。

小屋の中はこざっぱりにまとめられていて、

彼女の几帳面な性格は相変わらずだなぁと感心した。

翔子は瓶の中からある物をすくい上げて僕に渡した。

それはディンガ族の主食である牛乳を固めたモノだ。

以前来たときにも食べたが、とても食べられる代物ではなかったが、

翔子はそれをすくうと僕の前で食べてみせた。

僕も翔子に習って食べたみたが やっぱり戻しそうになってしまった…

そんな僕の姿を見て

「無理に食べなくてもいいよ」

と翔子は言ったが、

「いや…」

と言うと無理矢理胃の中に押し込んだ。

そして、燃える火を見ながら僕は翔子に自分の決意を話した。

しばしの沈黙の後、

翔子は

「そんなこと出来るの?

 それに智也は本当にそれでいいの?」

と尋ねた。僕は

「あぁ、構わない…、それにコレは僕の本心だ」

と言った。

それを聞いた翔子は一言

「ありがとう」

と小声で言った。

その夜僕は翔子を抱いた。

久ぶりに抱く翔子の身体は、以前よりもさらに堅い筋肉質となり、

トンボ球の紐が飾るだけの肌は灰や砂でザラザラしていた。

僕は翔子の大きく勃起したペニスをさすりながら

「良かった…

 翔子が翔子でいてくれて」
 
そう僕が言うと、

「うん、あたしもあのまま智也のことは忘れてしまうんじゃ」

 って思っていたけど、

 でも、いまもこうして智也のことは忘れるコトはなかった。」

と言った。

「そうか…

 なぁ…TVで紹介されていた花嫁の女の子とは寝たのかい?」

と僕が訊ねると、

「花嫁?

 そんな風に紹介されたの?

 彼女は違うわ…

 レスリングの強い男と言うことで女の子がいっぱい来たけど、

 あたしには智也がいるので、皆、追い返したわ

 だからこの集落ではあたしは変人扱い…」

翔子は首を横に振ってそう言うと

それを聞いた僕は、

「そうか、

 でも大丈夫だよ、

 もぅすぐキミにお嫁さんが来るよ」

と言って翔子の厚い唇にキスをした。

翔子は照れながら

「そうね……」

と呟くと、

「ねぇ…智也の手であたしのオチンチンを扱いて…」

と呟いた。

「?」

彼女の要望に僕が不思議そうな顔をすると

「だって…

 コレで最後なんでしょう?

 智也が智也で居られるのは、

 それなら智也の手で…ね」

と頼んで来た。

「そうか…」

僕がそう返事をすると股間で固く勃起している翔子のペニスに手を触れた。

「うっ」

ビクッ

翔子の身体が微かに反応した。

「いい?、いくよ」

僕はそう呟きながら

シュッシュッ

っとまるで太い棍棒のように勃起しているペニスを扱き始めた。

「あっあぁ…いい…

 お願い、もっと激しく扱いて」

翔子は身体を仰け反らせながら懇願した。

シュッシュッ

シュッシュッ

僕は言われるまま扱くスピードを上げていく。

「あぁ…

 あたしもしてあげるね」

悶えながら翔子はそう言うと僕のズボンを脱がせると、

その中でテントを張っている僕のペニスを扱き始めた。

シュッシュッ

二人向き合ってお互いのペニスを扱き合う。

「あぁ…出る、出ちゃう!!」

口を大きく開けながら翔子はそう叫ぶと、

「あぁ僕もだ」

翔子の攻めに僕もイキそうになっていた。

「うふっ」

それを見た翔子は軽く笑うと、

ピトッ

っとお互いの亀頭をくっつけると、

「イク時は一緒にいこうと」

と囁いた。

「あぁ」

僕はそう返事をするとそのまま発射態勢になった。

「出る、

 出る
 
 出る」

そう言い合って最後はお互いに

フン!!

腰に力を入れると、

シュッ!!

っと2本のペニスが精液を吹き上げた。

吹き上げた精液がお互いの身体に掛かる。

「はぁはぁ…

 良かったよ智也…」
 
「翔子こそ」

僕と翔子はそう言うとそのまま抱き合った。

「これならあたしのお嫁さんになれるよ」

射精後のまどろみを楽しむかのようにして翔子は黒い手で僕の顔を撫でていた。



翌日、僕は翔子を伴って女の村へと向かった。

やがて、翔子一人が男の村に戻り、そして僕が帰って来るのをひたすら待った。

それから数日経った夕刻、

頭を剃り上げ、尖った乳房を露わにした

一人のディンガ族の女性が翔子の元を尋ねてきた。

彼女は小屋の前に立つと、

「ただいま…」

と囁いた。

小屋から出てきた翔子は、

彼女の姿に驚き、

そして喜んで抱きついてきた。

「待たせてごめんね…」

女が言うと、

「うれしい……これで、智也とはずっと一緒にいられるね」

そう僕は女の村に行き、

そして翔子と同じようにそこにいる呪術者によって

ディンガ族の女性となって翔子のところに戻ってきたのだった。

女となった僕を翔子は抱きしめながらそう言うと、

「智也じゃないよ、”シシ”だよ」

と僕は翔子にディンガの女としての名前を告げた。

「じゃぁ、シシもあたしのことを翔子ではなく”アピ”と呼んで」

僕は静かに頷くと、腰に巻いた布を取り、アピに自分の裸体を見せた。

「見て…僕の身体…きれい?」

アピは背後に回り、そっと僕を抱きしめ、

「うん、きれいよ、シシ」

と答えた。

ギュッと密着した肌を通して彼の”息子”がみるみる大きくなって行くのが感じた。

ジュン

と僕の股間が濡れてくる。

僕は振り向き、小屋の方をみて

「入る?」

と言うと、アピは頷き、

そして、僕をヒョイを抱き上げると小屋の中へと連れていった。

小屋の奥に僕を下ろすと、アピは、

「女の身体はあたしが一番よく知っているから…」

と言って円錐形に尖った乳房を揉みだしたが、

膨らんでまだ間がない乳房を揉まれると、痛みを発し…

「いっ痛い…、もっと優しく揉んで…」

とアピに懇願すると

「あっ、ゴメン、シシの”おっぱい”ってまだ膨らんだばかりだったね」

と言うと、そっと抱き寄せ僕の股間の方に手を持って行くと秘所を攻め始めた。

すると、僕に芽生えたばかりの”女”はアピのワザに喘ぎ・悶え始めた…

「あっあぁぁぁぁ!!」

スグに絶頂を迎えた。

「シシってかわいい…」

アピは僕の秘所からあふれた密を舐めながら言うと、

「僕だって、男の身体はよく知っているぞ」

と言うと、アピのいきり立っている”息子”を攻めた…

やがて、アピは呻き声と共に”男の精”を飛ばした。


「これで、お合い子だね」

と僕が言うとアピは僕の上にのしかかり、

「じゃぁ、シシ、行くよ…」

僕はアピの”息子”が復活しているのを見ると頷き

「優しくしてね」

とひとこと囁いた。

しばらくして、アピは激痛と共に僕の体内に入ってきた。

「痛い?」

「っ…う…ん」

「もう少しガマンして」

アピが腰を動かし始めた。

「くぅ…ぅ…ぅ…」

けど、僕は痛みよりもこうしてアピ(翔子)と一つになれたことが嬉しかった。



おわり


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